「貰ったぁ!!」
「くっ!」
イルフリーデのロンゴミニアドがウイングゼロの肩部装甲を傷つけ姿勢を崩させる。素早く構え直したイルフリーデはロンゴミニアドでウイングゼロのウイングスラスターを狙う。しかしその彼女の行動は突然後ろに現れたデルタカイによって妨げられる。
「ユイト!!」
「しまった!」
背後からの跳び蹴りに飛ばされたイルフリーデは地面を滑りながら墜落するとすぐに機体を建て直すが、突然機体が重くなるのを彼女は感じ取った。
「なんだ!?」
「捕まえた!」
イルフリーデの愛機《キャメロット》の周囲にはメリクリウスのプラネイト・ディフェンサーが展開されており、その電磁フィールドによって強制的に停止させられていた。
「ユイト!沿岸部の部隊も少し押されてる…ブレイドもバスターもやられた…そろそろ」
「そうだな、少々遊びが過ぎたようだな…」
「くっ!」
目の前にヴァイエイトのビーム砲を突きつけられたイルフリーデは悔しそうに表情を歪めるが、それしか出来なかった。
「ケイ!準備は?」
「遅いよユイト…出来てる!どうぞ!」
「すまんな…では始めるか…」
ーーーー
国会議事堂、そこには早急に集められた官僚達が進展しない話を続けていた。
「敵の戦力は強大だ!中国の要請を受けるしかないだろう!」
「奴らをこの領土に引き入れた所で何も状況は好転しない!奴らに借りを作るだけだ!」
「だが!」
「大変です!」
会議をしていた議員達は突然入ってきた秘書に注目する。
「テレビ回線が何者かに乗っ取られ、IS学園の映像が!」
「すぐにテレビを!」
部屋に備え付けられたテレビをつけ、その映像をまだかとばかりに見つめる議員達は映像が映った瞬間、言葉を失った。
その映像はIS学園に備え付けられた監視カメラからの映像のようで、若干粗いが悲惨な状況は手に取るように分かった。
「なんだこれは!?」
自衛隊の打鉄らしき機体が見るのも耐えれぬ姿で倒れており、綺麗に整理されているはずのコンテナは中身をぶちまけ崩れている。そのすぐ側にはモノアイを光らせる機体が立っていた。
世界の軍事力のトップに立っていた筈のISがさも当然のようにもろく崩れ去っている。この映像を見ていた全ての者達が戦慄した。
「ISが…」
その反応は偶然、映像を目にした一般人も同様だった。その中で一部の者達は嘘だと憤慨し世界の終わりのような顔をする者達と様々であったという。
《世界各国と我々の同志に告げる!我々は革命軍…世界を変革せし者なり!》
映像越しに響く声に全員が驚愕し耳を傾けるのだった。
ーーーー
その演説はIS学園中にも響いており革命軍はその演説に耳を傾けIS学園のメンバーは驚きながらもユイトの持つ声の圧に押され聞き入っていた。
《所謂、白騎士事件と呼ばれた出来事から早10年…ISが世界を汚染し秩序を乱した!》
「この馬鹿げた演説を止めさせろ!」
「行かせないよん♪」
楠木中佐は演説を止めさせようとIS学園に向かうが鼻先にビームが通過した。
「クソッ!」
ーー
《我々は日々思い続けた。ISによって国を焼かれた者達の事を…。》
「IS学園をハックしている奴はまだ見つからないのか!?」
「見つけました!アリーナ予備管理室…直上に機影2」
!!
「防衛行動ヲ開始スル…」
教師部隊がブレインとブクウェイエを発見し攻撃を開始するが、ブクウェイエの全方位シールドに全て弾かれてしまう。
「エネルギーフィールドだと!?」
見た目的にはアルミューレ・リュミエールに酷似しているが、実際にはプラネイト・ディフェンサー同様の電磁フィールドである。本来ならアルミューレ・リュミエールが得策なのだろうが、エネルギー消費が激しいものをわざわざ採用する理由もなかった。
「援護します!」
「代表候補生か!?助かる!」
そこに合流したユイカとシャルルは、愛機の《蒼華》とラファール・リヴァイブカスタムⅡを駆り、教師部隊の戦列に加わるのだった。
ーーーー
「あのガキ共本当にやったのか…ハハッ!ただもんではないと思っていたが、本当にやっちまうとはな!」
華やかながらも日本風の落ち着きを持った部屋の主が手招きをすると、近くに控えていた男がその主に近寄る。
「例の件は了承すると伝えてやれ…」
「わかりやした、親父…」
部屋の主の正体は日本の裏世界を牛耳る組の組長…簡単に言えばヤクザである。だがこの演説で動いたのはそこだけではない…各国のマフィア等も同様の動きを見せていたのだ。
ーー
「こちらが支援してきたかいがあったと言うもの…」
「まさか…あんな子供達が…」
「人を見た目で判断してしまうのは商人としてまだ未熟と言う証明ですよ…」
「ハッ!すいませんでした!」
「あの目を見れば、誰だって気づきますよねぇ…」
世界で最大の規模を誇る武器商人の社長も実に嬉しそうに呟くと一級のワインを注ぎ呑む。今日は祝杯だ…社長にとって取っておいたワインが予想以上にとても美味しく感じた。それは最高のつまみがあればこそだろう。
ーーーー
《諸君らは存じて居るのだろうか?ISの誕生により、一つの国が滅んだことを!?》
「IS学園は何をやっているの!」
「IS学園に通信が繋がりません!何らかのジャミングが!」
「テレビ局に止めさせなさい!」
「はい!!」
演説を聴いてヒステリックを起こしている女は日本の女性主義団体のリーダーだ。ユイトが話しているのは女性主義団体主導で行った作戦のことだ…何故知っているのか?そんな疑問と共に彼女はテレビを食い入るように見つめる。
「4年前の作戦よ!情報操作はカンペキだったのに!」
ーーーー
《たった一つの団体のために、平和に暮らしていた国を焼いた事実を我々は知りえている!》
「ケイニ…」
「大丈夫…大丈夫だから…」
カゲト(リヴァイブ)はケイニ(アニュー)の頭を軽く撫でると彼女はソッと想い人の肩に頭を乗せる。
カゲトは知っている。笑顔の裏にある暗い感情を…彼女はそれを決して表に出さない、本当に強い女性だと…カゲトは心の中で呟くのだった。
ーー
《この世界は変わり果てた…かつて皆が望んでいた平等等と言う言葉は消え失せ、一部の者達が望む世界へと変貌した!…目を閉じるな!刮目しろ!我々の世界を!!そして行動するのだ!》
「我々も立つときが来た!革命軍に続けぇぇぇ!!」
「「「「おおぉ!!」」」」
ユイトの言葉に賛同したテロリストグループは革命軍に続けとばかりに雄叫びを上げるのだった。
ーーーー
《省みよ!何故このような事態に陥ったのかを!何故我々が立たねばならなかったのかを!》
「この声…まさか…あり得ない…あの子はもう死んだはず…」
花柳家本邸、その放送を聞いていた花柳家当主代理…花柳ユミエはあり得ないと頭で考えながらも異様な焦燥感を感じていた。
ーー
《我々は10年間待った…もはや、我が軍団に躊躇いの吐息を漏らす者はいない!我々は改めて各国政府に対し、宣戦を布告するものである。仮初の平和への囁きに惑わされる事なく…繰り返し聞こえる同胞達の為に…》
「「「「オォォォォ!!」」」」
ユイトが演説を終えた瞬間、IS学園の大気が歓喜する者達の声によって震わされた。その異様な光景に見るもの全てが唖然とする中、ちょうど画面に映ったユイトのウイングゼロに強襲を仕掛けるものがいた。
「この野郎!!」
「ッ!」
「ユイト!…ッ!」
「させん!」
隕石の如く落下してきた一夏は雪片弐型を構えて突貫する。それを見たクリアは護るために行動するがラウラのAICに捕らえられ動けなくなってしまう。
「貰ったぁ!」
「フッ…」
奇襲としての第一段階はクリア、相手が油断している隙も突いた。行ける!っと確信に満ちた一夏は全力で雪片弐型を振るうが彼の視界が捉えたのはやられるウイングゼロの姿ではなかった。
「グワッ!!」
「そのいかんともしがたい実力の差!」
ウイングゼロのシールドの先端が一夏の顔面を捉え、ひっくり返すと共に地面に叩きつけて踏みしめる。
「少しでも埋めてからかかってこい!」
「グッ!」
「「一夏!」」
「織斑くん!」
その光景にラウラ、フィーリア、イルフリーデが叫んだ。
《n_i_t_r_o system standby……START》
ラウラが一瞬、目を離した瞬間…デルタカイの関節部から蒼い炎が吹き出した。
「なんだ!?これは!」
「ジャマをスルナ!!」
「ッ!」
炎を吹き出す機体のパイロットに対し、ラウラはこれまでにないほどの恐怖を覚えた。全身の毛穴からは脂汗が噴き出し瞳が恐怖で揺れ、視界も定まらなくなる。
AICから抜け出したクリアはビームサーベルを抜き放つと、ラウラの脳天めがけて振り下ろした。
「ラウラ!あぶない!」
咄嗟に庇うフィーリアの姿をラウラは見ることしかできなかった。バックパックを切断され爆発する機体に巻き込まれるフィーリア。
「ウッ…」
「フィーリア!」
ラウラの叫びと共にISが強制解除されるフィーリアを、彼女は必死に抱え込む。
「ISはぁ、てきぃぃぃぃ!」
「ダメだ!暴走しかけてる」
シュンがクリアの様子を見て恐怖すると、ユイトはすぐに通信を駆けた。
「ケイ!」
「各組織から協力の確約を示す暗号が届いてる!作戦目標も達した…撤退しよう!海側も押され気味だ」
「シュン!撤退信号を上げろ!」
「了解!」
シュンはヴァイエイトに拳銃のような物を持たせると上空に打ち上げた。三色の発光弾が煌めきまだ明るい上空を彩る。
「逃がすと思っているのかぁ!!」
怒りに満ちたラウラがユイトに叫ぶが当の本人はどこに吹く風…全く気にしていなかった。
「クリア…落ち着け…」
「ユイ…ト…」
軽く頭を小突かれたクリアはユイトの方を向く。
「手間のかかるところも可愛いなぁ…お前は…」
「う////」
急に柔らかい会話を始める二人だが、ユイトの行動は対照的で、ラウラにツインバスターライフルを向けたまま外さない。
「時間だ…」
地下の部屋から脱出したケイが通信でそう呟くと上空から多数のミサイルが降り注ぐ。
「なっ!」
千冬を始めIS学園のメンバーたちは驚愕の表情を浮かべると同時にミサイルが空中で爆発しチャフスモークがIS学園全域を包み込むのだった。
これでひとまずの終幕…ではないですよ。
まだ無人機戦が残ってますからね、予定よりかなり長くなってしまい少々焦ってましたが何とかなりました。
次回でIS学園防衛戦は一応終了です。ではでは…。