IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第十四革 波乱の学年別対抗戦 ー反撃ー

 

 

両腕に展開した大型ライフルを向けイルフリーデは状況を冷静に分析する。

 

(あれが敵の大将……)

 

 

 

堂々とした立ち姿でこちらを睨みつけるウイングゼロを見てイルフリーデはすぐさま気づいたが動けなかった。

 

「数も質も向こうが上か…」

 

ウイングゼロの周りにはワンオフ機の見本市の如く立ち並んでいる…このまま突っ込んだら墜とされるのは見て見えているからだ。

 

「凰鈴音!セシリアを連れて下がれ!」

 

「は、はい!」

 

イルフリーデの声に鈴は素早く行動すると動けないセシリアを連れて下がる。

すると白銀のライフルが親衛隊に向けて火を噴いた、ライフルの各部に装着されているドラムマガジンから供給される弾を吐き出し親衛隊に降り注ぐ。

 

「防ぎきれない!」

 

「姉さん!しっかりして!!」

 

「総帥を御守りする!」

 

広範囲にばらまかれた銃弾は全機まんべんなく降り注ぎユイト達を攻撃すると親衛隊はユイトを守れとばかりに自身を盾にして銃弾を防ぐ。

 

「大丈夫だ…問題ない」

 

「ッ!」

 

ユイト、冷静な声が響きクリアを除くその場にいた者は驚愕した…全員が銃弾で動けなかったというのに彼は誰にも悟られる事なくイルフリーデの後ろを取っていたからだ。

 

「クソッ!」

 

「………」

 

振るわれるビームサーベルをイルフリーデは腕に内蔵されていた仕込み剣で防ぐと、激しいつばぜり合いが起こる。

 

「流石はウイングゼロ…高性能だな!」

 

「ッ!……そうか…お前も転生者か…だったら」

 

ユイトは一歩後退しツインバスターライフルを構え叫ぶ。

 

「コイツの力も知ってるよな!」

 

「クッ!!」

 

暴力的な光が放たれイルフリーデに襲いかかる…回避が間に合わないと判断した彼女は地に突き刺さっているロンゴミニアドを引き抜きツインバスターライフルのビームを突く。

 

「ビームが!?」

 

「シーレ!ゲシュマイディッヒ・パンツァー出してぇ!」

 

「姉さん!もっと広げて!!」

 

「そんな無茶な!」

 

対エネルギー兵器能力を持つロンゴミニアドはツインバスターライフルのビームを弾き、弾かれたビームが彼女の周囲を抉り破壊する…強力なビームの破片はシーレたち親衛隊も恐怖させるようなものだった。

 

「貰ったぁ!!」

 

「ちぃ!!」

 

ロンゴミニアドの一撃はウイングゼロのシールドバリアを突き破り接近するがユイトは素早くシールドで受け止めると負けじとスラスターを吹かすと一撃を受け流す。

 

「まだ終わらんぞ!」

 

「ふざけるな!」

 

ユイトが背中を向けた瞬間、ライフルを構えるイルフリーデだが構える一瞬の間に両断されてしまう。

 

「やるな!!」

 

「上でふんぞり返るのは趣味じゃないんでね!」

 

対エネルギー兵器のロンゴミニアドには盾で、仕込み剣にはビームサーベルで対応して、攻撃をいなすと隙あらば鋭い攻撃を加える…激しい攻防に先程から様子を伺っていたクリアも手が出せない状況だった。

 

「ユイト……」

 

「総帥ってこんなに強かったんだ…」

 

圧巻の戦闘に城崎双子含む親衛隊は見守ることしか出来なかった。

 

ーーーー

 

「無事か?」

 

「じゅ…准将……すいません、お見苦しいところを……」

 

「気にするな…」

 

鈴に戦闘に使われていないアリーナに運ばれたセシリアはそこにいたゴルドウィンと会っていた。そこには各国の政府関係者も含まれており、専用機持ちが来たことで安堵の表情を浮かべる者もいた。

 

「すまないな、凰鈴音……この礼はさせて貰う」

 

「構いませんよ、正直…イルフリーデさんに助けて貰ったのは私ですし……」

 

「そうか…」

 

状況を知るために鈴から詳しく情報を聞いていたゴルドウィンは思わずしかめっ面をする。明らかに攻撃が散発的で目的がないように見える…囮なのかそれとも奴らは本気でIS学園を潰しに来ていないのか…。

 

「何が目的だ…」

 

ゴルドウィンの呟きは断続的に鳴り響く銃声や爆発音に掻き消された。

 

ーーーー

 

「発信元が割れました!アリーナ予備管理室から正体不明の信号を確認!」

 

「よし!教師部隊は!?」

 

真耶の言葉に千冬はやっと時間が進んだ心地がした。その後、オペレーターから様々な報告が上がってくる。

 

「先程、手動で格納庫から何とか出られたようです!」

 

手動と言うことはISの装備で隔壁を吹き飛ばしたと言うことだろう。有事の際だ、仕方がない…どうせ払うのは日本政府だ。

 

「各戦闘の状況は?」

 

「セシリアさんと鈴さんが敵の本隊と思わしき部隊と接触…セシリアさんがケガをしましたが命に別状はないようです……現在はイルフリーデさんが対応しています!」

 

「海岸部の日本部隊は?」

 

「空からも増援が来たようで…現在は連絡が……」

 

「くっ!」

 

千冬は友であるアキの事を思い唇を噛み締めるが残念ながらやることは腐るほどある。それを一つ一つ潰していかなければ。

 

「第五アリーナだけ状況が確認できません!」

 

「第五にはダリルがいる…大丈夫だろう」

 

専用機持ちの中でもトップクラスの実力者である彼女は必ず敵を押し止めてくれているだろう…そんな考えと共に千冬は第五アリーナの方から目を逸らした。

それが一番の間違いだった…革命軍の目的の一つがダリルだったのだから。

 

ーーーー

 

「う……ぐぅ…」

 

「まだ生きてるんだ……」

 

第五アリーナにはトーナメントに参加していたラファール3機の操縦者が意識を刈り取られていた。その上、専用機持ちであるダリルは自身の機体、ヘル・ハウンドVer2.5を完膚なきまでに破壊され苦しんでいた。

 

「カリナ…殺しちゃダメだからねぇ!」

 

機体が破壊されるのを見学していたニコラは一応釘を打っておくと各部隊の動きとIS学園の状況を確認する。

 

「予備電源停止まで後、30分…余裕だね」

 

そう言ってニコラは笑いながらレーダーを見ていると自軍の機体が撃墜されたことを示す警告が出ているのに気がついた。

 

「え?海岸部に新手!?」

 

咄嗟に海岸部を見やる彼は高々と飛翔する機体を目撃したのだった。

 

「こちら二番隊、第九部隊…新手を確認!敵はガンダムタイプ!!」

 

「「「「ガンダムタイプ!?」」」」

 

IS学園にいた革命軍全隊に響き渡った通信に全員が驚愕した。

 

ーーーー

IS学園海岸部

 

「なんだコイツ!」

 

「敵の増援…いや…この動きは」

 

アキは機体がボロボロになりながらも撃墜された部下を守るように立ち回っていたが、数に敵わず追い詰められていた…その時、空に現れたのは白と赤色のガンダム。

 

「なんでこんな所にガンダムが!?」

 

ゾックが頭部にあるメガ粒子砲を撃ち放つとガンダムはヒラリと避けて両手のバスターライフルで反撃し、度重なるビームの直撃に耐えきれずシールドバリアが尽き…爆発する。

 

「ふざけんな!」

 

「無人機を出せ!」

 

カプールが数機前に出ると胸部のミサイルハッチを開放し、ありったけのミサイルを撃ち込むがガンダムはその全てを撃ち落とし接近する。

 

「降りてこれば!」

 

ゼー・ズールはヒートクローを展開し切り刻もうと突っ込むが、その前に思いっきり蹴り飛ばされ置いてあったコンテナに体を埋める。カプールもその動きについて来れずに次々と撃墜された。

 

水陸両用MSは水中による活動時間延長と戦闘能力の向上のために浮遊機能がオミットされている。短時間なら飛べるがその程度、空中に居るガンダムには対応しきれなかった。

 

「ここは我々にまかせろ!」

 

制空権を捉えかけていたガンダムのすぐそばを強力なビームが襲う。IS学園への増援警戒に当たっていた2番隊のティターンズ部隊のガブスレイの放ったビームだ。

 

「いただき!…ッ!」

 

ガンダムの死角に周り込んだハンブラビは手持ちのフェダーインライフルを構えるが、撃つ直前にガンダムの両手のライフルによって撃ち落とされてしまう。

 

「コイツ!やるぞ!」

 

「任せろ!」

 

たまらず後退するハンブラビを追い抜かすようにマラサイとハイザックがカバーするために前進する。マラサイ2機をの後ろにハイザック、縦一列に並び突進する。

 

「ジェットストリームアタック……」

 

ガンダムのパイロットはそう呟くと姿勢を整えて戦闘にいたマラサイのビームを避けると蹴り飛ばす。

すぐ後ろにいたマラサイがサーベルを振るうが手首を掴み止めると後ろにいたハイザックへ蹴り飛ばす。

 

「ジェットストリームアタックがぁ!?」

 

「何なんだ!アイツは!?」

 

「私たちに任せて!」

 

「親衛隊!?」

 

敵の高い技量に舌を巻いた革命軍だったが親衛隊の登場に指揮を取り戻す。

 

「それそれそれ!」

 

「頂きます!」

 

カラミティの一斉砲火と共にレイダーのハンマー《ミョルニル》がガンダムを襲う。

 

「甘いですわね…」

 

ほぼ同時に行われた攻撃を紙一重で回避するガンダムだがフォビドゥンの誘導ビームは避けきれずに直撃する。しかし目立ったダメージは見られずパイロット自身もまだまだ元気なようだ。

 

「堅いわね!」

 

「データを見つけましたわ……」

 

「我が軍にデータが!?」

 

《GW-9800 ガンダムエアマスター》そう記載されたデータが三人の目の前に現れた。強奪された機体という考えが巡ったが違う。データをよく見ればデータだけ存在する機体と言うのがよく分かる…ロールアウトの日付が書いてないし詳細なスペックを記載していないのだ。

 

「おもしろい!」

 

「幻の機体が目の前に…フフフ……」

 

「笑っている場合か!?」

 

戦士の血が疼く…戦うために創られた少女たちは戦う事に喜びを覚える。精神に彫り込まれたプログラムではない衝動、命同士の削り会いとは何とも言えない興奮をもたらす。

だがその裏腹に存在するのは悲しい感情、"死"を実感するから"生きる"ことを実感できる…自身は生きているのだとそう言う確証が彼女達には欲しかったのかも知れない。

 

ーーーー

 

IS学園中央広場…ストライクノワールとミステリアス・レイディは既に満身創痍だった。スワンは最後の武装であるノワールストライカーのウイング部分、対艦刀を振るい楯無の肩口に叩き込む。

対する楯無もランスを渾身の力でノワールの腹部に突き込む。お互いの保有するなけなしのエネルギーが削られる。

 

「ここまでか…」

 

シュウゥゥゥンっという音を立てストライクノワールが擱座する。エネルギー消費の激しい楯無のミステリアス・レイディより先にエネルギーが切れたのは、SEED世界特有のエネルギー消費の激しさが原因だろう。

 

「ハァ…ハァ……」

 

対する楯無も辛うじて機体を展開している状態、これ以上の戦闘は好ましくない。3対1の戦いを30分近くも繰り広げていたのだ…大健闘と言えよう。

 

「もうむりぃ」

 

パティシアのヴェルデバスターもエネルギーがカツカツで母艦に帰投できるのかすら怪しいところだ…比較的余裕があるのはニックスのブルデュエルだ。

 

「まさか、ここまでの実力を持っているとは…ですが我々の目的は達しました」

 

ニックスは両手に合計10刀のナイフを引き抜くと、満身創痍の楯無の周りに投げて突き立てる。ナイフの柄の部分からはチャフスモークが噴出し辺り一面を覆う。

 

「待ちなさい!……ッ!」

 

追撃に出ようと機体を無理やり動かす楯無に向けて乱射されたレールガンが2、3発直撃し、ISが強制解除される。

 

「次回はこうは行きません…革命軍に牙をむいた瞬間、あなた方の負けは確定しているのですから」

 

「……革命軍…」

 

視界が封じられる中、発せられた言葉を楯無はしっかりと噛み締めるのだった。

 

ーーーー

 

「でやぁ!」

 

フィーリアはシャルルから受け取ったショートブレードを振るい、ブレイドと激しいつばぜり合いに入る。まだ未完成であるブロッサムがパワー負けすると思われた刹那、彼女がスラスターを全力で吹かしてブレイドを吹き飛ばしたのだ。

 

「なんか、フィーリアの機体…今日は調子が良いな…今までとは別みたいだ」

 

(改良なんてしていなかった筈…)

 

この数日、彼女を見張っていたラウラは疑問を持つ。しかし今は戦闘中…そんな事に気を取られてはこちらがやられかねない。

 

「ゆけ!織斑一夏!!」

 

「うおおぉ!!」

 

予想以上に体勢が傾いたブレイドを見てラウラは叫ぶと一夏は迷わずに加速させる。エネルギーをかなり削られ満身創痍だが最後の一撃位かませる。

雪片弐型の最大出力《零落白夜》を起動させブレイドを狙うとブレイドも負けじと《零落白夜》を発動し迎え撃つ。

 

「ッ!」

 

「ーーーー!」

 

エネルギー無効化攻撃のぶつかり合い…小規模な衝撃波が発生し眩い限りのスパークが巻き起こる。巻き起こる暴風雨の様に周囲を破壊するエネルギー体は一夏とブレイドの周囲を抉る。

 

「ラウラ!」

 

「分かっている!」

 

拮抗したつばぜり合いにが巻き起こるかに思えたが一夏はアッサリと引き上げる。宙返りをするように大きく後方に移動したのに疑問を持つブレイドが見た物は近距離に展開されているラウラのリボルバーカノン。

 

「ーーーーッ!」

 

襲い来る砲弾に対処しきれず雪片を弾かれるブレイドは明らかに動揺した。"まるで人間のように"だ…その事にラウラは疑問を抱きながらも後退する。

 

「いただき!!」

 

フィーリアの声と共にブレイドの視界は桃色に染め上げられた。巨大なビームの本流に呑み込まれた瞬間であった。

ブロッサムの大型ビームライフルはライフル自体がエネルギーチャージをするタイプで本体のエネルギーを消費しない。その上"未完成"故にフル出力は出せなかった…だが今回、彼女は機体のエネルギーをライフルに回して発射した。本来なら"あり得ない"出力のビームをだ。

 

「ーーーガッーギーーーーグォ」

 

ビームによって熱せられた全身の装甲から煙を吐き出しながら苦しそうに膝を突き倒れるのだった。

 

「おかしい…」

 

「そうだね…」

 

「なにがだよ…」

 

解せないとばかりに倒れたブレイドを見るラウラとフィーリアに対して一夏は分からずに聞き返す。

破壊された腕や腹部からは機械が飛び出している。無人機という見解は正しかったのだろう。だがこの違和感はなんだ…。

 

「コイツが本体じゃないのか…」

 

戦闘の途中からブレインが急に弱体化したのだ…我々に比べれば微々たる者だろうがラウラはそれを見逃さかった。

 

「まだまだ終わりそうにないねぇ…」

 

ラウラはIS学園全体を見やりながら視線を鋭くする。そんな様子を知ってか知らずかブレインはまるで面白い者を見るかのようにモノアイをゆっくりと動かすのだった。

 

 

 

 




大して反撃できていないという現状。
そして詰め込みすぎておかしくなってないか不安です…こればかりは書いている自分には分からないですねぇ。
そろそろ宣言とブレイン戦をしたいですね。

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