「サラダーン停泊ポイントまで残り5分、二番隊第七から第九部隊は発進せよ!繰り返す発進せよ!」
「了解した!行くぞ!!」
「「「了解!」」」
学年別トーナメントの試合が始まる30分ほど前、革命軍準旗艦サラダーンから海中戦力が投入された。機種は兵士それぞれの扱いやすさを重点に置いているためにバラバラだ。
隊長であるゼー・ズールに続いてズゴックにアッガイ、ザクマリナー、グーン諸々が続いていく。無人機型のカプールもその後に続きIS学園に進行していく。
「甲板、MS電磁カタパルトスタンバイ!」
「了解!電磁カタパルトに配電開始します!」
「艦長、後は頼むぞ…」
「了解です、総帥!」
ユイトがブリッチを去る際に艦長は敬礼をして見送った後、部下たちに指示を飛ばすのだった。
「MSエレベーター起動、各機はカタパルト位置へ」
格納庫からせり上げられたMSは目の前にあるカタパルトに自身の機体の脚を固定させる。最初に出撃るのはケイを含む隠密部隊だ。
「アストレイゴールドフレーム天ミナ、進路オールグリーン…発進どうぞ!」
「坂下ケイ、天ミナ出るよ!」
レールガンの如く打ち出されたケイは急激なGに顔をしかめるがその勢いを殺さずに目的地に向かう。
「デスサイズヘル…カリナ…でる」
「ブリッツはニコラで行かせて貰いますよ!」
「ストライクノワール…スワンで行きます」
「ブルデュエル、ニックスで出ますよぉ」
「ヴェルデバスターはパティシアで行きます!」
合計6機のMSを発進させると休む間もなく次の機体たちが運ばれていく。次は二番隊の通常戦力、ティターンズ系のMSを主に扱っている部隊だ。
「バーザム、マラサイ、ギラ・ドーガ…カタパルトスタンバイOK!射出!!」
「続いてガブスレイ、ギャプラン、ハイザック射出!」
次々と艦載機が発艦していく中、ついにウイングゼロが甲板に姿を現した。
「ウイングゼロ及びデルタカイはカタパルト位置へ!」
「護衛機はないからな、上手く立ち回れよ…」
「了解です、御武運をお祈りいたします!総帥!」
「あぁ…ウイングガンダムゼロ、花柳ユイト…出撃する!」
「ガンダムデルタカイ…クリア…行きます!」
二人が発艦するのを作業員ブリッチクルー含めて敬礼で送る。その後に続くのは総帥直属の親衛隊だ。
「カラミティはナナが行きまーす!!」
「フォビドゥン…シーレで参ります…」
「レイダーはトウカで出させて貰います…」
「城崎シュリ、メリクリウス」
「城崎シュン、ヴァイエイト」
「「出撃します!!」」
全機の発艦を確認すると空母は方向を転進しその場で停止するのだった。
ーーーー
IS学園沿岸部
打鉄7機と専用機が1機で構成された部隊は学園を守護するためにそれぞれ単独で配置されていた。
「こちら7番機、異常ありません…」
「了解、次の定時連絡は5分後です」
「本当に来るのか?」
7番機のパイロットは周囲の海を見渡しそう呟いた。IS学園は戦力だけで言えば世界最高峰レベルだ。そんな所を襲ってくる奴の頭が知れない…。
「ん?」
そんな事を考えていると7番機の打鉄の脚に何かが巻き付いた。
「ワイヤー?」
打鉄の脚に取り付いたのはザクマリナーの曳航用マグネットハーケン…つまり彼女の敵である。
「ッ!!」
「どうした!?」
言葉を発する間もなく彼女は海に引きずり込まれ姿を消した。それをたまたま見ていた八番機のパイロットが異変を察知し通信で叫んだ。
-推奨BGM《LAPLACE》ガンダムUC-
「敵襲!!」
自衛隊の無線に緊急コールが鳴り響き各自が八番機を除いて空を警戒する。当然の判断だ、対IS戦の訓練を積んできた彼女達は皆そうするだろう。
ISは基本、海による作戦行動は好ましくない…パイロットの酸素を維持するためにシールドバリアーで海水の侵入を防がなければならないゆえに通常よりエネルギー消耗が激しいからだ。
だからこそ、作戦行動を起こす前に海中に居るのは不自然なことだった、だがMSは違う。本来水中用に作られた上に全身の装甲で空気を確保する…シールドバリアーを消耗しなくていいのだ。
「海中から!?」
海中から姿を現したゼー・ズールに対して、虚を突かれた三番機は振り下ろされたヒートクローの一撃を躱せなかった。
「海中から来るぞ!」
「水陸両用の機体だと!」
「海に引きずり込まれるなよ!!」
守備隊は文字通り大混乱、自身の身を守るだけで精一杯だった。巨大な水柱が上がるとズゴックが腕部のクローからビームを撃ち放ちながら上陸すると近くに居た打鉄四番機の刀《葵》とクローが激しくぶつかり合う。
「クソッ!護衛艦は何をしていた!?」
愚痴を漏らす四番機のパイロットだったが現在、護衛艦のブリッチも大混乱に陥っていた。
「なぜソナーで見つけられないんだ!」
「ソナーは正常です!原因は不明!」
「ソナーに感あり!敵機影らしきもの本艦の真下に数機確認!」
「真下だと!?」
艦長は驚愕する。どうやってソナーに気づかれずに真下まで接近されたのか、そんな事はいい…問題は敵機がこちらに向かっているということだ。
「喰らえ!」
イージス艦の真下に接近したアッガイとザクマリナー、グーン等の5機はそれぞれMS用特殊魚雷を発射し、その魚雷は艦艇に直撃する。
「艦艇部破損!穴が開きました!」
「スクリーンシャフトが折れました!航行不能!」
「何もせずに!!」
「艦長!二時の方向!!」
苦悶の表情をしながら叫ぶ艦長はオペレーターの言葉と共に二時の方向を見る。ゾックが海面から顔を出し、前面に装備された四門のメガ粒子砲を艦橋に撃ち放つのだった。
「総員退……」
ブリッジを撃ち抜かれたイージス艦は指揮官を失い第二波の魚雷攻撃により轟沈する。一方、最初に海に引きずり込まれた7番機は、海中でとある敵と会敵していた…元少年兵の操るアビスとだ。
流石は日本の精鋭、水陸両用として開発されたアビスに対して何とかその攻撃を凌ぐのだったがもはや限界…。
「このままではやられる!!」
「ごめんねぇ!強くてさぁ!!」
突き出されるビームランスに貫かれ悲鳴すら上げられず海中で命を落とした。装備されたスラスターが爆発し海上に巨大な水柱を上げる。その水柱を利用したアビスは沿岸部に上陸する。
「敵の増援だ!」
「ウルサイよ!喰らえ!!」
「「ぐわぁ!!」」
装備されたカリドゥス複相ビーム砲と 3連装ビーム砲2門が火を噴き、打鉄2機が吹き飛ばされる。
「これ以上はさせん!」
「やってみなよ!!」
上陸したアビスと剣を交えたのは日本代表の楠木中佐だった。およそ目に止まらないほどの軌道でビームを避けながら、得物である舞桜を振るう。
「隊長!うぁ!!」
数的にも性能的にも劣る守備隊は、日本トップクラスの腕前を持つとはいえ次々と追い込まれていくのだった。
ーー
IS学園第五アリーナ、三年生のトーナメント戦が行われていた会場にも機体がシールドバリアーを突き破り侵入してきた。
「なんだ!コイツは!?」
「ターゲット、レイン・ミューゼルを確認…排除する」
カリナのデスサイズヘルはマントのように体を覆っていた装甲を展開しビームツインサイズを構える。ダリル・ケイシーはヘルハウンドVer2.5を構えさせ迎撃態勢を整えるのだった。
ーー
「好き勝手にやってくれちゃって!」
楯無は自身のISミステリアス・レイディを展開して近くにある第五アリーナに向かおうと飛翔するが、襲いかかったビームに思わず止まる。
「主の命により貴方をここで排除します」
「こっちにも刺客を向けられたか…」
学園の屋上に立つストライクノワールを見た楯無は冷や汗をかきながらその機体を見る。
(なんて殺気…ただでは済みそうにないわね…)
「1機だけじゃなかったりしてねぇ!」
「主のために、この世界のために貴方は邪魔なのです!」
楯無の退路を塞ぐように背後に現れたブルデュエルとヴェルデバスターは、それぞれの得物を構えて戦闘態勢に入る。
「あぁ…また病院は嫌だなぁ…」
弱気な言葉を吐きながらも楯無は蛇腹剣を展開し3人を睨みつける。
「お姉さんは全力で行くわよぉ!」
そう言って楯無は「麗しきクリースナヤ」を発動させる。赤い翼を広げたユニットが接続され超高出力モードになり、綺麗な蒼色のアクア・ヴェールの色が攻撃的な赤に変わる。
エネルギー的な問題で時間を気にしなければならないが、数的に不利な状況を打開するためには使わざる得なかった。
「学園最強の名は伊達じゃないことを教えてあげるわ!」
そう言って楯無は機体を突撃させるのだった。
はなっから全力の楯無と狙われたダリル…無人機を相手取る一夏たち。他の代表候補生たちはどう動くのか?
ついに始まる本格戦闘…その時、伝説が動き始める。