IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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今回はblacksideとschoolsideのごっちゃです。




第十革 波乱の学年別対抗戦ー始動ー

 

学年別トーナメントの1週間前。

 

IS学園の端、港として機能している施設に5機のISが舞い降りた。それを追うように2機ほどのヘリがヘリポートに降り立つ。

それを迎えたのは織斑千冬だった。

 

「要請に応えて貰って感謝する」

 

「なに、各国の代表が集まるんだ…これが本来するべき行動と言うべきだろう」

 

待ち構えた千冬と親しげに話すのは彼女と引けを取らない美貌を持つ女性だった。彼女の名は楠木アキ、日本自衛隊富士教導部隊部隊長であり、千冬の後を継いだ日本の代表である。

 

「当日には更に日本政府から3機が回される」

 

「ありがたい」

 

千冬は前回行われたクラス別トーナメント戦の際に起きた事件を理由に日本政府に対してIS学園の警護を申し出ていたのだ。今回の大会は各国の政府関係者が来賓として多く招かれているのでその護衛も兼ねて政府は二つ返事で応答した。

各国の政府関係者ももちろん自前で警護を着けているが日本政府の直属部隊が警護っという建前も必要なのだろう。

 

「日本が保有するIS10機の内、8機も回してくれるとはな」

 

「ここだけの話、政府は"奴らの"技術力に感心を示している」

 

「IS学園はエサという訳か、しかし軍部の上層部は女性主義団体が抑えている…ISならざる物を彼女たちはどう判断するか…」

 

「無論だな…」

 

女性主義団体、元々は男女平等を訴える世界規模の平等運動団体だったが今やISの権威にすがる寄生虫、この二人はそのような彼女たちを下卑していた。

 

二人が話していると千冬と同い年くらいの男性がアキと千冬に向けて敬礼した。二人はそれを帰すとその者の話を聞く。

 

「戦闘オペレーターとして配属された小原光一です、IS学園内に指揮所を設置したいのですが」

 

「それだったら彼女に聞いてくれ」

 

光一の言葉に千冬は真耶を指差して答えると彼はすぐに立ち去る。

 

「いい眼をしていたな」

 

「もと空軍のエースパイロットだ…ISが出てきてからは空軍の予算はないも当然だからな…上層部は空軍の希望の星になるのが嫌だったんだろうな、今や戦闘オペレーターだ」

 

「ほぅ…実戦経験のあるオペレーターは優秀だ、良く見つけたな」

 

「まぁな…」

 

小原光一、悲劇の運命を辿っていた彼は後に歴史に名を残すこととなるがそれはもう少し後の話。

 

ーーーー

 

その頃、アメリカ軍IS管理局、局長室にとある二人の人物が訪れていた。

 

「貴方たちが我々の救世主ね…見たところヨーロッパ系だけど」

 

管理局長であるフランは銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の強化に様々な手を加えていたがそれは全て無駄な徒労に終わっていた。

銀の福音自体がアメリカとイスラエルでの合同開発であり最新技術の塊なのだ。それをいきなりもっと性能を良くなんてうまい話が出て来ないのは世の常である。

だが彼女の目の前に立つ二人の男女はは堂々としたようすでフランを見ていた。

 

「名前は?」

 

「僕の名はリヴァイブ・リヴァイバル…彼女はアニュー・リターナー」

 

薄紫色の綺麗な髪を持った二人はまさしく美男美女、とても開発者に見えなかったが使い古した白衣を着てる時点でその疑問は解けた。

 

「双子なのですか?」

 

「えぇ、家は分かれましたが」

 

二、三質問をした後、現在は特に害はないと判断した彼女は話を進めるように促す。

 

「話を聞きましょう…」

 

「先程お見せ頂いたデータから見ればその機体はほぼ完成していると見て間違いないでしょう、現在の状況で機体自体に手を加えるのはあまりよろしくありません」

 

リヴァイブの言葉は今、彼女が陥っている状況を射止めたかのように正確な解釈だった。

 

「なので私達は中の方、システムによる機体強化を提案します」

 

「システム面?」

 

アニューの言葉にフランは納得と同時に疑問の声を上げる。OSは既に専用のものがある、必要だとはお前なかったからだ。

 

「機体の行動の効率化ではなく、機体性能をカタログスペック通りにはじき出すためのシステムですよ」

 

「確かに…カタログスペックはあくまで機体の性能数値、操縦者次第で上下してしまうのは仕方のない事よ」

 

「いえ…私たちのシステムは操縦者の優秀がどうかに左右されないためのシステムを開発したのです」

 

「なるほど…」

 

フランは気が付けば二人の話しを夢中で聞き続けた。それが自身の首を絞める事になっているなんて知らずに。

 

「それがEXAMシステム…」

 

「EXAMシステム?」

 

「はい、操縦者に催眠的なものを掛けて秘めたる潜在能力を解放させる…それがEXAMシステムです…ちなみにシステムはこのアタッシュケースの中に…」

 

先程から持っていたアタッシュケースをフランの机に置くと静かに解錠し開ける。そこには《EXAMシステム》と記載された機械があった。

機械中央にあるガラス窓の様なところからは真っ赤な光が漏れ出ており危険な香りがしたがそんな事は彼女とってどうでも良かった。

 

「素晴らしい…金はいくら欲しい?いくらでも出してやろう」

 

「ではこれで…」

 

差し出されたメモには五千万ドルと言う文字が記載されていたがこれを見たフランは疑問に思う。

 

「これだけでいいのか?」

 

「えぇ、指定の口座にお願いします…今日中に…」

 

「分かった…」

 

「それと出来ればで良いのですが…IS学園で開催される学年別トーナメントの観戦権を貴方の代理という形で頂けないでしょうか?」

 

その言葉を聞いてフランは納得した。新たなる技術進歩のためには他の技術を知っておく必要がある。これが本命か…。

 

「いいだろう、お前たちには大きな借りが出来た…私の指名で代理を寄越すと連絡しよう」

 

元々行く予定のなかったIS学園へのチケットで銀の福音は大幅に強化されると思えばなんてお得な話だろうか…彼女はなんの疑いもなく承諾してしまった。

 

ーーーー

 

フランとの交渉の後、リヴァイブとアニューは基地を離れ予約したホテル部屋に辿りつくと抑えるように笑い始める。

 

「いや~、本当にばかっすね」

 

自身の顔に手を当てると顔の表面がポロリと落ちる、それはお面のようなものでその中から出てきたのは革命軍の技術主任、カゲトとケイニだった。

 

「上手くいったわね!ダーリン!」

 

「ダーリンじゃないっすけどね…」

 

先程のお面のようなもの、あれはカゲトが趣味の領域で作った変装用具だ。そのお面を着ければどんなガンダムキャラクターになれる、付属のスーツを着れば身長や体型も表現できお面に仕込まれた変成器を通して声や口調すらオートで調整してくれる。

 

「これで堂々とIS学園に侵入出来るしB4シリーズの動きを間近で見ることが出来るっす!」

 

「もしもの時は私が居るしね!」

 

「その時は頼むっすよ」

 

「私は貴方の剣であり楯である…あの時…私にしてくれたように、今度は私がやるばんよ!」

 

「ケイニ…」

 

久々にまともなことを言った彼女を見て感慨深そうに頷くカゲトだったがそんなものはすぐに消えた。

 

「ねぇ、ダーリン…せっかく同じ部屋なんだから…お風呂とベッドでしっぽりと…」

 

「あぁ…隣に別室を用意してあるからいいっす…」

 

「えぇ!!早く作らないと!次期王子か姫を!」

 

「まだ!速いっす!!あと十年以上はいらないっす!!」

 

カゲトの腰に掴まり離さないとばかりに抱きつくケイニにそれを引き剥がそうと必死になる彼だった。

 

ーーーー

革命軍本部、空母格納庫。

 

「物資確認よぉし!」

 

「各部異常なぁし!!」

 

「サダラーン、出航する…目標はIS学園より沿岸部二十㎞地点」

 

看板にデスサイズヘルやゼー・ズール、ズゴックが立ち警戒する中、空母がゆっくりと進み始める。

空母が出航すると艦長はチラリと後ろを見る、そこには革命軍の総帥、ユイトとクリアの姿が彼は不敵に笑いその笑みを隠そうとしない。

ついに世界にケンカを売るときが来た。そう思うだけで艦長は久々に武者震いが起きるのを実感していたのだった。

 

ーーーー

 

「随分この学園も物騒になったねぇ」

 

「そうですわね、まぁ前回の事件があったので敏感になるのは分かりますが」

 

IS学園の廊下を歩いていたフィーリアとセシリアは窓の外に見える風景を見て呟いていた。

いつもなら綺麗な夕陽の海が眺める窓からの風景に無骨な軍艦が警戒に当たっており自衛隊の打鉄が飛び回っている。

深夜の時間帯では軍人たちが敷地内を世話しなく歩き回っているのは丸分かりだ。

 

「ん?なんだこりゃ?」

 

「どうしましたか?」

 

廊下に張り出された掲示板に《重要》と書かれた紙が掲示されていた。今さっき張られたようで画鋲がイマイチ上手くとまってない。

 

「トーナメントの申込用紙だ…なになに、トーナメントの参加は原則として二人一組の参加とする、なおタッグが組めない場合抽選で決定し…へぇ二人一組かぁ…セシリア?」

 

フィーリアが振り返るとそこにはもうセシリアの姿がなく気品やプライドを殴り捨てた全力疾走で廊下の先に消えていくのだった。

 

「あぁ…一夏のとこに行った訳か…そう言えば優勝者には一夏との交際権利だったけ?人権なさ過ぎでしょ」

 

夕陽が眩しい中、彼女は良さそうなパートナーを思い浮かべる。

 

(一夏大好きーずは一夏のもとに行くだろうそして困った彼は同性のシャルルと組むはず…セシリアと鈴は意外と仲がいいので出来るし…箒かラウラ辺りが…)

 

「おい、フィーリア…」

 

「ん?」

 

思考の海に浸っていたフィーリアに話し掛けたのはラウラだった。

 

「ちょうどいいから私と組め」

 

「いいけど…」

 

申込用紙を眼前に突きつけられたフィーリアは二つ返事で承諾すると持っていたペンでスラスラっと名前とサインを書く。

 

「よし、では職員室まで行くぞ」

 

「う、うん…」

 

キリキリと行動するラウラに必死について行くフィーリアは少しばかり置いて行かれながらも追いかけるのだった。

 

(フィーリア・スタンシー…必ず化けの皮を剥いでやる…)

 

着いてくるフィーリアを横目で見ながらラウラはそう決心する。オーストラリア政府が怪しいと睨んでいたラウラはその先兵である彼女を入学以来出来るだけ監査していた。だが彼女は決して怪しい行動を取らなかった。

 

(ならそうせざる得ない状況を作るまで…)

 

ラウラの眼光が鋭くなるのを感じたフィーリアは今までに見せたことのない悪い笑みを浮かべていたのは誰も知らないことだった。

 

 

 

 

 

 

 






次回はついに学年別トーナメント戦に突入します。さて一体どんな波乱が待っているのか…楽しみです。


捕捉

EXAMシステムは原作のEXAMシステムとは少し違います。詳しい内容はその後の本編で。


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