ロシア、最大の情報管理施設を持つ基地に革命軍が襲いかかっていた。
「クソッ!」
「なんでコイツらここに!」
対空設備は破壊され防戦に当たっていた兵士や戦車はいとも簡単に薙ぎ倒される。
ハンブラビがフェダーインライフルで基地司令部を潰すと指揮系統を失った兵たちは撤退を始める。基地内の隔壁を破壊し最重要区画である情報管理室に侵入したハルトはコンピュータにフロッピーを差し込む。
「奴ら情報管理室に!!…グワッ」
駆け寄ってきた兵士は護衛のガブスレイ2機にビームライフルで蜂の巣にされて絶命する。
「これでよし…」
ハルトはシステムの浸食を確認するとフロッピーを取り出し懐にしまう。
「撤収するぞ…多少の目撃者は残しておけよ…」
「ハッ!」
基地の周りを警戒するハイザックとマラサイ、バーザムは逃げる兵士を殲滅を始める。現時点で多数の目撃者は避けたいからだ。
ーー
「………」
雪が積もる森林の中、仲間たちの悲鳴がこだまする。たまたま休憩中で司令部に居なかったオペレーターの女性は寒さに震えながら雪の中に埋もれていた。
ガシン…ガシン……
鋼鉄の人が雪を踏みしめながらモノアイを動かす、赤く塗装された機体の後ろ姿を見ながら彼女は息を必死に抑えていた。
すると何かしらの連絡が入ったようでその赤い機体は突然、スラスターを吹かし空に飛んでいったのだった。
「助かった…」
体が冷えきり凍傷まるけの体で彼女はホッと安堵の表情をする。しかし体力がもうなかったのか彼女はその雪の中で二度と動かなくなってしまった。
ーー
「こちらは片付いたぞ…」
目的を終え基地から去るハルトは通信機を起動させて別行動しているリョウと通信を繋げた。
「こっちも終わってるよ…相変わらずの胸くそ悪い状況だぜ…」
「そうか…第三者から見たら我々と向こう、どちらが悪に見える?」
「こんな時になに言ってんだ?」
突然の言葉に流石のリョウも困惑するがハルトは気にせず話を続ける。
「ただの言葉遊びさ…大量殺戮者とマッドサイエンティスト…面白いと思ってな」
「勝手に言ってろ」
真底どうでもいい話にリョウは投げやりな返答で返す。ハルトはそんな返答に気分を害することなく話を打ち切った。
「まぁいい…空母で合流しよう……彼女たちも大変だろうしな」
「分かったよ…」
「空母に急げよ…」
「了解です」
通信を切ったハルトは部隊に指示を出すのだった。
ーーーー
ロシアの基地襲撃から翌日。
襲撃事件の話はもちろん他の国の首脳部たちに伝わり各国のIS管理局は騒然とした。それはイギリスのゴルドウィンも同様だった。
「アメリカの特殊部隊壊滅の噂の次はロシアの情報管理基地か…」
「奴らは世界大戦でも起こそうと言うのでしょうか?」
「否定できんのが事実だ…」
世界の大国に対して完全にケンカを売っているやり方にゴルドウィンも流石に敵の意図を計りかねている。
「この件もあって各国は諸外国への警戒を強めている…我が国も例外ではない」
「突然の判断でしょうね…」
ゴルドウィンの言葉にイルフリーデも同意する。これほどの事を成せる奴らのバックにはどこかの国があるのと考えるのは当然の反応だろう。
「そして学園の件だが…」
ロシアの基地襲撃の報と同じタイミングで来たのはIS学園にUNKNOWN機体が乱入すると言う事件だった。時間軸で言えばIS学園の方が先なのだが正直、それどころではなかったというのが現状だ。
「IS学園の件、セシリアの報告は受けていませんが学園の正式発表によると赤い機体が乱入したと」
「まさか…」
「はい…あの列車事件の機体と容姿が類似していました…恐らくその機体の発展期だと思われます」
「そうか…」
急に口数の少なくなったゴルドウィンを見て(元々少ない)イルフリーデは同情する。セシリアの気持ちを考えた時にどう思えばいいか分からないのだろう。
「そう言えばもうすぐ学年別対抗戦があったな…我々も行く」
「はい、席も取ってあります…」
「イルフリーデ」
「はい…」
「許可は私が取る…ロンゴミニアドを搭載していけ」
「なっ!」
ゴルドウィンの言葉にイルフリーデは絶句する。イルフリーデの機体の装備の一つであったランスの
「奴らが来るとでも言うのですか?…それでも!」
「お前の機体を開発するためにも奴らの技術がどうしても必要なのだ…」
ロンゴミニアドの効果はアンチIS兵器、つまり絶対防御キラーなのだ。つまりパイロットを殺すためだけの能力。
ISと言う兵器は一応スポーツ競技の道具として表では扱われているためにこの能力は最も禁忌するべきものなのだ、他国に知られたらこれを奪おうとする勢力が出てくるかもしれない。
「確かに《ビギナ・ロナ》を完成させるためには現存の技術力では不可能ですが…」
「ISを超えるISを向こうが持っているのならそれを我々は勝ち取らなければならない…ビギナ・ロナをISとして完成させるのは不可能だと私は悟ったのだ」
「そのために…あの槍を使うと…」
「人が進歩するために流血を避けられないのは歴史が証明していることだ」
「分かりました…」
ゴルドウィンの覚悟にイルフリーデは折れたようで了解の意を示すのだった。
ーーーー
クラス別対抗戦から三日後。
革命軍総帥である花柳ユイトは本部にて用意されたマイクを握っていた。
「アメリカ、ロシア、イタリアと我々はこれまでよりも一層に活動を続けてきた…それはなにを意味するか、それは耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだ諸君らが待ち焦がれた日が来たからだ、諸君らに深く感謝を陳べたい」
本部中に流れる放送に全員が耳を傾ける。先程空母で帰還したリョウ、マドカにハルトも同様だ。
「次の目標はIS学園!学年別対抗戦にて亡国機業を殲滅し、代表候補生を叩き潰す!我々の力を示し世界に宣戦を布告するのだ!」
「「「おぉ!!」」」
ユイトの宣言と共に沸き立つ観衆、その声も無線を通して響き渡った。
「作戦の第二段階に入ったすか…」
「本当にするの?カゲト…」
ガルダで再び無人機を取り入っていたカゲトとケイニは無線を聞きながら話す。珍しくマジメなケイニに驚きつつカゲトも答える。
「そのために今まで動いてきたっすからね…」
「私はこの作戦嫌いよ…特に第四なんか……」
「これが最善なんすよ…」
静かにつぶやくカゲトの姿はどこかの悲しげに見えた。そんな様子のカゲトにケイニはなにも言えずに彼の左腕を抱きしめる。
何も言えない自身が腹ただしい、それはユイトの後ろに居るクリアも同じ気持ちだった。