IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第七革 二人の転校生 -black side-

「7機着艦するぞ!甲板の作業員は退避!」

 

甲板で作業を行っていた作業員は急いで逃げるとアドヴァンスドジンクスが2機着艦したが二機目はGNコンデンサーが不調のようで転がるように着艦した。

 

「大丈夫か!?」

 

「医療班!急げ!!」

 

続いてアルケーとMK-Ⅴでジン強行偵察型3機。その中の1機は無人機に殴り飛ばされたせいで途中から上手く飛行できず他の2機に支えられての着艦となった。

 

「随分と手酷くやられたモノだな」

 

「国家代表が介入してきたんだぞ、アイツらには荷が重すぎる」

 

甲板でリョウを迎えたハルトは小言を漏らすがすぐに反論する。

 

「モニターで観戦させて貰った…分かっているだろう、この世界の衛星カメラは我々の支配下だと言うことは」

 

「う…」

 

「よくもまぁ、介入してくれたモノだ」

 

「あれは私のミスだ、リョウは関係ない」

 

「マドカ…」

 

アリーナ内で暴れ回っていたことをハルトは知っていたようでそれについて言及しようとした彼を止めたのは意外にもマドカだった。

 

「まぁいい…この船はロシアに予定通りに向かう…そっちでも働いてくれ…」

 

「分かった…」

 

怒る気が失せたのかハルトはマドカを一瞥するとブリッジに戻っていった。

 

「ありがとな…」

 

「借りを返しただけだ…出して貰えたのはおまえのお陰だと総帥から聞いているからな」

 

「ユイトかぁ…」

 

どうやら彼女自身、ほどこされた恩はしっかりと返す人のようだ。怒られずにすんだリョウはホッと胸をなでおろす。ハルトの説教は無駄に長いから嫌いなのだ。

ちなみに一番怒らせたくないのはユイトだ…普段はあまり怒らない奴だがキレるとクリアしか止めれないのが難点だ。

 

「今度、外に行ったときに飯でも奢ってやるよ…」

 

「ではオムライスをいただこう」

 

「オムライス好きなのか?」

 

「本部にいたときに子供たちが美味しそうに頬張っていたのを見たのだ」

 

「分かったよ」

 

そう言ってリョウは艦内にゆっくりと入っていく、その後ろをマドカは黙ってついて行くのだった。

 

ーーーー

 

オーストリア岩隗地帯、ここは危険地帯として政府が立ち入りを禁止している巨大なエリアだ。無数に張り巡らされた坑道は不安定で落盤の可能性が極めて高かった。

 

「総帥、技術主任…よくお越し下さいました」

 

その岩隗地帯一帯を要塞化したのが二年ほど前、現在は革命軍最大の開発量産施設として稼働している。

 

「あぁ、ご苦労基地司令…さっそくで悪いのだが」

 

「はい、新兵用のMSは準備しております」

 

「頼む」

 

「了解しました」

 

新人パイロット、整備員、その他諸々の550人ほどの人員を短時間かつ長距離、簡単に輸送できるほどの手段を革命軍は持っていた。

ガンダム界でも超弩級と呼ばれた大型輸送機…いや、空中要塞と呼ぶべき飛行兵器。ガルダと呼称された革命軍の唯一にして主力航空戦力だ。

搭乗最大人数は1000人から2000人とされる…開発のチートを持ったカゲトが割ける人員を全力投入して半年かけて作った怪物級の輸送機だ。

 

「行きましょ…ア・ナ・タ…」

 

「その言い方はどうにかならないっすか…」

 

助けの目を寄越してくるカゲトをユイトは全力で無視して連れてかれる新人に続いて歩いていくのだった。

 

ーーーー

 

「おぉ、すげぇ」

 

「あれ見ろよ!アレ!」

 

格納庫を見渡せる場所に案内された新兵たちは歓喜の声を上げる。そこに鎮座していたのはザク、グフ、ドムにゲルググとだった俗に言うファースト勢だ。

 

「ファーストの機体はとにかく派生が多いっすからね、個人にあったバリエーションが作れるという点ではこれほど適した機体たちはいないっす」

 

「確かにな…」

 

今回の新人たちは革命軍が一から戦闘を教育してMSの操作を教え訓練させたと言う点では初めての奴らだ。カゲト自身、機体選びに慎重になるのは分かる気がする。

 

「各自、指定された機体に登場後…機種転換訓練を行う…各自かかれ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

ーーーー

 

それから数時間後、新人パイロットたちは演習場で演習を行っていた。75対75、大規模戦演習だ…来るべき戦いのためにも大規模戦演習はやっておかなければならない。

 

オーストリアの一角と言っても広大な大陸の一角だ。演習場だけでもかなりのスペースが取れる、さらに基地自体も地下に沈んでいるために大規模戦演習でも広すぎるスペースだった。

 

「さて…どうするか?」

 

赤チーム、総隊長を務めることになった少年。橘正樹はマップを確認しながら話す。

この演習場は左右中央とも地形が違い中々おもしろい事になっている。

右は小さな岩山がいくつも存在し視界の悪い地帯、中央は平原で視界が良すぎる、左は元採掘場の施設が立ち並ぶエリアで視界はまぁまぁ悪い。

 

「ザク10機ほどを中央エリアで正面突破、右ルートから足の速いドムで攻め込むでどう?」

 

「相手も分かってるだろ」

 

「それも囮だ…本命は左ルートの本隊が攻め込む」

 

様々な意見が通信を行き交う。片軍だけで75人もいるのだ意見がまとまらないのは当然だろう。

勝敗は片方が全滅するかフラッグを取るかの二択だ。

作戦行動開始まであと10分、それまでに作戦を決めなければならない。

 

「左ルートは施設が密集してる…大勢で行くと足手まといになるだろ?」

 

「バカ!守備隊も置いてけよ、なんで攻撃一辺倒になってるんだよ」

 

「攻撃と防衛は半々でいいんじゃね?」

 

「ゲルググどうするんだよ、12機しかいないんだぞ」

 

「それも半々でいいじゃ」

 

「いや、防衛に10機まわせよ」

 

「馬鹿野郎、攻撃は最大の防御だろ?」

 

「防御は最大の攻撃なんだよ」

 

「けんかすんなよ!指揮官は俺だ!!」

 

最高性能を誇るゲルググの取り合いでけんか腰になってきた隊員を正樹は必死に抑える。

そこにいたグフなんかフィンガーバルカン撃ちかけたがドムに殴られて倒れる。

 

ーー

そんな様子をモニターで観察していたカゲトは少しだけ笑う。

 

「バラバラっすね…」

 

「実戦を経験すれば嫌でも纏まるさ…」

 

「何気にユイトって怖いこと言うすっよね」

 

「そうか?」

 

そう言いながらユイトとカゲト、ケイニにクリアは日本のお茶を飲みながら話していた。転生後は日本にあまり訪れていないがフッと恋しくなるものがある。

 

「ユイト…」

 

「あぁ、ありがとう…」

 

クリアはご丁寧に包み紙を取ってから饅頭をユイトに渡す。その様子は良くドラマとかで見る夫婦のようで見ているとなんか落ち着くものをあの二人は持っていたのだった。

 

「私はベットまでオーケーだけど旦那様?」

 

「ケイニはもう少し自重して欲しいっす…」

 

「自重したら優しくしてくれる?」

 

「なんとも言えないっすね」

 

「キツいダーリンもステキ!」

 

「………」

 

カゲトのため息は誰の耳に届くことなく戦闘開始の狼煙が上がった。

 

ーーーー

 

中央エリア…赤部隊の囮であるザク10機が小走りで進軍していた。飛ぶことも出来るが撃ち落とされては面倒だ。

 

「俺たちはここらでウロウロしてたらいいのか?」

 

「チャンスがあればフラッグを奪うんだよ、それが出来りゃ総帥に目をつけて貰える」

 

「なるほどなぁ…ッ!」

 

進軍していたザクの最左翼のザクが突然飛来したバズーカ弾頭をとっさにシールドで受けた。

 

「敵襲!」

 

「ドムかよ!」

 

囮部隊は突然現れたドムの対して迎撃するがまるでスケート選手のように地面をかけるドムに対して有効打を打てずにいた。

ドムの機動力はこう言う広い地形で生かされる。その点を見れば相手チームの方が上手であった。

 

「敵機接近!走行音からしてドム2にザク1、でも金属反応は五つだ」

 

「どう言う事だ!」

 

言っている内に敵部隊が接近し目視圏に入る。そこにはザクを背負ったドムの姿があった。

 

「マジかよ!?…グハッ!」

 

驚きの光景に驚いた最右翼のザクは先ほどからいたドムのバズーカ弾頭に直撃し機体が真っ青なペイントに覆われる。

 

「やられた…」

 

ーー

 

右ルート側も赤部隊の劣勢となっていた。敵の防衛線に侵入したのは良いものの待ち受けていたグフ部隊によって苦戦させられていた。

視界が悪く逃げ場が少ない右ルートはグフのような接近戦に特化した機体が得意とする場だ。

 

「クソッ!3番機がやられた!」

 

ジャイアントバズーカがペイント刃によって真っ青になるとそれを捨てヒートサーベルを抜き放ちつばぜり合いが発生する。

 

「パワーも機動力もあるけど…ヒットボックスがデカいんだよ!」

 

胸部の拡散ビーム砲をきらめつかせ目眩ましにすると隙が出来たグフを切り裂くのだった。

 

左ルートも劣勢、上手く隠れて立ち回る敵に対処がしきれず逆にジリジリと後退せざる得なかった。

 

ーーーー

 

「赤チームは押されてるな…」

 

「よく言うっすよ…青チームに元少年兵を混らせてるくせに…」

 

「そう言うなよ…数会わせさ…数会わせ…」

 

モニターで苦戦する赤チームを片目に話を続ける二人は本当に楽しそうな顔をしていた。

 

ーー

 

一時間後…。

 

真っ青なMS隊がゴロゴロと転がっていた。そして演習終了の狼煙が上がる。

 

「全滅の狼煙だな…」

 

「………」

 

「起きろバカ!」

 

「イテっ!」

 

するとやられた役のMSたちが立ち上がり関節を動かす、人によっては1時間ほど寝転がっていた者もいる。関節をが痛くて仕方ないだろう。

 

「諸君、ご苦労」

 

「総帥!」

 

中央エリアの平原に降り立ったのはウイングゼロとデルタカイ…それを見た全員はそろって駆け寄る。

 

「どうだった?」

 

「はい…上手くいかないものだと…そして恐ろしくありました…これが実戦だったらと…」

 

「その感じ方でいい…勝った方も負けた方も被害は必ず出る…それを防ぐことなど不可能だ……窮地に陥れば自身のことで精一杯なのは仕方のない事だ」

 

楠木正樹の言葉にユイトは満足したように頷くと話を始める。

 

「だから強くなれ…自分の身を守れるように…そして後悔しないようにな…」

 

重みのある言葉に全員が黙り込む。実際、ユイトはそれを経験した…転生直後の少年兵時代にだからこそ言いたかった。

これから殺し合いの戦場に出向く彼等に…。

 

「二時間後にガルダが出立する…各自の機体を機内に積んでおくように」

 

「「「「了解!」」」」

 

しんみりとした空気を打破するようにクリアが声を上げて指示を出す。その言葉に全員が慌てて行動に移して移動を開始するのだった。

 

ーーーー

 

ガルダの巨大なプラットフォームは小さくなったMS用に改造され一階と二階で分けられた様な構造になっている。本来は巨大な格納庫の中間ぐらいの高さに床を設置することでMS搭載数を増やしているのだ。

 

「無人型ガザC及びDと無人型ドラッツェは一階のプラットフォームでいいっすからね」

 

「はぁい…有人機はこっちですよ!」

 

その頃、ガルダではMSとその部品の搭載作業をカゲトとケイニが主となって行っていた。

 

「無人機多すぎっすよ…トーラスと初期生産型ビルゴが詰めない…」

 

「持って帰ったら、もう一回来るしかないんじゃない?」

 

「仕方ないっすね…」

 

積載表を片手にカゲトは唸るが現実は好転しない…仕方がないと言わんばかりに仕舞うとガルダに乗り込むのだった。

 

 

 

 

 




MSが大量登場する回、アンケートに提出されたご意見はできるだけ繁栄させて頂きます。


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