IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第七革 二人の転校生 -school side-

 

 

「まさか…お前がここまでやられるとはな…」

 

「悔しいですが惨敗です…相手に傷すらつけられないで…」

 

左手を吊り、頭に包帯をした楯無と千冬は医務室で話していた。

千冬自身、楯無を評価していた事で分かったことがあった…それはあの赤い機体のパイロットの実力は国家代表を遙かに上回る実力を持っているということだった。

 

「一年生の子たちは…」

 

「それなら安心しろ、全員目立った傷はない…どうやら相手もクラスマッチに乱入してしまった事は予定外だったらしいな…一番の重症はおまえだ」

 

「あはは、めんぼくないです」

 

「傷はどのくらいで治る?」

 

「腕の方はナノマシン治療で1週間だそうです、後は精密検査をして終わりですね」

 

明るく振る舞っている楯無だが声や態度の端々に悔しさと怒りの色が見られる。本人が隠そうとしている以上、千冬はそれに触れずに話を続ける。

 

「それで、報告したい事とは?」

 

「はい、これを見てください」

 

楯無はディスプレイを動ける右腕で操作すると多数の画像が空中に出現する、全て静止画のようでそこには五つの機体が写っていた。

 

「私がミステリアス・レイディで撮った画像です」

 

「ほう…」

 

千冬は空中に浮かんでいるディスプレイを操作して自分が見やすいようにする。最初に見たのはあの赤い機体だった。

 

「なんだ…これは?」

 

肩に書かれた英語と数字の列を発見した千冬は拡大させる。画像がかなり粗くなるが出来るだけ解読した。

 

「GNW-20000 アルケーガンダム…型式番号まであるのか…本格的だな……」

 

「他の機体は残念ながら分かりません…」

 

「他の画像は地下で解析にかける…分かったら報告しよう」

 

「ありがとうございます」

 

「ゆっくり休めよ……」

 

僅かな証拠を持ち千冬は医務室を立ち去るのだった。

 

ーーーー

 

「みんな、大丈夫だった?」

 

「なんとかな…」

 

医務室から開放された一夏たちをフィーリアは自室で迎え入れた。時間が過ぎてしまい食堂が終わってしまったのだこれでは夕食にありつけない。

気絶していた一夏、セシリア、鈴の三人は見事に食いっぱぐれお腹がペコペコだった。

 

「そう言えば、仲直りしたんだ」

 

「え、まぁね…悪かったわよ……勝手に勘違いして…」

 

「いいよ…いいよ……」

 

なにやら鈴の誤解が解けたようでフィーリアに謝る。別に気にしてないフィーリアは軽く手を振り気にしてないことを現す。

 

「おい、出来たぞ」

 

箒が持ってきたのはチャーハンとフィッシュ&チップスだった。チャーハンは少なめにフィッシュ&チップスはお好みでと言う感じだ。

 

「箒と私が作ったの…食堂から余り物をもらってね」

 

「たくさん食べてくれ」

 

「おぉ!ありがとう…腹が減ってたんだ」

 

一夏の喜ぶ顔にその場にいた者達が微笑むがセシリアだけ浮かない表情を浮かべていたのをフィーリアは見逃さなかった。

 

「ん~このチャーハンはまぁまぁね」

 

「では食べなくていい」

 

「冗談よ!じょうだん!!食べるに決まってるでしょ!」

 

鈴の言葉に箒はチャーハンを下げようとするが彼女は必死に守りながらちゃっかりとチップスも頬ばる。

元々一夏に振る舞う予定だった料理をフィーリアの提案とはいえこんな大勢で食べることになるとは。

 

(まぁ大勢で食べるのも悪くはないが…)

 

もりもりと食べる二人に対しセシリアはあまり食が進まなかった。

 

ーーーー

 

「どうしたの?」

 

「ありがとうございます…」

 

食事を終えみんなが解散した後、フィーリアはココアを作ってセシリアに渡す。すっかりしおらしくなったセシリアはココアを受け取った。

 

「あの赤い機体…」

 

「あぁ、アルケーのこと?」

 

「はい…わたくしの両親の仇かもしれないんです…」

 

セシリアの言葉にフィーリアは驚いた顔をする。そして納得した…アルケーに襲いかかる彼女の表情はとても厳しいものだった。

 

「だからあんなに必死に…」

 

「家を守るために、そして真実を知るためにISのパイロットになりました…でも……わたくしは奴の足下にすらいなかった……」

 

落ち込むセシリアの肩にフィーリアは手をかける。

 

「大丈夫だよ、これから訓練もいっぱいしてもっと強くなろう…そしたら勝てるかもしれない…それに」

 

「え?」

 

フィーリアはセシリアを後ろから抱きしめる。セシリアは驚いたようで後ろを振り向くと彼女の顔が近くにあった。

 

「一夏や箒たちもいる…一人で倒さなくてもいいしね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

フィーリアの言葉にセシリアは微笑み、嬉しそうにするのだった。

 

ーーーー

 

「やっぱりハズキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハズキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの」

 

あの事件から数日、ホームルーム前の教室はカタログを持った女子たちの談笑で溢れていた。先日は学年別代表戦で優勝したらなんとかとか言っていたが話題なんて一晩で変わるモノなのだ。

 

 

「私は性能的に見てミューレイの方が良いなぁ…特にスムーズモデル」

 

「あー、あれねぇ…モノはいいけど高いじゃん」

 

「フィーリアはどこのなの?」

 

今回の話題はISスーツの話だ。ISスーツは耐衝撃、吸水性、ISとの連動性等々…それらに響いてくる重要な装備の一つなのだがモノがモノなだけに高額で学生が気軽に手を出せる物ではなかった。

 

「私のはアナハイム製のオーダーメイドだよ…試作0号機専用に作られたタイプで高性能」

 

「アナハイム?知らないわね」

 

「オーストリアの小さい会社だよ、他の会社は試作0号機の開発に必死だったから手の余ってるってことで」

 

「へぇ…」

 

ISスーツの購入が始まるからか他の方で話していた女子たちもフィーリアのところに集まる。カタログを片手にどれが高性能かつ低価格か、この会社はどうだとかといろいろ聞かれる。

 

「フィーリアは人気だよな」

 

「なんだ?彼女が人気だとダメなのか?」

 

「いや、そう言うわけじゃないけどさ」

 

フィーリアの周りに人集りが出来て素直な感想をもらした一夏に箒は不機嫌そうに話す。

そんな箒だが最近ちょっとだけフィーリアを警戒していた。

人間としてではなく恋敵としてだ、彼女自身は一夏を気にしていない…ゆえに自身たちよりも大胆な行動に出ることが多くその度に一夏はだらしなく照れてしまう。

 

「まぁ、鈍感ここに極まれりだ…心配することはないだろうが」

 

「ん?」

 

「いや、なんでもない」

 

一夏と箒はそんな会話を繰り広げていると教室に山田先生が登場…ISスーツの解説をしていた。

豆知識をサラリと繰り広げられた生徒たちから山田先生への賞賛の声が上がる。

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「一応先生ですから…て…山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「や、山ぴー?」

 

まぁこの通り、親しみやすさとその優しさのオカゲかせいか分からないが彼女の愛称は増える一方だ。一応フィーリアも一部の女子からはフィーと呼ばれたりしている。

 

「じゃあヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれは止めてください!」

 

愛称にまつわる話の末に初期頃(言っても二ヶ月しか経ってない)に呼ばれていた愛称が浮上したがそれはそうとう嫌なようだ。

たしか同じ名前のお酒屋さんがあったようななかったような。

 

「諸君、おはよう」

 

「「おはようございます!」」

 

ワイワイと騒いでいた教室は千冬が出現したことにより整然と秩序のある教室へと変化する。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「はい、ええっとですね…今日は転校生を紹介します…しかも2名です」

 

「「「ええええええええぇぇぇぇ!!」」」

 

教室中に響き渡る叫び、それはフィーリアも動揺であった。様々な女子たちの情報網をかいくぐって突然出現したのだ。《ガンダム大地に立つ》にパーフェクトジオングが出てきた某マンガ並に驚いた。

しかもその片方が男なのだから、教室の叫びはマックスを超え響き渡った。

 

「シャルル・デュノアです、フランスから来ました…この国では不慣れなことも多いと思いますが、皆さんよろしくお願いします。」

 

一夏と比べれば少しだけ幼い顔、よく言えば人懐っこそうな顔の金髪少年が自己紹介を終えると教室は再び叫び声に包まれる。

 

「うるさい、静かにしろ!」

 

「み、皆さんお静かに…まだ自己紹介は終わっていませんから」

 

教師二人の尽力により教室の様子は落ち着きを取り戻し二人目の転校生を見た。

長い銀髪を伸ばし左眼に黒眼帯をはめている少女、生徒と言うより軍人と言った方が良いだろう。背こそ小さいが彼女の持つ雰囲気は鋭く冷たいものだった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ…ドイツ軍特殊部隊《シュバルツ・ハーゼ》の隊長を務めている…階級は少佐、三年ほど前に織斑教官から指導を受けていた」

 

「ボーデヴィッヒ…ここでは先生と呼べ」

 

「了解しました、織斑先生」

 

「それでいい」

 

自己紹介を聞き終えたフィーリアは納得する。ドイツ軍のシュバルツ・ハーゼと言えばドイツ軍最強戦力と呼ばれるフォルガー大隊の次に強いと呼ばれている部隊だ。

その部隊の隊長、彼女の纏っている雰囲気の正体はこれだったのか。

 

「ん?キサマは!」

 

すると突然、ラウラはなにかを見つけたのがツカツカと一夏の方に直進すると彼の机の前に立った。何事かと周りの生徒がラウラを見やると…。

 

「久しいな、織斑一夏…まさかキサマがここに居るとはな」

 

「あぁ、俺が一番驚いてるよ」

 

「「ええぇぇぇぇ!」」

 

周りの生徒は再び叫ぶ、特にセシリアと箒の声は尋常ではなかった。また知り合いが出現するなどアクシデントに他ならないからだ。

 

「一夏さん!どういうことですの!?」

 

「そうだぞ一夏!そいつとはどう言う関係だ!」

 

「なにって…命の恩人?」

 

「私に聞くな…」

 

先ほどの雰囲気はどこへやら、柔らかい雰囲気のラウラは一夏の言葉に腕を組んで困り顔をする。

 

男子生徒と一夏の知り合いの登場…どうやらこの学園生活は落ちつくという言葉はないらしい楽しいことがまだまだ起きそうなこの生活にフィーリアは静かに微笑むのだった。

 

 

 

 





なぜラウラと一夏が知り合いなのか?それは次回の-school side-で判明します!

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