《ヘブンズベース》大西洋の某所に設営された連合軍の本部である。
7年前に建造が開始された施設で陸海空、MS研究、試験場、全ての機能を持つ最新鋭の基地で現在では宇宙軍設立のための増築が行われてる。
そこには観艦式に参加しなかった国連所属艦艇を含む戦力が駐留していた。
「やはり襲撃に遭ったか…」
「はい、第二艦隊は壊滅したそうで現在は主要艦艇も動員し防衛に当たっているようです」
「第一艦隊は残党処理の精鋭たちだ、任せよう。ここからでは援軍も遅すぎる」
太平洋のど真ん中で襲われた観艦式艦隊からこの基地はあまりにも遠すぎた。
自身のスベスベになってしまった頭を撫でながら基地司令であるマオル大将は報告書を読み込む。
「念のため、こちらも第二種戦闘配備だ。状況によっては最終手段も行使しなければならん。準備をしておけ!」
「了解!」
ーー
「太平洋だと激戦だとよ」
「はぁ、だから第二種か」
基地上空を飛行していたリゼルC型が通信を飛ばしながら周囲を警戒する。
「観艦式が囮だというのか?」
「可能性は0じゃないからな」
「確かに女性主義の残党は大量に居たが確認されている分のほとんどは第一艦隊…織斑一夏がやっちまった」
「白い悪魔だろ」
「流石は初代ブリュンヒルデの弟だな」
「まぁ、あの戦いで生き残ったんだから相当だろ。そのブリュンヒルデが利き腕ぶったぎられてたって聞いたときは震えが止まらなかった」
「だがあんな戦いを経験したのにまだ戦争は続いてやがる。嫌な話だ」
「全く…ん?」
リゼルの一機が前方に違和感を感じ止まる。
それを見た相方も止まりセンサーを最大にする。
「なん…」
異変を感じた瞬間、リゼルは機能を停止し木の葉のように墜落していく。
「な、なんだ!?」
「これは!」
次々と機能停止していくMSたちに続き、本部であるヘブンズベースは暗闇に包まれるのだった。
ーー
同時刻、元革命軍本部周辺海域。
「こいつら!」
「ブレイブ3合わせろ!」
「了解!」
残党軍に突貫するブレイブ3を追撃しようするジンクスⅡは背後から迫ってきたブレイブ4のΖプラスに撃墜される。
そのブレイブ4を狙ったジンクスⅡは過ぎ去ったブレイブ3が撃墜する。
「くそ、女狩りどもめ!」
残党狩りを専門としていたブレイブ、ユニコーン隊は他の隊と比べて突出した戦績を残していた。
「ユニコーン1」
「どうした?ブレイブ1」
「エリア、D2とE1部隊の被害が尋常ではありません。何かいます」
「そのようだ。伊吹!」
「こちらでも確認しています。D2に4機、E1に6機、計10機が突出しています。これは、機体データに類似機、該当あり」
伊吹のオペレーターから送られてきたデータに一夏は息を飲んだ。
「
「馬鹿な、あれば試作の一機のみで量産はされてないはず」
銀の福音は革命軍との決戦時に大破しその後、修復もされずに廃棄された機体だ。コアも同乗者であるナターシャが厳重に管理しているはず。
「形状は完全に一致しません。おそらく銀の福音をベースにした改良機だと思われます。生体反応なし、無人機です」
「残党にそんな切り札があったとは」
ーー
「くそ、速す…!」
高速で動き回る複数の銀の福音はジェガン小隊を撃滅すると伊吹を主軸とする艦隊に接近する。
「対空防御、対MS、IS戦闘!」
「1時方向から4時方向にアンチビームミサイル発射!」
「こちらエクスキャリバー。主砲、連続射撃モードで発射準備よし!MS各隊は射線上より待避せよ。カウントダウン3…2…1…射線上クリア!発射開始!」
銀の福音の編隊に向けて防空艦キャリバーンは主砲であるレールガンを発射し高速で弾を吐き出し続ける。なぎ払うように放たれたレールガンは銀の福音部隊を襲うが銀の福音たちは進路を急速に変更しそれを避ける。
「なんだあの機動は!?」
「流石は無人機」
「こちらキャリバーン、砲身安全温度超過、砲身急速冷却に移行。冷却時間、47秒」
「ケンタッキー。主砲、対空弾、指定座標に発射!」
艦隊による対空防御をくぐり抜け、射撃を開始する銀の福音たちだったが伊吹の放った防御ミサイルによって発生したエネルギーシールドによって防がれる。
「こちらブレイブ7、8現着!」
直近に展開していたゼータプラス2機が銀の福音に対して牽制射撃で注意をそらさせる。
「ステイル及びガンラード隊、着!高機動戦闘に移る!」
「ユニコーン1、着まで時間を稼ぐんだ!」
ケンタッキー所属のアンクシャ8機が銀の福音に突撃を慣行すると共に損害を負った部隊は一度下がり、立て直しをはかる。
「対空放火を緩めるんだ。味方機が集結しつつある」
「艦長、福音部隊で空けられた穴に高機動型IS部隊が突入してきます!本艦射程到達まで67秒」
「エクスキャリバーに座標を送りなさい。主砲で迎撃させる」
「了解しました。こちら伊吹、エクスキャリバー応答せよ!」
「艦長、コロンビアから」
「繋げ。護衛艦に通達、対潜ミサイル用意」
原子力潜水艦であるコロンビアからの通信に素早く対応した源は伊吹の護衛に着いていた艦に指示を出す。
「水中から接近する機影を探知、数は10。MSサイズとのこと」
「敵の進行速度と方向を精査し座標を送らせろ。コロンビアからのデータ着信次第、アスロックによる攻撃を始める」
原水コロンビアは伊吹を含む味方艦艇にデータを送るとMS格納庫に注水を開始する。
「味方のアスロック発射とともにMS隊を出すぞ」
「注水完了まであと15秒!」
「少し間に合わんか。構わん、注水続けろ、アクアバーザムは全機発進!」
同時刻、伊吹。
「コロンビアからの座標入力完了。各艦用意良し!」
「全艦、攻撃始め!」
アスロックが接近するMS隊に向けて発射されると同時に戦艦ケンタッキーから伊吹に緊急通信が入る。
「艦長、ケンタッキーから恐らく成層圏から接近する機影。恐らくウィングゼロ!」
「バスターライフル…テレメーアか!」
「迎撃、間に合いません!」
「っ!」
高速で接近したウイングゼロカスタムはバスターライフルを構え、演説をしているワイアットが乗艦する戦艦テレメーアに向けて発射する。
「しまった!」
ビームトンファーで銀の福音のコアを破壊していた一夏もその光景を見て叫ぶのだった。