IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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観艦式攻防戦 (前編)

 

「なんとか無事にたどり着きましたね」

 

「あぁ、なんとかね」

 

 伊吹の艦橋要員たちは無事に第一艦隊と合流。観艦式の会場に到着して艦隊と合流した。

 

「閣下、国連第一艦隊が到着しました」

 

「では織斑さんたちは無事に到着したと言うことですね」

 

「はい、オルコット長官」

 

「うむ、彼らに挨拶といこうか。オルコット長官?」

 

「はい、ぜひご同行をお願いいたします。グリーン・ワイアット大将」

 

 改めて、国連太平洋第一艦隊とは各国が作り上げた艦たちで編成された連合艦隊。対MS戦闘を前提に建造され、設計思想は二次大戦に戻っているのが特徴とされている。

 

通常編成では

 

大型のメガ粒子砲4基を主砲に持つ旗艦《戦艦ケンタッキー》。浮沈艦《空母伊吹》

 

など他

戦艦 1隻

イージス艦 4隻

巡洋艦 6隻

駆逐艦 10隻

揚陸艦 2隻

補給艦 2隻

 

で編成されている大艦隊である。国の間のしがらみによる影響を受けにくい艦隊として結成された。主な任務は女性主義残党軍の鎮圧であり、結成された8年間で多くの戦果を上げてきた。

 

「凄いなぁ…」

 

「何隻居るんだ?」

 

「資料には大小合わせて50隻ほどらしい。護衛艦隊の数は抜いてあるからもっと多いぞ」

 

 伊吹の甲板で観艦式に参加する艦隊たちを見てそれぞれに感想を述べる。

 

「皆さん!お久しぶりです!」

 

「「セシリア!」」

 

 観艦式に圧倒されていた全員がそれぞれに話していると、そこにセシリアが現れる。彼女を認識した一同は喜びの声をあげた。

 

「久しぶりね!」

 

「セシリアだ!」

 

「テレビではよく見たけどやっぱり生は違うわね!」

 

「皆さんも元気そうでなによりです!」

 

 高校の頃のセシリアも美しかったが、その美しさも磨きがかかった成長に、全員はそれなりの時の流れを改めて実感した。

 

「楯無さんたちは居られないのですか?」

 

「あぁ、彼女らは日本にいる。日本の暗部と言っても流石にここまでは来られなかったようだ」

 

「まぁ、楯無さんは元ロシア代表でしたからでしょうか」

 

「そうだな、警戒されているのもあるだろう」

 

 難しい話もしたが今は旧交を暖めるのが大切だ。全員が和やかに話をしていると近寄る影が複数。

 

「無事に会えたようだね。セシリア君」

 

「ワイアット大将、源艦長」

 

「一夏くんもこんな顔をするんだね」

 

「艦長…」

 

「ワイアット大将。今回の観艦式、出席を許可していただきありがとうございます!」

 

「「ありがとうございます!」」

 

「礼は良いよ、君たちは主賓だ。招待するのは道理と言うべきだろう。どうだね、少し時間もある。お茶の用意をしよう、私はダージリンかな」

 

「ありがたくお受けいたします」

 

ーー

 

「しかしよろしかったのですか、この伊吹で?」

 

「源艦長、君の船は浮沈艦と呼ばれている事は知っているだろう。これほど安心してティータイムを楽しめる場所はないだろう。それにテレメーアは戦艦だ、少し狭くてね」

 

「設備はテレメーアの方が良いですが」

 

 テレメーアから来た護衛たちがティータイムの準備をしている中。セシリアとワイアットは落ち着いた様子で話をする。

 だが他の面子は少し落ち着けないでいた。

 

「しかし非常時に大将がテレメーアに居なければ危険です」

 

「織斑くん、やつらはまだ来ないよ」

 

 ワイアットの言葉に思わず疑問に思う一同。どうしてこれまでにはっきりと言えるのか。

 

「奴等は観艦式の途中に襲いかかるだろう。そうしなければここを襲う意味がない。この観艦式は鎮魂が第一の目的だが、新たな世界に生まれ変わったと言う宣言でもある。その観艦式に泥を塗るためには私の演説と共に襲いかかるのが妥当だろう」

 

「なるほど、だからこれほどの余裕を」

 

「うむ、常に気を張っていては疲れてしまうからね。私も歳だ、相応の気構えが必要なのだよ」

 

「ワイアットさんには本当に敵いませんわ」

 

「ふっ…セシリアくん。君の度胸も中々だよ」

 

 緊張が少しほぐれた一同はワイアットと共にティータイムを過ごすのだった。

 

「閣下、そろそろ旗艦《テレメーア》の方へ」

 

「うむ、紳士は時間に忠実でなくてはな。ではセシリアくん」

 

「はい、私もテレメーアに戻ります。観艦式後に会いましょう」

 

「あぁ、またなセシリア」

 

 こうして観艦式がついに開幕するのだった。

 

 「西暦2017年・・・つまり先の大戦は、人類にとって最悪の年であった。この困難を乗り越え、今、一大ページェント、観艦式を挙行出来る事は、世界の安定と平和を具現化したものとして慶びに堪えない」

 

 観艦式の始まりを告げるワイアットの演説が開始され、その様子は世界中の人々が見つめていた。

 

 「その観艦式は西暦1347年、英仏戦争の折り、英国のエドワードIII世が出撃の艦隊を自ら親閲したことに始まる」

 

「異常無し…」

 

 観艦式の会場周辺に展開していた第二艦隊は警戒を厳にして報告を続けていた。

 

「この共有すべき地球の恩恵を、一部の矮小なる者どもの蹂躙に任せてしまったことは忌むべき歴史として我々が引き継がなければならない」

 

「よし、攻撃開始…」

 

「時間だ、攻撃開始!」

 

 ワイアットの読み通り。演説中に残党軍は一斉に動きだし、攻撃を開始する。

 

「本隊より入電。攻撃開始、攻撃開始!無線封鎖解除!各部隊全力で標的を撃滅せよ!」

 

「対艦ミサイル全弾発射!機動部隊は配置に着いている。派手に始めろ!」

 

 海中から突然現れた無数のミサイルは、高速で飛来して観艦式にいる艦たちに向かう。

 

「こちら機動部隊。対艦ミサイル全弾発射。進路そのまま、制空権の奪取に移る!」

 

ーー

 

「SPYレーダーに目標探知!本艦隊に向けて飛来する物体。2時から3時の方向、数は100以上!」

 

「来たか!総員戦闘配置!SM-2攻撃始め!」

 

 国連第二艦隊はその全てがイージス艦と護衛艦で構成された近代艦隊だった。当該海域にいた第二艦隊は全力迎撃を開始した。

 

「SM-2の攻撃継続。主砲、CIWS攻撃用意!」

 

「このミサイルの数。大艦隊が展開してるとしか思えないぞ!」

 

「馬鹿な、ミサイルの射程圏内は全て哨戒機が回ってる!艦隊の接近なんてあり得ない!」

 

「話している場合か!ミサイルを一発でも多く撃ち落とせ!観艦式の会場には民間人だっているんだぞ!」

 

「SM-2残弾ゼロ!シースパローによる迎撃に切り替え!主砲、CIWS攻撃を開始します!」

 

「こちらキャロット隊。発艦する!」

 

「レーダーは接近するIS部隊も感知している。近づかれたらおしまいだ。頼む!」

 

「任せろ、射出!」

 

 各艦による全力迎撃と同時に、護衛艦に係留されていたMSたちが飛び立つ。

 

「キャロット隊及びスマッシュ隊の発艦を確認!」

 

「なんとかMS隊だけは発艦できたか…」

 

「駄目です、速すぎる!艦長、迎撃が間に合いません!」

 

「総員、耐ショック…!?」

 

 そうするとミサイルの第一陣がイージス艦に突き刺さり、爆発を起こす。

 

「こちらミレアム。死傷者多数、艦を離脱する、救助を求む!」

 

「こちらポルテ。ミレアムの救助を…」

 

「ポルテ被弾轟沈!」

 

「くそっ!我々の後ろには伊吹が居るんだぞ!あれを沈めさせることは絶対に許さん!」

 

「こちらナミュール。浸水を止められない。艦を離脱する!」

 

「こちらしらなみ。各艦の救助にあたる!」

 

「ぼ、母艦が!」

 

「今は目の前の敵だけを見るんだ!母艦の仇を射つぞ続け!」

 

 ジェスタで構成されたキャロット、スマッシュ隊はゲタに乗り、迫り来るIS隊たちを迎撃のために加速する。

 

右舷を守っていた第二艦隊の知らせを受けて、観艦式艦隊右舷に配置していた伊吹を含む第一艦隊はスクランブルがかかっていた。

 

「ブレイブ隊の発艦急げ!ユニコーン隊が待ってるぞ!」

 

「エクスキャリバーとオオイは伊吹の護衛に着きます」

 

「こちらケンタッキー。伊吹の右舷に移動する…面舵!各艦右舷防御陣形!」

 

 速やかに陣形転換が行われる第一艦隊は伊吹を中心に防御陣形をとる。観艦式に艦隊も迎撃をとれるように細やかな陣形転換が行われていた。

 

「敵の戦力はこちらの予想を遥かに上回っています」

 

「なんとしてもテレメーアを守り抜け!」

 

 現場が喧騒に包まれてる中でもワイアットは演説を止めることはない。迎撃体勢を取りつつも観艦式は続いていた。

 

「ブレイブ2 発艦!」

 

「つづいてブレイブ4 発艦するぞ!」

 

「カタパルトを止めるな!敵は待ってくれんぞ!」

 

「2分以内にブレイブ隊、全機射出しろ!」

 

 ウェイブライダー形態のΖプラスたちが次々と伊吹から発艦していく。発艦した機はそのまま速度を落とさずに現場に急行する。

 

「ブレイブ隊の発艦を確認。ユニコーン隊の発艦急げ!ユニコーン1はユニコーン3に運ばせる!他の機は現場に急行せよ!」

 

「ユニコーン1、発艦する!」

 

「織斑隊長、お願いします!」

 

「同時にユニコーン3だ。急げ!」

 

 一夏とその部下たちが次々と発艦していくのを見守る一同。一夏は軍人だがラウラを除く皆はただの民間人。見守るしかなかった。

 

「旗艦のミンシェルが…」

 

「こちらブレイブ1。ミンシェルの轟沈を確認、至急救助を」

 

「まさか一番手厚い右舷を攻められるとはな」

 

「旗艦含め、第二艦隊のほとんどが居たんだぞ。それを一瞬で…」

 

「先行したキャロット、スマッシュ隊が心配だ。急ぐぞ!」

 

 6隻も居た護衛艦隊が一瞬で壊滅し、言葉を失うブレイブ隊はさらに加速してキャロット隊たちの支援に向かうのだった。

 

ーー

 

「くそっ、なんだこいつらは!」

 

「キャロット4、左だ!」

 

「っ!?」

 

「キャロット4!!」

 

 ジェスタの一機が胸を撃ち抜かれ脱落する。隊長は冷静にラファールⅡのエネルギージェネレータを切り裂き撃墜する。

 

「慌てるな、新型が居ようと変わらん。一機ずつ対処しろ!」

 

「隊長、後ろ!」

 

「っ!」

 

 バスターソードを受け止めたキャロット1はシールドのミサイルランチャーを発射し、隙をつくるとそのまま蹴り飛ばしてビームライフルを撃ち放つ。

 

「なに?」

 

 二機の間に滑り込んだ新型機はフィールドを展開してビームを防ぐ。

 

「くそ、バリア持ちまでいるのか」

 

「女性主義残党にこんな機体がつくれる訳がない!」

 

「ミサイルの件にしろ機体の件にしろ。我々は敵を侮っていたようだな…」

 

 こうして観艦式を巡る戦いが始まったのだった。

 

 


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