IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第五革 無人機 -school side-

 

 

「おう、お疲れ…」

 

「もう交代の時間か?」

 

「あぁ…」

 

IS学園から都市部に向かって10㎞地点、建設中のビルの屋上にて監視をしていたジン強行偵察型ともう1機の偵察型の奴と話していた。

 

「クラスマッチまで見張れって言われてるけど…いつがクラスマッチか分かんねぇんだけど」

 

「後1週間ぐらいだろ、そしたら帰って畑を手伝おうぜ…アイツがコーヒー用意してるから飲めよ」

 

「ありがとう」

 

交代したジン強行偵察型はモノアイをIS学園に向けて監視を開示する。そのレンズには訓練を行うフィーリアたちの姿があった。

 

ーーーー

 

「今回から実践的な練習に入るよ、名付けて《一撃必殺》だよ」

 

「一撃必殺?」

 

フィーリアの言葉に全員が首をかしげる。オリジナルの練習法だ分からないのは仕方の無いことだろう。

 

「どのような訓練なのですか?」

 

「ルールは簡単…」

 

一撃必殺のルールはこうだ。試合時間は5分、お互いはそれぞれ一撃しか放ってはならない…時間が過ぎたりお互いの一撃が当たらなかったら引き分け。

 

この練習をすることによって戦いの立ち回り方や相手への観察力、一撃への集中力が鍛えられるのだ。

 

「今回は箒も練習機を受領してるからバランスも良いよね」

 

一夏と箒は接近型、フィーリアは中距離型、セシリアは遠距離型とかなり良い感じの編成になっている。三人より四人のローテーションの方がバリエーションもありやりやすいのもある。

 

「じゃあ、最初は一夏とセシリアで行こうか」

 

「分かった…行こうぜセシリア」

 

「はい♪」

 

一夏とセシリアは配置に付きお互いの得物を構える。

 

「では……始め!!」

 

お互いが加速しぶつかり合うのだった。

 

ーーーー

 

「みんな強すぎだろ~」

 

白式ごと地面に突っ伏していたのは一夏だった。各自10戦ずつ行い訓練を終了していた。

 

「まぁ、当然の結果ですわね!」

 

やけに嬉しそうにしていたのがセシリア、10戦中5勝2負3分と中々の成績だ。やはり立ち回りが一番上手いというのが大きいところだろう。

 

「中々、やり応えのあるものだったな…」

 

箒、10戦中2勝4敗4分とまぁ訓練機にしては良い方だろう。

 

「一夏は酷いねぇ……」

 

フィーリアも10戦中7勝0敗3分と圧倒的だ。対する一夏は…10戦0勝7敗3分と何とも壊滅的な数値を誇っている。

箒とは良い勝負で全戦引き分けなのだがセシリアとフィーリアに対しては全敗と何とも言えないものだった。

 

「正直なところセシリアには勝てるんじゃないかって思ってたでしょう?」

 

「セシリアには失礼だけど…そう思ってた…」

 

「国家を背負ってる代表候補生を舐めちゃダメだよ」

 

「はい……」

 

代表候補生たちの実力もそうだが一夏の直線的すぎる動きには何とかしないと勝ち目がない…そう感じ始めるメンバーだった。

 

ーーーー

 

「あれ?箒さんはどこに?」

 

「一夏と一緒のピットだよ、シャワーの順番がどうとか…」

 

「そう言えばあの二人は同室でしたわね……」

 

ぐぬぬっと悔しがるセシリアをフィーリアは宥める。だがこれさえはどうにもならないので仕方が無い。

少しと話した後、解散した二人はそれぞれの部屋に向かう。フィーリアの部屋は一夏と箒の隣なので実際、会うことは多い。

 

「ん?」

 

部屋のある廊下にさしかかる時、箒と転校生が言い合っているのをフィーリアは目撃した。

 

「今の生身の人間なら本気で危ないよ……」

 

「また修羅場だねぇ」

 

「フィーリア!助けてくれ!!」

 

話しかけるフィーリアに泣きついたのは一夏、箒と鈴の険悪な雰囲気に嫌気を通り越して恐怖を覚えたのだろう、まぁ方や竹刀、方やISの部分展開と物騒なのは否定できないが。

 

「どう…どう……」

 

「ちょっと!あんた!!」

 

泣きついてきた一夏を宥めるために頭を撫でる。そんな様子を見ていた鈴はかなり気に入らなかったようでフィーリアに噛みついた。

 

「わたし!?」

 

「なにイチャイチャしてんのよ!見せつけてるの!?」

 

地団駄を踏む鈴の姿はまるで赤ん坊のようだ。思わず撫でたくなってしまう。

 

「あれこれ文句をつけること?」

 

「それはいちゃもん!」

 

「ガムを食べるときの効果音?」

 

「それはクチャクチャ!」

 

「美味しいアメ玉?」

 

「それはチュッパチャプス!……って違う!!」

 

ウガーっと効果音がつきそうな程の叫び、フィーリア自身もかなり天然が入ってるため会話が崩壊する。

ラチが開かないと踏んだのか鈴は一夏を指差して大声を発する。

 

「だいたい一夏も一夏よ!子動物みたいに駆け寄って!男の意地ってのはないの!?」

 

鈴の言葉に一夏はムッとする。意気地なし、根性なしは彼にとっては起爆剤にもなり得る言葉の一つだ。

 

「なんだよ!いきなり来るなりなんなり、俺はどっちでも良いからそっちで決めろよ!」

 

「アンタに決めてもらわなきゃ意味ないでしょ!」

 

「なんでだよ!」

 

「なんでもよ!」

 

一夏と鈴の不毛な口論が勃発し間に挟まれたフィーリアは何をして良いのか分からずにただ言葉を耳に入れては聞き流す。

 

「じゃあ今夜はフィーリアの所に泊めてもらうからな!」

 

「へ?」

 

「は?」

 

突然の一夏の言葉にすっときょんな声を発したのは当の本人であるフィーリアと箒だ。

 

「勝手にすればいいじゃない!」

 

肝心の鈴も捨て言葉を吐き出してその場から走って去ってしまう。一夏をバッと見た二人が見たのはしまったと言う顔をしている彼であった。

 

「そうか、そうか…勝手に寝るがいい……」

 

つい言ってしまった言葉と言え、年頃の少女である箒もすねてしまい部屋の扉を閉めあまつさえ鍵までかけてしまった。

 

「……」

 

「……」

 

「うちにおいで…」

 

「ごめん……」

 

取り残された二人は静かに部屋に入るのだった。

 

ーーーー

 

「まぁ、元々一人でいたからゆっくりしなよ…お茶入れるね」

 

「本当にごめん…フィーリア……」

 

「いいって…」

 

沸かしたヤカンから急須にお湯を注ぎ一時、湯呑みを出して一夏に差し出した。出されたお茶を大人しく飲む一夏の横でバスタオルを出してシャワールームに向かう。

 

「シャワー浴びてくるから大人しくしててね」

 

「おう……」

 

そしてシャワールームから水が流れ出す音とフィーリアのほんの少し色っぽい声が聞こえてきた。リラックスしている証拠なのだろうが、一夏にとっては何か落ち着かないものがあった。

 

「おまた~」

 

「おう、フィーリアのもいれといたぞ」

 

「ありがとう」

 

バスローブに包まれた姿で出てきた彼女の姿は妙に色っぽく一夏はさらに顔を赤くする。

湯呑みを受け取ったフィーリアはテーブルの椅子に腰掛けて一夏と話す。

 

「で、どうしてこうなったの?」

 

「あぁ、鈴がそんなに好きならフィーリアと一緒に過ごせよって言うから…じゃあそうしてやるよって感じで…」

 

「子供か……」

 

「本当にすいませんでした…」

 

深く頭を垂れる一夏の姿にフィーリアはため息をつく、そんなことされたら怒れるものも怒れないというものだ。

 

「いいけどね、ついってやつは気をつけた方がいいわよ…」

 

「気を付ける…」

 

「まぁまぁな時間出し寝る?」

 

「そうだな、明日は箒と鈴に謝りにいかないと…」

 

だいたいの話を終えた二人は立ち上がりベッドに向かう。目の前で立ち上がった彼女の姿は何度も言うが色っぽい…スレンダーな体型ながらほどよく鍛えられた肉体、体のバランスに対して少し大きめな胸。

それが先程からチラチラと見える。チラリズムと言うものがあるがその良さを一夏は現在進行形で感じていた。

 

「おやすみ」

 

「あぁ、おやすみ…」

 

そんな事もつゆしらず、フィーリアはさっさとベッドの布団にくるまって眠りにつく。そんな彼女に対して一夏は妙な緊張を感じてしまい眠れないでいるのだった。

 

ーーーー

 

次の日、フィーリアも加わり箒と謝った一夏、箒もその場のノリで言ってしまったことを後悔していたようですぐに了承してくれた。

肝心の鈴は明らかに不機嫌オーラを出していたので謝ろうにも謝れずに困っていた。

 

そしてクラスマッチに向けて練習すること五日、この六日目は実質最後の練習日となる。会場の調整やらなんやらで使えなくなるらしい。

 

「じゃあ、今回は少し激しめでいくよ…クラスマッチまで後三日、多少厳しくやっても本番には残らない」

 

「激しめとは?」

 

「今回の一撃必殺は一夏だけ10戦連続でやってもらう…インターバルは無し、長時間集中力を持続させるための軽い調整だね」

 

セシリアの問いにあらかじめ用意していた答えをフィーリアが言う。クラスマッチに出るのは一夏だけだ、妥当な判断だろう。その答えにセシリアと箒は異存が無いようで頷く。

 

「よし!じゃあ…「待ってたわよ!一夏!」ぁ…」

 

話を続ける彼女の声を遮るように前に立ち塞がったのはいじけていた鈴だった。登場方法に激しくデジャヴを感じる。

 

「で?一夏、反省した?」

 

「あぁ…あれは言い過ぎたと思ってるよ…みんなにも迷惑かけたしな」

 

「フフン、分かってるじゃない」

 

一夏の態度に鈴は気分良さそうにする。だが気に入らない点がいくつかあった。

 

「悪かったって思うんなら謝りに来ても良いんじゃない?」

 

「あれは鈴が避けてたからじゃないか」

 

「あんたねぇ、女の子が放っておいてって言ったら放って置くわけ!?」

 

「おう…なんか変か?」

 

一夏の返答にその場にいた全員が頭を抑える。確かにそうなのだが、そうでないのが気難しい年頃の女心というものだ。一夏の分からない気持ちも鈴の分かって欲しい気持ちも理解できる三人は何とも言えない顔をした。

 

「この朴念仁!アホ!マヌケ!アンタどうして分からないのよ!」

 

謝ったのに罵倒されている…そんな理不尽に耐えきれなかったのか一夏は核弾頭を投下した。

 

「うるさい!貧乳!」

 

ドガーーン!!

 

しまったと言う顔をした一夏だが時、既に遅し…ブチ切れた鈴はISの右腕を部分展開し地面に向けて殴りつけた。恐ろしい衝撃が発生しこけそうになる。

 

「ちょっとは手加減してやろうと思ったけどどうやら死にたいようね!全力でぶちのめしてあげる!!」

 

怒り心頭の鈴はその場から立ち去る。対IS用の特殊合金を使ったピットに拳状のへこみが出来ていた。

 

「鈴さんのISはパワータイプ…それも一夏さんと同じ接近戦タイプの…」

 

「パワーだけで絶対防御まで届きそうな勢いだねぇ」

 

「これでは一夏が一手不利になりかねんな…」

 

へこみを見て三者三様の反応を示した。一夏は接近戦タイプ…相性的には懐に入り込まれると詰む遠距離型が一番相性がいいが今回の敵は接近戦タイプ…代表候補生と素人、厳しい試合になるのは明白だった。

 

ーーーー

 

それと同じ頃、IS学園の武道場で訓練をしている一人の少女がいた。長槍を持ち無駄なく動くその姿は一種の芸術ともいえるだろう。

 

「やぁ!とぅ!」

 

短く切り詰めた黒髪と赤混じりの黒色の瞳をした日本人の少女は一見すると青年のようだがれっきとした女である。その顔は"とある人物に酷似していた"。

 

「ユイカちゃん……」

 

「ん?なにカンちゃん?」

 

水色の髪を持った内気そうな少女、更識簪はその少女、に話し掛けた。親友であるこの二人は常に一緒に行動していた。

 

「訓練機取れたからアリーナいこ」

 

「ありがとう、しまったら行くよ」

 

一年四組、クラス代表こと花柳ユイカ…花柳家の次期当主、現在は日本のとある企業のテストパイロットとして専用機を持ち高い実力を持った生徒の一人であった。

 

 

 

 


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