IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第五革 無人機 -black side-

 

「このぉ!舐めやがって!!」

 

ガシャーンと大きな音と共に叫び声が聞こえる。その音は米軍上層部である官僚が仕事をすべき部屋から聞こえてきた。

 

「全部台無しだ!」

 

IS管理局長を兼任しているフラン・スタンピードはこれまでにないほど顔を真っ赤にして部屋で暴れまわる。

成果を出し始めた研究所を潰された挙げ句に虎の子である名も無き兵士たち(アンネイムド)すら全滅させられた。怒るなと言う方が無理な話である。

 

「くそぉ…人の倫理すら守れぬテロリスト共め…」

 

さらに追い打ちと言わんばかりにある報告が来た…名も無き兵士たちが使用していたISのコア2個が盗まれていたのだ。このせいでせっかく裏取引で苦労して手に入れた2個が藻屑と消えた。

 

「我々を舐めるなよぉ…」

 

一通り暴れ終えた彼女は倒した椅子を直し座る。資料などが散乱しているがそんなものは後だ…奴らは手に負えない、なら俺を超える力で蹂躙すればいい。

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)はまだ試験段階だ…戦闘に出すには後、最低二ヶ月は欲しい…」

 

アメリカの最新鋭機であるファングクエイクがやられた以上、銀の福音に賭けるしかない。

連続しての失態に自身の立場も危ういのだ、もしもの時は自身が出撃して成果を上げなければ…。

 

フランは頭を抱えて机に突っ伏すのだった。

 

ーーーー

 

「なら、問題はないのだな…」

 

「はい、そちらの通信封鎖のおかげでなんとかなりました…」

 

カナダ北東部にある森の中には廃棄された工場がある、今はコアな人間が心霊スポットとして訪れる程度だ。その幽霊の正体が革命軍の関係者なんて誰が考えるだろうか。

 

「ならいい…第一部隊の2個小隊をそちらにまわす…計画は愚鈍な者共に悟られてはならない」

 

ヴォルツは姿勢を正しながら画面の向こう側にいるユイトに敬礼をする。彼の纏うものは18の青年が出せる雰囲気ではない…一体どれほどの経験を積んできたのか…。

 

「ありがとうございます、では」

 

工場の地下、本来ここでは大量の食品が加工されていたが今はMSの武器、機体の開発と製造を担う小さな基地の一つだ。地上は完全に廃墟だが地下は最新技術の宝庫である。

通信を終えたヴォルツは通信室にある窓から格納庫を見やる。そこには自身の機体であるサザビーとザクⅢ、ドライセンが各一機ずつ整備されていた。

 

「世界は変わる…比喩でもなんでもない…変わるのだ……」

 

その奥、頑丈なハンガーで拘束された機体が…それぞれ異なるカラーリングをされた3機のMS、ヴォルツには主を待ち続ける餓獣に見えたのだった。

 

ーーーー

 

「IS学園の方はもうすぐクラスマッチだろうな」

 

「あぁ…天災の無人機襲撃事件か」

 

司令室の椅子に座り込んでたユイトはたまたま緊急事態の際に訪れていたリョウと話していた。

五人とも元々はISがラノベとして発刊していた世界の住人だ、多少の差はあれど原作については知識を持っている。

 

「現在において計画は順調に進んでいる…最大の難関は天災こと篠ノ之束を始末できるか否かだ」

 

正直なところ、束の居場所はだいたい検討が着いていたが確信が欲しい…だからこそ、こちらから挑発する必要があった。

 

「なるほど、邪魔をすれば穴から出てくるって寸法だな…」

 

「出て来なくとも、なんらかの動きがあればそれでいい」

 

相変わらず考えが行き届いてるユイトにリョウは感心する。

 

「人選はおまえに任せる…だがこちらは同じく1週間後にカゲトと大量の新人を連れてオーストラリアに行かなければならない」

 

「それに二番隊は全て私と共にロシアに行くからな…」

 

ユイトとリョウの会話に割り込んできたのは寝ていたはずの参謀長のハルトだった。

 

「本部の戦力の三分の一を持ってくのか…」

 

「研究所潰しだ…それと"仕込みをしにいく"」

 

「なるほどなぁ…」

 

革命軍の戦力は大きく三つに分かれている。強化人間こと研究所出身者と元軍人の一部を主とする一番隊、元軍人を主力とする二番隊、元少年兵と元孤児を含む一般の志願兵を主とする三番隊だ。

 

ちなみに三番隊がMSパイロット数だけで200近くいる。パイロット予定者を含めれば350にも及ぶ。

 

やろうと思えば小国一つ焼け野原にできる戦力だ…しかし現在、MSの生産が追いついてない状況でとある裏取引でMS生産だけの施設をカナダとオーストラリアに作ったばかりだった。

 

「だから避ける戦力は余りない…お前なら一人で無人機を潰せるだろう?」

 

「まぁな、じゃあ…ガンダムMK-Ⅴを連れてくぜ」

 

「織斑マドカだと?」

 

リョウの言葉にストップをかけるのはハルトだった。

 

「織斑がどっちもいるIS学園に近づけるのは得策じゃない」

 

「ずっと軟禁状態なんだ…外の空気を吸わせてぇし、信頼できる材料をつくらなきゃな」

 

織斑マドカ…元亡国機業(ファントム・タスク)メンバーでしばらくの間革命軍の手によって軟禁状態にされていた人物だ。

 

「分かった…アイツに無人機の破壊をさせろ」

 

「ユイト!」

 

ハルトはユイトの判断に異を唱えるが彼が声を大きくして話し続けるのを見て黙り込む。

 

「ただし!もしもの時はお前の判断で殺せ…」

 

「分かってるよ…」

 

その言葉にリョウはさも当然のように答える。しかし次にハルトが発した言葉に思わず非難の声を上げてしまう。

 

「本部から直接の移動手段がない、お前たちは二人でアメリカから飛行機に乗って日本に向かってもらうから」

 

「ハァ!!」

 

「デート楽しんでこいよ」

 

「チキショー!はめやがったな!!」

 

リョウの叫びを聞きながらユイトとハルトはニヤニヤしながら彼を見るのだった。

 

ーーーー

 

その頃、ケイはアメリカで買ってきたお菓子を子供たちに配っていた。

 

「ありがとう!ケイにぃ!」

 

「ほらほら」

 

ここには小学校高学年ほどの子もいる。施設に行くのを拒否した子どもたちだ。他の隊員の癒やしにもなっているため無理には追い出さなかったのだ。

そんな子たちにお菓子を配るケイ、相変わらず大食らいですぐ無くなってしまうのが考え物だ。

 

「ユイにぃが買ってきてくれたの?」

 

「そうだよ、頼まれてねぇ」

 

小さい子たちと触れていると自然と口調が柔らかくなる…不思議なものである。

 

「カゲトにみせつけよう!」

 

「カゲトにじまんにしよう!」

 

「カゲトどこ?」

 

何故かカゲトだけ舐められている事実、一体彼は何をしたのだろうかとケイはつくづく思う。彼の自称妻ことケイニ(カゲトは否定)は人気なのだが…。

 

「本当にどうしてだろう…」

 

そんな疑問を余所に子どもたちは無邪気に御菓子を頬張るのだった。

 

ーーーー

 

革命軍施設の一角、主要ブロックから外れた位置に軟禁エリアがあった。部屋はまぁまぁ広く、テレビやパソコン等の設備も充実しており普通の部屋より豪華な部屋に織斑マドカがいた。

 

ピー

 

短い電子音の後に扉が開かれる。その様子をマドカはジッと見つめていた。そこから現れたのはユイトとリョウだった。

 

「元気そうだな、織斑マドカ…」

 

「あぁ…おかげさまでな」

 

皮肉たっぷりの返事もどこに吹く風、ユイトはマドカから目を離さずに話を続ける。

 

「作戦に参加してもらう…リョウと二人でな」

 

「いいのか、私がソイツを倒して逃げるかもしれないぞ」

 

「亡国機業がほぼ壊滅状態な今、お前が頼れるところはないに等しいと思うがな…それにお前にリョウは倒せない…分かっているはずだ」

 

「……」

 

マドカは相変わらずユイトを睨みながら沈黙する。見透かされているような感覚を感じていた彼女にとって彼は絶対的なものに見えていた。

それにこの革命軍にくだったのも理由がある。

 

「今回の任務をキッチリこなしてきたら織斑一夏を殺しに行っても良い…部下もつけてやろう」

 

「ッ!本当か!」

 

「ただし、今回の任務はIS学園の防衛だ」

 

ユイトの言葉にマドカは頭が沸騰するのが分かった…しかしそれと同時に末恐ろしいものが後ろから睨んでるような薄ら寒さも感じていた。

 

「踏み絵か……」

 

マドカの言葉にユイトは静かに頷く。彼女は考える、これは好機だとこれさえキッチリとこなせば自由な行動が取れる。だがそれと同時にヤツの軍門に完全にくだった事を意味する行動でもある。

 

「分かった…指示に従う……」

 

彼女は同意した。プライドより結果を優先させた行動だった。彼女自身も高性能機が得られるのは願ってもないことだったのも事実だから。

 

「歓迎しよう織斑マドカ、革命軍にようこそ」

 

「織斑マドカ…アナタの指示に従うことを誓おう」

 

頭を垂れるマドカの姿を二人は静かに見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




亡国機業の話は後々にしていきますので今はこんな感じで。
活動方向の方でアンケートを取ります。出て欲しいMSなどありましたらご意見をください。(主に宇宙世紀系だと助かりますアナザーは知らないのもあるので)

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