空と海と大地と交差する世界線   作:駒込てとら

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不穏な空気

心地よい潮風が肌を撫で、人々の賑わう声があちこちで聞こえてくる。

町の人々は見慣れぬ二人の姿を見るなり不思議そうな顔をしたが、積極的に関わろうとはしないようであった。

 

「港町かぁ、そういえば来た事なかったなぁ。」

 

ぐっと伸びをしながらしっかりとその爽やかな空気を吸い込んでいるピットを横目に見ながら、自分の探し人を目で探す。

 

「オレ達は適当に歩いてるから、先行って来な。お前も用があったんだろ?」

「え、あー・・・でも」

「Don't worry.それに、目立つようなヘマはしないさ。」

 

存在が既に目立っているんじゃ、と反論したかったのだが、やめておくエイトであった。

彼らならなんとかやり過ごしてくれるだろうという気持ちがあったからなのだが。。

 

「じゃ、行ってくるよ。」

「気をつけてなー!」

 

ピットはそんな二人をよそに、港町の涼しげな風を満喫していた。

だが、エイトと別れてからすぐ、彼の懸念は現実となった。

 

「・・・やれやれ、すっかり見世物か何かになってるみたいだぜ?」

「みたい、だね・・・。」

 

二人は若者たちに囲まれていた。

 

「さて、あいつには悪いがちょっとばかりずらかるぜ!」

「え、ちょっと何・・・うわぁぁぁぁぁあ!?」

 

ピットの言葉をよそに、ソニックは彼をすぐさま抱きかかえ、あっという間にその場から消え去った。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「Sorry.驚かせちまったな。でも、ここで色々と厄介なことになりたくないもんでね。」

 

目を回しているピットを芝生に転がし、自分も門の前で寝そべってみる。

確かに、ここに吹く風は心地いい。

 

「あ、ごめんね!やっぱりここにいたんだ。」

「用事は済んだのか?」

「うん、まぁね。あと、君たちの仲間についても大体情報がつかめたよ。」

 

ポルトリンクから出てきたエイトがソニックと話す。

早速エイトが仲間について情報を手に入れたようだ。

 

「昨夜近くの砂浜で見かけたのは三人、一人は翼があって、もう一人は小さく、残る一人はマントを羽織っていた、か。」

「間違いない、ブラピだね。」

「へへ、オレも間違いないな。知り合いもこっちに来てる。」

 

エイトから聞いた情報で、二人は仲間もこちらに飛ばされていることを確信する。

そして、彼はもう一つ、鞄から拳大の宝石を取り出した。

 

「それって・・・」

「カオスエメラルド・・・!なんでここにあるんだ?」

 

エイトはこの宝石をとある人から譲り受けたらしい。

この世界にはもともとなかったものであると、その人は思っていたのだろう。

 

「・・・なるほど。」

 

ソニックはにやりと笑みを浮かべ、エイトの手からその宝石を攫うように手に取る。

 

「こいつがここにあるってことは、そういうことだな・・・?」

「それって、どういう・・・?」

 

状況が飲み込めないエイトが率直に尋ねた。

ソニックは彼にこの宝石―カオスエメラルドについて軽く説明してみせる。

 

「このカオスエメラルドはオレ達の世界に7つしかない石なんだ。しかも、ひとつひとつにものすごいパワーが秘められていて、いつも争奪戦に―っと、今はこの辺は関係ないか。」

「確か、七つ集めると奇跡が起こるだとか・・・だったっけ?」

 

ピットが以前の記憶をうっすら呼び覚ましながら自信なさげに補足した。

ソニックはエイトに解説を続ける。

 

「で、その一つがここにあるわけだ。つまり・・・」

「つまり?」

「カオスエメラルドが7つ、この世界に来ちまってるってわけだ。」

 

ソニックは大体こう考えた。

カオスエメラルドを集めていれば、いずれ帰る方法が見つかるのではないかと。

 

「でも、本当にそれで帰れるの?」

 

エイトは心配だった。

いくら奇跡を起こせるとはいえ、世界線を越えることが可能なのかと。

 

「オレ一人の力じゃまず不可能だな。だが・・・」

 

暫定的に、今ここに飛ばされて来ているのは先ほどエイトが聞いてきたあの三人。

そして、ソニックがここに来るまでの記憶を思い起こしてもあと一人。

 

「・・・あいつらの力を借りれば、なんとかできそうだ。」

 

確証はない。だが、やってみる価値は十分にある。

 

「とにかく、一度城に戻ろう。情報は入手できたんだ、このことを王に伝えなくちゃ。」

「O.K.じゃ、一旦戻るとしますか。」

 

そして三人はエイトの呪文で再び城へと戻っていった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

リーザス村近辺。

二つの組は無事合流することができた。

 

「んじゃ、こっからどうするんだ?」

 

ブラピを除く4人は無事に知り合いと再会でき、会話しているところに彼が割って入った。

当然、後はこちらに飛ばされた残り二人、ピットとソニックを残すまでだったのだが。

 

「どうもあの二人の情報が手に入らんな・・・。」

 

そう、現時点で誰も、彼らの目撃証言を耳にしていないのだ。

シグとあやクルはおろか、シャドウにシルバー、ブラピまでもが、彼らの居所について一切つかめていない。

 

「合流したのはいいが、こうも手がかりなしではな・・・。」

 

ふと、シルバーが上空に浮遊し、塔の向こうに見える水平線を眺めていると。

港の方から、蒼い光が空へ放物線を描いている。

 

それを見逃さなかったシルバーが降りてくるなり、4人に提案を持ちかける。

 

「なあ、一回港に行ってみないか?」

「港と言うと、オレら3人が会ったところの近くだな。」

 

ブラピが港と聞き、その時近くに見えた灯台を思い出しながら独言する。

それだけだったのだが、シルバーが蒼い光の放物線を見たというのが気になり、一行は港町―ポルトリンクへと向かうことにした。

 

したのだったが。

 

案の定シルバーやシャドウ、ブラピの姿を見て人々は物珍しそうに眺入っている。

それでまたかと察したあやクルが単独で港町へと入り、情報をかき集めることになった。

 

案の定、情報はすぐに集まった。

エイトという青年が天使と不思議な生物を連れてトロデーンに飛び去るのを見ていた人がいた。

そして、シャドウが持つ緑の宝石、カオスエメラルドのことも。

 

「・・・つまり、ソニック達を連れて向こうの大陸まですっ飛んだ、ってことで間違いないんだな?」

 

シルバーが簡潔にまとめた。

一同が頷くとシルバーはため息と共に言葉を続ける。

 

「オレとシャドウはともかく、あんたたち3人は飛べないんだよな。」

「ああ。少し前まではオレも飛べたんだがな。」

 

シルバーが浮遊しながら3人に尋ねた。ブラピは振り向いて自らの漆黒の翼を眺めながら肯定し、残りの二人も無言で頷く。

 

あやクルとシグはもともと飛べず、天使のはずのブラピはコピー元であるピットが飛べないがために飛べない。

シャドウはホバーシューズのブースターを起動して浮遊しているものの、そこまで浮力はなさそうだ。

 

「・・・まさかオレひとりに3人運べなんて言わないよな?」

「でも、そうせねば遠い大陸になど届かぬぞ?」

 

あやクルがシルバーに無茶を言った。

そうでもしないと、定期船を使わずに5人全員遠く離れた大陸にたどり着くことなど不可能でもある。

 

「いや無理だって!3人同時に持ち上げることはできるが、自分を浮遊させながらは流石に無理だ!」

「じゃあどうすればよいのだ!」

「お前らちょっと落ち着けって!」

 

いがみ合うシルバーとあやクルを止めにかかるブラピ。何かと苦労人している彼だったが、目の前の場景に気をつかいすぎて、周りで起きた些細なことを、シャドウに言われるまで見落としていた。

 

「いがみ合うのは勝手だが、それより彼は何処へ行った?」

 

シャドウのその言葉で一同ははたと周りを見回すと

 

 

 

・・・シグの姿が消えていた。

 


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