空と海と大地と交差する世界線   作:駒込てとら

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超能力と魔導

今、自分たちがどこにいるのかも分からないまま、ただふわりふわりと上空を飛ぶ二人。

 

一方は左腕が紅く大きく、そして、それに対応するかのように同じように赤い左目を持つ少年。

彼自身は全く気にしていないようでもあった。

 

もう一方は、人間と比べれば小さく、銀色の体色をしたハリネズミの少年。

今二人が飛んでいるのも、この少年の能力のおかげである。

 

「随分な時間を飛んでいた気もするが、知り合いはいたか?」

「いないー。」

 

シルバーの質問に青い髪の少年、シグの間の抜けた返事が返ってくる。

 

「そうか、どこにいるんだろうな。オレの知り合いもまだ見つからないし。」

「そうなのか」

 

そこで、二人の会話は途切れてしまう。

しかし、再びシルバーが話題を振った。

 

「なぁ、あんたの世界って、どんなところなんだ?」

 

ぴこっ、っと少年の頭のアンテナが一度揺れる。

 

「楽しいところ。」

「あ、いや・・・もっと具体的に言ってくれないか?」

 

抽象的すぎてさすがに理解し難い。

戸惑ったシルバーにシグが話し始める。

 

「ムシがいっぱいいる。」

 

シルバーは思わず抱えているシグを落としそうになった。

 

「そ、そうか・・・。」

 

彼は苦笑いするしかなかった。だが、おかげでシグは相当なムシ好きだと分かった。

ムシが絡めばきっと今探している知り合いのことも忘れてしまいそうなくらい。

 

正直、あてなどなかった。

先ほど寄った街では姿を見られる度に陰で何かを言われ、子供たちに至っては

その辺に転がっている石を投げつけてくる始末。

 

なんとかシルバーが超能力を使って防いだため当たりはしなかったが、余計に怖がられてしまい、その街にはいられなくなってしまった。

 

おかげで知り合いの情報はなし、この辺りを手当たり次第に飛び回るしかなくなってしまったために今彼らはこうして空を飛んでいるのであった。

 

だが、それも束の間である。

突然、ふらりと身体が揺れた。

 

「悪い、ちょっと休んでいいか・・・?」

 

シルバーの能力が限界に来たらしい。

完全に疲れきった彼の息遣いを聞き、シグはそっと頷く。

 

二人はふわふわとゆっくり木陰へ降りた。

 

「大丈夫か?」

「あ・・・あぁ。」

 

木に身体を預け、ゆっくりと深呼吸をするシルバーに、シグは声をかける。

彼が回復するまでしばらく時間がかかりそうだ。

 

そよ風で木々が揺れる音に癒されながら、自然に瞼が降りてくる。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

ふと気がつけば、すっかり日は落ちてしまっていた。

辺りには巨大なコウモリなどの魔物たちが蔓延っている。

 

一匹こちらに気づいたようで、まだ心地良さそうに眠っているシルバーへとそのコウモリは向かってきた。

シグは初め置かれた状況を理解していなかったようだが、向かってきたそれに敵意があると判断すると、

右手をそのコウモリに向けて指差し、こう叫んだ。

 

「シアン!」

 

指先から淡い青の光がコウモリへと飛ぶ。一瞬ひるみはしたものの、撃退することは叶わなかったようだ。

それは標的をシルバーからシグへ変え、再びこちらに向かってくる。

シグはそれにもひるまず反射的に詠唱を続けた。

 

「ラピスラズリ!」

 

先ほどよりも激しい光がコウモリを包み込み、消える。

シグは思わず地面に座り込み、ため息をついた。

 

どうやら先ほどの光でシルバーも起きたらしい。寝ぼけ眼のままシグの元へそっと四つんばいの状態で近づいてきた。

 

「悪い、助かったぜ。」

 

疲れ切って返事すらしないシグをそっと背負いあげ、シルバーは目の前の道を来た方向へ戻り始める。

背後に人の気配がし、ふと振り返った。だが、そこにはだれもおらず、ただ風が吹きぬけるのみだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

翌日、二人は追い返された街の門付近で夜を明かした。

幸い誰の目にも止まらない場所だったため、特に何も騒ぎは起きたりしなかった。

 

「・・・おはよ、シルバー」

「あぁ、起きたのか?」

 

壁にもたれ掛かりながらシルバーは目を覚ましたシグに声をかける。

 

「ここまで戻ってきてしまったが、あの近くに村があった。そこならなんとか話を聞いてもらえそうだ。」

「そうなの?」

 

空を仰ぎながらシルバーはそう話し、

シグはまだ少し眠そうに目をこすりながらそれを聞いていた。

 

「そう言えば昨日のあんたのそれは、何なんだ?」

「・・・これ?」

 

シルバーの唐突な質問にシグはそっとその力を具現させてみた。

彼の指先に小さな淡い、青い光が揺らいでいる。

 

「オレのこの力とは、また別みたいだな。」

 

そう言いながらシルバーもその辺に落ちていた木の枝をそっと持ち上げてみせた。

 

「魔導、って言うんだって」

「魔導?」

「うん。あんまりよくはしらないけど。」

 

そして互いに能力の見せ合いをやめる。

 

「オレたち、少し似てるかもな。」

「そう?」

 

シルバーがそう笑って見せた。よくわからない力を扱っている点では、確かに似ているかも知れない。

 

「さ、行こうぜ!知り合い見つけてとっとと元の世界に帰らないとな!」

「うん。」

 

彼が立ち上がり、景気付けに声を張り上げてそう言ったが

シグは相変わらずの棒読み気味でそう返事を返した。

 

差し伸べられた手を、シグは右手でしっかりと握り締め、

その手をまた、シルバーは強く握り返した。

 


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