無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~   作:たんぺい

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最終話 提督に、『無能』がなったようです

…私は、未だに想うのです。

…人は、『失敗する生き物である』と言う、ごく単純な事が真理と言うことに最期まで気付かない。

…何故なら、気付こうとする度に後悔や恥でその事から目を背けてしまうから。

…或いは、真に気付いたその時に…

 

 

そう言う書き出しで書かれた一通の手紙は、元帥に向けた赤城の直筆のモノだった。

その内容は、『トラック異変』と呼ばれた、赤城もかつて関わりを持った泊地消失異変に対する顛末の事かつ、当事者でもあったパラオや元トラック泊地の事である。

 

…あの、二人の鏡合わせに生きていた英雄の、二度とない邂逅から、あれから8ヶ月が過ぎていた。

それは、自分にとっても色々と我が身を鑑みる切っ掛けだったと思えることだった…と、赤城自身も身に染みた出来事の話だったから…

 

 

 

 

      ~ 最終話 提督に、『無能』がなったようです ~

 

 

 

さて、前回の話からまた大分間が空いて、と言うことで有るのだが。 

話はあのトラック泊地との茶番の様な『交戦』から、更に8か月が過ぎていた…と言うところから、話を進めよう。

その、パラオ泊地の描写を一つずつでも有るが覗いていくことにしよう。

 

 

~食堂~

 

「皆さん、ご飯が出来ましたよ~」

「一生懸命私達が作ったんで、食べてください!」

 

そう、食卓に向けて声を上げるのは、鳳翔と浜風の二人の明るい声で有った。

 

その日の昼飯として出てきたのは、金曜日のカレー。

艦娘達垂涎の、料理上手な二人が作った絶品カレーである。

それを平らげるのは…

 

「やっぱり、浜風や鳳翔の作るご飯は美味しいわね…くやしいけど」

 

そう感想を、珍しく素直に告げる曙と、それに同意するは姉妹艦の朧や気心の知れた五月雨と言う仲の良い駆逐艦や、龍田や由良と言う比較的性格が大人しめな軽巡洋艦達。

そして…

 

「先週末『食べた』あの少年と、どっちが『美味しい』かしら…?」

 

…と、わりと美女がしたらいけない顔のままに、美女がしたらいけない下ネタをぶっこんで、その場にいた全員をひっくり返してきた高雄。

そんな高雄をしばくのは…

 

「…食事中に下ネタは、榛名が許しません!」

 

わりと根っこは真面目な潔癖性かつ、実は下ネタが凄く苦手な…榛名。

そう、あの『トラック泊地消失異変』の従犯だった艦娘の一人、元大本営所属の榛名だった。

そして…そんな高雄の醜態を、陸奥が頭を抱えながら呆れつつ…指パッチンで爆破すると言う、まあ、それがこの頃のパラオの日常の名物の一つになってたりしていたと言う。

 

 

…そう結論から、先に言えば…

 

あの時氏真が言った言い分、『榛名達は釣竿齋に操られて正気ではなかった』と言う建前は、半ば力業では有ったが元帥は通すことにした。

 

榛名達の戦力を完全に失うことは、海軍からしたら大きな損失だ…と言う、利が重視された話ではある。

そして、それ以上に…彼女達の想いを知ってしまい、尚且つ被害者であるハズのトラックやパラオの艦娘達の嘆願を無下に出来ない上に、起きた損失自体が実は最小限だったと言う確固たるデータも有る。

 

そこで、榛名以下数名の『従犯』への処分はと言うと。

丸々二年間の減棒と無償の奉仕活動、立場の降格と言うことで落ち着いた…最大級の、温情措置だったと言うことだった。

 

榛名・飛龍・古鷹・北上・ヴェールヌイの5名は、『迷惑をかけたパラオへの奉仕活動』と言う名目で、最低限は奉仕期間中は在籍する運びとなり…まあ、結論から言えば、わりとあっさり馴染んでいたりした。

あの、ボケが殴り合う魔境鎮守府の中では、まあコイツらでもキャラの濃さは良くて中の上。

…特に浮くことも無く、1ヶ月もしない内に完全に溶け込んでしまい、今では彼女達もすっかり仲良くなってたと言う話である。

 

そんな、飛龍や北上達へと、少し場面を移そう。

先ずは、飛龍からである…

 

 

 

~同時刻、道場~ 

 

 

「でりゃああああ!!!面!面!めぇん!!!」

 

昼休みで皆が休憩中の中、しかし…飯も食わずに、飛龍は竹刀を振りながら絶叫して型稽古をこなしている。

天龍も、そんな飛龍に負けじと、同じように杉村の下で竹刀を振って追随していた。

 

…そう、飛龍や天龍は、あの戦いで己の未熟さを痛感していたと言う。

 

飛龍は、赤城との正面戦闘で肉弾戦で完全に敗北したこと。

天龍は、あのトラックの艦隊が…仮に『人形』としてではなく『艦隊』として向かってきたら、返り討ちに有っただろうことを肌で感じたことが、切っ掛けだった。

まだまだ、自身は未熟者でしかないことに、気が付いたのだ。

特に…元は教導として、指導員を気取っていた飛龍からしたら、火が出るほどの恥だと感じたと言うことだ。

 

そして、そんな自分を乗り越えるために、彼女達は今日も今日とて腹筋バキバキになるぐらいの勢いで訓練にせいを出していた、そうな。

ついでに、修業マニアの不知火も良くそんな彼女達にくっついて、真似っこのように今日も一生懸命竹刀を構えてたりしていたとか。

 

「だからぁ…天龍さんや不知火さんもそうですが、何より飛龍さん、貴女後方要員でしょ…何で殴り合うこと前提なんですか…射撃は何処に行ったんですか…」

 

尚、そんな彼女達を見て、あきれた様な口調でツッコミ入れるは神通だったりした。

 

そう…なんやかんやで、飛龍含めた5人組の『監視役』の名目で、神通はパラオに居着く羽目にもなったようである。

そんな神通は、飛龍達にお握りやお茶を乗せたお盆を運び、昼飯を差し入れながら…ポツリと、ハイライトの無い遠い目でこう呟いた、とか。 

 

「…私、何時になったら本土に帰れるんでしょうか…?」

 

そんな、神通に対して、杉村はこう返したとか返さなかったとか。

 

「…私が借金返しきるよりも、多分ずっと後ですね、うん」

 

なんかヤダァ!と言う神通の悲鳴が、道場に響いたそうな。

 

 

 

~同時刻、執務室~

 

そんなわちゃくちゃしていた道場や食堂の描写の一方…執務室では、と言うと…

 

「う~…ダーリン、酷いデース…」

「青葉ぁ…痛い…」

 

…そんな感じで、金剛と古鷹が、仲良くたんこぶを作りながら正座させられていた、とか。

 

「今は仕事中だ、金剛と、そして古鷹さん…」

 

対するように呆れたように語るのは、苦手なデスクワークにせいを出しながらも、しかし…青葉達に一生懸命に頼りながらそれをこなすあの中将の甥こと、件の元提督の姿があった。

そして、そんな彼に追随するかのように、通康はこう乗っかって来たので有った。

 

「この『提督』たるワシの目の前で…せくはら、と今は言うんかいの?あんまり公私混同したようにくっつきすぎるのはアカンぞな」

 

そう、語る彼は…そう、自分自身で語るように。

白亜の海軍服に身を包み、かっちりした雰囲気で提督用の椅子に座っていたので有る。

 

 

…これに関しては、もう一度あの時、『トラック泊地消失異変』の決着が起きたあの直後ぐらいに話を戻して解説せねばならないといけないだろう。

そう、あの直後…『釣竿齋宗渭を始末した』、そんな直後のこと。

 

氏真は、元帥に連絡が繋がってることを確認するなり、こう告げたのだ。

『提督』は、自分は今日限りで引退するつもりだ、と。

彼いわく、こう言うことだった。

 

「…巻き込まれた側でしかないとは言え、それでも、僕も今回の異変の『当事者』には違いない。そんな当事者の一人かつ一城の将が更に上から川内ちゃん達を庇い立てる以上、此方も何も失うモノは無しとはいかないだろう…僕は、この戦いを以て、あるべき場所に提督の座を譲るつもりだよ」  

 

そう言って…更に甦った元提督の男へと目を向けながら、更にこう続けるのである。

 

「そして…僕自身、今まで彼の椅子を無理矢理奪って座っていたと言う負い目があったことも事実だ。正直、僕も彼を責める口を持てないぐらいに器ではなかったのに、ね。それを、この場で本来は彼に返すべきだろうが…しかし、それは皆望んでは居ないだろう。ならば、捨てるだけさ」

 

そう宣言する氏真に対して、球磨が横から質問する。 

このトラブルの当事者の責任として、従犯者を抱えてしまうバッシングを受けるだろうパラオのダメージへの責任の取り方として提督の座を降り責任を取る…理屈はわからないではないが、後任は誰だクマ?と。

 

そんな球磨を皮切りに、一斉にツッコミが氏真に飛ぶなか…当の氏真はと言うと、実に淡々とした口調で、イタズラっぽい顔をしながらこう返したのである。

 

「そりゃ…こう言うことで後任を探すのは大変なことは僕が一番知ってるさ。誰もが不満を持たず、誰もが納得する新任なんて、そうは見いだせないが…しかし、良く考えてくれ。僕以上の戦闘力や海戦知識が有り、中間管理職的な仕事も文句を言わぬ海軍お墨付きのお人好し。僕が着任して以降出会った艦隊は気心がかなり知れていて、そして…飛鷹ちゃんや隼鷹ちゃんの恩人でもある以上、甦って面識薄い高雄ちゃん達からしても反発は少ないだろう人材が…本来、僕よりもずっと『提督』に相応しい人が、今この場に一人、居るだろう?」

 

そう言って…じっと、氏真は一人の男に目を向け、残された者達も氏真の視線に追随する。  

 

「わ…ワシかいな、今川殿ォ!?」

 

…通康、村上水軍の長の一人で有った村上通康だった。 

 

そんな理由で選ばれた通康本人は、当初はいきなりのことで反発はしていたものの。

艦隊の誰からも…それこそ、元提督が好きな金剛やファザコンの極みの加賀ですら、反対の声はまるで上がらない。

考えてみたら氏真が言うように…他の誰でもなく、自他共に認めざるを得ない『パラオの提督』の座に座るには相応しい、正にあるべき場所に座る逸材だった。 

 

元帥にして見ても、海軍からしたら失っても懐はあまり痛まない『拾い物』でありながらも、現場から人気も有り実力も有り、後ろぐらい部分の無い彼を新たな司令官にすることに異議はなく…

結果、氏真が降りると宣言してから6日後、新たな海軍籍を手に入れた通康は『提督』へと座に着くことになったのである。

 

    

そして…そんな処理で入れ換えで氏真が通康の下につき、一方で宙ぶらりんになった元提督さんはと言うと。

当初は彼は在野に下り、音楽関係の仕事に就いて勉強し直しながら一般人として生活しようとしたのだが…それをワガママ言って止めたのが、金剛だった。  

 

折角出会えたのに、すぐサヨナラは嫌デース!とは彼女の談。

そんな、感情的な癖に普段は自分を殺して他人を優先するタイプの金剛が、珍しく自分の為だけに駄々をこねていた姿を見て…彼は結局、また流されることになった。

 

提督では無くなった氏真と同じ様なデスクワーク要員として、文字通りの社会復帰を兼ねた様に、一から軍人として勉強し直すことを宣言して、一兵卒からやり直すことになったので有った。

今度は『提督』ではなく艦娘と同じ目線の一人の新兵として、誰かへちゃんと頼ることの強さと仕事を覚えて成長することの楽しさを学ぶために、だ。

 

今では、提督だった頃よりずっと余裕も出てきて話しやすくなったとは、陸奥や龍田の談。

まだまだ失敗ばかりで未熟者の半人前ではあるが、とてもイキイキと軍務を取り組んでる様だ。  

だが…時に、睦月や青葉に手伝って貰いながらの仕事中に邪魔するバカも居たわけで…

 

「仕事中に股関触ってくるの止めれ金剛!」

「まだ駄目なんデスかー!?」

 

例えば、最近だと幸せ過ぎてやたらと毎日調子に乗り出して…意中の相手が前に居ると時と場所をわきまえなくなった金剛。

 

「古鷹さんも、青葉の仕事中に胸揉んでくるの止めなさい!」

「だって…重巡力が最近たりてなくて、つい…」

 

後、艦娘にセクハラする艦娘、何時もの古鷹とか浜風とかもおまけだったりしたが。

 

 

「…古鷹さんも、金剛さんも、あの二人は別にプライベートは嫌とまでは言ってないので、夜まで待ってくれ…俺からのお願いだよ」

 

そして…今日も今日とて、正座やたん瘤でプルプルしながら通康達に怒られてる彼女達のフォローをこなすのは…

 

「おーい、秘書艦さま~!また『雷巡のポーズ』が崩れてるぞ~、これじゃまだまだ雷巡の極みには到達出来ないな~」

「…!すみません、直ぐ構え直します北上姉さん!」

 

…等と、姉から茶々入れられながらも、本当に馬鹿みたく秘書艦として頑張っていた木曾だったとか。

尚、木曾のフォローにテンション上がっていた金剛と古鷹に対して、被害者二人は無言で権兵さん通報用のスイッチを16連射してたそうな。

 

さて、本題に戻すが、提督が氏真から通康へと変わる際、秘書艦はどうなるかと言う話にもなったりした。

当初は睦月のままでも良いか、と言う話にもなったのだが、睦月本人の希望で彼女は秘書艦の座を降りることになった。

そう言った部分では、睦月の中では氏真と一蓮托生…と言うことだったかも知れない。

彼が提督の座を引くならば、睦月だけが高い椅子に座るのが嫌だったのであろう。

 

そこで、誰が次の秘書艦か、と言う話になった際に満場一致で決まったのが木曾だった。

 

文字通りの通康の生え抜きであり、性格もドMながらも優しくクソがつくぐらい真面目な性格。

わりと文武両道かつ、料理も上手い家庭的な面もある。

いなせなようで、根っこは素直で女性的な感性も強い…と、秘書艦として、わりとパーフェクトな娘だったのである。

 

…唯一、或いはそんな彼女に難点があったとしたら…

 

「むぅ…北上さんにからかわれてるわよ、貴女。とりあえず、私の言うこと聞きなさいな!」

「飛鷹姐さん、ちょちょ!この不安定なポーズに袖とマント引っ張らないでくれ、こけるから!」

「ダメだよ~私が、雷巡の先輩なわけでさ~…あのサイコパスに片足突っ込んでる脱ぎ女より、このハイパー北上様の指導のが大事だって」

「姐さんをサイコパスな痴女呼ばわりするの止めたげて北上姉さん!?」

 

…まあ、うん、木曾の廻りに百合の花が咲いてるのか微妙だが、兎に角色々と人間関係が複雑なバランスで崩壊寸前な渦中に居ると言うことだったとか。

付き合いが、まあ本当に濃くて長い飛鷹や、木曾に悪気0ながらも戦闘中に口説かれて以降好感度Maxな北上を筆頭にしてでもあるのだが…色々木曾に拗らせてる感情が有る艦娘は、パラオには実は結構いたのだ。

 

見た目が男性陣より下手にイケメンかつ、素のしゃべり方がわりとヅカじみていた部分の強い木曾。

性格も見た目に反して優しくフレンドリーなタイプであり、ワガママにも付き合ってくれるタイプでもある。

『秘書艦』として表舞台に立つのなら、そう言う長所は氏真時代から大幅にピックアップされる部分でもある。

青葉ァが仕掛人で…そんな木曾のファンクラブが出来ちゃったぐらいに、だ。

 

…そんな、時々匿名の病んだ内容のラブレターも来たりして艦娘同士での関係に時々戦慄が走ったりする木曾がいつも『旦那』の隣に居る、カオスな執務室を、少し離れた場所で煙管をふかしながらゲラゲラ笑っている艦娘が一人居る。

隼鷹だ。のんべの彼女の最近の酒の肴や煙草のアテは、鎮守府のカオス過ぎる光景だったと言う。

 

そんな隼鷹は、執務室に迷い込んだ子猫二人を優しく抱きながら、ゲラゲラ笑いつつこう続けるので有った。

 

「ハッハッハ…いやぁ、提督様が艦娘に迫られてる鎮守府は山ほど有っても、書記の男がセクハラ被害者で 秘書艦がハーレムじみた人気者になる鎮守府なんて古今東西ウチだけだよな~いやぁ、蚊帳の外から見る分には楽しいわ、見てて飽きねえ」

 

そう壁際に立ちながら、隼鷹も色々縁深い面子がはっちゃけてる姿を肴に弄りつつ、ふと彼女は人間関係が複雑骨折しかけていた別な連中の二人の事が頭に浮かぶ。

そして…こう、ポツリと呟いたので有った。

 

「…ハーレムって言えば、あの二人の決着は付いたのかな?夕張さんや瑞鳳さん」

 

そう、同じ男を好きになった二人の貧乳コンビ、夕張と瑞鳳の事である。

 

「…気になるのはわからん訳や無いんやど、それはほうと、暇ならお前も仕事手伝えや、隼鷹」

「…ああん、旦那のいけずぅ!」

 

…と、隼鷹が通康に引き摺られながらデスクに連行されたりすると言う描写を最後に、パラオの執務室の描写はこの辺りで抑えるとして。

では、パラオに残らなかった面子、夕張・瑞鳳・川内・時雨の四人の内、夕張と瑞鳳にカメラを向けることにしよう。

 

 

 

~大本営、海軍本部技術開発部一角~

 

…さて、そんな夕張と瑞鳳が何処に居るのかと言うと、結論から先に言えば本部の開発部廻りに一時的な異動をさせられていたと言うことだった。

そんな、夕張達がどうしてるのか、と言うと…

 

「夕張さんずるいよ~今日は、私が卵焼きのお弁当作ってきたのぅ!!」

「って、瑞鳳に任せてたら卵焼きしか弁当箱に詰めないじゃないの!堀越さんの身体に悪い弁当より、私の方が良いに決まってるでしょ!」

 

と、こんな感じで左右から引っ張りだこ状態の堀越が、今日も今日とてトライアングラーに苦笑いするしかなかった様だったと言う。

 

「あの…私の仕事の納期が近いから、とりあえず喧嘩してほしくないんだが…」

 

そして…渦中の堀越はと言うと、そんな板挟みに頭を抱えるのが日常茶飯事だったのである。

   

 

さて、何故堀越が大本営に移籍したからと言うと、要は川内達の減刑の人身御供と言うことだった。

堀越自身が言い出したこと曰く、自分の経験値や技術力の無償提供、そして、自分が只働きする奉仕活動の見返りとしての恩赦を海軍に頼り…結果、それは受理される運びになった。

海戦技術に引き換えて、空戦技術が深海棲艦のせいで妙に遅れてる日本にとっては、堀越の持つ航空開発者としての経験値や発想力は喉から手が出るほど欲しかった以上仕方ない話ではあったのだ。

 

そう、川内達の減刑の裏には、堀越の身を削るアイディアこそがあったからでもあったと言うことだ。

それだけ、貴重かつ優秀な彼の身柄その物が、恩赦を与えることの大義名分にも繋がる話だったりもしたと言う話だった。

 

そして…堀越自身の指名の下、夕張と瑞鳳は技術開発部へと異動をする運びになり、実戦からやや離れた場所では有るものの、特に工作好きな夕張からしたら毎日楽しすぎる開発部での仕事に、給料は3分の1以下になりながらも従事することになったと言うことだった。

 

…尚…

 

「と言うか、今日のお昼ご飯は明石さんとディスカッションするついでにレストランで取る予定だったんだが…」

「「浮気は駄目ぇー!!」」

 

仕事柄、工作艦な明石とも良く付き合いがあったりする堀越は、彼女とも絡むことも多い。

良く考えなくても仕事の付き合いだけで浮気ではないのだが、明石の名前を出す度にキレる夕張と瑞鳳に困惑することが、最近の悩みだったりしたとか。

 

一方、川内や時雨はと言うと…

 

 

 

~新設トラック泊地、作業場~

 

「ふひ~…天下の隠密部隊が、今じゃすっかり土木作業員だよね」

 

そう言って、工事用の作業服を着ながら、時雨は今日も今日とて指定された場所に土嚢や角材を運んでいる。

そんな、土木作業員じみた仕事をしながら、埋め立てられた大地を綺麗に舗装する時雨に向かって声をかけるのは…

 

「おーい、時雨!自分、飲み物持ってきたぞ!」

「…あ、島田さん、ありがとうございます」 

 

時雨達にくっついてきた、島田だった。

 

実は、身柄の保護で色々突き詰めていた際のこと、当然ながら島田のやらかした逃避行もばれてしまったのである。

本来なら、強制送還からの拿捕が適当でもあったのであるが…まあ、艦隊からの嘆願や島田がそもそも公的機関に頼れなかったと言う事情や戦闘力を天秤にかけて、元帥から司法取引が持ち上がったのである。

海軍の権力を使い、公的機関による身柄の保護と借金の一本化…と言うか自己破産の成立と、ついでに密入国に目をつぶる恩赦を引き換えに、トラック泊地再建事業の従事の仕事をこなすことがその取引の内容だった。

 

一も二もなく、願ったり叶ったりな元帥の言に感涙しながら従うことになった島田は、川内や時雨と共に新たなトラック泊地のギアの入れ直しをかねて、その再建事業に黙々と従事することになったのである。

 

…尚、余談ながら。

 

「…川内さん、プレゼントだよ」

「やったぁ!差し入れだぁ!夜戦には補給が必要だよ、ありがとう時雨!いただきま…ぐへぇぇえ!!!!?あっま、まっず、お前…謀ったなぁぁぁぁ!?」

 

ゴウランガ、ヤセン・スレイヤー=サンは爆発四散…とばかりに、例の毒飲料は相変わらず島田は手放してなく、彼女の渡すドリンクはとても危険なのである。

 

と、そんな時雨の神回避と死にかけてるヤセン・スレイヤーとおろおろしてる島田の三人に向かい、何しとるんだと言う、呆れた渋く響く男の声が強く響く。

そこには…

 

「…あ、破戒僧さん、相変わらずだね?」

 

…『始末』されて死んだハズの、釣竿齋宗渭が居たのである。

 

 

何故、彼が五体満足でまだトラック泊地に居るのかと言うと…それは、彼が『始末』を受けた、そんな顛末全てを語ってこそだったのであろう。

そう、『決着』のあの時から…少しまた、話が巻き戻して語らざるを得ないだろう。

 

 

実はあの時に降り下ろされた氏真の剣は、しかし釣竿齋の身を通ることはなかった。

寸止めで、彼は『一の太刀』を抑えたのだ。

 

キョトンとする釣竿齋と、ヒヤヒヤしながらも結局人が死なずに済んだことにとりあえず安堵する周囲を尻目に、氏真は淡々と釣竿齋に聞く。

逃げ出したり、しなかったな、と。

 

馬鹿にしてるのか、と、侮辱してるとも取れる氏真の言にイライラする釣竿齋だったのであるが…動じずに氏真はこう返す。

もし、逃げ出そうとしたり見苦しく反撃するつもりだったなら、それこそ斬っていた、と。

そして…口調を一変させて、氏真はゲラゲラ笑いながらこう話を始めたのである。

 

「加賀…いやぁ、『手札』が無い、なんて言っていたが…お前は生真面目すぎるよ。こう言うときの手札は、何も自分達だけから使う義理はない。足りないなら、他所から組み合わせたら良い…そう言う老獪さを、今から見せてあげるよ」

 

そう切り出したなり、氏真は更にこう告げる。

『釣竿齋宗渭』を殺すのに、首も死体も、証拠すら要らないから…ね、と。

なんだそりゃ、と言う残り全員を尻目に、氏真は更にこう続けるのである。

 

「…結論から先に言えば、川内ちゃん達の計画の外の副作用や、これは神通ちゃんや赤城ちゃんがとんでもない失敗をしていた事でもある。そのせいで、怪我の巧妙が起きてるのさ…ハッハッハ、いや、これは責任で言えば、僕自身が一番の失敗をしているが、兎に角も順繰りに彼の軌跡と僕らの全てをもう一度全部振り替えれば…うまくいくことさ」

 

そう言われ…赤城と神通が不審がる中、しかし氏真は気にもせずにこう本題を切り出したのである。

ソレは、確かに筋は通っていた物の、その場にいた全員の発想から外れていたとんでもない話だった。

 

「もう一度、簡単に『釣竿齋宗渭』の人生をふりかえろうか…先ず、誰にも見つからないように山奥で暮らしていた彼は、ひょんな事から国外へ密航、そして『正体不明の拉致犯』として現地で働き、そのまま正体を明かさないままに今回の計画の実行犯として隠匿したままに行動、そして公の場に現れたのは今日に至ってから、なんだ…さて、ここで問題になるのは只一つ、だね。『釣竿齋宗渭』と言う人間は、ここに至るまで日本の公的な記録に残されているのかな、と言うことさ?」  

 

そう、イタズラっぽい表情で聞き出す氏真に対して、他の全員は、ふと振り返る。 

そして…氏真が言わんとせんことに気が付いた者達が、揃って気付くなり唖然とした表情にならざるを得なかった。 

確かに、その通りだったじゃないか!?と…だ。

 

その気が付いた中の一人として、赤城が代表をかねて、こう答えざるを得なかった。 

 

 

「…そうです、確かに、コレは私のミスが一番原因のヒューマン・エラーです。そう、理屈だけで言えば、確かに『釣竿齋宗渭は記録に無い名無しの権兵衛と同じ』扱いでしか有りません…突如この世界に迷い混んで隠者のように生きていた彼自身の行動や川内達の徹底的な隠匿、雷さん達からは徹底的な情報不足があったせいで昨日までは確実に『釣竿齋宗渭』を記録した公的な媒体は存在しておらず、こと今日に至り慌てて対トラックの迎撃準備に追われてしまったせいで、神通共々『上』に連絡することが今の今にならざるを得なかった…」

 

そう、赤城が呆然と告げる脇から、そんなつもりじゃなかったのですがと言う古鷹が横から口を挟み出した。

 

「…或いは記録が有りそうなトラック泊地だった場所は、深海ごと釣竿齋さんが塵一つ残さずにふッ飛ばしたせいで、足取りが其処から追えません…そうです、誰も知られないようにしてたせいで、誰も足取りが追えなくなっちゃって、やらかした行為や脅威だけは山ほど記録に残ってるのに、未だに肝心の名前と顔が正体不明の宙ぶらりんになってる訳だ…和尚様」

 

…と、二人の解説に対して、氏真は然りとだけ答え…そして、こう締めたのである。

 

「…と、そんな訳さ。僕も『そう』だったから、逆手に取り幽霊みたいにパラオの提督の成り代わりなんてやらかしかけた事もあったように…誰も知られないように動いた怪我の巧妙と、いきなりの交戦に僕らが慌てすぎてたせいで、『誰一人、公的な記録や戸籍謄本に貴殿の名前をつけてる暇がなかった』。そのせいで、現状、記録の上だけでは貴殿は未だに居ないに等しい訳だ…だから、この場に居る全員が死んだと口裏を合わせてしまえば、誰一人、貴殿に咎を与えることも出来なくなってしまうのさ。何せ、『居ない人間』に罰を与えられる人間が、世界に何処にも居るわけもないんだから」

 

そう、淡々と告げる氏真は更にこう続ける。

その辺りに、件の『巻き込まれておきながら、下手人の記録を付けてなかったこと』の責任を取るためと言う理由を表向きの理由として、通康にトップを譲り、提督を降りることを。

 

その辺りを伝えた後、しかし真面目な顔で氏真は再び釣竿齋の喉元に本身を突きつけるなり、こう最後に釘を刺したのである。

 

 

「…無論、釣竿齋殿へ厳罰を求めて僕の意見に異を唱える人が一人でも居たり、或いは貴殿の道が再び正道から離れたならば容赦はしない。僕は…僕個人は、貴殿を一生赦さないのだろう。未だに、雷ちゃんへのやらかした行為や身内を傷つけたことを赦す程は甘くない、貴殿の首を落とすに至り躊躇うことも無いだろう。だがしかし…貴殿にはまだ生かす理由が今は有る、だから今暫くは、首を預けさせるようになんとか屁理屈で手筈を整えただけだと言うことは、ゆめゆめ忘れるな」

 

そう言って…一転して、静かな迫力を滲ませる氏真に、誰もが従うしかなかった。

だがしかし…その言葉の裏に有る彼の底抜けの甘さにこそ気が付いて、誰もが皆は彼の言に異を唱えなかったのだ。

あの元帥ですら、である。

 

 

そうして、記録の中でだけ『大本営の者達やトラック泊地の艦隊を洗脳した大悪人、釣竿齋宗渭』は死んだとされて、結局は『預ける』と称した氏真によろしく、おめおめと彼は生き延びることになる。

そして…

 

「三好さーん!!時雨さん達と遊んでないで、私達を手伝ってー!」

 

そう、彼を呼び止めるは、三日月と言う睦月型の艦娘だ。

そんな彼女達を筆頭に、釣竿齋…否、今は「三好政康」で通している彼を慕う、三十名程は下らない艦娘達がわらわらと彼に集まっていたと言う。

 

…そう、彼女達全員は、元深海のドロップ艦。

彼の術で一斉に浄化されていた深海棲艦の、有る意味成の果てだったのである。

 

氏真曰く、多分ならず加賀や阿賀野や扶桑達みたいな子が、物凄い数になって件の泊地跡に浮いてると思う、と。

貴殿が浄化さしたならば、貴殿が責任をとって面倒見ないと可哀想だろう…

それならば、その元深海棲艦のドロップ艦達が一人前になるまでは、親離れできるまでは首を預けておくよ、とケラケラ笑いつつ釣竿齋に告げていたことを…当の本人は、彼女達屈託の無い笑顔で慕ってくれる元深海棲艦の『娘』達に顔を付き合わせる度に思い出す。

 

そして…そんな愛する娘達や、一蓮托生で妙な絆の芽生えた島田や川内達と言う者達へと恥じぬように、彼は気合いを入れ直してこう吠えたのである。

 

「…応!雷殿にも自慢できるぐらい、より素敵な泊地を再建させぬとな!!」

 

そう言って、彼は三日月達の居る方向へ足を運ぶ。

いつか、必ず近い内に、釣竿齋達はその宣言通りの事を為せるだろう。

 

 

そして、一方、そんな雷達元トラック泊地のメンバーはと言うと…

 

 

 

~同時刻、高知県宿毛~

 

「しっかし…国内はやはり良い、吾が輩トラックよりも気に入ってるぞ!漫画雑誌とかも、週遅れとかじゃなくてその週の内に読めるのは最高じゃ!そうじゃろ提督?」

「…お前初台詞それで良いのか、利根…確かに、日本の仕事の方が親父やお袋にも連絡取りやすいし、色々便利だけどさあ…」

 

と、例の提督とついでに利根さんは、なんやかんや宿毛の鎮守府で漫才していたことはさておいて。 

何故、トラック泊地から高知県に移動したのか…と言う経緯だけは語ろう。

 

まあ、あれから本部で事情聴取を受けた後…宙ぶらりんになってしまった彼等一同だったのだが。

その改めての割り振りの際に、下手したら散り散りになりかねない事態になった際、渡りに船で良い話が持ち上がった。 

国内に新しく鎮守府を建てる計画があって、実はガワだけはある程度出来てるのだが…国内防衛と言う大役に相応しい艦隊と、それを指揮できる人材が不足している。

他所の鎮守府からの引き抜きなども難しい…と言う状況下、戦力的にも状況的にも浮き駒のちょうど良いのが居たならば、そちらが良いのならば是非そちらに艦隊ごと来てくれないか、と。

 

そして…堀越に、彼等の私物の大半は事前にパラオに空輸で預けてもらっていたりしたことも有り、引っ越しは一ヶ月半ぐらいで完了するなり、そちらに根付いて活動を再開したのである。

 

「今日も一日、頑張るじゃない!!」

 

そう言って、音頭を取る、元トラック泊地の筆頭秘書艦にして宿毛鎮守府筆頭秘書艦の雷の元気な声を皮切りに、元気良く、仕事に励むのである。

 

だがしかし…同時刻、そんな雷とは別に、元気じゃないのも居たりした事は、雷達の知る話ではなかったと言う。

 

 

 

~同時刻、大本営、ミクロネシア方面通信室~

 

「な、何故だ…」

 

一人の男が、通信室の中で絶叫していた。

 

「『パパ、絶交よ』ってどういうわけだ、娘よ!?私のパンツを一緒に洗うのが、そんなに駄目なのかぁぁぁぁ!!?」

 

…いや、反抗期かつ色気付いた長女がショックなのはわかるけど、仕事しろよオペレーターさん…

 

 

と、そんなパラオとかの担当の通信士、『Aさん』の苦悩は置いといて。

一方、『娘達』と仲の良い元提督にして主人公、氏真さんはと言うと…

 

 

 

~同時刻、東京、品川~

 

「すっかり、この辺りも変わっちゃったねぇ…」 

 

そう、かつて最期を過ごした地を着流しのような和装に身を包みテクテク歩きながら、氏真は感慨深げに語り出す。

 

「そりゃ、パパが一度死んでから400年は時代が流れてるもん、しょうがないよ!( ̄ー ̄)」

 

そんな彼の言に追随するは、先ずは阿賀野。

 

「けほ…フフフ、それに東京は日本でも一番栄えてる地の一つ、江戸や戦国の名残は無いかもねぇ…」

 

相変わらず、不健康な顔で血糊を吐きつつ、阿賀野の言に乗っかる扶桑。

 

「…そうですね、私達の父さんがあった名残もない…と思うと、綺麗な都会がちょっと寂しく見えてきますね」

 

そして…とりを飾るは、阿賀野と扶桑の二人の『姉』を自称して、氏真の『娘』として色々なついてる加賀の姿だったりした。

 

 

そう、彼等が何をして居るかと言うと、要するに墓参りを兼ねた経過報告をしようと品川の地へ訪れたと言うことだった。

提督の座を降りて、少し身軽になったことをきっかけに…氏真は、十日程の長期休暇を申請して、今一度、かつて愛した妻の眠る日ノ本は品川へ、再び足を運ぶ次第になったと言うことだった。

新たに出会えた『愛娘』の自慢も兼ねて、と言う話だったりもしたのだが。

 

しかし、彼等だけが、品川に向かった訳ではなく…

 

「ふひー…色々、東京って、目移りしちゃいそうっぽい~!」

「そうだにゃ、お土産いっぱい買わないと、天龍さんや吹雪ちゃんが拗ねちゃうのです!あっちの洋菓子屋さんに行きたいのだぞ!」

「…お前ら、はしゃぐ気持ちはわかるけど迷子になっても知らんクマよ!?」

 

…と、夕立や睦月や球磨と言う、氏真が殊更好きなメンバーを中心に、『護衛』を名目に観光気分ではしゃぎ回るプラスアルファも居たり居なかったりしたと言う。

勿論、そんなメンバーの中には…

 

「しっかし、墓参りにかこつけて皆で楽しく東京観光ってのも悪くないねぇ…ビールがうめえや」

 

と、ビール片手に一気しながら、氏真にまとわりついてる加古も当然居たりしたのだが…

そんな、昼間からビールをかっ食らう女子力0な加古をハリセンで叩く『引率者』が居たりもした。

 

「貴女だけ東京のコンクリートジャングルに置き去りにしますよ…馬鹿者」

 

一航戦の双璧で、今は『元』元帥親衛隊かつパラオ所属の、赤城が居たと言う。

さて、何故この子がわざわざパラオに身を寄せて、観光案内人みたいな真似をして居るのかと言うと、あの冒頭の元帥に向けた書き出しの手紙にこそ、答えがある。

…続きは、実はこんな内容だった。

 

 

…真に気付いたその時に、既に最良の結果が訪れて、『失敗』をも既に糧にしているのでしょう。

…今川氏真と言う、『失敗』をも呑み込み誰もが笑える結果を作り出した一人の人と出会い、自分はその事を痛感しています。

…そして、まだ私はその領域に至っていない未熟者なのでしょう。

…そんな未熟者は、元帥様達を守護するに、まだ相応しくはないと想うのです。

…だから、今暫くは彼の下で、その境地に至るまで修業を重ねる事をお許しくださいませ。

 

 

と、そう言った内容からの『氏真の下に仕えたい』と言う、有る意味自分を殺すタイプの赤城には珍しいワガママを…元帥は、結局許可して、赤城は正式にパラオに所属する運びとなったと言う。

そして…表向きはそんな理由で改めての編入に挨拶する運びとなった際、赤城は小声で、加古にだけ向けこう本音を語ったそうだった。  

 

…負けませんとまでは、付き合いの長さの差も有るので言えないですけど…モタモタしてたら、浚っちゃいますよ?と。 

 

はじめはキョトンとしてた加古だったが、事態を理解するにつれて顔を青くする。

まさか赤城さん、それは…!?と。

そんな加古を面白がる様に、赤城は小声のままこう付け加えてたのである。

 

「…好きでもない場所、気に入ってもない人の為に、私は流石にここまで肩入れはしないですよ。うん…こう、事務的に理論武装しないと動けないわ顔にも態度も出せないわなダメ人間の自覚は有りますが、実は、氏真さんが初めて見た時からもろタイプで、一目惚れだったりしたんですが…結果的に、飛龍達を含めて皆が笑顔になれるように手を差しのべてくれたアレで、実はやられちゃいました。まあ…それでも、いざとなれば貴女相手なら身を引く覚悟も出来てますが、ぼやぼやしてると、私が奪っちゃいますよ?」

 

そんな感じで、珍しくイタズラっぽいウインクをかます赤城に、勝てねぇぇぇ!?と女子力的な意味ではスタイル以外ボロ負けな加古が頭を抱える何て言う、そんなライバル関係が生えてたりもしたのだが。

 

…とは言え、加古の性格上、尻に火がついても尚女子力を一行に磨くことなく、ダメなおっさん志向に加古が突き進む度に見かねて赤城が加古をしばくのも、最近のパラオの日常風景の一つになっていたりした。

 

 

そんな二人に対して、加賀が苦笑いで双方に向け呆れ…皆も同じ様に苦笑する。

そして…氏真は、何とも言えない表情になりながら、クックックと笑いを噛み殺しつつ改めて顔を上げる。

その視線の先には…きっと、提督でなくなっても続いていく、氏真だけのドラマが続いていくのだと言うことを、彼自身が吟うように。

 

そう、例えば…

 

 

「む~!アイツ、掛川探しても小田原城探しても、この品川にすら居ないで全然見つからないなんて!どうゆうことよ、この狸と馬鹿!!」

 

若干ヒステリックな表情である人物を探してるキツめの黒髪の美人と…

 

「…御嬢様、その…主が見つからないのは私が悪いのですか、コレ…!?」

 

そんな、ワガママ御嬢様の部下なのであろう、苦労性が顔に出てる様な背の高い細身の男と…

 

「…くっそう、あの馬鹿…要らん時だけ、馬鹿みたいにワシの家に遊びに来まくってた癖に、探してもおらんとは…!」

 

そんな二人に完全に振り回されてある、人骨いやしからぬが神経質そうな表情の小太りの男の三人が…

 

「え…え…!?ちょ、ま…嘘だろ…ええ!?朝比奈さん!?そっちは竹千代だよな!!ちょ、じゃ…君はまさか…は、早川ど…の…!!?」

「「「あ…やっと、やっと会えたぁ!!」」」

 

…氏真に再び浮き世で出会えたりして、艦娘と共にまたまた大騒動が起きる、そんな日常の続きを吟うように、であった…

 

 

 

 

無能転生~提督に『無能』がな「ちょっと待ったぁぁぁぁあ!!未だ、完には早いわよ、このクズ!!」

 

 

…まだ、もうちょっとだけ、はい…

 

 

 

~パラオ泊地、地下???メートル、『秘密基地』内~

 

 

「世界を、赤く染めるために…!」

「私達こそが、世界の『主人公』になるために!」

「私達の野望は、ここから始まるのよ!!!行くわよ…同士、吹雪!同士、ヴェールヌイ!!私達の戦いはこれからだぁ!!」

 

 

…ヴェールヌイと吹雪と霞の3馬鹿は、今日も今日とて元気です。

 

そんな彼女達が発足させた『地下第3髭帝国』が世界を侵略する日は、きっと近い…!

負けるな、ヴェールヌイ!

頑張れ、吹雪!

行くぞ、僕らの霞ママ!!

 

 

無能転生~提督に、『無能』がなったようです~ 地下第3髭共産主義国の野望

 

これにて、完!

 

 

 

「って、アイツら、タイトル乗っ取りやがったにゃぁぁぁぁぁぁ!?」


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