無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~   作:たんぺい

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今回はとてつもないカオス回となります
…ファンの方は、ご注意くださいませ…


六十九話 カオスな世界、終わる世界

前回のあらすじ

なんか蘇ったよ、やったねプロットさん大爆死だよ金剛さん(ガチ)の巻。

 

 

と、そんな訳で、本当に何もかもが予想外な形のままに、かつて逝った者達が無事に帰還すると言う奇跡を目の当たりにした一同はと言うと。

帰還した九人こそ、なんだかばつの悪そうな顔をしていたが…そうでない者達は、天龍達元々パラオの艦娘だった連中は勿論の事、それ以外の艦娘もとても嬉しそうな顔をしていたと言う。

 

特に、浜風は顕著であり、掴んだ手を高雄から離さぬままに満面の笑みを浮かべていたと言うことだった。

 

「Gカップですか…マジパネエ…」

 

…なんか、別な意味も混じった笑みだったのは、霞に後頭部しばかれてオチもついたのでチャラと言うことにしてあげよう。

 

そんなナチュラルにセクハラされてた高雄に対し、吹雪が何気無しに声をかける。

セクハラされて怒らないんですか?と。

とうの高雄はと言うと、吹雪に対してにこにこ笑いながらこう返答したと言う。  

 

「フフフ…浜風も悪気は無かったでしょうし、女の子同士ならノーカンと言ってさしあげますわ!むしろ、揉まれたら更に大きくなると伺ってますし…これで、ますますショタの食い付きが良くなれば万々歳ですから、怒ることは無いですよ?」

「主人公の私より心が広いなー…って、ショタって何ですか!?」

 

にこにこ笑って受け流してるもんだと感心してたら、不穏過ぎる一言が飛んできてたまげる吹雪。

そんな吹雪に向かい、高雄は顔色一つ変えずこう続けるのであった。

 

「ショタって何と問われても…難しいですが、私にとっては、強いて言えば人生と言ってさしあげますわ!一時期はショタ以外は泥の塊か何かにしか他人が見えなくなるぐらいに、私にとっては人生の潤いだったのです。半ズボンの似合う10歳以下の男の子が色々満足できる様に、恥ずかしながら帰って来たので…」

「抱えてる闇が深いなぁ、この青色ボブカットの人ォ!!」

 

…思わず、普段はボケの側の吹雪ですらツッコミを入れる高雄の性癖。

濃厚過ぎる高雄のショタ狂い、才色兼備の彼女が抱えてる唯一無二の欠点である。

小さい男の子が好き過ぎて、ショタ以外は眼中に入らないとかそんなレベルにまで到達しているのであった。

きっと、浜風のセクハラだったとて、高雄からしたら飼い犬か何かが顔を舐めた程度にしか感じて無かったのであろう。色々酷い話である。

 

「うーん…あ、時雨お姉ちゃん。モロッコか何かに行く予定はあるっぽい?」

「何で急にそんな話に…待って夕立、僕に生やせと!?嫌だよそんなの、生やして人工ショタになる予定は無いよ!高雄さんも、それならワンチャン有りかな的な視線止めてよ!!今も昔もこれからも、白露型2番艦は由緒正しき女の子だからね!?」

 

尚、そんな高雄の業が深すぎる言に触発されて、夕立が鬼畜過ぎることを時雨に聞いてたりしたのは、余談として書いておこう。

…まあ、時雨はショタ役も似合うけども。

 

「僕ァ生えてねえって言ってんだろこんにゃろう!!しまいにゃ泣くぞ!!」

 

そんな、酷すぎる絶叫も響きつつ、ではあるが…まあ、そんな話はさておいて。

 

 

そんな中で、にこにこした表情で割り込んできたのは、鳳翔である。

折角、二度と会えないと覚悟して逝ったのに、奇跡的なことが起きて再会できたのですから…喧嘩はダメですよ?と語りながら、鳳翔は軽く両手をパンとたたき仲裁に向かう。

 

そして、その瞬間…飛行機の機内だった空間は、消滅した!

 

四方八方が…襖で仕切られた和室へと姿を変えるのである。

まるで、小料理屋の宴会席の座敷のような空間に連れ去られた三十名を越えるメンバーはと言うと、ふと和室の出口にあたるのであろう、廊下の向かい側に、居酒屋か小料理屋の若女将よろしくカウンターの向こう側に立っている鳳翔がにこやかな表情を崩さずに…

 

「…いや、ちょ…ツッコミ入れさせろクマァァァァァ!!?」

 

…と、いきなりちょっと小洒落た居酒屋的な空間に拉致された一同から代表者として、球磨がツッコミを入れさせろと絶叫する。

展開が強引過ぎる上に超展開かつ、ツッコミどころしか無い状況下の為に仕方無いが、そんな球磨の疑問に答えるべく、鳳翔は泰然としたままにこう告げるのであった。

 

「ツッコミどころと言われても…鳳翔として生まれた艦娘である以上、いつでもどこでも『居酒屋鳳翔』を固有結界として召喚できることは常識の範疇ですし…」

 

そう、鳳翔自身の言う通り。

彼女は、任意でいつでもどこでも『居酒屋鳳翔』と称する、ちょっと小洒落た空気な料理屋の様な亜空間を作り出すことができる艦娘である。

いわば、『無限の居酒屋鳳翔製』とでも言うべきか。

彼女からしたら、この程度の事は造作もないことだったのである。

古事記にもそう書かれてある。

 

「おま…すげえ設定をさも当たり前みたいに言い出したなクマァ!?」

 

そして、飛ぶ球磨のツッコミ。

 

「ヒャッハァ!!久し振りに鳳翔さんの注いでくれる酒が呑めるぜぇ!!熱燗一献頼むよ、鳳翔さん!!」

 

そんな超展開にも動じずに、ただただひたすらアルコールが呑みたくて喜ぶ隼鷹。

 

「今、勤務中だっての!!」

 

そして、そんな鳳翔さんの超能力に慣れていて、アルコールの誘惑に極端に弱い妹をしばく、暁型の制服を着た姉の飛鷹…と言う酷い3段オチがついた所に、横から声がかかる。

元の空間に戻した方が良いみたいかしら?と言う、大人の女性の声である。

 

「…あー、うん、このままじゃあ収集つかないよぅ…」

 

瑞鳳が呆れた口調になり、その聞き覚えがない台詞に同調するなり、その声の主は、わかったわとだけ告げる。

そして、パチンと指パッチンの音が響き渡るなり…鳳翔は、突如として爆破されたのであった。

鳳翔がアフロになり、良い感じにギャグですまされるレベルでウェルダンになりつつ、その居酒屋結界は爆心地にいた為に彼女が気絶したなり解除されるのである。

 

 

「ちょ…エエエエエエ!!?」

 

状況が飲み込めない連中は、一斉に同じような絶叫を上げる中…龍田が、力なく爆破犯の正体の艦娘へと声をかけるのであった。

  

「あ~陸奥さん、相変わらずねぇ…」 

「うふふ…ちょっと火力が強すぎちゃったかしら?」

 

そんな風に、龍田の声に対して悪びれずに口を開くのは、陸奥である。 

 

そう、陸奥とは…かつて、謎の爆発事故が致命傷に為った戦艦の魂こそ引き継いだ艦娘である。

逆に言えば、陸奥の魂の一部には、謎の爆発が密接に繋がっているのは明らかなことである。

つまり艦娘に対して謎の起爆能力を持っていても、何一つ不思議ではない。

なればこそ…陸奥にとっては、視界に入る艦娘を任意で爆発させることぐらい、お茶の子さいさいなのであった。

 

「どこの○ラー・クイーンですか、この人…と言うか、そんな能力有るんだったら、艦隊戦でいくらでも応用利きそうなのに…」

 

赤城が頭を抱えながら陸奥の爆破能力にツッコミを入れるが…陸奥は、不満げな顔でこう赤城に返したと言うことだった。 

 

「うーん、私が爆発できるのってあくまで『艦娘』だけなのよね、それもアフロにさせるか口から煙を吐く感じでギャグで済むレベルの。だから、深海棲艦とかにはそもそも効かないし、演習ですら使い道がないのよね」

「また、えらく使えませんねソレェ!!」  

 

そして、そんなツッコミ入れながら横から聞いててひっくり返る神通と、頭痛がしてきましたと訴える赤城の二人に向かい、栄養ドリンクが2本渡される。 

それは、ユ○ケルの黄○液である。

 

 

「なんだか、アレな人達ばかりでごめんなさいね…私は由良と申します。お二方もとりあえず、これでも飲んで落ち着いてくださいな?」

 

そう、ユン○ル片手に上品に告げるのは…由良だった。

 

「あ、ありがとうございます…」

「遠慮なくいただきます、ありがとうございます由良さん」

 

由良の、常識的かつ上品な物腰に、姿勢を正しながら遠慮なく栄養ドリンクをもらおうとする赤城と神通だったが、それを待ったをかけたのは意外にも木曾である。

曰く、こう言うことである。どっからドリンク出したんだ?と。

 

そう言えば、何処からだろう…と、二人の頭に疑問符が浮かぶなか。

由良は、特に淡々としたままに、こう木曾の質問に返したのであった。

 

「何処からと言われても…ここから、としか」

 

そう言って、無造作に何か妙にぶっといサイドテールに腕を突っ込む由良。

 

ナニソレと見ていた全員が唖然とする中…ガサガサと、探るようにサイドテールの中を手で突っ込むなり、ひょいひょいと、そんな髪の毛の束であるハズの名状しがたきソレから、色々なものを取り出していくのであった。 

 

「えーと…組みかけのゲルグ○のガンプラでしょう?ペ○シの紫蘇味の空のペットボトルに…パイプオルガンとホルン、冬のタイヤに使うチェーンに、金魚の餌ね。あ、懐かしいなぁ…ピカ○ュウげんきで○ゅうで使う64用のマイクだ!それと、手品用の白い鳩さんとあんまり美味しくなかったビタミン剤のサプリメント!」

 

…と、なんだかまるで役に立たなそうな微妙な物体が、由良のサイドテールの中から物理法則を無視した様に続々と出てきている。

 

「気持ち悪ッ!!何がどうしたらそうなるんだよ!?」

 

そんな『こんな四次元ポケットは嫌だ』的な由良のサイドテールに、流石のドMすらもドン引きする中…もう一人の眼帯こと、天龍が口を挟む。

曰く、こう言う話だったそうな。  

 

「良くわかんないけど…『乙女には不思議がいっぱい』らしいぜ、木曾」

「不思議過ぎる…と言うか、不思議を通り越してるよ、天龍さん…」

 

そんな、説明になってない解説に、木曾は倒れかけていたが。

 

 

さて、由良達がはっちゃけてる中で、淡々とした表情で不知火がぬっと割り込んでくる。

ぎろりと、戦艦クラスの眼光を光らせながら、無言で無駄に壮大な迫力を込めて威圧して格上の艦娘達を黙らせる。

 

漸く、わちゃくちゃした空気も沈静化したな、と、夕張と阿賀野が顔を見合わせながらほっとする中…不知火は、ぼそっと一言だけこう告げるのである。

 

「…ふぅ、久し振りに戦艦クラスの迫力を出したらお腹が空いた気がします。戦艦クラスの量の資材を対価に欲求したいのですが、構いませんね」

「いや、構うよΣ(´□`;)戦艦クラスの迫力って、あんた睨み付けてただけでしょ!(|| ゜Д゜)」

 

…そして、何気無く酷いことを言う不知火に阿賀野、怒りのツッコミ。

常識人に見せかけたイロモノな不知火に、流石に傍若無人に過ぎると阿賀野が切り込む中で、不知火は返す刀でこう淡々と言うのであった。

 

「いや、だって不知火としては戦艦クラスの迫力を以て艦娘として顕現したんですから、もらう資材も大和型…とまで贅沢は言いませんが、長門型クラスぐらいは貰わないと、パワーアップとかする訳じゃ無いですが…何となく、がんばるぞーって気にならないじゃないですか」

 

そんな、気分の問題と言うだけで、不知火が資材を無駄に欲求した事にマジギレ気味にツッコミを入れたのは、睦月だったとか。

曰く、こんな事だった。

 

「おま…なんか前に氏真さんと資料を見てた時に不明瞭に遠征の結果が無駄に収支がマイナスになってたの、てめえのせいかにゃ!!このアホォ!!」

 

…と、今ここで明かされる、資材運用の下手打っていた真実にマジギレする睦月に対して、件の下手人は悪びれずこう返したと言うことだった。

 

「不知火に、何か落ち度でも?」

「落ち度100パーセント過ぎるにゃァァ!!!」

 

そして、改二となり身体能力も曲がりなりにパワーアップした睦月によるデンプシーロールが不知火にぶちこまれると言う、酷いオチも込みだったとか。

 

 

そんな、酷すぎる駆逐艦達のデンプシーが始まる一角を置いといて。

五月雨が、何気無く氏真に声をかけてくる。

そう言えば、挨拶が遅くなりましたが、貴方が新任の提督さんですか?と。

 

「然り。僕は今川氏真と申す者、さ。これでも、今川家の十代目だよ」

「ええ、父さんは…あの、戦国時代からタイムスリップして来た様な方ですよ」

 

そう、氏真と加賀が交互に口を開くなり、五月雨は目を輝かせる。

そして、五月雨は目を輝かせたままに、こう続けるのであった。

 

「今川氏真…聞いたことがあります!戦国武将の…イメージと全然違ったけど、これはこれでアリです!凄いです!奇跡です!!…あ、申し遅れてごめんなさい、私は白露型駆逐艦の五月雨って言います!えと、あの…私、貴方のお話、いっぱい聞きたいです!!」

 

と、キラキラした表情でまくし立てる五月雨に対して、氏真はやや困惑しつつもこう返す。

初対面のわりにずんずん踏み込んでくるね、と。

そんな氏真の困惑に対して…五月雨は、テンション上がりすぎてごめんなさい!と頭を下げながらも、更にこう続けるのであった。

 

「私、戦国時代とかを調べるのが大好きで…色々、戦国武将の事を妄想したりするのが趣味でして!まさかまさか、本当の戦国武将の方が顕現するなんて奇跡に巡りあえて、私感激です!」

 

…そう、まくし立てる五月雨に、加賀はこう横から茶々を入れていた。

曰く、歴女の方ですか、と。

 

歴史好きで、特に戦国時代や幕末の武士達の事が好きな女性の総称である、所謂『歴女』。

最初はゲームやライトノベルがきっかけから入ったりする趣味は、ソレこそ、いつしかお気に入りの武将の事を地歴科の教師よりも遥かに詳しくなれるぐらいのディープ過ぎる趣味として昇華されやすい。

五月雨もそんな感じでもあり、真田幸村や後北条家が特に好きな彼女からしたら、後北条にわりと関わりがある氏真の事にも詳しいことは当然だったと言う。

 

「やっぱり…戦国武将って、槍や刀から光線が出たり巨大化したり変身したりするのが一般的だったりするんですよね!?」

 

…まあ、五月雨の知識は根本的に何かずれていたが。

 

「当たらずとも、遠からじ、だね。巨大化するヤツは見たこと無いけど光線や変身は見たことあるかな~…」

 

尚、生き証人の氏真は、ぼんやりとした表情のままにこう返したとか。

五月雨が氏真の言にわくわくする中で、加賀はポツリと、珍しく頭を抱えつつこうぼやいたと、余談として書いておこう。

 

「父さんって、わりと何処の日本から来たのか気になります…」

 

 

そんな加賀の脇に、青葉がぬるっと横からわいてくるかの様にカメラ片手に立って彼女に声をかける。

そして、明るい表情のままに、青葉がこう言うのであった。

 

「何処の日本かとか、そんな事はどうだって良いじゃないですか!彼は、戦国武将の今川氏真さんで提督さんと言うことに違いがないなら、大した問題じゃないですよ、重要なことじゃありません!」

 

そんな青葉の言に、何か締め方がミス○さんみたいですね、と言いつつも、それはそうか…と納得する中で、青葉が明るいままにこう続けるのであった。

 

「…戦国武将、つまり、歴史ある男色かどうかが重要なことなんですよ!」

「父さんはホモじゃねぇ!!」

 

そして、加賀にわりと本気で殴られる、青葉だったとか。

 

そう、青葉の言に嫌な予感がした方もいらっしゃるかも知れないが。 

青葉はわりとハイレベルに腐っている腐女子である。 

明るく、楽しく、人懐っこい彼女のオープンにしている唯一の趣味。それが、腐妄想な事だったとか。

 

カメラの腕も、記者としての物書きとしての腕も、わりとそう言う趣味が高じて腕を磨いたと言うことだったと言う。

ちなみに、五月雨を歴女に鍛え上げた師匠も、彼女だったりした。

 

尚…余談だが、青葉の質問に対して、氏真はと言うと、こんな感じだったとか。

 

「男しょ…あー、早川殿をめとる前は、色々手を出してなかったと言うと嘘になっちゃうからなぁ…何処から語っていいものやら」

 

…と、まあ、お察しください。

真面目な話をすると、男色は上流階級の当時の教養に近いことだったので、氏真のみならず古今東西の武将がそう言う経験があるのは仕方無いね。

尚、ガタッと、青葉だけでなく何故か飛龍とか川内とか扶桑とか霞とかヴェールヌイが某声優さん曰く『好きなものを追い求める女の子の図』的な反応する中で、加賀が珍しく半泣きになってたり一部がドン引きしてたとかは…まあ、この辺りで描写を抑えることにして。

 

 

そして、最後に、曙は何してるかと言うと…

 

「ぽんぽん痛い…また、クソ仲間がクソな事して私の胃にストマックブローしてくる…うう、胃薬とか無いの、ここ!?」

「…大丈夫、曙?」

 

案の定なストレスに負けてツッコミを通り越してダウンしかけており、暗い顔でへたりこんでる中で、姉妹艦の朧にお腹をさすって貰ってた、とか。

 

 

と、まあそんな蘇った艦娘達が思い思いにフリーダムにはっちゃけてる中で、榛名が、何気無く元提督に質問する。

もしかして、この艦隊が駄目になってたりした理由って…本当は、艦娘の方が大丈夫じゃなかったんじゃないんですか?と。

 

元提督だった男は、微妙に顔を背けつつ…こう、話を続けるのであった。

 

「まあ、大半の連中は…あれは折角蘇って舞い上がってるだけだけど…まあ、その、俺は個性的過ぎる連中を制御するのが手一杯で、艦隊運用とか考えてる暇とかそう言えばなかった気がするなぁ…」

 

そう言いつつ、加古の事等にも少しだけ触れていた。  

 

曰く、金剛以外の絶対的な能力の有る纏め役が居れば、戦力的にも精神的にも艦隊が落ち着くのではないか、と考えて、無茶な建造に手を出してしまい…

そして出てきたのが、戦力的にも艦種的にも微妙過ぎる上に、性格があまりにも一匹狼かつマイペースが過ぎる加古だったと言うことで知らずの内に冷遇してしまった、と。

今更加古に対して詫びても詫びきれることでは無かろうが、兎に角、すまない事をした、と。

 

「…今更、どうでも良いよ。謝られても、困るだけだよ。アタシだって、今は兎も角、あの頃は何の力になれなかった事も、未だ治らない自分本意な性格が悪かったことも知ってんだ…あんたにそんな殊勝なフリをされても迷惑なだけだから、そんな言葉は取り消してくれよ…」

 

と、当の加古はと言うと、複雑そうな表情でそっぽを向くしかなかったとの事だった。

 

尚、ついでに、話の流れのままに睦月の事にも氏真が横から触れていた。

あの子の事務職としての能力は一級品だろう、纏め役には最適じゃないのか?と。

元提督が言うには、こんな感じの回答が返って来たと言う。

 

「…いや、睦月とか浜風の事務能力が高いのは知ってたよ?知ってたけど…浜風は、その、性癖がアレだから執務室に置けないし…睦月は、アイツ…アレは着任して3日か4日ぐらいの時か、お偉いさん方と通信してる最中に上層部主導で決めた予算計画書の粗を空気を読まずににゃしいにゃしい言いながら駄目だししてくれて、お偉いさんも俺も赤っ恥かいちゃったことが有って。睦月の言い分が徹頭徹尾ド正論だっただけに、逆にフォローも何も入れられず上層部の人等まで恥かかせたから柄にもなく俺が癇癪起こして執務室から叩き出しちゃってから、それから先にアイツが色々寄り付かなくなったと言うか、頼れなくなっちゃって…」

 

…と、まさかの六十話以上をかけての残念過ぎる疎遠になった経緯を聞かされた氏真は…

 

「睦月ちゃん、ちょっと正座ァ!!」

「にゃしい!?氏真さ、ちょっ、見たこと無い顔して…ごっめぇぇぇん!!」

 

睦月の不知火への説教を中断させてまでの、正座強制&空気読めてなかったことへの軽いお説教だったとか。

 

 

さて、そんな話の中での事であるが…未だに話に絡んでこない、通康と金剛はと言うと…

 

「離してください通康サン!!折角、私が大好きだったアドミラールがリボーンしたんデース!!一刻も早く、ネイキッドな男と女によるラブをメイキングをしないと、私のエレクトな感情が押さえられませんネ!!」

「お前…そんな性格じゃなかったじゃろ!?ワシの知っちょる金剛は、もうちょっとおしとやかな娘じゃなかったんか!?」

 

…と、元提督が復活したことでテンション上がりすぎて押し倒そうとする金剛を、必死で羽交い締めで押さえ込んでると言う酷い一角が形成されていたとか、そうじゃないとか。

 

「つーか、めっちゃ人がおるじゃろが!!まっ昼間から何を言うとるんじゃ!?」

「時と場所をわきまえて言ってるんデース!!私は、実は…ちょっと見られてる方が、ぞくぞくしてエキサイティングする方だったりするからノープロブレム、ネー!!」

「何もかもアカンわァァ!!」

 

そして、金剛の闇がかいまみえて匙を投げる通康と言うオマケつき。

 

「そんなんじゃ駄目よ金剛さん…提督との愛の形はね、掘って!縛って!見せつけるのが正解じゃない!!」

「って、いきなり割り込んで来るやないわ雷ィ!!ギリギリどころか危険球な単語の羅列やめい!!?」

 

…そして、唐突に割り込んで来る雷のより深い闇にツッコミを入れざるを得ない、村上水軍の雄と言う3段オチを決めるなか、遂に、我慢出来なくなった通康が絶叫せざるを得なかった。

 

「つーか、トラックだかなんだか知らんが…そこの、異常を解決せねばならんのと違うんかい!?」

 

 

と、通康のツッコミが響いて…わちゃくちゃし過ぎていたパラオの面子はハッとする。 

 

そうだ、感動的な奇跡が吹き飛ぶような、こんなワケわからんカオスで頭から全員飛んでいたが…元々は、トラック泊地による大騒動の大本は、日本どころか世界を揺るがしかねない大惨事の早期発見からなる避難行動が発端となる事件でもある。

 

こんな感じにふざけてる場合では無いのでは、と、パラオ側のメンバーが慌てるなか…今回の騒動の元凶でもあった、釣竿齋が通康へと声をかけるのである。

 

「どーも…貴殿曰く『男じゃない』こと、釣竿齋宗渭よな」

 

そう言って、嫌味っぽいのかイタズラっぽいのかわからない口調で語りだす彼に、通康は事情を知らないタイミングで激昂した時の台詞を持ち出されて、彼等の抱えた大変すぎる事情と釣竿齋自身の本来の人となりを知った今ならばこそ、ばつの悪い顔をしていたが。

そんな通康本人をよそに、釣竿齋はクックックと笑いながら…手にした錫杖を構え直すなり、シャランシャランと黄金でできた輪を鳴らしたかと思えば、おもむろにドカンと大きな音を立てて床を叩くと言うパフォーマンスをいきなり見せる。

 

また、彼の法力を以てして自分達に向けて何かするのか…パラオの者達は、一斉に身構えるが、彼等には何も起こらない。

そう、『パラオの者達には』何かしら起きる訳では、なかった。

 

 

…さて、かつて、この話の中ではこう語っている。

『パラオとトラックの戦力がぶつかった先に、一つの世界が終わる』、と。

 

嘘ではない、ソレこそが、この戦いの結末と呼べることだろう。

 

 

その日、その時…釣竿齋がシャランと錫杖を鳴らした、その瞬間。 

地球上から、かつて『トラック泊地』と呼ばれた場所は消滅することになったのであった。


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