無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~   作:たんぺい

72 / 84
六十話 過去にある思い②

さて、話を再開することにしよう。

 

 

シリアスな話の流れをぶったぎる唐突なボケに、吹雪も夕立も倒れかけるが…当の霞は、何処か真面目な顔のままである。

そして、苦笑いしながら、睦月にこう返す。

 

「今ので…力は、抜けた?さっき見てたら、肩ガッチガチだったからね。集中するのは構わないけど、緊張するのはご法度なのよ、こう言うときはね。あんたのアタマならあの亡霊相手にケリつけれるんでしょ?命令には従ってあげるから、指示を早く出しなさいな」

 

そう言って、真顔で睦月を真っ直ぐ見据えた事に対して、対する当の睦月は…やり方がアレだけど、ほぐしてくれたかにゃ、と小声で呟く。

そして、ありがとう、と返すなり、睦月は…ただこう告げながら、頭を下げた。

 

「『陸奥さん達をこれ以上傷付けずに無力化させる』には…1分と20秒、時間を寄越すのだぞ。さっき言った通り、アレのカラクリは大体解けた以上、無力化も容易いことなのだぞ。伝える時間が無いからソレは睦月がやるにゃ、だから、もう、好き勝手引っ掻き回して少しだけで良いからあの艦隊の動きを止めて欲しいにゃし」

 

 

そんな睦月に対して…逆に、そう彼女の言葉を聞いた艦娘達はと言うと。

ただ、ニヤリと笑みを浮かべながら、無言で戦場へと駆け出していく。

ただひとつ『釣竿齋を止める』為と言う目的を果たすには…

ソレだけで、充分過ぎる合図であった。

 

----------------------------------------------------------------------------

 

「先手…まずは夕立からっぽい!!」

 

そう言って、真っ先に飛び出したのは夕立であった。

彼女は…まず、いきなり魚雷を一斉に発射する。

目標に対して『傷付けるな』と念を押されてるにもかかわらず、だ。

 

だが、夕立は…あの頃のように、戦いを覚え始めた頃のように、頭が真っ白になっている訳では無い。

冷静だ、紅い妖気溢れる瞳に映る景色は、とてもクリアに夕立に映っている。

敵の動きも、否…目に映る全てのものが、まるでスローに映る様だ。

まるで夕立の為に世界の時間が回っている様な…戦闘中だと言うのに、夕立はそんな錯覚すら覚えてしまう。

 

さて、突然飛んで悪いのであるが。

 

例えば…人は、飛び出した車などにいきなり轢かれそうになった時、激突の瞬間の数秒が、まるで数十秒にまで感じることがあると言う。

或いは、極まったレベルのボクサーや空手家からしたら、素人のパンチやキックなど、文字通り『蝿が止まる』とか『欠伸が出る』と言う様に感じるのだそうだ。

人は、身の危険を感じる時…そして、幾つもの修羅場と修練を修めた境地に至った時、その高まった集中力により体感時間が世界の刻む理をも凌駕する。

 

恐らくは、夕立もそうであったのであろう。

戦の恐怖も、己の狂気も、夕立は改二になって忘れた訳では無い。

むしろ、今でもそれに怯えているのであるだろう。

だがしかし、『それに克ち、制御する』…氏真がかつて語った理想を体現して、それを克服した今ならば、それすらも飼い慣らし、利用し、戦いの為の集中力の糧にすることすら容易いことだった。

 

故に、敵の動きも飛んでいくだろう敵の攻撃も、そして己の発した魚雷すら、まるで蛞蝓か蝸牛の歩みの様に夕立は把握することが出来たのだ。

なれば、『己の発した魚雷に対して己の主砲を当て、魚雷を誘爆させてから煙幕を兼ねた水柱を上げさせる』等と言う神業ですら、今の彼女ならば目を瞑ってもできることだったのであろう。

 

そして、水飛沫が激しく上がる瞬間に、その爆発音に負けぬ絶叫が横から上がる。

 

 

「ここからは、主人公のターンですよ!」

 

そう…夕立の放ったセルフ誘爆による煌炎と共に上がる水飛沫から現れたのは、吹雪である。

夕立がやろうとしていることを、吹雪は横で見て把握し…睦月のオーダー通りに、彼女は自分の仕事をこなすべく突撃したのだ。

 

水柱の水飛沫と火薬その物の煙幕から突如として顕れた、白と黒の暴風。

紅いラインが怪しく輝き、戦場のど真ん中へと切り込むその姿は、彼女が散々に言っていた『主人公』…それを今、体現していた様だ。

 

そう、睦月のオーダー通り、吹雪は『一発も主砲や魚雷を使う攻撃を行わない』。

だがしかし、彼女に課せられた指名を果たすには…本当に、それでも充分過ぎる出来事である。

戦場のど真ん中で…もう、殆ど素手だけで、あの亡霊艦隊を相手にぐちゃぐちゃに掻き回していた。

 

パラオの仲間を、武将達を、トラックの艦隊をも、或いは亡霊とすらなっているパラオの先人の魂すらを守るため。

彼女は、自分へと向かってくる攻撃を避けて。

空から飛んでくる艦隊の空襲すら回避して。

時には、ライダーキックの様に時に亡霊となっている者をも蹴り飛ばしていなし。

釣竿齋が放った手裏剣や呪符すらも逃げかわし。

(元提督は戦力外なので、釣竿齋込みで)実質的には九対一だと言うのに、吹雪はその全てを立ち回りのみで華麗に制覇する…まるで、舞台の主演を張るダンサーの様である。

 

今、この瞬間だけで言えば…この場にいる全員が、敵味方問わず想うことは一つであっただろう。

まさに、吹雪こそが、この戦場の『主人公』なのだと。

あの、雑かつ雅をあまり解さない様な天龍や通康ですら、あまりの吹雪の動きの華麗さに、ただただ戦いをも忘れるぐらいに見とれていたと言う。

吹き荒れる雪の名を冠する舞姫が、今こそ飛翔する…その瞬間を垣間見た様であった。

 

 

だがしかし…いくら何でも、ただ一人で九人の相手を出来るほど、敵は甘くない。

彼女が立ち回りだけで制覇する…主人公だった瞬間は、時間にしてたった48秒。

一分も経たないことだ、戦場のど真ん中で暴れた吹雪は追い詰められてすぐに釣竿齋に捕まり、その身体をまさに影ごと捕縛されている。

『影縫い』…忍びの術の奥義を以て無力化されたのは、吹雪の方である。

結果的には、吹雪は一瞬だけ輝いただけに過ぎない。

だがしかし…それで、充分だった。

 

『吹雪は、たしかに睦月のオーダーを果たした』のだ。

 

 

「ジャスト、一分と二十秒…うんにゃ、二十三秒か。上出来なのだぞ吹雪、給料査定に上乗せを進言してやる、にゃし!!」  

 

そう言って、睦月から放たれた弾丸は…確実に、彼女の狙い通りの場所へと、まるで針穴へ糸を通すがごとく飛んでいく。

その先にある物こそが…

 

「しまっ…拙僧の錫杖を!?」

「っしゃあ!!スナイプ、成功なのだぞ!!」

 

釣竿齋が片手に離さず持っていた、六尺以上もある彼の身にも負けぬほど長い、身の丈程もある錫杖であったのだ。

 

…さて。

睦月の身体能力そのものは、かつてに比べたら飛躍的に伸びたとは言え、それでも…時雨やヴェールヌイの様な規格外の実力と経験を持っている天才はおろか、実質、改二に成り立ての吹雪や夕立や霞にすらやや劣る。

もしかしたら、駆逐艦同士で比べたならば、完全に戦闘慣れしていない後方要員の浜風は兎も角も、まだ朧の方が身体能力そのものは上かも知れないだろう。

 

しかし、睦月にはそれ以上に有り余っている頭の回転力がある。

その目的を果たすためならば、それをフル回転させて、どうするべきかと言うイメージを瞬時に作り出せる。

そして、どうするべきかと言う判断を直ぐにこなせる程度には、『己が思い描く己』そのままに動ける程度には、睦月は強くなっていた。

 

これは、言葉にすると訳がわからないかも知れないが、スポーツ等ではとても大切になる能力だろう。

 

『己が思い描く型そのままに、寸分違わず身体を動かす』と言うこと。

それを念頭に例えばシャドーで何発もパンチを入れる訓練をするだけでも、大抵の人は3分もパンチするだけで無意識にそれをこなすことは出来なくなってしまう。

要するに、型が崩れる、と言う話である。

 

疲労で腕が疲れたり、身体の軸が無意識にぶれて首や肩の位置がずれたり、体重移動の度に足の位置が崩れてしまったり…と、要因は様々だろうが、仮に本当に最初の方は理想的に動けたとしてもたった180秒の間の話でも、人間はすぐに『自分の思い通りに動く』ことは出来なくなってしまうのだ。

だからこそ、例えば一流の格闘家は己の技で怪我せぬ様に柔軟体操に力を入れて、或いは型を身体に染み込ませるべくシャドーなり地味な型稽古にこそ力を入れる訳であるのだが…まあ、流石に本題から大分離れた話にまでなってしまったので、そろそろ戻すことにする。

 

さて…睦月達、艦娘だったとして、それは変わらない話だ。

回避訓練、射撃訓練、航行訓練…連携を無視した個人的な基礎訓練のプログラムで学ぶべき砲雷の戦術そのものこそ、戦いの中で大事になることなのだ。

 

そして、そう言った意味で最強と呼べる艦娘は…恐らくは、神通だ。

正直な話、アイキャッチどもや状況がかなり特殊だった赤城と飛龍の戦いは兎も角、金剛や神通以外のパラオの艦娘達がトラック泊地の敵との戦いがどこかしら戦い方が『汚い』としか言えなかったのも、逆に言えばそう言った所が根本にある。

艦娘らしい正攻法では正面突破しようがなかったのだ。なぜなら、真っ正面から単純な砲雷撃戦の技量だけの勝負として動いたら、質も両も叶わない関係で木っ端微塵になるのはパラオ側の方だから。

だからこそ、奇襲をしかけたり言葉責めで心をへし折ったりインチキで回復したりと、純粋に説得にかかった加賀は除外するとしても、小細工に走らざるをえなかったし…もっと言えば、睦月に関する話に立ち戻るとするならば、小細工にすらいっぱいいっぱいだったとしか言えない。

あの時は…頭脳面では逆ながら、フィジカル的には夕立の足を何度も睦月は引っ張っていた。

 

だがしかし…改二に覚醒した今は違う。

 

睦月の頭は、夕立とは別な意味で何処までもクリアになっている。

己がどれだけ動けるか、どうダメージを受けるのか、どうしたら敵にダメージを与えられるのか…それが、まるで計算機が暗算するかの様に、睦月の頭の中で答えとして現れる。

それだけではない。

実際に、その答え通りにどう身体を動かすべきか…それすらも、今の睦月には容易いことである。

 

そして先程、睦月は「見」に回った、と言った。

その言葉には嘘はない、やや遠間に離れて、あのかつての…睦月の朋だった者達の亡霊達の動きはどうなのか、と言うことを観察していた。

 

最初は、甦った亡霊としてあのふよふよ浮いている元提督だった男が指示役だったのでは無いか…と、睦月は考えていたのだが、良く考えたら様子が変だ。 

 

確かに、彼の指さし通りに亡霊艦隊もつられて動く。

パッと見たら、まるで亡霊のコンダクターの様にも思えるが…良く考えたらわかる話だ。

先程、釣竿齋自信が語っていたではないか、あれは『もどき』…言い換えれば、意思がないマリオットでしかない、あれはもう無視していいデコイでしかない。

要するに、第一印象で指示役としか思えない者がマリオットならば、黒幕として何処かに操作する人間が居ると言うことになり、それは誰かと言う話になるが…それは見たまま釣竿齋以外に候補が存在しない。

ならば、次に考えるべきこの問題は一つの謎に集約される話になる。

…何を持って、そのマリオットを操作するのやら、と言うことだ。

 

今現在でリアルタイムでその9体ぶんの亡霊を動かしていると言うことは、言い換えれば、目立たない様に釣竿齋が注意してるだろうことを考慮しても尚わかる話だろう。

彼は睦月達の目の前で、『魔化流返死』と名付けたその秘術の根幹を、どこかで実演披露しているに等しいと言うことを、だ。

 

何か呪文でも口ずさんでいるのか、それとも大事そうに抱えている巻物に秘密が有るのか、あの目立つ錫杖が操っているのか…睦月は考え、観察する。

そして、見えた。元提督の指さしに連動するかの様に、釣竿齋の錫杖も一緒に動いている様を。

ならば、それこそが…睦月の言を借りるならば『カラクリ』と言うことだ。  

良く目立つ、弱点その物だったのであろう。

 

ならば、睦月はどうすべきかは頭に入っていた。

あの錫杖を破壊すること。それが叶わないならば、あの錫杖は釣竿齋の手から離すこと。

それだけだ、味方に軽く指示を出し、撹乱を兼ねて彼の足を止め…睦月が仕留める、それたけだ。

その動きに必要な最小限の動きと、狙いをつけるに必要な最小限の時間も睦月にはわかる…後は実行する。

 

それだけの話であり、今、夕立と吹雪の協力の下、功を成したのである。

 

 

…さて、解説が長くなってしまったが。

兎に角、錫杖を吹き飛ばしたことで釣竿齋に対して痛烈なカウンターが入っていた、と言う話に集約される。

 

あの錫杖…法術の、根幹を担うものだったのであろう。

あれを取り落とした瞬間に、亡霊の艦隊はピタリと行動を止め、吹雪も影縫いの術から逃げることが叶い、そして加賀と瑞鳳と言う二人の艦娘も影の手から解放されてゲホゲホ言いながらではあるが無事で済んでいたと言う。

 

しかし、釣竿齋自身も、その錫杖が大切なものであることは本人こそ良くわかることだ。

慌てて拾い直そうと、彼は手を伸ばし…

 

「…させないわよ、このクズ坊主!!」

 

…そして、それが届くか届かないかと言うまさにその瞬間に、その名の如く霞の様に顕れた彼女に蹴り飛ばされてしまう。

 

 

さて…また、話が少し飛んで申し訳ないのだが、霞についての話だ。

霞が得た改二の力…それは夕立や吹雪や睦月の様に、劇的に進化する様な強さを得る改二ではなかったかも知れない。

 

そもそもが、霞の場合の話ならば実力自体が元から完成されている。

ギャグで流してしまったことが有るが、そもそも、駆逐艦一人で重巡洋艦クラスが率いる敵艦隊をもぶちのめせるなどと狂った戦果をも引き出せる、武における天才と言っていい文字通りデストロイヤーなのだ。

まごうことなき変態でありながら、それ以上の天に愛された才を持っている少女なことには違いないと言う自覚こそ、霞が認められない他人を『クズ』呼ばわりなどとするプライドの根幹に有ったことは間違いない。

 

しかし、上には上がいることも霞は知っている。

 

火力だけならば、まあいくら足掻いても精々軽巡洋艦相手に勝てるか勝てないかが関の山、金剛や赤城の火力など逆立ちしても勝てるわけがない。

駆逐同士で比べたとして、火力や才能だけならば改二になる前から霞本人こそ知っていることだ。

そう言った部分で比べたら夕立や朧の方が上かも知れないし、そもそもがヴェールヌイや時雨と言う練度からして違う連中に出会う以前からの話で…笑い話の種にしかならないレベルの井の中の蛙と言う話になることは、霞自身の中では明白ではあった。

 

だがしかし…霞からしたら、それがなんだと言うことだ、と言う話でもあった。

己が、己の性癖の根幹にある木村少将の威光に恥じぬ天才であることを証明できたら、霞からしたらそもそもそれ以上は要らないことだ。

自分が満足できて、彼に恥じぬ戦果を叩き出せる存在になれば、他人に比較されることなどどうとも思わないししたくもない。

更に言えば、今の『艦娘の霞としての仲間』に力を貸せる実力があるならば、もうそれ以上望むべくはなかっただろう。 

 

そう思い、艦娘として顕れて以降ずっとある意味で現状で満足できてしまったが故に、『負けん気自体が強いのに本当の意味での向上心はなかった』霞だったのだが…ヴェールヌイと言う艦に出会い、考え方が180度霞の中で変わってしまった。

 

そうだ、別に、真っ正面からの殴り合いの強さだけが戦場における強さではない。

潜入能力、生存能力、奇襲能力…そう言った部分こそが、或いは強さではないか、と。

そもそもが、自身が駆逐艦…言い換えれば、チョロチョロ戦場を引っ掻き回す足軽の様な役目こそを担うものならばこそ、それこそが自分が必要な力ではないか、と。

 

そう言った部分に今まで気が付かなかったのは…これは、ある意味で、霞が艦娘だったことの不幸だったのかも知れない。

 

根本的には、霞ならず艦娘は根っこの精神性の部分が船の部分に有る。

女の子ではある、そう言った情緒や生理も有る…が、やはり、戦闘面での強さの計り方が根本的に機械的になっているのである。

仮に、霞自身がそれこそ頻繁に行っている艦らしくない殴り合いすら…霞のみならずラムアタック等の変形と言う認識でしかない艦も、恐らくは少なくなかったからであろう。

金剛・赤城・神通…『外様のパラオ屈指の実力者』であり教導を兼ねてもいた彼女らが、基本的に正統派の戦いを旨としていることも、霞の思考を固定するに拍車をかけていた。

 

しかし…ある意味で異端児の双璧と言えるヴェールヌイの在り方は、霞からしたらやはり目から鱗であり、そして何よりも霞が望む強さを知るには充分なことだった。

 

『常識に囚われぬ強さ』『天衣無縫な強さ』…霞が望む強さの方向性はそうであり、そして、それは今ここに形を成している。

 

敵味方はおろか、一流の忍者でもある釣竿齋にも気取られぬ隠密性。

味方の戦術レベルでのフォローを一手に担えるだけの立ち回り。

そして、何よりも…

 

「フハハハハハ!この髭と一体となった霞に構えは無い!!朝潮型駆逐艦は引かぬ、媚びぬ、省みぬ!確かに、戦闘力ならあんたの方が勝っていた!けど、この私に流れる髭の血に負けたのよ、このクズ坊主ぅぅぅ!!」

 

…誰にも負けない速さ…

ってオイ、ちょっと待てカメラ止めろ、何故聖○から抜けられないしお前、気に入ったのかコイツ。

 

 

…とまあ、このパワーアップして手が付けられなくなった髭が調子に乗りすぎて、十字に手刀で袈裟を切り刻もうとしてから手刀のラッシュに回し蹴り…などと、どっかで見たことある霞の連携にその場にいた全員がひっくり返ってしまったが…まあ、それは兎も角。

霞が勢いのままに、不意討ち気味に釣竿齋を数メートルと言う距離を回し蹴りで、サッカーボールの様に吹き飛ばした先にあったものはと言うと…

 

「でぃぃいいや!!」

「な…ぐおお!?」

 

霞のファンタジスタ気味の暴虐な動きに呆気にとられていた者達のなかで唯一彼女に反応できていた艦娘…加古、その右膝が、釣竿齋の鳩尾にクリーンヒットする。

 

そして、膝蹴りを叩き込まれると言う、そんな勢いのままに仰向けに倒れる釣竿齋をそのまま足を下ろして踏み潰し。

目にも止まらぬ速さで、釣竿齋の口に目掛けて己の艤装の主砲を突っ込む。

 

 

「この動き…『加古スペシャル』って所かなぁ!!チェックメイトだ、貴様ぁ!!」

 

そう言って吠える加古の言葉が、そのまま、この戦いに一つの区切りをつけるゴングになったのであった…


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。