無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~   作:たんぺい

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長谷川先生は言いました
「オフィシャルじゃないですぞ」と言う、二次作品としては最高の悪魔の様な囁きを
納得できないなら、「パラレルワールド」と言うことで、どうか1つお願いします

それを踏まえて、本編を、どうぞ!


四十一話 1つの『終わり』と、1つの『始まり』の物語

「何でも、この主人公の吹雪さんに聞いてください!」

 

 

唐突に現れた新キャラな『主人公』さん、吹雪。

当然ながら、数多の艦娘に質問責めにされるので有る、お前何なんだよ、と。

 

しかし、吹雪自身は答えることは出来なかった。

吹雪本人曰く、気が付いたら艦娘になっており自我が芽生えていた、と言うことだ。

それはまあ当然と言うと当然ながら、その『記憶』が無いのだから仕方ない。

 

 

このことについては…40話以上も話を進めておいて今更の設定の解説の様なものでアレではあるが、元深海棲艦のドロップ艦の記憶について、少し整理させて貰おう。

 

ドロップ艦の前世の記憶と言うものは、そのまま、前世の深海棲艦の知能の有無や質の差により決定されてしまう。

 

元々が単なる軽巡クラスから生まれた浜風や重巡洋艦クラスから生まれた吹雪は、その手の記憶が全く存在していない。

ぼんやりと『海に居たな』『艦娘や海の上に居たものを襲っていたな』程度の思考の絞りカスが有るぐらいである。

 

逆に、姫クラスや鬼クラスの最上級だった、加賀・阿賀野・扶桑は記憶がある程度は残してあったりする。

性格こそ、強烈な『悪意』が抜けた為…なんだかヒッポロ系ニャポーンなトンチキな頭のネジが何本か外れた感じの、良い子なんだけど変人揃いになって居るが、実はそれなりに深海時代のことは反省もしてたりする。

特に阿賀野は今際のことを中心に深海時代のことを鮮明に覚えており、顔にも口にも出していないが…実は加古に内心びびったりしていた。

 

深海棲艦としては一般空母クラスとは言え、フラグシップ級の木曾はその中間ぐらい、と言うことである。

倒れて『怨み』が抜けた瞬間、つまり深海棲艦として死んだ瞬間の思考だけ、鮮烈に記憶していたのであった。

 

 

とまあ、完全に脱線してしまった話を本筋に戻そう。

 

そんな感じで、吹雪に聞いても録な返答が返ってこなかった為、なんだかダメな主人公さんの次に艦娘達が聞いたのは髭の人の方である。

聞かれた霞はと言うと、こんな具合で、質問に答えるので有る。

 

「なんだか滅茶苦茶な流れで、楽な仕事だったハズなのに一人で取り残された挙げ句、怪我人のお守りを任されて…実際にこっちはこっちで修羅場だったわけよね。でもこっちは髭王国建国の野望も果たせてないのに死ぬわけにもいかないから必死だったのよ、霞ラリアットに霞バックドロップからの霞ナックルアロー連打で何とか撃退して…」

「ちょ、ちょっと待ってぇ…霞ちゃんから何かワケわからん単語が出てきたけどどういう事なの!?」

 

…こんな感じで、淡々と頭沸いた様なことを言い出した霞に対して、龍田が思わずツッコミを入れるものの。

そこに、飛鷹が腹抱えて笑いを堪えつつ、横から口を挟みに来たので有る。

 

「いやぁ…あの子の砲雷が敵の数が多すぎて効きが悪かったみたいでねぇ、そしたら旗艦だったっぽい感じのリ級に特攻仕掛けた挙げ句、ステゴロ仕掛けて押し倒してボコボコにして…不意打ち気味の残虐ファイトで半殺しにしてそのリ級を人質にして、身動き出来なかった深海棲艦達を片っ端から撃退していってね、ありゃ見てて笑った笑った!」

 

 

…とまあ、砲雷撃戦って何だろう、とツッコミたくなるような頭のネジが良い感じに外れた戦い方で…

カメラが回ってなかった部分で、何とか1対5の非常に不利だった戦局をひっくり返していたと言う。

 

そんな霞に対して、皆の反応はと言うと。

良く一人で頑張ってくれたね、と氏真は淡々と誉め、通康や木曾と言う無人島組のメンバーは、飛鷹達をたった一人で守ってくれた恩人の霞に対してペコペコと頭を下げる。

そして…何か、どんどん図太く雑な性格に変貌していく加古や、元々ぶっ飛んでる性格の加賀や扶桑、真面目かつ常識艦ながらも戦闘面では脳筋一直線と言う球磨や金剛は、ただただ霞の活躍に関心して誉めるばかりでツッコミを完全に放棄していたと言う。

 

 

そんなツッコミ不在の状況下に対して、阿賀野は一言だけ呟いた。

 

「…うーん、私の首をやたらエグい手で取った加古さんもそうだけど☆その辺は特に誰も突っ込まないし( -_・)?艦娘の残虐ファイトじみた脳筋戦法って流行ってるのかな~(;・ω・)」

 

わりとぐうの音も出ない、素朴な疑問である。

それに反応したのは…

 

「私はあんな戦い見てて生きた心地しなかったけどな!!ねーちゃんや木曾さんみたいな雑な連中とか、通康さんやそこの銀髪みたいな蛮族じみた連中と一緒にすんな!!!心臓飛び出るかと思ったわ!!!!」

「氏真さんとか、あの辺から悪影響受けてる人らと脳筋連中と一緒にしないでよぉ!!」

 

隼鷹と龍田と言う、被害担当艦気味の、何かかわいそうな位置の艦娘達の振り絞るかの様な絶叫だったと言う。

 

 

とまあ、綺麗に…は全くなってないが、一応のオチが付いたタイミングで。

パンッ!と良い音を両手でならしながら、わちゃわちゃした空気を吹雪が断ち切る。

 

そして、吹雪はこう言ったのである。

 

「…まあ、とりあえずこの主人公たる私の前世の話はこの辺で置いといて…とにかく、霞ちゃんからも話は聞きましたが、皆敵対する理由も意思もない連中が集まって、そして皆が鎮守府に帰る算段が付いた訳ですよ!!ならば、善は急げ、です!皆でパラオに向かって、この主人公の登場を彩るセレモニーを兼ねて、ちゃっちゃと行動を起こしましょう!深海棲艦は大体全滅しているハズだから、暫くは安全なハズですし」

 

そう言って、艦達に対して行動を促す吹雪。

…言ってることは徹頭徹尾正論だから文句はないけど、何でぽっと出のコイツが我が物顔で纏めに入ってるんだろう、と艦娘も武将二人も内心疑問に思いながら、全員が吹雪の言う通り出立の支度を開始する。

 

そうして、漂流してしまった飛鷹と隼鷹姉妹と愉快で雑な仲間達のサバイバル生活と、氏真が承ったパトロール任務は…なんだか、加古が急にパワーアップして無駄に濃い仲間がやたら増えると言う、謎の結果と共に終わりを告げるので有った。

 

 

尚、ちょっとした余談を一つ。

 

加賀が、何気無く吹雪に聞く。

貴女、自称『主人公』ですけど、私達からしたらぽっと出に過ぎない貴女のどの辺が主人公なの?と…実に根本的なツッコミを入れる。

しかし…吹雪は、指をチッチッチと言う舌打ちと共に指を振りながら、自慢気にこう言ったので有った。

 

「ダン○ーガって知ってますか加賀さん、○ヴァじゃなくて初代の方の。アレもダ○クーガが出るまでアニメ放映から半年以上かかってますし、主人公が遅咲きだったとして何の問題も有りません!つまり、私が主人公なんです!」

 

そう自慢気に胸を張って宣言する吹雪に対して、当の質問をした加賀や、天然気味の阿賀野や扶桑や木曾や、わりと全力で興味ない加古や飛鷹や霞はそーなのかーと納得するなかで…

残りのメンバーは艦娘どころか通康ですら、ツッコミを入れる羽目になった、と言うことだった。

 

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~1週間後、パラオ泊地、談話室内~

 

 

「…と言うことが、私達の生還の顛末だったのよね」

 

そう言って、にこやかに『生還』の顛末を語る飛鷹。

彼女の姿はマントにサラシと言う男前な格好ではなくて、金刺繍の眩しい白と赤のツーピースに、黒髪を彩る数多の白いリボンと言うお嬢様らしい本来の飛鷹の格好である。

 

そんな飛鷹はと言うと、こう続けたので有る。

私と貴女が仲良く話してるのは何か妙な違和感有るけど…それはそうと、わざわざ私の話を聞きに来たの?と。

 

そう問われた飛鷹の話相手とはと言うと…

その正体はほぼ20話ぶりに登場した一航戦の赤いヤツ。

神通の古馴染みの、ポンコツな相方と違い終始ラスボスじみた大物の風格を漂わせていたキャラクター…

 

そう、大本営からやって来た赤城である。

 

 

「…いえ、わりと真面目に史料としての価値は有りますから。興味深かったですし、まるで冒険小説を聞かされている様で楽しかったです」

 

赤城は、飛鷹の質問に淡々とそう答えつつ…しかし、一つだけ、顔をしかめながら視線を変えてこう言った。

…でもアレ、本当に貴女の話通りの人物だったんですか?と。

そんな赤城の視線の先はと言うと…

 

「ヒャッハァア!だいほんえーの…赤城さんだったっけか!姉貴ばっかりじゃ無くてアタシにも構ってよ~…隼鷹さん、寂しいと死んじゃうんだぜぇ!」

 

こんな感じで、やたらと赤城にウザく絡んできている隼鷹の姿だった。

 

 

…そう、この時点で嫌な予感しかしない諸兄もいらっしゃるかも知れないが…

 

隼鷹が、ド派手な見た目に反しどこか大人しく良識的で気弱なお嬢様的な性格なのは、『素面の時』だけだ。

アルコールが入ると、途端にハイテンションかつ人生自由系の無礼講な、はっちゃけ女へと変貌する。

 

そして、コイツは加古に酒を仕込んだ鋼鉄の肝臓を持つ飲酒の師匠…

要するに、アルコールが手に入らない無人島なら兎も角も、嗜好品の類いとは言え保存が効きやすく大量に入荷するアルコール類が常備されている鎮守府内では…まあ、お察しくださいと言うことだった。

 

 

しかし…まあ、流石にいくら心が広く鋼のハートな赤城相手とは言えだ。

お偉いさん相手にコレ以上、酔っぱらって無礼講かますアホな妹の狼藉は流石に飛鷹も看過することは出来ず、パチギを綺麗に決めて妹を沈めておくので有った。

 

お見事ですね、と、わりと酔っぱらっていたテンションの隼鷹にイラッと来ていた赤城は、飛鷹の頭突きに軽く拍手をしながら…しかし、真面目な口調は崩さずに。

赤城は、『本題』がまだでした、と頭に置きながらこう言ったのである。

 

「…まあ、酒癖が福島正則みたいな最悪な貴女の妹さんは兎も角…まずは村上さんのことですね。村上通康…でしたか、今川さんだけでなく彼にまで海軍籍を渡す訳にはいかないので、直接的に権限を寄越すことはできませんが、それはそれ。艦娘を救ってくれた『英雄』の一人なのです、今川さんの具申通り、彼を客分として迎え入れることを、我々大本営も認めましょう」

 

 

そう、艦娘と一緒に連れて帰ってしまった、通康の処遇の沙汰のことである。

 

流石に、飛鷹や隼鷹や木曾の恩人であり、氏真達とも喧嘩もしたが共闘してくれた彼を、まさか一人で無人島に置き去りにする訳にはいかない以上…当然、連れて帰ることにしたので有るが。

しかし…氏真からしたら、その沙汰をどうするべきか、彼一人では判断することが出来なかったので有った。

 

本音で言えば、『村上水軍』として海戦のノウハウを知っており、個人の武勇も超人的な勇者たる彼は氏真の手元に置いておきたい人材だった。

通康本人にも確認を取った際も、まぁあのガキどもをほっとくのは気が引けるけん、お上に文句言われんならこの鎮守府とやらに留まるんもエエよ、と返していた。

 

となると、後は『お上』…要するに、ダメ元で大本営に確認を取ったところ、何故か電話やメールどころか直接赤城を単騎でメッセンジャーを寄越すと言う謎の対応の元で返答した、と言うことだった。

赤城はその事を、パラオの艦達の数名に伝えつつ、世間話代わりに飛鷹達から通康達も関わる件の『生還事件』について話を聞きに来た、と言うことだったのだ。

 

 

そんな赤城は、はあ、とため息を吐きながらこう続ける。

これからも知らぬ仲にはならない事に成るんですから、艦達の皆とも仲良くしたいと言う本音も有りまして、と。

 

 

それはどう言う…と、飛鷹が赤城に質問しようとした瞬間、突如として異変が起こった。

 

 

パラオ泊地内に、地震の様な強い衝撃と揺れと、爆弾が爆発したかの様なドーン!と言う音が響き渡る。

 

慌てて机の下に避難しようとする飛鷹と、酔いがぶっ飛んで素面に立ち返りパニックになりかける隼鷹だが、そんな姉妹を尻目にマイペースを貫く赤城は、こう呟いた。

…ああ、時間通りですね、と。

 

何のこっちゃ、と二人が赤城に質問する中で、突然談話室に血相変えつつ目を丸くして突入する艦娘が現れた。

それは…

 

 

「見つけたぞ赤城さん、てか執務室に居たハズなのにフラフラしないでください馬鹿ぁ!…ってそれはともかく!ちょ…何ですかアレ!えらい事になってます!!えらいこっちゃですってコレェェェ!!!」

 

そんな感じで、恥も外聞もなくゼェハァ言いながら突入して来た神通で有る。

キャラ崩壊し過ぎだから落ち着け、と、神通を宥める隼鷹ではあるが、コレが落ち着いてられますか!と言いながら、更にこう続けたので有った。

 

「…鎮守府が、パラオの敷地内にもう一個生えて来てるんですぅぅぅぅ!」

 

 

はぁ!?と飛鷹と隼鷹が絶叫して、慌てて、窓の外を確認する。

その光景はと言うと…

 

「うひー…マジか、コレ。凄いわねぇ……港を挟んで、鎮守府がもう一個増えてるわ」

「な、なんじゃこりゃぁ!?」

 

神通の言う通り、魔法の様に今まで何もなかった虚空から突然に、もう1つの鎮守府が生えてくると言う異常事態である。

その状況下に全員が混乱する中で…平常運転の赤城が淡々と、こう呟いたので有った。

 

 

「『出張!Bar Admiral 』…もとい、出張!ブルネイ泊地です。大丈夫かしら…まあ、大丈夫でしょう、多分」

 

そう、唐突な、コラボ回の開始の狼煙で有ったのだ…




はい、と言う訳で…無人島編が一区切り付き、新章が始まりました。
人物紹介を挟み、コラボストーリーを進めていきたい所存です
と言っても、箸休め回兼コラボ回のお話なので、あまり長いストーリーにはなりませんが


コラボ先のストーリーは、ごません様の艦これ二次『提督はBarに居る』より賜りました

ごません様は精力的に活動中の方でして、一年でなんと200話以上のストーリーを書き上げている速筆家です
一ヶ月程執筆が止まってた時期が有りましたから、実質的に330日で投稿話数を単純に割ると、三日に二話以上とか言うわりと意味不明な更新速度だったりしました

サクサク読めて楽しく美味しい、そんなクックパッドじみた楽しみかたもできるグルメ作品ですね
個人的には、実はわりと好きな回はグルメも酒も関係ない麻雀回だったりもしますが
那珂ちゃんかわいい、超かわいい

…とまあそんな感じの解説は置いといて、本題ですね。

 
『出張!Bar Admiral』と言う、ごません様の一周年記念企画のコラボ歓迎企画にて、僕も参加を申し込んだ際にOKを頂きました。
と言うことで、こう、コラボさせて頂きましたが…いきなりレギュに引っ掛かりそうなレベルで導入がブッ飛びすぎなのは、まあご愛敬と言うことで1つ

まあ、「ごません様のお話」と言うことならではな納得の行く理由は付けますし、お祭り作品ならたまにははっちゃけ枠も有ったら良いかな…と、許して欲しいです


ではでは

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