無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~   作:たんぺい

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とりあえず、ストーリーを進める前に、本編に関係無くて今まで出せなかった&一話にするには短すぎでオマケに挟むには長すぎた…帯に短し、たすきに長しな小ネタを一本に纏めました


番外編 三十話直前の、短編集と言う名のオマケ回

~お酒のお話~

 

「そう言えば、氏真さんは呑まないの?」

 

加古が食事中、机を挟み何気なしに対面に座っている氏真に、指でくの字を作りお猪口で煽る様な動きを付けながら質問する。

聞かれた氏真はと言うと、微妙な顔でそれに返した。

 

「…呑めない訳じゃないけどね、どうにも弱くて明日に残るたちで、あまり呑まないのさ」

 

そっかー、と、氏真の色無い返答に苦笑する加古。

そんな彼女の反応を見て、逆に氏真が気になったことが出来て質問を返した。

そう言えば、皆の酒癖ってどうなの?と。

加古曰く、こんな感じだったとか。

 

「えーと…憲兵さんと加賀と霞と浜風が超強いね、日本酒の4合瓶一人で三つとか開けてたから…一人1升ちょいか、加賀が口数増えるか鼻唄うたうぐらいで、酔ってもあんまり人格変わんない感じだよ」

 

…信じられんなぁ…と、氏真が強い組の酔い方に目を丸くする。

「ザル」どもの次は、まあ精々「うわばみ」組のやや強いレベルなお話である。

 

「金剛さんと神通さん、後は龍田さんがそれなりに強いは強いかな?日本酒だと4合か5合ぐらい、ウィスキーでオン・ザ・ロックでロックグラスを3杯ぐらいかねぇ。金剛さんは酔っても本当に変わんないし、ゆっくり呑みたいみたいであんまり酔っぱらう姿を見せたくないみたいだから、本当はもうちょい呑めるかも知れないけど…」

 

そう言って、一区切りつけて、加古はげんなりした表情でこう締めた。

 

「…逆に龍田と神通さんはアレだ、飲むと超うるせえ。龍田は酒のテンションで人に絡んで呑ませたがる絡み酒だよ…神通さんは、その、愚痴りながら超甘えてくる」

 

なんだかなぁ…と、なんだか目に浮かぶ光景に呆れて氏真はこう返すしかなかった。

そして、最後に弱い組のお話である。

 

「…球磨は『呑まない』感じだけど、他はもう弱い子ばかりかな?特に睦月と朧は体質的に駄目っぽいな~、天龍に至っては甘酒でダウンしてるとか馬鹿だろってレベルで弱かったりするけどね」

 

…ふーん、と加古の話を流し聞きしてる氏真だったが、最後に気になったことがあったのでそこも突っ込んだ。

肝心の、君の強さってどんな感じなの?と。

加古本人曰く…

 

「日本酒だったら大体一晩で樽で半分ぐらい」

 

…病院連れてった方が良いのかも、と氏真は何気なく言う加古に呆れるしかなかったとか。

 

 

 

~趣味のお話~

 

「…うーん、欲しいなぁ…」

 

朧が鎮守府の渡り廊下を歩いていた時に、一人事が口に出ていたことが、そもそものきっかけである。

何気なく加賀がそれを聞き止めた際、朧に質問した。

何が欲しいのですか、良ければ相談に乗りますと。

 

朧曰く、アクアリウム(水槽)のことのお話であり、色々入り用なのだと言う。

最低限の餌用の乾燥小エビやペレット等の他、蟹脱走防止用の蓋付きケース等は最低限揃えたものの。

投げ込み式の濾過装置や各種水草、水温調整用のヒーター等も欲しくなるらしい。

薬品もなんやかんやでかなり細かく揃えたので、財布が寂しくて仕方ない、と言う話だったと言う。

更に言えば、予算を身繕い流木なんかも買いたい、とのことだった。

 

「…流木?鎮守府に流れてるのを拾えば良いのではなくて?」

 

加賀が何気なくそう口を出すと、朧はやや興奮ぎみにこう返した。

 

「海で流れ着いた流木って、アレ塩抜きが凄く大変で水槽の水が汚れちゃうから大変なんですよ!川やダムの流木だって、専用の薬品使うか鍋で煮沸消毒を兼ねた灰汁抜きをして綺麗に乾かして漸く使えるって感じなのに…そもそも工業油や生活排水とかで汚れちゃうとそれだけでアウトですから、上流の綺麗なものじゃないとアクアリウムを駄目にしちゃいますし…」

 

そう言って、朧は続々と、流木の話を皮切りにアクアリウムのアレコレについて話を続けていく。

PHがどうだの、アンモニアや塩素がどうだの、寄生虫がどうだの、エアーポンプのメーカーがどうだのと。

…具体的には、加賀を捕まえて2時間近く語り続けていた、と言う。

 

流石に、興味の無い…と言う訳じゃなかったが、カラオケで演歌歌うか適当に他人をおちょくることが好きな畑違いな趣味の加賀、いくらなんでも2時間も捕まるとげんなりする訳で。

しかし、朧としては、せっかく自分の趣味に引きずり込めそうな人を見つけた以上、中々離そうとはしなかった。 

 

そんな加賀と朧をたまたま見かけた浜風は、何事かと首を突っ込む。

困り顔の加賀と新しい獲物を見つけた目の朧に対して、浜風は何となく状況を把握した。

…貸し一つです、と浜風は頭に付けながら、こんな呪文を唱えた。

 

「先攻ダークロウフレシア虚無神宣通告伏せエンドォ!」

 

うわぁぁぁぁ…ともう一人の方の朧のトラウマをえぐられたせいか、断末魔をあげながら、そのやめてくださいしんでしまいますな呪文を浴びた朧は血を吐きつつ気絶した、と言う。

…とまあ、それはそうとと言うことで。

 

まあ、良くわかりませんがえげつない呪文ありがとうございます、と加賀が礼儀正しく頭を下げると、浜風は礼には及びません、と返す。

そして、気絶している朧を浜風がふんずと米俵の様に担ぎつつ、去り際にこう言ったとか。

 

「…私は料理も好きですが食べることも大好きですので、今日は朧さんを美味しくいただかせて頂きます!」

 

そう言って、つかつかと自室に朧を持ち帰ろうとする浜風を加賀は実に微妙な表情で見送りつつ、とりあえず内線で氏真と杉村に連絡した、と言うことだったとか。

まあ、その後の浜風への剣豪二人のお説教(物理)については…あの後、自室で一人で迷惑にならない程度の声量でカラオケに興じていた加賀はあんまり関係無いので割愛させていただくとしよう。

 

…趣味は、他人の迷惑にならない程度にしましょうね、と歌い終わった加賀がポツリと一言だけ呟いた。

 

 

 

~料理のお話~

 

「…しかし、不思議な話です」

 

皆で朝食を取っていたある日のお話である。

台所に立っている浜風を見ながら、何気なく杉村が口に出す。

何が不思議なんだよ、と天龍が聞くと、杉村はこう続けた。

…14人も人が居て、浜風さんだけしか料理出来ないんですね、と。

 

最初に口を出したのは霞である、仕方ないじゃない、と。

何か理由があるのか聞き返した杉村に対して、霞はこう返した。

 

「髭が無いクズ鎮守府のせいで、私の髭力が足りないのよ!これじゃ私の潜在能力が発揮出来ないじゃない!」

「何か言い出した!?霞さんが何かオーラ力みたいなこと言い出した!!髭と料理関係有るんですか!?」

 

…思わず、霞の言葉に倒れかける杉村に対して、霞はドヤ顔でこう続けていく。

髭が有ればトップアイドルとも結婚出来るし、出世街道にも順風満帆に乗れるし、健康診断にも引っ掛からないし、宝くじにも当たるのよ!と。

どんだけ霞さんの中で髭が万能な存在なんですか!と杉村が霞に突っ込む中で、ベシっと鈍い音を響かせながら、霞の後頭部を強襲して気絶させて強制的に黙らせるものが有った。

 

「…だから、父さんに髭は似合わないって言っているでしょう!」

 

…加賀の、矢の直撃で有った。

 

後頭部に矢が刺さってるのを見て慌てる一同ではあるが、加賀は容赦なくこう続けた、峰打ちです、と。

矢の峰って何だよ!?と全員がツッコムなかで、金剛が、あっと小声で呟きながら、「峰打ち」の意味を理解した。

 

「…トイレットとかに有る、ラバーカップですカー…なんつーもんシュートしているデスカ…」

 

…加賀が放ったのは掃除道具入れのロッカーに有った、スッポンするアレだった。

 

「流石に普通の矢で後頭部を狙う訳にはいきませんから、頭がザクロにならない程度に痛いのはこれが限界かな、と」

 

悪びれなく言う加賀に呆れつつも安堵する一同ではあるが、それはともかくも。

最初の憲兵さんのご質問ですね、と続け、こう言った。

…興味がない訳ではないですし最低限作れなくはないですが、流石に浜風さんの腕が上手すぎて、炒めものやお握り程度にしか出来ない自分が、わざわざやりたいと名乗り出るのは躊躇う、と。

 

それに同調したのは夕立と球磨と龍田と天龍だった。

まあ、加賀と似たり寄ったりの、精々大学生の独り暮らし始めたばかりの兄ちゃん姉ちゃん程度の料理の腕しかないのに、セミプロ級の腕がある人に比べられるのはちょっと困るし、何より食材が勿体ない、と。

…まあ、何となくわかるような、と浜風が彼女らの言に同調すると、こう返した。

興味が有るなら、なんなら料理教えますよ、と。

 

「ただし、受講料は1回一揉み膝枕付きですが!」

「「「ぜってーやだ(クマ)(っぽい)!!!」」」

 

…なお、勧誘は色々台無しで駄目だったりしたが。

後、食事中にシモは止めろにゃ!と睦月にジャーマンスープレックスを叩き込まれていたが。

 

それはともかくも、睦月はこう言った、今の糧食はチンしたり湯をかけたらできるんだしわざわざ覚える必要なんて無いにゃし、と。

なんだか超ものぐさな加古や、多趣味で料理を覚える余裕がない朧は超同意しつつ、横で無言で頷いていた。

…駄目人間の発想っぽい、と横から夕立の呆れたツッコミが飛んできたが、彼女らは気にしなかった。

 

逆に、睦月から質問が飛んで来る。

氏真さんや憲兵さんはどうにゃし?と。

杉村が言うには、こんな感じだった。

 

「若い頃から剣ばっか振ってまして…は、花嫁修業が…ははは……」

 

…人のことが言えないじゃない、と全員が言い出しっぺに呆れつつ。

次に氏真はと言うと、こんな感じだった。

 

「…美味しいのはわかるけど、あんなにドバドバと調味料は使えないよ…僕は…」

 

塩すら貴重品扱いだった戦国時代出身ならではな、氏真の悩みだったとか。

 

 

尚、話題に出てない神通と金剛について、であるが…

 

「…何かの呪いなのでしょうか、ただ水を鍋に入れて火にかけただけでも謎のカレーになってしまうのです。何を作っても何を焼いても煮ても何故かカレーにしかなりません…」

「何がどうやったら水からスパイスやらジャガイモやら肉やらが生えるにゃ!?変な世界線の神通さんが混ざってないにゃし!?」  

 

カレーしか出来ない系、華の二水戦なスパイスの錬金術師。

 

「わーたしの生まれ故郷直伝の、スターゲイザー・パイとハギスとウナギのゼリーデース!!」

「イギリス飯は止めろクマ!!」

 

メシマズ国の呪い系、金剛さんと言うイロモノだったとか。

 

 

 

~剣のお話~

 

「チェストォ!!」

 

ことのおこりは、天龍と杉村の剣馬鹿師弟の訓練の際のこと。

斬艦刀のサムライ系ドイツ人か何かに影響されたのか、八相の構え(肩に担ぐ様に剣を高く構える型)から、ぶん!とチェストと叫びながら竹刀を降り下ろす天龍。

妙な構えと言うか叫びですね、と杉村が言うなかで、天龍は何気なくこう返した。

「示現流」って言う新撰組も震え上がらせた薩摩の流派の剣なのに、杉村さん知らないの?と。

 

薩摩…確かに、鳥羽・伏見ならず薩摩の連中とは何度か斬り合ったことは有りましたが、何か違います、と。

そして、多分、近藤さんもビビらせた剣だったら…と言うなり、記憶を頼りに構えを再現した。

 

確かに、刀の持ち方は大体合っては居たのだが、杉村の腰の落とし方がだいぶちがう。

仁王立ちに近い高い腰の位置だった天龍とは違い、ほぼ前傾姿勢のまま腰をぐっと落とした中腰と言う案配である。

そうして、叫び方もキェーイとかチェイって感じでした、と言いながら、むしろ居合いみたいな剣を使ってきた記憶が有ります、と付け加えていた。

 

 

「…ってことが有ったんだけど、妙な話だよな~」

 

天龍が何気なく、任務終わりの休み時間に龍田にぶちまける。

龍田はと言うと、まあ伝説なんてそんなものよ~と苦笑いして返すが、横から口を挟んでくる声がした。

それは、金剛である。

彼女曰く、多分流派勘違いしてますよ、と言うことだった。

そしてこう続ける、『じげん流』って2つ有るんデース、と。

 

マジで!?と目を輝かせる天龍に、金剛は軽くレクチャーすることにした。

 

「アニメイションとかで有名な『じげん流』は東郷の示現流って言われる、島津家の上級武士が使う剣法デース!見栄えがベリーグッドで精神論がミステリアスなので、時代劇とかでも良く見ますネー。そして、憲兵さん達新撰組がリアルに戦ったのは話を聞くに薬丸自顕流って名前の別な『じげん流』デース、下級武士とかに広く伝わった剣らしいですし、一般兵が使ってきたなら十中八九間違いないネー」

 

そう言う金剛に、龍田は詳しいわね、と質問する。

一番下の妹が興味があったみたいで釣られて覚えましたネ、と言いながら、こう付け加えた。

 

「ルーツが近いから名前もそっくりさんデスが、稽古法の関係から『とんぼ』の型がちょっと違うんデス。東郷の方は真っ直ぐ立った樫の木を煙が出るまで叩く『立ち木打ち』を行うせいか腰が高いケド、薬丸の方は横に寝かせた木の束を狙って全力で打ち込む『横木打ち』をするからか、東郷の方より『とんぼ』の腰の位置が随分低くなってたりするんデス」

 

そう言って、何気なく金剛はたまたま廊下の外に落ちていた角材を手に取る。

そして、そのまま誰もいないことを確認した金剛は薬丸の方のとんぼの構えを取ると、思いきり地面に向かいキエエと猿叫を上げてソレを降り下ろした。

そして、降り下ろすその先には、小さなクレーターじみた大穴が空いていたのであった。

 

目を丸くする天龍と龍田を見て、金剛は苦笑いでこう付け加えたのであった。

 

「…訓練生時代に妹に付き合わされて、アリトルですが大本営に居た金剛型全員が、剣術経験者の軍人さん片っ端から捕まえての指導で剣法をやってたりしたんですネー…私は他にタイ捨や直心影流と浮気しながらまんべんなく色々ちょっとかじったぐらいデスし、氏真サンや憲兵サンみたいに『実戦』じゃ役に立たない二流ですガ、剣術に行き詰まってきたら私にも相談して下さいネー!天龍!」

 

はい、金剛センセイ!と、何故か天龍の師匠が増えたそうな。

 


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