無能転生 ~提督に、『無能』がなったようです~   作:たんぺい

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二十六話 普通の子が二人に変なヤツが2体…来るぞ遊馬!

…また、変なヤツが出たなぁ…

 

睦月は、工匠で出会った初対面の4人の内ブロンドの娘以外の3人が少なくともイロモノ寄りだったことに頭を抱えつつ。

とりあえず、挨拶もそこそこに、新人の娘達に自己紹介をしてもらうように、睦月は促した。

 

 

「…ん~、トップバッターは、最初に建造されたっぽい私で良いかな?」

 

少し小首をかしげつつ、最初に口を開くのはブロンドの髪の長髪の美少女だ。

美しい髪もさることながら、白磁のような肌に翡翠色の瞳。

睦月に比べたらやや背の高い、細身でスラリとしたスタイルの、外国人のような容姿をしている。

黒地を基調としたブレザーのような制服に、赤いチーフタイが映えるアクセントになっていた。

 

…自分と色々真逆で、凄いなぁ…

睦月はそんな、ちょっとしたコンプレックスを抱きつつも名前を聞くことにする。

返ってくる答えは、こんな感じだった。

 

「白露型の4番艦の、駆逐艦の夕立って言うっぽい。これからよろしくお願いしますっぽい!」

 

そう言って、ニコニコと笑いながら上品に会釈する『夕立』と言う女の子。

更に人懐っこい感じで、睦月や氏真や加賀のような既存組の他に残りの建造組の新人達にも一人ずつ向かい、私達白露型を覚えてほしいっぽい!と元気よく付け加えながら挨拶を交わしていく。

 

なお…加賀がつい、妹ってこんな感じでしょうか、と口を滑らせた際、夕立のお姉ちゃんは白露型だけっぽいとマジレスされてちょっとへこんでしまったことは余談として書いておこう。

 

 

それはそうと、妙な口癖ではっきりしないけど礼儀正しくていい子だな、と睦月と氏真が顔を見合わせながら夕立を誉めつつ笑いあっていると、横からぐいっと小柄な銀髪の少女が前に出る。

そうして、初対面だろうに氏真に右手で指を突き付けながら、キツい口ぶりでこう言った。

 

「…朝潮型駆逐艦、霞よ!こんなクズ提督の下に来るなんて、なんてついてないのかしら!」

 

…開口一番からの、霞からの随分なご挨拶である。

 

初対面から悪口をいきなり言われる謂われも覚えもなかった氏真はひたすらに困惑し、氏真の秘書艦であり評価してくれて恩の有る睦月や、『娘』として自分を愛してくれる氏真が大好きな加賀の二人はいきなりの物言いに静かにぶちきれてしまうが…

霞は、睦月と加賀を無視しながら、こう宣言した。

 

「『提督』ってのはね、『髭の男』の勲章なのよ!良いこと?髭を綺麗さっぱり剃っちゃうなんて駄目、ソレはクズのやることよ!剃刀で整えた綺麗な髭こそ至高なのは論を待たないことだけど、すっぱりさっぱり全部剃っちゃうぐらいなら無精髭ボーボーの方が全然マシよ!」

 

…霞的には、クズかどうかは髭基準らしかった。 

 

その場にいた全員がぶっ倒れるものの、霞は一切気にしないで氏真に近寄る。

そして、霞はに右手を差し出して、有るものを氏真に渡した。 

それは…

 

「…でもまあ、私は鬼じゃないわ!チャンスぐらいなら与えてあげないこともないもの…はい、私の初期装備の『カイゼル髭の付け髭』よ!」

 

霞いわく、『初期装備』らしい付け髭であった。

 

「てめえ機銃とか!魚雷とか!爆雷とか!主砲はどうしたにゃぁぁああ!!」

 

睦月は霞に思いきりツッコミを入れるが、霞は意に介さずバンソーコーの娘の方を指差してこう返す。

いわく、彼女が手作りしてくれた逸品だ、と。

バンソーコー娘の方も、手作りのDホ○ールの応用だからそこまで難しいものでは無いが…と、意に介さず返答する。

イエーイ!と変な新人二人がハイタッチする様を見て、睦月は酷い頭痛に襲われた、と言う。

 

なお、当の氏真はと言うと、とりあえず促されるまま霞から渡されたカイゼル髭の付け髭を口にくっつける。

その感想はと言うと…

 

「…致命的に威厳有る系の髭が似合いませんね、父さん…」

「…優しい童顔のてーとくさんだと違和感しかないっぽい」

「…うん、自分でも何となくわかってた」

 

何故か霞だけは満足げながらも、残りの艦娘からは大不評だったとか。

 

 

さて、ちらりと先程も出たバンソーコー娘の番になり…とりあえず、ツッコミ所しかないような嫌な予感を感じつつ、睦月は聞く。

…誰、てか、本当…何?と。 

バンソーコー娘はムッツリした表情のまま、マイペースにそれに答えた。

 

「私は、サテライトから来たデュエリストだ、顔のマーカーはその時に付けられたものさ。私達の絆の力で勝利を刻む!」

「だからさっきから5D'○の不○遊星じゃないの!!だから、本当、誰ぇ!??」

 

完全に、蟹違いの人が混ざってバグってる、良く見たら刺青のような右手に赤い竜の痣が光って浮かび上がってる栗毛の少女。

そんなワケわからないフィールに圧倒されて、雑なツッコミをせざるをえない睦月ではあるが…

そんな睦月の前に、髭の人な霞が横から口を出した。

 

「あの娘は綾波型の駆逐艦の『朧』よ。ちょっと色々あってバグってるけど、とってもいい子だから仲良くしてあげなさい!」

 

…もはや原型が無くなっているが、チームファイブなんとかのチームリーダーになっている彼女の名前は『朧』、艦これの蟹の人であった。  

 

本当になぁにこれぇ?な朧にあっけにとられるなか、加賀は、ふと思い付いたように聞く。

色々あってバグってるって、何故貴女が知っているのですか霞さん?と

しまっためんどくさいこと口を滑らせた…!と霞が慌てるなか、夕立が実にげんなりした表情で語り出す。

いわく、こう言うことだった。

 

「…妖精さんの一人が、どうも私達の建造中の暇潰しに鋼材の一つに変な龍の落書きをしてたっぽい…それを知らないまま別の妖精さんがその鋼材をつかって朧ちゃんを建造したら…何か朧ちゃんがバグったらしくて、痣が光ってる間は別人がインストールされちゃうっぽい…」

 

何やってんの!?と全員からツッコミが飛ぶ。

コレは責任問題とかじゃないよね、と真っ青なまま怒ってるのか焦ってるのかわからない感じになる一同だが、霞は大丈夫よ、と返す。

朧本人もそろそろ戻る頃だし本人に害は無さそうだし、件の下手人の妖精さんは1050年地下送りだ、と。

 

…地下送りってなんだ、と氏真が呆れるなかでのこと。

痣が消え正気に戻った朧が、ゆっくりかぶりを振り、また『もう一人の私』が…と自嘲しながら、改めて自己紹介をかねた挨拶をした。

 

「…むぅ、とりあえず改めて、綾波型の特型駆逐艦の朧です。まあ、御覧の通りちょっとめんどくさい女だけどよろしく頼みます。私のお友だちの蟹さんやヒトデさんが迷惑かけちゃったり、私の変な体質で迷惑かけちゃったりするかもしれないですが、今後ともよろしくしてください!」

 

そう言って、どこからか取り出した子蟹やヒトデと共にぺこりと頭を下げる朧の姿を見て、全員が同じことを思う。

…いい子だけど、めんどくささが『ちょっと』ってレベルじゃない、と。

 

 

さて、トリを飾るのは、茶髪でアホ毛のクマクマ言っていた娘である。

トリは緊張するクマね、と前置きしながら、ぐるりと氏真に向き合うとこう告げた。

 

「球磨型のネームシップの、軽巡洋艦の球磨だクマ!この球磨、艦隊の一員として司令官の助力になるように励む次第だクマ!」

 

ビシっと微動だにせず海軍式のピチッとした敬礼のポーズを取る球磨。

かしこまらなくても良いよ、と氏真が言うが、新人ですから気にしないで欲しいクマ!と意に介さない。

しかし、氏真としては、あまりかしこまられるのは苦手であり、そのことを球磨に告げる。

 

そうして、ならばと言った球磨は、いきなりパシッと良い音をさせながら右足を蹴ると、反動も助走も付けないまま2メートルは飛んだんじゃないかと言う高いジャンプをいきなり繰り出して。

そのままとんぼを切って宙返りしつつ、新体操のように綺麗に着地して、ゆっくりと氏真の方へと振り替える。

駆逐艦達と加賀が思わず拍手で球磨をあっけにとられつつもたたえるが、その球磨本人はと言うと、それには意に介さないまま、氏真にこう告げた。

 

「…司令官の御覧の通り、何か球磨は体を動かすことが得意みたいだクマ。とりあえず、前線に立てるように、もっともっと、司令官みたいに動けるようになりたいクマね」

 

そう言って、苦笑する球磨に対し…氏真は、良く僕を見てるね、と球磨の観察眼を誉める。

とうの球磨はと言うと、淡々と誉められたことも意に介さずこう返した。

 

「失礼ながらずっと司令官を黙って観察していたクマ。ちらりと剣道の竹刀タコが掌に見えてたし、球磨よりちんまいナリの司令官なのに筋肉がけっこうしっかり付いてるのが見えたクマ。きっと見せ筋とかと違う、本当に『やる』人の身体クマ…下手したら艦娘より強そうな、クマね」

 

まあ、せいぜい、司令官に斬られないぐらいに強くはなりたいクマ、と最後に言った球磨。

…妙な口癖はともかく、油断ならないけど味方にいると頼もしいな、と氏真は返す。

そして、僕以上に強い剣の達人の憲兵さんの開いてる道場があるから、気になるならそちらに向かうと良いよと、氏真が教えると、球磨は満面の笑みでソレに答えたのであった…

 

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「…マトモなのが二人しか居ないのだぞ…」

 

さて、そんな感じで新人達の工匠での自己紹介が終わった後のこと。

新人達に振り回され、睦月は疲れはてたように溜め息混じりで言う。

それを聞いた霞はこう返した。

当然、私は『マトモ』よりって意味なんでしょうね、アンタ!と。

 

「テメーは変人筆頭だろ、この髭フェチがにゃあ!」

「ショーフクッ!?」

 

…睦月の全力どつきツッコミが、その返答だった、とか。

 

 

 

一方、氏真サイド。

 

「…ところで、ソレはいつ外すっぽい?」

「父さんは、やっぱりさっぱりした方が似合います」

「あー、そういやツッコミ入れるタイミング逃してたクマ」

「うん、私も取った方が良いと思いますよ、もう一人の私の謹製の…」

 

残りの四人から一斉にツッコミを入れられて、漸く氏真は自分の異常に気が付く。

そう…

 

「「「「その付けっぱなしのドリフのヒゲダンスみたいな妙な付け髭!!」」」」

「…あ!忘れてた!」

 

…霞に渡された、カイゼル髭の付け髭のことだった。


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