トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
後日談として、川崎沙希のあの後について。
結論として、アイツはバーを辞めた。
「さて、比企谷君。洗いざらい話してもらうわ」
「洗いざらいも何も、俺はただアイツがあのバイトを辞めても大丈夫な理由を提示しただけだ」
放課後の校舎、奉仕部に行くときによく使っている踊り場。そこで雪ノ下に捕まった俺は、文字通り尋問をされていた。
とはいえ、俺がやった事なんてたかが知れている。
「そのやり方がわからないのよ。いったい、どんな魔法を使ったの?」
「別に難しい話じゃないぞ? ただ金を工面する方法を出して辞めるように促しただけだ。今回、アイツの問題は金だ。それはストーカーでもしてたのかってくらい情報持ってたお前もわかってたんだろ?」
「当然ね。彼女の事は隅から隅まで事前に調べつくしておいたわ」
「なんか聞かない方が身のためな気がするからスルーするぞ」
家族構成までならわかるけど、どこから手に入れたんだ経済面とか。ラノベとか漫画でよく見る表現ではあるけど、こうしていざ目の前でやられると恐怖以外覚えないな。
「今回俺が使ったのはスカラシップ制度ってやつだ。簡潔に言うと成績が良ければ、学校にもよるがある程度初期費用諸々が免除されるお得な制度だな」
「それを素直に聞き入れてくれたってわけね」
「お前が異常に追い詰めてくれたのが一番の要因だけどな」
「そうかしら。私、あの時ほとんど何もしていない気がするのだけれど」
「人を脅しに脅しまっくたヤツが何もしてないとか無理があるだろ。とにかく、お前が精神的に追い詰めてくれたおかげで思考が狭まってたから、提案をあっさり飲んでくれたってわけだ」
ま、成功しようがしまいが俺はどっちでもよかったけどな。
「なら、今回は私が役に立ったっていう事?」
「まぁ、そうだな」
そう言うと雪ノ下は小さくガッツポーズを俺から見えないよう気を付けながらする、んだけど、見えてるからね? 隠すようにするだけ成長はしてはいるんだけども。
「とりあえずこれで依頼は達成か。しばらく依頼とか来ない方が嬉しいんだが」
「あら、そんなことを言っているとまた舞い込んでくるわよ? フラグっていうのよね?」
「勘弁してくれ……。なるべくバイト以外で働きたくないんだが」
「あら、何か理由でもあるのかしら?」
「親父とお袋が俗にいう社畜だからな。その背中をずっと見続けてたら仕事ってクソなんだなって刷り込まれたんだよ」
平日は朝早くから出社して夜遅くに帰宅、休日は疲れを取るためか今度は遅くまで寝ている。そんな二人の姿を見て誰が「私もああなりたい!」とか目を輝かせて言うもんか。昔の俺の目みたいに濁らせて「うわぁ……」って言ってた方がまだ健全だろう。
「とにかく、もし比企谷君の方で何か解決案があれば事前に教えてもらえないかしら。それも含めて私の方でもどう動くか考えたいから」
「あぁ、すまんな。報連相を忘れてたわ」
正直、この解決策は出すつもりも無かったし言うか悩んだんだよな。スカラシップは俺も使う予定だったから、ライバルを余計に増やすようなことはしたくなかったし。
「では、話も終わったところで部室に行きましょう。皆、部室で待っているでしょうし」
「だな。これ以上待たせると一部がうるさそうだしな」
この後、案の定折本とか部員じゃないはずの材木座が騒ぎ立ったのは言うまでもない。マジでうるさかったちくしょう。
マジで遅れて申し訳ありませんでしたああああああああああ!!!
もう、もう! こんな更新が止まるとは思ってませんでした!
いや、環境が変わったり忙しすぎて文字が思いつかなかったりアニメすらほぼまともに見れないような精神状態になってしまい……なんていう言い訳はおいておいて、とにかく待たせてしまい申し訳ありません……。
気合い入れてどうにかまた書きますので気長にお待ちください……。