トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。   作:袖野 霧亜

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川崎沙希 ~④~

 雪ノ下と由比ヶ浜の二人と別れ、野郎三人で晩飯中をしていたところ。そこで重大な失態が発覚してしまった。

 その失態を犯していたのは案の定というべきか、こことぞとばかりにやらかしたのは材木座だった。

 いや、正直その展開は予期すらしてなかった。ていうか、出来るわけもなかった。

 

「ざ、材木座……お前!」

「……ふ、バレてしまっては仕方あるまい。これに関しては謝罪をしよう。だが、言い訳だけはさせてほしい」

 

 戸塚を置き去りにするほどの不穏の空気が流れる。

 しかし、この事実だけは到底看過できない。この失態だけは、雪ノ下や三木じゃなくても嘘だろ? という反応をせざるを得ない、それほどまでのやらかしだった。

 そう、この男、材木座義輝は――

 

「お前、なんで……、ガッチガチの和服を着てるのに靴だけローファーなんだよ!」

「その言い訳を、怒鳴る前に聞いてくれ!」

「ふ、二人とも! そんなに大きな声出したら他の人に迷惑になっちゃうよ!」

 

 止めるな戸塚! よりにもよってコイツ、ミスマッチすぎる組み合わせを出してきたんだぞ! 最初は袴の裾で見えなかったが……、まさかラーメン屋のカウンターにあるような少し高めの椅子に座るタイミングで気付かされるとか後出しにも程があるだろ! せめて、目的の店でのチェックで判明させてほしかった!

 

「頼む! 二人とも、我の話を一先ず聞いて給う!」

「一応聞いてやる。なんだよ」

「うむ。あれは我が――」

「話が長くなる前口上だな。三行で話せ」

「我、家を出ようとする。

下駄を履いた瞬間なぜか花緒が切れる。

予備の物も全てどこかしら古びていて使い物にならない。

我、困り果てる。

仕方ないからローファーで我慢しよう。

と、いったところだな」

「よし、歯ぁ食いしばれ」

「なにゆげぶらぁ!?」

 

 横っ面を痛くない程度の威力で拳を振り抜く。

 ったく、この馬鹿め……。お前がいなかったら由比ヶ浜しか雪ノ下の精神安定係がいなくなるだろうが。五人がいる状態でもギリギリだって言ってたのに二人が来れないってなったら絶対雪ノ下崩壊するだろ。

 あれ? もう依頼達成無理じゃねこれ?

 

「いやつーか、そうだよ! 葉山だ葉山! アイツ正式な奉仕部の一員だろ、何してんだ!」

「え、八幡聞いてなかったの?」

「彼奴は何やら家の都合があるとかで来れないと申しておったぞ?」

「なんで奉仕部員の俺より部外者の方が詳しいんだよ……。報連相くらい俺にもしてくれてもいいんだぞ?」

「いや、八幡もいる時にちゃんと言っていたはずなんだが」

 

 やれやれだぜ……。そういう事はちゃんと相手の反応まで確認しておくもんだぞ。俺みたいにいつも何かしら考え事をしているヤツとか特にな。

 

「まぁいいわ。とりあえず俺はそろそろホテルに戻るわ。戸塚はどうする? 帰るなら途中まで送るぞ」

「あれ、八幡。我には何も聞かないの?」

「お前は強制連行だ」

「散っ!」

「あ、おい待て逃げるな!」

 

 くっそ、なんでローファーなのに無駄に機敏なんだよ! 戸塚を一人にするわけにはいかないから深追いも出来ねぇ!

 

「まぁいいか。どうせアイツ、学校でボロカスにされるだけだしな」

「あ、あはは。さすがにそれはないと思うけどな」

「それがあるのがアイツの運命だ。っと、悪い戸塚。途中まで送るぞ」

「ううん、さすがにそこまでしなくていいよ。それより早く行かないと二人を待たせちゃうよ?」

「くっ……確かにそうだ。じゃ、じゃあ戸塚、気をつけて帰れよ」

「うんおやすみ、八幡」

「あぁ、おやすみ」

 

 戸塚に名残惜しすぎる別れを告げ、集合場所に走る。早くこの場から去らないとマジで後ろ髪を引っ張られそうだしな!




今回は超短め!! だよ!!! ごめんね一時間で全部書いちゃったからね!

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