トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。   作:袖野 霧亜

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解消の仕方

 カフェらしく、静かな時間が流れる。

 誰も言葉を発さず、ただ空気を吸う音だけが……響きはしないが、まぁホントにそれだけしか音がないくらい静かだってことだ。

 いや、なんでお前等そんな静かなの?

 葉山はポカンと口を開けてアホみたいな顔してるにも関わらずイケメンとかふざけんなよ一発デコピンさせろ。んで刻達は頭にクエスチョンマークを浮かばせてるような顔してるし。

 俺はただ、葉山にグループを抜けろって言っただけだぞ?

 

「ひ、比企谷。それは一体どういう……」

 

 ややあって葉山が額から汗を流しながら聞いてくる。

 いや、どうもこうも無いだろ。

 

「単純な事だろ。お前がそこから最初から居なければ、この事態も収縮するって言ってるんだ」

「……どういう事だ?」

「簡単な質問をするぞ。葉山。そもそもこの事態にお前が直接関わっていると思うか?」

 

 やや考えた後、葉山は首を横に振る。

 

「そうだな。今回の出来事は直接お前が関わってはいない。だが、間接的にならどうだ?」

 

 やはりと言うべきか、俺の言う事が少し理解出来ないらしく、首を傾げる。

 わかりやすいように少し噛み砕いて言うか。

 

「要はこの問題はお前を巡って起きた問題だ」

「そんな! どうし……いや、確かに比企谷の言う通りかもしれないな」

「わかってもらえて何よりだよ」

 

 コイツは小学生の頃からそうだった。

 中心人物で、皆から好かれ、頼られた。だからこそコイツは「皆の葉山隼人」と言う鎖に縛られていた。

 そしてそんな葉山だったから、特定の誰かと仲良くも出来なかった。

 少しずつ変わって今では特定のグループで遊べるようになったんだろう。

 しかし、少し問題があると周りが勝手に荒れ出す。

 それが「皆の葉山隼人」の弊害とも言えるな。

 

「しかし八幡。あのグループから葉山が抜けるのは無理じゃないか?」

「何言ってるんだ? 今回のイベントだけ葉山が抜ければいいだけの話だぞ?」

「……ん? なんか話が噛み合わんな。あのグループから葉山が抜ける話だろう?」

 

 は? なんでそんな話になってる……あー。確かに言い方が悪かったかもな。道理で葉山も思考停止状態になってたわけだ。

 

「違う違う。とりあえず結論から言うとこれは葉山を中心に勝手に周りが問題起こしてるだけだから、その中心人物を一時的に取り除けばいいだけだ。だから、おそらく問題になっているであろうグループ分けをいつものメンバーから一抜けして、他の奴と組めばいいって話だ」

「言い方が悪すぎるだろう。たぶんここの全員誤解──すまん、一人除いて全員だ」

 

 やっぱりか。そりゃあそうだ。現国の問題でこんな書かれ方したら総武上位陣でも間違えるわな。

 

「ん? 一人? 一人って誰……あー、なるほどな」

 

 そう言ってこの場の全員──件の一部の人物以外──がそちらに視線が集まる。

 そして当の本人、折本は首を傾げて理由(わけ)が分かって無さそうにしている。

 

「いや、何かわからんとこあった?」

「分からなかったから俺たち困惑していたんだが?」

「ははは、さすが比企谷の彼女だ」

「なんかよく分かんないけど褒められててウケる!」

「むしろなんで刻が分かんねぇんだって話になるぞ。付き合いなら同じくらいだろ」

「時間は同じかもしれないが、かおりと比べると濃さが違うからな」

 

 そういうもんか? 特に折本と二人でいる時とかあまり話してないぞ。とりあえず一緒にいてちょっと喋ったり漫画の面白いシーンとか見せあったり、スマホいじっては折本がウケそうなネタがあればそれを見せて笑わせたり……うん、休日とかそんな感じだな。

 

「まぁそこら辺は置いておくとして、だ。どうだ葉山。これなら粗方問題は解決出来るぞ」

「あぁ、それでなんとかなるなら早速やってみるよ。ただ、俺が誰と組むかだけど」

「俺と組めばいいだろ? まだ誰ともグループ組んでなかったしな」

「……あとで雪乃ちゃんが怖いけど腹をくくろう」

 

 雪ノ下に怯えすぎだしどんだけ俺の事気に入ってるんだ雪ノ下。

 

「とにかく、だ。これで問題は解消。悩みの種も無くなったんだ。ここは葉山の奢りだから乾杯しようぜ」

「コーヒーだけな。さり気なく全ての会計を押し付けようとしないでくれ」

「冗談だ」

 

 とりあえずカップを持って形だけ乾杯をして俺好みに固められた特製のコーヒーを喉に流し込む。うん、美味しい。

 それを見て葉山もやれやれと言った態度をわざとらしくとってから俺と同じものを飲み干、し? あ、大切なこと忘れてた。

 

「葉山、それ──」

「あっっっま!?」

「──マッ缶並に甘いから気をつけろよ」

 

 俺の言葉を遮るように、葉山は目を見開いて顔を歪ませた。




どうも、新社会人です。
また一ヶ月サボりましたね? と言われても仕方ないですが、一応他のもの書いてたのでゆるちて……。八折を忘れてるわけやないんや……。
さて、今回は都合上、盛大に端折りながらやらせていただきました。理由はお察しです。こうでもしないと物語が進まないのです。許せサスケ。
次回は……えーっと、ほら、あの人。川なんとかさん。そこやります。
あ、最後に一つだけ。

あー! 八折をもっといちゃつかせてぇなぁ!!!

以上です。ありがとうございました。

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