トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。   作:袖野 霧亜

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由比ヶ浜、クッキー作るってさ 〜終〜

 由比ヶ浜が依頼に来てからの後日談。依頼が来た次の日は俺がバイトだったので居なかったからまたその次の日の朝のホームルーム前に葉山から教えてくれた事なのだが、部室に由比ヶ浜が来たらしい。どうにもお礼をしたいからクッキーを渡しに来たらしい……んだが、まぁ昨日今日で唐突に上達するはずもなく、最後に作ったクッキーと同じのようなものを貰ったようだ。しかし俺はその場に居なかったので貰わなかった。だがバットしかし俺が胸を撫で下ろす暇もなく今朝方折本と登校しているところにクッキーを渡してきた。……うん、でも俺とか特に何もしてなくない? だからお礼とか必要ないと思うんだ! 大丈夫、気持ちだけ受け取っておくから! ていうか折本から謎の波動が溢れ出てくるんだけど! 最近怖いのよどういう場面で来るのかわからないんだからあまり刺激を与えないで! 

 

「──そんなこんながあってやっとこさ無事終わったんだよ」

「つまり浮気をしていたと……」

「違うそうじゃない」

 

 葉山からの死刑宣告を受けたその日の昼休み。俺達はFクラスに集まって昼食をとっていた。そこで一昨日の出来事を説明していたら総括として三木がまとめたがなぜか処刑執行一歩手前に追い込まれた。執行人はもちろん折本です。マジでやめてください死んでしまいます! 

 

「それでー? 結局どんなクッキーだったの?」

「……あぁ。これだ」

「「「「…………」」」」

 

 机の上に出された丁寧にラッピングされた袋を凝視する。……うん、まぁ、そうだね、クッキーには見えるよね。

 

「……ちょいと比企谷さんや」

「なんだい折本さんや」

「これはクッキー、なんですよね?」

「えぇ、そうですよ」

「そこそこ大きいですね」

「あぁ……。てかなんで地味に丁寧な言葉で話してんだよ。ウケるわ」

「それあるー!」

 

 何があるんだよ。最近のトレンドなの? 

 

「星型なのはわかるけど、かなり黒いな」

「これでマシになったって……」

 

 そうは言うが最初は桃缶とかコーヒーの粉とか卵の殻とか入ってたからな? そこから考えると進歩しただろ。

 それと今回の出来事で俺が学んだ事はオリジナリティーを出さない、だな。ヘタに調理手順に自分なりのやり方を加えたら失敗する。由比ヶ浜が凄くいい例になった。まさか某バカテスにある殺人料理の劣化版を食うはめになるとは思いもしなかったし食いたくもなかったが。

 

「まぁとりあえず何があったのかはわかったけど、それで八幡」

「なんだ」

「それがどうしてあの状況ができるんだ?」

 

 アレだよアレと指で示す刻。そしてその先にいるのは葉山と由比ヶ浜が所属するグループ。そこで起きているのは由比ヶ浜と三浦のお話し合い、いや一方的な虐殺パーティーが開催されている。

 曰く、由比ヶ浜が昼休みずっと他の所に行くらしいんだが、それを濁しきった言葉でどもらせながら話すのが気に食わなかった三浦が激昂した、という感じだ。簡潔に正しく何をしに行くのか言いなさいというのを三浦は由比ヶ浜に強めに言っているが借りてきた猫の如く、由比ヶ浜は小さくなってしまっていた。

 助け舟を出すつもりのない葉山は三浦を困ったように見ながら笑っている。……おいこっちに気づくな手を振るな事件が現場で起きてんだろこっちは茶でもしばいて眺めてるからお前は収束に向けて身を粉にして頑張れよ! それと手を振り返すな三木ぃ! 三浦にバレたら死ぞ! 

 

「まったく、何をしているのかしら。私との約束破るつもりかしら」

「「「「うわっ!?」」」」

「? どうしたのかしら。そんなに驚いたりして」

 

 いつからいらっしゃったのですかユキノシタ=サン!? 貴女どうやって私の隣に!? ていうか近い近い近いいい匂い近い! 

 

「………………」

 

 ぎゃー! 折本がすっごい顔でこっち見てるぅぅぅ! コレってつまりあれだよな? 返答と行動を1ミリでもミスったらデッドエンド確定ルートまっしぐらじゃないですかぁぁぁ! 

 

「……ごめんなさい。彼に近づきすぎたわね」

 

 場の空気を読んでくれたのか少し離れてくれる。それが功を奏したのか折本からのプレッシャーが和らいだ(当社比)。ナイスだ雪ノ下! 原因お前だけど許すぞ! あとで俺にしわ寄せが多少来るだけだから無問題! 

 

「比企谷君、この人雪ノ下さんだよね? なんでここにいるの?」

「俺が知るかよ。由比ヶ浜と約束があるとか言ってたけど」

「そこ、仲町さんとヒソヒソ話をするのを止めて私もいれなさい」

 

 いや、あなたの事ですしお寿司? ひっそりとこっそりと話さないといけない事なのですよ? 試しに表立ってやってみようか? 見ようによっては物凄いいじめの現場に見えるからね。

 ところで雪ノ下よ。由比ヶ浜を放置したままでいいのか? 今は頑張ってるけどあと少しで崩れるぞ。それで葉山がいい具合に場を収めるのかなるほど察した。ん? 何故それがわかるって? 見てみろ。葉山グループのメンバー、当事者の3人を抜いて男子が3人、女子が1人いるが誰も止めようとしない。ていうか女子にいたってはニッコニコしてる。こっわ! なんで笑ってられるんですかね。あれ? ここもしかして笑いどころなのか。よしじゃあ一発笑ってみるか! ふははははははは! 

 

「「「………………」」」

 

 あ、でも他のヤツら苦笑すらしてないや。なら俺の勘違いだな。やれやれ反省しなくちゃ──

 

「おい」

「なんだよ今脳内ラブコメならぬ脳内コントして現実逃避をしてんだから話は後でな」

「そうか。なら選択肢をミスったな。見てみろよ。三浦が殺意の波動と共にこちらを熱の篭った目で見てるぞ、お前を」

「倒置法で強調しないといけないほどか? んなわけ…………あるな、あったわ。二重の意味であっちゃったわ」

 

 ちなみに今のは「そういう事態があった」と「目と目があった」というダブルミーニングなのだよ。なかなか上手いだろう? たぶんどっかしら言葉の使い方間違ってるだろうけどそこはツッコまない方向で。だってもう脳みそ使えないんだもん。三浦の視線がガンガン突き刺さっててそれどころじゃないもん。もんもんうるせぇな発情期かよ。違うそうじゃないそんな事考えてる場合じゃないんだって。とりあえず喉が渇いたしマッ缶買ってくるか。脳みそ働かせるための糖分摂取も必要だしな。

 

「ちょっと待ちな」

「ひゃい」

 

 はいそうですよね。そもそも買いに行かせてくれるわけないですよね。八幡、知ってた。

 

「あんさ、なんで笑った?」

「あー、まさか本当に声に出して笑ってたのか?」

「はぁ? あんな高らかに笑っておいて言い逃れできるかっての」

 

 これには流石の三浦さんもご立腹のご様子。いや、苛立たせてるの俺なんたけども。

 しかし、なんだろうな。さっきまでの三浦の怒り方と俺に向けている怒りは何かが違う。こう、俺のは純粋な殺意なんだけど、由比ヶ浜に向けてたのはまた違う……? あれ、俺今純粋にぶっ転がされそうな感じ? 逃げたいなぁ……。

 

「待て違うんだ。そうじゃない。お前らとは関係ない事だ。昔の出来事なんだが、俺以外笑っているような場面が発生して俺だけ笑ってないのもおかしいだろ? だから作り笑いで笑ってたのがそのまんま出てきただけだ。俺は悪くない。悪いのはそんな状況を作ったやつだ」

「…………きっも」

 

 おい待て、その言葉は俺には効くぞ。……俺には、効くぞ。

 

「ところで由比ヶ浜さん。まだ話終わらないのかしら? お昼が終わってしまうわ」

 

 おっと、ここで雪ノ下の援護射撃だ。よかった、これで俺へのヘイトも少しは──

 

「結衣、雪ノ下さんとお昼食べる約束してたの?」

「え、う、うん……そうだよ?」

「はぁ〜……。そうならそう言えっての。ほら、早く行きな」

 

 ──ん? 

 

「……怒ってる?」

「ちゃんとはっきり言わなかったことに関してはね。ほら昼休み終わっちゃうから早く行きな。雪ノ下さんもゴメン」

「いえ、話し合いが終わったのならそれでいいわ。行きましょう、由比ヶ浜さん」

「あ、あともう少しだけ待ってて。 ……優美子」

「どしたん? 早く行かないと──」

「これ! いつもありがと、ね? これまでのお礼と、これからもよろしくねって……」

「…………」

「じゃ、じゃあまた後でね!」

 

 ……………………。

 

 んんんんんんんんんん??? 

 え、何? 何が起きたの? 一分そこらで情報がいっぱい流れ込んできて意味わかんねーんだけど。ほら、クラスがさっきとはまた違う感じで固まってるんだが! よかった! 俺だけじゃなくて! 

 

「…………」

 

 それと三浦がずっと固まってるんだけど。どうしたんだアレ? 

 

「あー、皆……。すこーしの間教室から出ててくれるかな?」

「え、あ、はい」

 

 よくわからないけど終始にっこにっこにーしてた子が外に出るようお願いされたからとりあえず外に出よう。へー、人ってぼんやりしてると判断能力とかその他もろもろが低下するんだー。初めて知ったー。とりあえずマッ缶買ってこよー。

 

 その後、うちの教室から謎の声とそれをなだめる声が聞こえたという噂が流れたが、俺の知ったことではない。




俺「しゃあああああああ!!!! 皆さんお久しぶりぁぁぁぁぁぁありがとうございますうぅぅぅぅぅううううう!!!」

???「うわうるさっ」

俺「もう大変だった……! 色んなとこ落ちたしいつの間にか俺ガイル三期決定してるし誕生日過ぎてたしFGOの新イベマジで謎の演出でロードに一番時間かかってゲームした気になれないしPUBGのゾンビモード楽しすぎてタイラント狩りすぎちゃうし……」

???「あ、俺ガイル三期おめでとうございます。これを機にマジで小説大人買いしようかと検討しているところです」

俺「ぐぅ……、今ダンまち全巻揃えてるところでお金が飛んでるのに更に出費が……」

???「いいじゃん。好きでしょ?」

俺「愛してる」

???「はいはい信者乙。それで、就活終わりそうなの?」

俺「あともーちょいやる予定。七月には終わらせてまた別のことする」

???「これもちゃんと並行してやればいいのに」

俺「現実逃避で書くと文章キモくなるからやなんだよなぁ。いつもの十割増で」

???「はいじゃあこの辺で締めましょう。何か一言お願いします」

俺「ちゃんと予定をその都度書いておこう。マジで10社くらい落ちたと思ってても実際にはそんなに落ちてないから」

???「次回までゆっくりお待ちください」

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