トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
中学の卒業式と春休みが終わり、ついにやってきた高校入学の日。いつものメンバーと集まって一緒に登校する事になっている。全員自転車で登校出来る範囲なので高校に行く途中にある俺たちが通っていた中学の近くに集合することになった。
そんな事はさておき春休みってだいぶ短くない? あと一ヶ月くらい欲しいんだけど。そう思わない? ちょっと夜更かしした上に早起きしたから少し眠たくなったんですが。
「おーっす比企谷ー! あれ、比企谷が一番乗り?」
「おう、みたいだ、な……」
「ん? どしたの比企谷?」
「……あ、いやなんでもないぞ。うん」
「あー、なるほどねぇ〜」
「……んだよ」
「いや、ウケるなーってね」
やめろその全て理解したって言いたげな顔は。口にしなくても伝わるほど今の折本の顔はとてもかわい──コホン、ムカつくと思っても仕方ないだろう。
しかしまぁ似合うな。折本の制服姿。総武は制服の着こなしについてはかなり自由性が高いようでその人にあったアクセサリーも付けられるのでいかにも折本らしさが全面に出ている。恥ずかしくて口には出せないが、
「かわいいな」
「ん? なんか言った比企谷?」
「……なんでもねぇよ。それより遅いなアイツら」
危ねぇ。一番口に出したらダメな所が出てしまった。スマホを弄ってた折本には聞こえてなかったのが唯一の救いだな。
「あー、それなんだけどさ、なんか美咲たち少し遅れるから先に行っててってL〇NEが来てたんだけど」
「え、何それ俺に来てない……」
ハブられたかと考えたが、さすがにアイツらがするとは考えられない。という事は……気を使ってくれた? とかか。まぁ折本と二人だけの時間って実はあまり無いからむず痒いものがある。二人の時間よりいつものメンバーと一緒にいる時間の方が多いからな。
……あれ? 普通のカップルってこんな感じだっけ? 別にいいけど。
高校の入学式当日、あたしこと折本かおりは比企谷たちと一緒に登校するために趣味のサイクリングをする時に使う相棒とはまた違う別の自転車を乗って走らせている。浮気じゃないよ? ただ荷物を置く籠が欲しかっただけなの。だから拗ねないで!
なんて一人芝居をしていると集合場所の中学校の近くまでたどり着いた。そして目に入ってきた、あたしの彼氏である比企谷八幡。とても眠たそうに舟を漕いでいる。最近は目の腐りも無くなり始めて眼鏡を着けなくてもだいぶ他の人から奇異な目で見られなくなった、というか好意的な目で見られるようになってきた。なので比企谷には眼鏡を外さないように強めに言っておいてある。そして絶対好意的な目で見られていることを言わない。ってこれじゃ縛りの強い彼女みたい! ウケる!
「おーっす比企谷ー! あれ、比企谷が一番乗り?」
「おう、みたいだ、な……」
「ん? どしたの比企谷?」
「……あ、いやなんでもないぞ。うん」
「あー、なるほどねぇ〜」
「……んだよ」
「いや、ウケるなーってね」
んー、比企谷がちゃんとあたしに見とれてくれるのはいいものだわ。嬉しい気もするけどなんか気恥しい感じがしちゃうけど。
このまま比企谷を弄っちゃおうかなって思った所であたしのスマホに通知が来た。……美咲からか。いい所になりそうだったのにウケないわー。えっとなになに? 『今日は私たちはわざと遅れるから比企谷と二人でゆっくり登校すればいいさちくしょう!』か。
ん? 比企谷と二人っきり? そういえば最近二人でいることってなかった気がする。まぁ今更2人だけの空間ってだけで緊張なんてしたりはしないけどね! そもそも緊張したことなかった気がするし! ウケ──
「かわいいな」
…………ん?
「ん? なんか言った比企谷?」
「……なんでもねぇよ。それより遅いなアイツら」
今確かに比企谷の声が聞こえたような? まぁ? 比企谷が直球でかわいいなんて言うはずもないし違うか! とりあえず美咲たちは後から来る事を比企谷に伝え……あれ? おかしいな比企谷の方を向けないぞ? なんで? なんだこのこみ上げてくるの……? あと少し顔が熱くなってきた気がするし。
「あー、それなんだけどさ、なんか美咲たち少し遅れるから先に行っててってL〇NEが来てたんだけど」
「え、何それ俺に来てない……」
視線をスマホにしか向ける事が出来ない。んー? ま、いっか。どうせすぐ治るでしょ!
「あれ? どうしたんだろ?」
「事故か?」
前方に黒塗りのいかにも高価そうな車とパトカーが止まっている。そこに野次馬もいるため道が塞がっている。何が起きたのかよくわからんがあまり足止めされると余裕もって登校しているのに遅れてしまう。仕方ないので車道を走る事にした。
事故現場を通り過ぎる一瞬、俺は何故かそちらを見てしまった。へたりと座り込み、何かを見下ろしている人を。
「入学式サボりたかった」
「やめてよ唐突にそういう事言うの。同感なんだから」
学校に着いてから折本と二人でぶらりと探索して残りのメンバーを待っていたらいつの間にか入学式の時間になっていた。ちなみにこの間で合流は出来なかった。一応連絡も入れたのだがなぜか返事が誰からも来なかった。まぁ無事に式の会場だった体育館で無事鉢合わせ出来たのでよかったのだが。
「眠い……」
「俺も……」
「ほれツインズ起きなって」
「なんで立ったまま寝れてるのこの二人は……」
三木と刻は入学式中ずっと眠っていたらしく、今も若干寝ている。何その技術俺も欲しい。どっかに修練場とか無いかな? 無いですよねはいわかってますよちくしょう。
「ところで見た? 一年代表の国際科の女の子、かわいくなかった?」
国際科、正しく言えば国際教養科の事だ。俺も見たが、とても、かなりレベルが高い女子生徒だった。実際何人か見とれていた。俺も一瞬目を奪われたしな。
「そーそー! すっごかったよねー! あんな美人いるんだって思ったもん!」
「「寝てたため見てません」」
「確かにあれは見とれても仕方ないレベルだったね」
「女の私でもあれは惚れるものがあったの間違いない」
満場一致、全員が全員あの女子生徒を褒めていた。しかし何故だろうか。何かが引っかかる……。何処かで見た事がある顔だった気がするし無かったかもしれない。
まぁ思い出せないならそんだけの思い出か、という結論に至り思考を放棄した。
「…………隼人くん、見た?」
「…………うん。間違いないね」
「「ようやく見つけた」」
どーも皆さん、健康体そのものなのになぜかサルモネラが出てきてしまった主です。大丈夫です。とても元気です。
さて、今回やっと始業式を迎えることが出来ましたね! 次の話から2年生になるけどね!!!
ぶっちゃけ1年生編を書いてもいいかなとか思うけど特に原作よりあれやりたいこれやりたいって言うものがもう中学生編でほぼやっちゃったんですよね。だからもう2年生編に行こうかな、と。
あとあれです。2年生編の方が改編しなくちゃいけないものがあり過ぎて楽しいのではやくそっちに行きたいのです。だから2年生編に飛ばします。問答無用です。
そんなわけで『トラウマの原因を覆されたら、その世界はどうなるか。』の次話をお楽しみに!
ちなみにアナザーはまったく違うルート(そもそも海浜に言ってる時点でおかしい)を辿るのでよろしくです。