トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
折本とのデートが終わった次の登校する日、つまりは月曜になっていたためしぶしぶ俺は歩いて向かっていた。
土曜は大変だった。
何が大変だったかというと、小町がその日にどんな事をしてきたのか根掘り葉掘り聞いてきたからそれに全て答えてたらあっという間に日が暮れるどころか夜の八時近くにまでなってしまい、そこから夜ご飯を作る事になった。
まさか小町があんなに食いついてくるとは思わなかったわ……。小町も最近の女の子、恋バナが好きな──いや待て違う別に俺は恋バナをしたわけじゃない。違うったら違う。
「おっす比企谷」
そもそも恋バナというのは互いに好きな人を暴露してどこが好きなのかを語り合うものであり、俺がしたのは折本との買い物の時の様子を話す事だ。別に暴露したわけでも語り合ったわけじゃない。だから恋バナじゃない。
ちなみに小町と恋バナすることになったら俺は迷わず親父と共にそいつの所にOHANASHIしに行くだけだ。……いや、小町が好きになったやつならそれはとても良いやつなのだろう。その時は親父も俺も認めざるを得ない。
「あれ? 比企谷ー?」
しかし親父は俺に目もくれずに小町にべったべただ。親バカをこじらせ過ぎてると言っても過言ではないほどに小町のことを愛している。母ちゃんもだけど、小町をこれでもかと可愛がっている。
ちなみに俺は自他共にが認める『シスコン』というやつだ。
千葉に妹を大切にしない兄はいないと言わしめるほど妹を大切にする県だと言われている。他のやつが言ってるところを聞いたことはないが間違いないだろう。かの高坂家の兄妹もいざこざがあったものの、最終的にスーパーハッピーエンド出しな。もう泣きそうになったわ。おそらく俺のシスコンはあの兄妹によって更に拗らせられたと言っても過言じゃあない。いやまぁ、その前から拗らせてた気がするけど気にしない方向で。
「おーい?」
とはいえ俺を含め家族全員が小町に愛情を捧げていることは間違いない。逆に聞くぞ? あんなにプリティーでキュートな存在を愛でない愚かな兄や親がいると思うか? 答えは敢えて言わない。反語だ。知らんやつは調べろ。
それにしても目の前でひらひらと手のひらが揺れている気がするな。なんだこれ? 幻覚か? それを掴むと「ひゃっ」という声が横から聞こえて──
「……あ」
「……」
「す、スマン」
「……それよりさっきから呼んでるのに無視する方を謝って欲しいんだけど」
「へ? あ、お、おお? スマン。考え事してて気がつかなかったわ」
話しかけられても反応しないほど小町のことを考えていたのか……。俺ってシスコンを拗らせすぎてるんじゃないのか? さすがに控えるようにするか。これ以上になると私生活にも影響しそうだ。ついでに小町にも手を出しそうになるのもダメだしな。いやついでは私生活の方だな。小町は超最優先事項だ。これを間違えてしまっては比企谷家長男として失格と言っても過言ではない。
「へー、まぁ比企谷の考え事ってくだらなそうだからどうでもいいけど」
「ばっかお前、くだらなくなんかない。小町の事とか……。あとはそう、世界平和の事とかな」
「シスコン過ぎてちょっと引くわー」
棒読みのように言いながらもその言葉にはかなり冷やかなものが含まれている。うっ、少しゾクゾクした。別にマゾ的な意味合いじゃないぞ。ホントだぞ? ハチマンウソツカナイ。
「ま、比企谷のシスコンはさて置いて。おはよ、比企谷」
「ん? おう」
「返事短っ! ウケる!」
「そうか? だいたい挨拶なんてこんなもんだろ」
「比企谷は授業の前と後の挨拶もまともにしてなさそうだねー」
「いや、さすがにそれはしてる。数学以外は」
「なんで?」
「まともに授業を受けもしないのに挨拶なんてしてたら失礼だろ」
「そもそも授業に参加してない方が失礼だと思うけど」
違う。やったところで理解できないのだから寧ろ真面目に受けているにも関わらずテストの点数が低いのであればそれは失礼に値するものだと考えている。周囲から教師の教えが悪いのではないかと勘ぐられでもすれば教師としての点数が下げてしまう事になる。
そうなってしまったら俺の責任になってしまうため俺は最初から授業に参加しなければ数学教師への周りからのマイナスイメージが無くなり、俺は貴重な睡眠時間を得られる。
あ、なるほどこれをwin-winの関係って言うのか。また一つ知識が身に付いた。
「ちょっと比企谷? どこまで行くつもりなの?」
どうでもいい知識を身につけていたらいつの間にか学校に着いていたようだ。
「ん? あ、もう着いてたのな。うっかりこのまま遅刻確定まで歩き続けて学校行くの諦めて帰宅してたわ」
「なにそれ意味わかんなすぎて逆にウケるんだけど」
「今のはウケを狙いに行ったからな」
俺の八万の奥義の一つ、『遠回し過ぎてよくわからないけど面白いネタ』だ。ちなみにこれは俺もよくわからずに言っている事がほとんどなので多用したら滑る。あ、そういえばこれを使う相手いなかったから今日初めて使ったんだっけ? まぁ気にしたら負けの方向で。
折本と話しをしながら歩くことほんの数分、上履きに履き替え自分のクラスにたどり着く。戸に手を掛け開こうとすると何やら嫌な感じがして開けるのを躊躇われたが、いつまでも廊下に、しかも教室の戸の前に突っ立っているわけにはいかず、ええい、ままよ! の勢いで開け放つ。とはいえすぱーんという音ではなくとんっと優しい音を鳴らしたが。
そしてどうだろうか。俺の予感は正しかったらしく、戸を開けて一呼吸置いた後に周りから、主に男から嫉妬の籠った視線が俺に……、いや、俺だけでなく折本にも刺さっていた。
おかしい。俺にそれが来るのはまぁわかる。だが折本にも行くのはなんでだ? おいそこの、そうお前だ。名前は知らんがいつぞやか体育館裏で俺に告白しようとしてきたやつ。ハンカチを噛み締めるな。そんでもって嫉妬の籠った視線を折本に向けるな。俺の背筋が凍るだろうが。あとその取り巻き+αで三木。そいつを励ますな。「いつかお前の好意を受け入れてくる日が来るさ!」とか意味のわからん事を吐かすな。ねぇよ。永遠に永劫に永久にねぇよ。
「何この雰囲気ウケるんだけど……!」
ついでに俺の後方で腹を抱えてる折本とかいうやつ。いつまでも俺を盾に笑っているのを隠していんじゃありません。お前の分のダメージが俺に貫通するんだよ。
『あの二人ってそんなに仲良かったの?』
『男子から聞いた話だとかおりもあの人のこと私のだって叫んでたから相思相愛なのは間違いないと思う……』
『うっそマジ? じゃああの……、ヒキタニ? ヒキガヤ? 君が告白したらしいから間違いないじゃん』
折本が耳まで真っ赤にして顔を隠し始めた。さっきまで腹を抱えてたのに忙しいやつだな。
『くっ、比企谷め……! うちのアイドルとあんなにくっつくなんて……!』
『羨ましい! 妬ましいぞ!』
『比企谷は俺と結ばれるはずだったのに……!』
俺は右手で顔を覆った。見たくない現実が目の前にあったのでせめてもの逃避行為だ。
この後俺と折本はそそくさと自分の席に座りチャイムが鳴るまで机に突っ伏し、一限が数学なのでついでに俺は夢の中へ逃避した。
いえーいどーも皆さん私です美咲でーす。いつもより早く出すことできたよやったね。
最近主の睡眠時間が少なすぎて脳が働いてないから文章おかしな事になってるかもしれないから誤字脱字と文法がおかしかったら訂正してくれると助かるなぁ。実際漢字の打ちミスが沢山あったしね。
まぁあまり後書きが長すぎないようこの位にして次回予告しておくかね。
やめて! ラーの翼神竜の特殊能力で、ギルフォード・ザ・ライトニングにで焼き払われたら、闇のゲームでモンスターと繋がってる八幡の精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで八幡! あんたが今ここで倒れたら、かおりとの約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、あのホモに勝てるんだから!
次回、「八幡死す」。デュエルスタンバイ!
尚、次回予告が間違っている可能性が微粒子レベルで起こっていきます。by???の人