トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
美咲「私だよ」
霧亜「遅くなってすんまそん」
美咲「私メインのやつ書いてたっぽいよ」
霧亜「てか出来たよ」
美咲「やったね」
霧亜「そんなわけでそっちの方もお気に入り登録してくれると嬉しいな」
美咲「べっ、別にお願いしてるんじゃないんだからね!」
霧亜「はいはいツンデレツンデレ」
美咲「反応の薄さに涙目」
霧亜「さーとりあえず美咲ちゃんは今回おやすみね」
美咲「………え?」
体育館裏でのゴタゴタが終わって、俺は折本と二人だけで帰っている。
本当なら三木達も一緒に帰るつもりだったのだが、一昨日は結局一人で帰り、昨日は折本グループに買い物に付き合わされて二人っきりになれずじまいで恋人みたいな事が出来てない。だから二人で帰ろう! と折本に誘われたからである。
ちなみに三木もちゃっかり一緒になって帰ろうとしてたが仲町達に引きずられて帰っていった。なので付き合い始めて3日目にしてようやく一緒に下校イベントが発生した。
いや、普通とかそういうの知らないけどたぶん遅くない?
このイベントってそんなもったいぶるようなものじゃないよね? あ、でもアレだよ? 別にしたくなくてしてなかったわけじゃないんだよ? ホントだよ? 面倒だったとか周りの人の視線が気になるからとかそんなんじゃないんだからね! なんでツンデレ風になってんだよ気持ち悪ぃな。そもそもなんだよ女子と下校するって。んなことしたことねぇからソワソワするんだよ。
チラッと折本の方を見てみるとまだ怒っている感じがする。なんで怒ってんだ? 俺がホモ? とかいうのに告白されたからか?
それにしてもあの時の折本はキャラ崩壊しすぎじゃないか? いつもウケるとか言ってる折本だぞ? なんかのドラマ? で見た「おめぇの席ねぇから」って言ってたあの人並の眼光だったぞ。
え、わからない? ググれ。
「ねぇ比企谷」
「ひゃ、ひゃい」
頭の中で色々考え事していた時にいきなり呼ばれたため声が裏返ってしまう。いや、そうじゃなくても俺は裏返る時はあるが。
「驚きすぎだって。……比企谷はさ、男の子に興味があったりする?」
「は?」
ちょっと折本さん? いきなり何を言っているんですか?
「いやさ、別に同性同士で好きになっちゃうっていうのはなくはないことだと思うし、もしかしたら比企谷もそうなのかな〜、って思ってさ」
つまりあれか? 俺が男好きのホモ野郎じゃないかって疑っているってことなのか? よし、少し想像してみよう。俺がアイツとイチャイチャして──、
「おぇぇぇ……」
した瞬間吐き気がした。これはマズイ。本当に吐きたくなった。
「ちょ、比企谷大丈夫!?」
「あぁ、気にするな。ちょっともし俺がホモだったらという想像をしたら吐き気を催しただけ」
おぇ、ちょっと酸っぱい匂いが……。少し休みたいわ。
「ちょっとそこの公園のベンチで休まない? 飲み物買ってくるから」
「大丈夫だ、問題ない。でもベンチには座らさせてくれ。少し休みたい」
なんとか公園内にあるベンチに腰掛ける。折本も俺の隣を陣取りつつ、スカートを正しながらスッと座る。
ふぅ、座るって素晴らしいよな。立ってる時よりも圧倒的に楽だもん。まさかこんな事でそう思う事になるとは……。
「……ん、これもしかして吐き気を催してなかったらカップルみたいな行為なのか?」
ふと、そんな事を考えてみる。
一般的な男女の交際をいくつか妬ましい気持ちと共にその光景を見てみたが、下校途中に公園等の落ち着ける場所で二人で語らう。そういうものがカップルの形の一つでは無いか。
「カップルとか比企谷が言うとウケるんだけど」
その呟きを聞いた折本は少し呆けた顔をしたかと思うと、すぐにぷふっと堪える様に笑ってきた。
「なんでだよ。俺がカップルとかいう単語使うのがおかしいか? それとも俺と折本と付き合っているわけないじゃんっていうパターン? もしそうだったら泣くぞ俺?」
なんなら社会的にも死ぬし物理的にも死んじゃうまである。
「あー違う違う。ほら比企谷って捻くれてるからそういう事言わなそうだなーって思ってさ」
「別に俺は捻くれてねぇと思うけどな……」
そんなに捻くれてんのか? 帰ったら小町に聞いてみるか。小町が言うのであればそうなのだろう。なんやかんやでもう12年は一緒にいるからな。別に小町に甘いわけじゃないからな? ずっと一緒にいる相手に言われたら認めざるを得ないだけであるからして決して甘いわけではない。
「ほら、もっとこっちに寄って」
パンパンとここだここ、と言わんばかりに折本に誘われそこに座る。すると何を思ったのか俺の頭を掴み無理矢理引っ張られた。するとなんてことだろうか。俺の視界が90度回転したではないか。
あの折本さん、頭を椅子にぶつけるのでやめてください。ほら、頭に柔らかい感覚が……。
柔らかい感触?
「あのー折本さん? これはどういう」
これというのは折本による強制膝枕の事だ。うわなんだこれすげぇ柔らかいいい匂いじゃなくて、アレだ、恥ずかしいな。
「べっつにー? 美咲が寝ている比企谷にこういうことしてて羨ましいとかそういうんじゃないから気にしなくていいんじゃない? てかこの状態学校の誰かに見られたらどうしよ、マジでウケる」
「いやウケねぇから。てか俺そんなことされてたのか?」
「そん時熟睡してたっぽいしね。美咲め、こればっかりはウケないわ」
「それで今のこの状況はなんなんだ? やりたかっただけなのか? 恥ずかしいからやめたいんだが」
「えー、それはないっしょ比企谷ー。なら他のこと……あっ」
何を思いついたのか知らんが解放されたため体制を整えて折本を見るとめっちゃいい笑顔をしている。おかげで俺は冷や汗がダックダクだ。
「ねぇ、ひーきーがーやーくーん」
「な、なんでひょうか折本ひゃん」
「んっ」
腕を広げてくる折本。えっと、これでどうしろと言うんだ?
「ほらはやくー。ハグだよハグ」
……まさか俺からやらせようって言うのか? 言っちゃあなんだが俺にそんな度胸ねぇよ。小町にならいくらでもしてやれるが。あれ? もしかして俺ってば折本より小町の方が好きなんですかね?
「………………比企谷?」
なんでそんな目をうるうるさせんだよ。しかも上目遣いで。普通にドキッとしたじゃねぇかよ。しかしながらさすがに腐っても恋人を待たせるのはアレなため覚悟を決めおそるおそる折本を抱き寄せた。すると折本も俺の身体にしがみつくようにギュッとしてきた。
「……へへっ、比企谷って女の子にこういうことしたことあるの?」
「妹を抜きにして考えるなら無いな。てか知ってんだろ?」
「まぁ、ね。ヒヒッ、比企谷の初めてもらっちゃった」
「言い方が酷すぎやしませんかね」
何も知らない人が聞いたら他のことを思い浮かべるだろうな。ナニとな言わないが。
「ね、もう少し強くしてくれない?」
耳元でささやかれる折本の声に少し反応してしまったが、それに答えようと力を強めようとしたところで、
「ほほぅ、お兄ちゃんも折本さんもなかなか大胆ですねこんな場所で」
もしかしたら折本よりも好きなんじゃないかと疑われている小町ちゃんが携帯を持ちつつニヤニヤとしていた。
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