ジャンヌ・オルタは不器用可愛い   作:雨あられ

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第3話

今回の連れて行くサーヴァントを発表をします!まずは孔明!それからマシュ…

そういって、マスターであるあいつは、カルデアのレイシフトを行うため、中央管制室へとカルデア内にいる全てのサーヴァントを呼び出した。英霊たちの間を抜け、何とか、見知った顔であるジルの元へとたどり着いた。

 

「ちょ、ちょっと、ジルこれは何なの」

 

「おぉ、ジャンヌは初めてでしたな。マスターはイベントになると毎回特異点へと連れていく英霊を決める、云わばスタメンを発表しているところですな」

 

「…スタメン?ここにいる全員を連れていけばいいじゃないの。特異点の修繕なんて一瞬よ?」

 

周りを見回すと、あの忌まわしき黒王に加え、聖人である聖ゲオルギウスや聖女マルタ……ほかにもあふれんばかりの力を持つ彼らを使役すれば、たとえ多少は厄介なサーヴァントが居たところですぐに決着がつきそうなものだが……

 

「ははは、ジャンヌ。我らがマスターもまだまだ修行中のみ、いまだに一度に使役できるサーヴァントには限りがあるようです。それに」

 

「それに?」

 

「正直、スキルすら覚えられていないレベル1のサーヴァントが山ほど…」

 

ちらりと、ジルが見た方には、発表が行われているというのに、関係ないとばかりにボードゲームを始めたエウリュアレにアステリオス、お姉さん頑張っちゃうよーと、ここにいる全員分の料理を作り始めたブーティカにそれを笑顔で手伝い始めたセイバーリリィ……

なるほど、あいつらは連れて行ってもらえない組、いわば負け犬の寄せ集めね…

 

「要はあいつの信頼している強いサーヴァントが連れていかれるということね?」

 

「はい、まぁ、連れていくメンバーは大体決まっているので、私も今回は呼ばれないでしょう…「ジルさん!先輩が呼んでいます」はひ!?わ、私がですか!うひょおお!ありがとうございます、黒聖女(ジャンヌ)!ありがとうございます!」

 

「………私は何もしていないわよ。って、どこへ行くのよ、ジル」

 

「そ、それはマスターと共に今回の特異点に…」

 

「え!?わ、私は?」

 

「さぁ、それはマスター次第ですから……」

 

なんてこと!?もしも、もしも名前を呼ばれなければ、私はジルもいないこのカルデアであそこの連中と一緒にボードゲームやままごとのような…?

 

「ディルムッドさん!それから、アレキサンダーさん!それから……」

 

「おやまぁ、今回はこれまた結構変わったメンバーが呼ばれてるな」

 

「っ!?吼え立てよ、わが憤怒<ラ・グロンドメント・デュ。ヘイン>!!」

 

「うおお!?ちょっとケツをさわったくれぇで宝具まで使うこたぁねぇだろうに!」

 

「五月蠅い五月蠅い!死ね死ね死ね!」

 

「ちょ、ま、まってくれぇ!悪かった、おれが悪かったぁ!」

 

「はぁはぁ……2度はありません」

 

「ぜぇぜぇ、そ、そいつは肝に銘じとくぜ。ったく、俺の炎(アンサズ)じゃまるで太刀打ちできねぇ、腐っても聖女(ジャンヌ)ってとこか……俺はクー・フーリン、まぁ、俺ならその辺にもいっぱいいるが、キャスターの俺はこの中じゃ結構古参英霊になるな」

 

そういって、かぶっていたフードを脱いで口角を釣り上げる青髪赤目の男(キャスター)。こいつ、廊下を歩いているのを何回か見たことがあると思ったが、なるほど、全員別人…あの騎士王と言い、コンパチが多すぎるのよ。ここは。

 

「いや、お前さんが言うことじゃねぇだろ」

 

「何か?」

 

「いやなんにも。ま、呼ばれなかったとしてもそう落ち込むもんじゃねぇぜ?ここで留守番しているにしても、ここにいるのは名だたる英霊たち。ちっと酒を酌み交わすにしても、そいつの逸話から下らねぇ恋バナまで肴にはことかかねぇからな。っつーことで、どうだい、あんたも一杯」

 

親指をくいと、向けた先ではすでに宴会のようなものが始まっており、乳でか女に上半身裸の細目らが早くも、赤ら顔で並々に注がれた酒の器を飲み干している。

 

「……」

 

仲良く宴会?復讐者(ワタシ)が?この黒聖女(ワタシ)が?

それこそふざけている。恋バナなんかで私を釣ろうなんて…

 

「…私を満足させる美酒は用意されているでしょうね?」

 

「おぉ!そりゃもちろん、ドクターのやつが隠し持ってたヴィンテージもんが出てきてよ……」

 

キャスターの話を聞きながら、ちらりと、これからレイシフトが行われるであろうジルたちのいる方を見る。そこには、あの忌まわしき黒王の姿もあった。

そして、こちらの視線に気が付いた彼女は、こちらを見るなり……

 

ふっ

 

っと笑った!?

あの笑み……

貴様には、町娘らしくお留守番がお似合いだ、と言っているのだろう。ジルも、あんなやつでさえ、連れて行ってくれるのに、なんで私は!

 

「お、おい嬢ちゃん?なんか、怒ってんのか?それより、見ろよ、これが隠し持ってた50年物の……って、うおおおおおお!?あんた、何やって!?ぎゃあ!?」

 

「煩い!」

 

出されたワインの瓶を握りつぶすと、きゃんきゃん喚く犬に向かって火を放つ。

近くまで来て、僕の50年物、ってうわあああと言って近づいてきたドクター的な何かまで燃やしてしまったが、まぁ良いでしょう。騒動に気が付いたシールダ―がこちらに近づき、おずおずと声をかけてくる。

 

「あの……ジャンヌさん?」

 

「ブリテンの騎士王!あなた、何のつもり?」

 

「む?なんのつもりとは?」

 

「えぇ、そうよ、今回私は連れていってもらえなかった!けれど、あのような負け犬を見るような目、冗談じゃないわ!決闘よ、私と勝負し、私が勝てば、その席、私にお譲りなさい!?」

 

「なぜ、そのような無駄な事を?」

 

「無駄ではありません、私が勝てば、あんたは惨めにお留守番になるからです。」

 

「待て、先ほど私が笑ったのはだな」

 

「問答無用!憤怒の炎に焼かれなさい!吼え立てよ…<ラ・グロンド……>!!「あの!!」

 

向こうも黒い聖剣を取り出そうとしたその時だ、シールダ―が大きな声を上げて私たちの間に割って入る。

 

「あの!ジャンヌさんも、名前、呼んでいたんですが……」

 

「え?」

 

「クー・フーリンさんと話されていて、聞こえなかったのかと……」

 

……呼ばれていた?ずっと?

ちらと、マスターの方を見ると、うんうんと首を縦に振り、よろしく。と微笑んだ。

では、先ほどの私の憤りは…

 

「ふ、これだから脳内お花畑は」

 

「……」

 

「おぉ!我が聖女(ジャンヌ)と共にレイシフトなど!このような僥倖…!」

 

「うっさいわよジル!私を置いてさっさと行こうとしたくせに!」

 

「ぐえ、お、お赦しを!」

 

ジルを軽く蹴り飛ばすと、さりげなく、マスターの隣へと移動する。

ふぅ………レイシフト…確か時間遡行を実行して聖杯を取り戻すための「聖杯探索」(グランドオーダー)。見たことのない世界、空間、過去、時代。自分という復讐者にこのマスターは、何をさせるのか。ふふふふふ………

 

「ふ、これだから町娘は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ喝采を!我らの憎悪に喝采を!!」

 

やばい、楽しいわ!!

次々と現れるアサシンやぬるぬるや蜂を燃やし尽くし、旗を掲げる。私の号令を聞き、シールダ―やジル、ランサーやマスターまで手を挙げて声を上げる。

 

「ふぅ、ランサーたちの邂逅も阻止した、次は青髭の居場所だが……いや、お前のことではない、この世界の青髭だ。

しかし、夜も更けてきた、マスターにも疲れが見える、今日のところは、どこか適当なところで休みとしたいが……まずは腹ごしらえだと?ふ、了解した、マスター」

 

今回の特異点の主役はどうやらあのロン毛らしい。マスターの隣に寄り添い何やら今後の進路について話し合っている。

 

「おい」

 

「!なに?」

 

黒王が、こちらに近づき肩に手を置く、しまった、マスターにみと…観察に夢中になってしまい、気が付かなかった!

 

「今日の動き、悪くなかった」

 

そういうと、私の前を歩み始め、軽く手を挙げる。なによ、なんなのよ、突然そんなこと言われると、なんて言い返せば良いかわからないじゃないの!!むかつく…むかつくぅ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ましたか、今日の私の活躍を!あの、憎きセイバーを1ターンキル!1ターンキルです!いやぁ、やはりセイバーを切った後のご飯は美味い!マスターおかわりです!」

 

「支払いはもんだいないのかだと?なに、その点は問題ない、何故なら先ほど…」

 

「ぎょうざ!ぎょうざ!」

 

「あぁ…ジャックさん餃子というのはそんなに解体して食べるものではないようなのですが」

 

「ふ、そこの手癖の悪い彼女(暗殺者)がケイネス卿からいくらかくすねてくれたみたいでね。なに、支払いは問題ない。」

 

庶民が集まりそうな小さなラーメン屋。

そこへ私たちはやってきていた。勝利の宴にしては些か質素すぎるが……中世、また、カルデアしか知らない自分やほかのサーヴァントにとって、そこはまさに未知の世界。

 

「店主、ヤサイマシマシアブラマシマシニンニクオオメ、至急だ、3杯ほどまとめてもってこい」

 

「僕はこの、季節限定春風のフカヒレラーメンとかいうの、え?今の季節はやってないの?う~ん、困ったなぁ……綺麗なお姉さん、何とかならないかなぁ?……え?すぐに作ってくれる?本当?ありがとう綺麗なお姉さん!わ、鼻血?大丈夫?」

 

それにしても、こいつら……

 

「わんたん、うまうま」

 

「はい、美味しいですね。…これが、先輩たちが普段食べていた味なんですね…」

 

絡みづらい…

レイシフトの一件から、ジルとは離れたいと遠くの席に座ってしまったのが裏目に出た。マスターの近くはあのロンゲと黒子が今後の真面目な話をしているし……

 

「あの、ジャンヌさん」

 

「!な、なに?」

 

「いえ、今日は大活躍でしたね、とそう思っただけで…す、すみません!不愉快なこといってしまって」

 

…どうも、私は今ひどく恐ろしい顔をしているらしい。シールダ―は私の顔を見るなり条件反射的に謝り、黙ってしまった。そして、私以外のアレキサンダーやアルトリ…ヒロインXといった面々と話し始める。

 

「…おやおや、あなたは随分不器用なお方なのですね」

 

「!あなたは」

 

黒い装束に白い髑髏の面。確か、戦闘には一度も出てこなかったアサシン…。

 

「いや、失礼。あまりに物憂いげな顔をしておられたものですから」

 

「…なに?私は別にこれでいいのよ」

 

「いいえ、いけません。せっかくの可憐な顔が台無しだ」

 

な、なにこの骸骨!見かけによらず、キザね。

 

「さぁ、笑って、マスターや皆にその笑顔を見せておやりなさい。そうすれば、自然と皆の輪の中へと…」

 

「はぁ!?ありえません!ええ、ありえません!」

 

「はっはっは、いやぁ、そう急にとは言いませんとも。

……ここは愉快なところです。みな私のようなものにも優しくしてくれますし……あなたもそんなに気を張らず、リラックスした方が良いと思いますが」

 

ふとまわりを見渡す、もりもりと飯を食べるあほたち(黒王たち)に、女性に対しての愚痴をこぼすランサーやライダー。おかあさん、とつぶやきながら、マスターのお腹を枕にしてねむる暗殺者(ジャックザリッパー)やそれをみて微笑むシールダ―…。あれが、昼間勇敢に戦っていたサーヴァントたちなのだろうか?

 

「……あの黒き騎士王さえ、時にはデレデレとマスターに甘えてガス抜きをしているようですよ」

 

「うう、煩いですね。」

 

ずるずるとみそラーメンを啜り、骸骨から目を逸らす。こいつ、なんなのよ、人の心にずけずけと!

 

「ここのメンバーとは今後も生死を分かち合う仲間となるのです。少しくらい親交を温めておいても罰は当たらないのでは?」

 

「あぁもう、煩いわね!わかったわよ!」

 

ばんとフォークをおいて、座敷を数寸あるくと、マスターの座っていた隣に座る。きょとんとしているマスターを尻目に、顔を見つめ。

 

「ふ、聞いた?今日のあの連中の断末魔。最高だったわね」

 

にやりと笑みを浮かべて語り掛ける。ああ、こんな話、こいつが乗ってくるわけ。

 

「え?た、頼りになった?ふ、当然です。

これからも頼む?えぇ、それはあなたの態度次第でしょう。ふふふ」

 

向こうも笑顔で、私にそういった。

 

「おぉ、ジャンヌよ、お赦しを…昼間は…」

 

「えぇ、良いのです。神はともかく、黒聖女(ワタシ)が赦しましょう。ふふふ」

 

「おぉなんと寛大な!?ささ、ジャンヌ!どうか、供物をお納めください!」

 

「まってよ!それは僕が頼んだフカヒレ…」

 

「ふかひれですと!?それはそれとして、マスター、セイバーを倒した今日一番の功労者を褒め称えるために、それ相応の報酬というかそこなる供物となでなでを要求するのですが!」

 

……ほんっとう、煩い連中

 

 

 

 


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