俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

コンサルテイションは相談という意味です。

それではご覧ください。


41話:俺と彼女の温泉コンサルテイション

夏の凄まじい日差しを頭から浴び、あの耳つんざく忌々しい鳴き声を発するセミ、熱したフライパンのようなアスファルト。俺達生徒会と彩加は、キャリーバッグを引きづりながら、夏の猛攻を全身で受けていた。

 

夏休みに入ってからわずか数日。てっきり8月に行われるかと思っていた温泉旅行が始まっている。俺は集団の最後尾を歩いており、前には風音、飛鳥、凛、彩加が夏の暑さに参りながらも楽しそうにしている。小町も来ればよかったのなぁ。

 

理事長から貰ったチケットはグループで10人以内だったため、小町も誘ったんだが断られてしまった。あいつなら絶対に行きたい!行きたい!ってはしゃぐと思っていたから、断られたときは、生真面目な騎士がオネエ旅芸人という事を知った時くらいに衝撃だった。

 

駅から降りたときは高層ビルやマンションなど非常に都会的だったが、目的地へ向かう道中、段々と緑が増えていき、いつの間にか空気がおいしい大自然を歩いていた。周りには緑が生い茂る木々、鯉が泳ぐ川、旅行先でたまに見かけるよくわからない鳥居が見受けられる。

 

そして俺達が宿泊する温泉宿舎に着いた。見た目はおそらく皆がイメージするような宿舎そのものだ。グーグルで温泉宿舎って画像検索すれば出てくるような見た目をしている。第一印象は由緒正しそう(小並感)。

 

意外と大きいね、と宿舎を見上げる凛。東京に来た田舎者のようにキョロキョロする飛鳥と彩加。俺の腕にくっついている風音。こいつだけ平常だ。

 

中に入り、仲居に予約した部屋へ案内をしてもらった。ちなみに部屋はだだっ広いところを一つしか予約していない。さすがにこれに関しては俺と彩加は物申したが、それじゃつまらないだの気にするなとか八幡たちなら信頼できるなど、嬉しいような嬉しくないような、そんなやるせない思いで一部屋にしたのだ。

 

「疲れたー!」

「もう歩けない……」

「八くん、抱いて~」

 

部屋に入るな否や女性陣は倒れこんだ。さすがにあの炎天下で荷物引きずったらこうなるか。男性陣の俺と彩加は汗は結構掻いているが、疲れはそこまで感じていない。ていうか抱いてってこの場で言うんじゃありません。もっとオブラートに包んでください。今のは風音的に抱きしめろって意味だ。

 

「こんな暑いのに抱きしめたら余計暑くなるだろ」

「とか言いつつ八幡抱きしめてるね……」

「抱いてと言われて抱かない男はいない」

「僕的には時と場所は考えてほしい」

 

彩加から珍しくお咎めを喰らってしまった。この暑い中訪れた宿舎なのに、俺らのせいでさらに暑くなったか。よしどんどん暑くさせようか。

 

更に強く抱きしめようとした矢先、風音が何か思いついたように口を開いた。

 

「折角だし、もう温泉入っちゃう?朝から夜まで入れるらしいし」

「マジで!入る」

「私も入りたい!」

「八幡、僕たちも行こう」

「いや、俺は風音と家族風呂…」

「私は八くんと家族風呂…」

『そんなの許すかぁ!』

 

俺と風音は2人から頭にチョップを喰らった。おそらく本気で振り下ろした模様。めちゃくちゃ痛い。

 

痛みに頭を押さえていると、不意に彩加に袖を引っ張られていた。顔を向けると、僕を一人にする気?と頬を膨らませ、拗ねていた。ああ、もう可愛すぎ!

 

 

「気持ちがいいね」

「そうだな」

 

さすが温泉宿舎。まだ真っ昼間でそこまで疲れていなかったが、何かが体から抜け落ちた感覚に陥る。

 

温泉はかなりの大きさを誇っているが、彩加と肩がくっつきそうでくっつかない距離で入っている。先程から横目で流しているが、男なのに病的なほど綺麗な白い肌に、火照った頬が妙にエロイ。男なのに!おかげで横に顔を向けられない。何だかイケナイ気がして……。

 

「生徒会、どう?」

「さほど忙しくないな。まぁその分行事が来るとバタバタするし。けど、やりがいはあるんじゃないか」

「そっか。前の八幡と比べたら凄いよね。今じゃ色んな人から信用されてる」

「はっ、ホントだよな。昔の俺に教えたら、絶対に信じてくれねえだろうな」

 

彩加を横目に苦笑交じりに皮肉を吐いた。話題を切り出した当の彩加は何故か浮かない顔をしている。

 

「なんかあったのか?」

「………うん。八幡さえ良ければ、聞いてほしいな」

「寧ろ俺なんかで役に立てるのか?」

「もちろんだよ。寧ろ八幡にしか言えない事なんだ」

 

すると彩加は意を決したようにこちらを向いた。彩加の目は俺の顔をしっかり射抜いており、俺のしょうもない顔が映っている。やべ、泣きたくなってきた。とうとう自虐すら傷つく程弱くなってしまったか。

 

「僕、好きな人がいるんだ」

 

俺は今自分がどんな表情をしているのか分からない。いくつかの相談内容は予想していたが全てが外れ、まさか恋の相談がくるとは…。

 

俺の顔を見た彩加は眉を八の字した。

 

「やっぱり変?」

「いやいやいやいや、全然そんなことないぞ。それが変だったら、世の人類皆変だから」

「そ、そっか。……話に戻るけど、その子の事をいつの間にか目で追ってて、たまに子ども扱いしてくるけど、それも何だか温かくて、恋、しちゃった」

 

ぐああああああああああ!!なんだこれは!なんだこのもやもやした気持ち。何で俺の方がドキドキしてんだよ。そして純粋過ぎる。何故下心を一切感じないのだ?こいつ本当に男か?

 

取り敢えずそれだけ言いたかったらしく、言い終えた途端顔をトマトのように赤くして潜ってしまった。

 

「彩加。なんとなく言いたいことは分かった。告白しようか迷ってるだろ?そしてその原因は、受験だな?」

「……やっぱり八幡に隠し事通じないな。全部当てられちゃった」

 

まぁ好きな人がいるって言われたら、こんな考えすぐに思いつく。それにしても、受験という壁は誰もが諦める理由に使ってしまうものだ。自分の将来がかかっているという重圧、取り残されないようと必死になる焦燥感、これでいいのか?と体中を駆る不安。感じ方は人それぞれだが受験生ならばどれか1人は抱える重荷になっている。

 

「八幡はどう思う?」

 

このどう思うという問いはおそらく、告白をする時期の事を聞いているのだろう。彩加の選択肢にはした方がいいのかどうかなんて最初からない。

 

「俺から言えることはあくまで一般的な見解だ。俺という個人的な意味は特にない。もし志望校が一緒だとしても、別だとしても、告白はした方がいい。今の彩加の悩みは受験に影響を及ぼす可能性もある。告白の結果がどうなるかは分からないが、そこは彩加次第になるんじゃないか?」

 

今俺の言ったことは誰にでも言える事だ。なんの捻りの無い一般論。一通り喋り終えると、彩加はこちらを見ながら目を見開いていた。きっと心のどこかで俺らしい他とは違う言葉を期待していたのかもしれない。え?俺って他と違うの?ちょっと悲しい。

 

「悪いな。俺にはこれぐらいしか言えねえ」

「ううん!そんなことないよ。相談に乗ってくれただけでも嬉しかったのに、ちゃんと答えてくれて僕嬉しいよ!」

 

両手を横に振って否定に入る彩加。その度に水音がバシャバシャと小さく響き、温泉の湯が水粒が飛び散った。その粒は俺の顔面へと…。

 

「あ、ごめん」

「お返しだ」

「わぷ、やったな八幡!」

 

あの恋愛相談はどこに行ったのか、俺と彩加の温泉の水かけっこが始まった。

 

「八幡、僕決めたよ」

「ん?」

「この夏休みで告白するよ」

「……そうか。健闘を祈ってるぞ」

 

 

八幡たちが温泉を楽しんでいる中、女湯の方でも恋愛話に花を咲かせていた。

 

「凛、風音。私、近いうちに告白するよ」

 

相談をした飛鳥は、凛と風音の助言により告白を決心していた。

 

「それで、近いうちって正確にはいつ?」

「………さあ?」

『ええ……』

 

どうやら飛鳥の告白はもう少し先になってしまうようです。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

この八オリシリーズは今年中に完結させたいと思います。八幡と風音の子供が独り立ちするまで書くと一度言ったんですが、何個か理由があります。

新作八オリ書きたい、続ける自信がない、潮時。最近そう感じることが強くなってきました。なので、今年中に八幡たちが卒業する所まで書いて完結させようと思いまーす。

また次回。

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