俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

久々に早めの更新だ。文字数減らしたからね。

タイトルで察した方もいると思いますが、誰も予想できなかったでしょ?これ。

それではご覧ください。


39話:俺と彼女の由比ヶ浜結衣アンアルター

梅雨に入り、雨具が必要不可欠となる時期となった。外は湿気で煩わしく、霧も発生して視界が悪い。校内はエアコンが置かれているため集中できる環境だが、外に出たときの差が激しくやる気も削がれる。俺は梅雨は嫌いだ。

 

今日も生徒会の集まりが終わり、家路に就こうとする。今日は珍しく1人での下校だ。凛と飛鳥はクラスの友人と遊びに行き、風音はバレー部に所属している神童に助っ人を頼まれ、体育館に行っている。小町もクラスの人と遊ぶらしい。

 

このまま帰っても暇だし、たまには1人でぶらぶらするかと予定を決め、靴を履き傘を取ろうとする。まぁなんということでしょう、俺の傘が見当たりません。十中八九盗られた模様……。くそ、ビニール傘だったからか、せめて名前でも書いておけば良かった。

 

しょうがない。風音の用が終わるまで待つか。

 

「あ…」

「ん?」

 

声のした方へ顔を向ける。そこには眉を八の字にしている由比ヶ浜結衣が立っていた。彼女とは二年生の修学旅行の時以来、奉仕部の依頼の件で気まずい関係となっている。それなのに同じクラスになってしまった。

 

そのまま帰ればいいものの俺をちらちら見ながら立っているため、取り敢えず話しかけることにした。

 

「なんだ?」

「あ、ええと、今日は1人なんだなって」

「皆用事あってな。こんな日もある」

「そっか……。もしかして、帰れないの?」

「傘盗られたんだよ。だから風音待ち」

「あはは。そうなんだ…。あたし、傘二つ持ってるから貸そっか?」

「いや、遠慮しとく」

 

相手が違ったら、おそらく借りていただろう。別に由比ヶ浜を嫌っているわけではなく、先程言ったように彼女とは蟠りが存在している。それに借りを作りたくないのも理由の一つだ。これをきっかけに仲直りなんて虫のいい話だし、何といっても今更過ぎる。

 

「ヒッキー、待って」

 

このままこの場を去って風音のいる体育館に向かおうとしたが、由比ヶ浜に止められてしまった。心の中で溜息をしながら、由比ヶ浜の方へ顔を向けると思わず怪訝な顔になった。

 

「ちょっとだけ、話があるの」

 

瞳はほんの少し涙ぐんでいて、唇を固く結び、手と足は震えている。が、目はしっかりとこちらを射抜いていて、一目で真剣だという気持ちは伝わってきた。

 

「………分かったよ。話せ」

「うん。………ごめんなさい!」

「………は?」

 

いきなり頭を下げて謝られてしまった。これじゃまるで俺がフラれているみたいじゃないか…。

 

「何が?」

「高2の修学旅行とか、勝手に依頼受けちゃったことだよ。ごめん。ずっと気にしてて…」

 

あー、あれか。別にそこまで気にしてなかったから忘れてたわ。

 

「別にそんくらいの事で謝んなくていいぞ」

「だって、結局ヒッキーたちに任せっぱなしで、しかも勝手に退部したんだよ?かざねんとのデートも台無しに仕掛けたんだよ?いくら謝っても足り、足りない、よ……」

 

とうとう涙を流し始めてしまった由比ヶ浜。失礼だが、頭がそこまで良いわけではなく、楽観的な人だと思っていたから、そこまで気にしていることに驚いた。ていうか、まず涙を止めなくては…。この絵面はまずい。生徒会長が女子を泣かせたなんてシャレにならん。

 

「取り敢えず、泣き止んでくれ」

「…ごめん」

 

涙が止まるまで待つこと数分。俺から話を切り出した。

 

「お前、すげえな」

「え?……」

「だってよ、それってもう半年以上前の事だろ。なのにずっと気にしてて、こうして謝るなんて簡単にできる事じゃねえよ」

「…そうなの?」

「ああ、そうだよ。こういった状況の場合本人は自分の非をすぐに忘れて、目の前から謝りもせずに消えるんだ」

「そんな失礼なことしないし!」

 

だからこいつは凄い、純粋でいい子なんだ。こういう人は今時珍しすぎて馬鹿にされる世の中なのが非常に勿体ないと思ってしまう。本当、世知辛い世の中になりましたね。

 

「とにかく、俺も風音も気にしていないし、気にする必要もない。これでいいか?」

「あ、ありがとう……。そ、それとね、もう一つ謝らなきゃいけないこととお礼があるの」

 

俺は一体由比ヶ浜にどれだけ恨むようなことをされたんだ……。覚えがない分恐怖が増してしまう。

 

「入学式の日、犬を助けたでしょ。うちのペットなの。助けてくれてありがとう。遅くなってごめん。もう二年も経っちゃったし……」

「何で俺だって分かったんだ?」

「生徒手帳落としてたもん。それに、ボンネットに手着いて飛ぶなんて、ヒッキーくらいしかできないでしょ。ほら、ロットアイ」

 

あー、そんなのあったね。読者も忘れかけてるから俺も忘れかけてたわ。

 

「何度も言おうと思ってたんだけど、遅すぎだよね……」

「確かに遅いな。どうして言えなかったんだ?」

「それは……」

 

まぁ大方俺がボッチだったからだろうな。凛と飛鳥には近寄るなオーラ出てるって言われたし。

 

奉仕部の時にいつでも言えたんじゃないかと思ったが、過ぎたことはどうでもいい。今こうして謝られたんだから、変に責めたてるわけにもいかない。何も意味がない。

 

「どっちでもいい。二年前の事なんて今考えたってしょうがないしな」

「ごめん」

「もういいぞ。と言っても無駄そうだな。じゃあ、一つ条件を出そうか」

「何?」

「修学旅行時の依頼の件。もう1人謝らなきゃいけない人物がいるだろ」

「あ………うん…」

「どうすればいいのかはわかってるんだろ?」

「うん、行ってくる!」

 

由比ヶ浜は涙を拭い、拳を握って奉仕部へ向かった。

 

ミリ単位の心の隙間が埋まった俺は風音がバレーをしている体育館に向けて足を運ぶ。しかし、蟠りが消えたのにも関わらず、何も感じない……。気にしてないどころか、元々存在していなかったかのようだ。失礼すぎるだろ俺。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は自分の悪い癖を無くしてみました。いつもの俺だったら由比ヶ浜が雪ノ下に謝る所まで書いてます。

さて、まさかの由比ヶ浜と和解というね……。そう、全てはこのためだったのですよ。まぁ、またしばらく登場しないけどね。

さて、予想できた人いるかな?

また次回。

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