38話突入。
ちょっとここからブーストかけていきますよ。活動報告で文字数少なくして更新頻度を上げてほしいと言われたのでお望み通りそうします。
それではご覧ください。
ついに高校三年生になっちまった。時が立つのは早いものだと毎年思わされる。きっとすぐに社会人にでもなってしまうのではないか。
それにしても、一年経ったのか……。
この1年間は今までの、これからの人生の中でも一番濃く、刺激的な一年を迎えたと思う。いや間違いない。人に興味が無かった俺が部活に入れられて、友人ができて、生徒会長になった、童貞捨てた、これは関係ないか。
人間的に成長した一年でもあった。一年経ったというのに、このような出来事がつい最近起きたかのように錯覚してしまう。時間というのは不思議だ。
「同じクラスになれるといいね、八くん」
「お前は国際教養科だろ。第一お前理系の方が得意じゃねえか」
隣を歩いている彼女、風音も少し変わったところが見受けられた。俺に友人ができたことによって俺に対するイジリが多くなり、悪戯もよくしてくる。
「お兄ちゃん、何かいい事あったの?目に光が灯ってる」
「いや、一年経ったんだなってちょっと耽ってた」
「そっかぁ。確かに一年前のお兄ちゃんと今のお兄ちゃん比べたら月とすっぴんだからね」
「スッポンな」
もう1人隣を歩いているのは、総武高の制服を身に纏った小町だ。見事に総武高に合格し、俺と風音から合格祝いでプレゼントした水色のリュックを背負っている。何度見ても可愛い。
横から凛を先頭に飛鳥と彩加が現れた。
「あ、八幡おはよう」
「よう。お、彩加もいるのか」
「さっきそこで合流したんだ」
「良かったね~飛鳥」
「うるさい!」
「小町ちゃん制服可愛いよ」
「ありがとうございます戸塚さん」
飛鳥をいじる風音と凛。誰にも言っていないのに飛鳥が彩加を好きなのは周知の事実となってしまっている。その彩加は小町と話している。身内じゃない女性に制服可愛いと言える彩加ってすごいと思う。未だに男なのかと疑ってしまう場面が多い。
凛が俺の方へ向き、口を開いた。
「同じクラスになれるといいねぇ」
「そーだなー」
「うん。超どうでもよさそうだね」
「別に放課後会えるからな。もし、違うクラスになっても俺のボッチ飯が復活するだけだし」
「会長がボッチ飯ってどうなのよ………」
割とありだとは思うぜ。ただ会長になっただけで、あくまで戻るだけなのだから。久しぶりにベストプレイスに行ってみようか。
高校三年生からは文系理系にクラスが分かれるが、この場にいる普通科は全員文系を選んでいるため、同じクラスになる可能性は十分にある。唯一国際教養科である風音は可能性ゼロだ。
「そういえば、どうして八幡と風音ってクラス分けようとしたの?八幡だって教養科余裕でしょ」
「そうだけど、理由は2つある」
まず一つは、国際教養科は9割が女子を占める。男子は1人か2人という極わずかな人数しかいない。そのせいか年々教養科に入る男子が減っているのが事実。あそこに入った男子を俺は尊敬に値すると思っている。
2つ目は……
「俺と風音は昔から一緒にいるんだ。家も目の前、生まれた病院も誕生日も一緒。本当にいつも一緒なんだ」
「けど、ずっと一緒なのも考え物だと思ってね。そこでお互い違う科に行こうってことにしたんだ~。私は元々教養科に興味持ってたし」
「というわけだ」
歩きながら、長々と説明すること数分。話を聞いた一同は意外だという顔をしている。
「なんだかすごいまともな理由だね」
「ちょっと想像してたのと違う」
「小町も初めて聞きました」
一体どういう考えをしていたのかはこの際聞かないことにした。とにかくずっと一緒にいるとお互い甘えてしまう事を危惧しての選択だ。
「けど、あまり意味なかったよね。結局放課後イチャイチャしてるし」
「自分で言うかそれ」
そう言って腕に抱き着いてくる風音。こいつの言う通り、あまり意味を成さなかったかもしれない。実は俺より風音の方が甘えてくるのだ。おそらく皆は逆だと思っているかもな。
飛鳥と凛は呆れたように口を開く。
「この光景はいつまでも慣れそうにないね」
「僕もたまに恥ずかしくなるかな…」
「小町は慣れましたよ……。物心ついた頃から一緒でしたから…」
「なら、慣れるまで今まで以上にくっついてあげようか?」
『いらん』
進級直後はすぐに授業は無く、説明を受けたり、資料を渡されるくらいだ。新一年生のやることはどこの学校でもお馴染みの学校案内。
ちなみにクラスはというと、やはりそれぞれ違うクラスとなった。俺はF組。彩加はB組。凛と飛鳥がC組だ。俺が一番離れた教室になっている。風音は変わらずJ組だ。
だが、前と同じクラスの奴も少なからずいる。よりにもよってあの葉山達だ。おかしいだろ。何故俺ら生徒会は離れたのに、葉山グループの文系組はくっついているんだ……。葉山に由比ヶ浜、三浦か。戸部は理系に行ったのか……。意外過ぎるが、おそらく海老名目当てではないかと予想しよう。
◆
昼休みになり、風音が作ってくれた弁当を片手に、久しぶりのベストプレイスへ向かう。凛たちと昼を共にして以来あまり行っていないから、半年ぶりになる。今の季節だと景色も良くて風当たりもよさそうだ。
目的地に着き、弁当を口に運んだ。うむ、絶品。弁当を食いながら、テニスコートで練習をしている風景を見る。彩加の姿は見えるが、あいつは一体いつ飯を食べているんだ?
「あ、お兄ちゃんいた」
「せんぱ~い」
聞き覚えのある2人の声がした方へ振り向く。すぐ隣に小町と一色がいた。何故?
「お兄ちゃんこんな可愛い後輩がいたなんて、成長したね~」
「うるせえよ。それよりどうやって知り合ったんだよ……」
「実は道に迷っちゃって。いろは先輩に案内してもらったの」
「先輩の妹だって知った時、目を疑いましたよ。全然似てないですから」
「悪かったな。で、何でここに?」
「お兄ちゃんの言ってたベストプレイスが気になって来ちゃった。いろは先輩が教えてくれたの」
俺の隣に座り、おそらく購買で買ったパン類を食べた。何で一色が知ってるんだよ……。俺ここで一色と会うの初めてだぞ。
「あんな哀愁漂わせた背中してたら、覚えますよ」
呆れたように一色が言う。そんな寂しそうにしていたのか?逆に俺は誰も近づくなオーラ全開に出していたはずなのに…。
「そういえばお兄ちゃん。いろは先輩から聞いたよ。奉仕部の時に助けてくれたって」
「その言い方は少し語弊があるな。助けたわけじゃない。機会を与えただけだ」
「捻くれは相変わらずだ。まぁそこがお兄ちゃんのいいとこでもあるけど。小町的にポイント高い」
「はいはい。そういや一色、あれからどうしたんだ?」
一色の依頼によって雪ノ下が主犯格を追い詰めたが、一色がそれを止め自分に任せろと言ったきりだったのだ。だから、あの後何が起こったのかは誰も知らない。
「雪ノ下先輩みたいに追い詰めた後に男子に可愛く見られる必勝法を伝授させました」
「仲良くなったのかよ……。つーか怖…」
「敵になるよりかはマシです」
「それもそうだな」
男子を勘違いさせる必勝法なんて怖すぎるだろ。今から男子に注意勧告しに行きたいレベルだ。
「一色。悪いが小町をよろしくな」
「はい。先輩の頼みというのであれば仕方がありません。じゃあ小町ちゃん、早速連絡先の交換しよう」
「はい!」
コミュ力お化けというのはこういうことだと畏怖した瞬間であった。
「では、小町ちゃんの保護は任せてください!」
「そこまでしていただかなくて結構です!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
多分今話から時間を飛ばし飛ばしで書いていきます。あまり細かく書きすぎると進まないのが痛い程思い知ったので……。
また次回。