俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

もうタイトルが苦しくなってきた。どうすりゃいいんだこれ……。ここまで来たらもう突き通すしかないし。本当に微妙な所だ。

それではご覧ください。


37話:俺と彼女の外出ストーキング

バレンタインから数週間が経った今、とうとう小町の受験の日が訪れた。

 

「では、行ってくるであります!」

「おう。精一杯やれよ」

「今まで得た知識を全部搾って頑張ってね!」

「もうちょっと普通の応援が欲しいんだけど……。うん!小町頑張る!」

 

自信にあふれた小町の返事をもらい、俺と風音は見守るように見送った。小町の背中は、いつもより大きく感じた。

 

「八くん、今からデートしよ」

「どうした?急に」

「なんか、落ち着かなくて」

 

落ち着かないのは俺も同様で、妙にそわそわしてしまう。きっと俺達が受験するとき、親もこんな感じ……だったのか?俺ら学年主席と次席とるくらいだったから、そこまで心配されてなかったかもしれない。

 

「そうだな。俺らがそわそわしたって仕方ねぇし。どこか行くか」

 

 

今日は高校受験当日だから、高校生の私は休みだ。最っ高だね。というわけで暇だったから、飛鳥を誘って遊びに外へ出ました。

 

「何するの?」

「決めてない」

「相変わらずの無計画だね」

 

基本私は予定は組まないようにしている。しようと思えばできなくもないけど、予定通りにする自信がない。それに、先に決めちゃったら、遊びたい場所があった時に行けないし、予定が狂ったら何故か落ち込んで存分に楽しめない。だから、こうして自由に歩いている。飛鳥といるのも楽しいし。

 

「はい、凛」

「ありがとー♪」

 

飛鳥はたまに自分で作ったお菓子を私にくれる。うん、美味しい。

 

「……ねえ凛。あれって八幡たちじゃない?」

「ん?…んー、そうだね」

 

目を凝らして飛鳥の視線の先をみると、我が生徒会の会長と副会長が並んで歩いている姿が見えた。確実にデートだね。

 

「よし、後をつけよう」

「え、ダメだよ!のぞき見なんて」

「飛鳥、考えてみて。四六時中一緒にいる男女がどんなデートするのか気にならないの?」

「うっ、それは確かに気になるけどさ」

「ほら、行くよ!」

「ちょっと~!」

 

こうして、私達の甘いバカップルへの尾行が始まった。八幡って風音と2人きりの時は眼鏡外してるんだ……。

 

 

八幡たちを追い続けて数十分。最初に辿り着いたのはあまり人がいないバッティングセンターだ。デートスポットとしてはそこまで有名じゃない場所だ。そもそも風音って運動できるのかな?

 

風音はどうやらバッティングは自信が無いらしく、速度60キロの所に入った。対する八幡は80キロだ。こっちは少し予想外で以外にも遅い方を選んでいた。これって、彼氏側が打って彼女側が傍観するものじゃないの?

 

「当たった!」

「何で凛が楽しんでんの!」

「だってただ打つ姿見るのもなんだし」

 

速度のコースごとに壁があって助かった。これなら見つからないし、声さえ出さなければ気付かれないで済む。本当に凛は行き当たりばったりで付き合わされるこっちの身にもなってほしいよ。もう慣れたけどね。

 

私は再び2人のバッティングを見ていると、風音が受付カウンターの横のショーケースの中を見ていた。中に入っていたのは、ホームランの的に当てた人へ送る景品のブタのぬいぐるみだ。もしかして、アレが欲しいのかな?

 

「どうした?風音」

「八くん、あのぬいぐるみ欲しい」

「あれか。でもあれ、獲得条件が120キロのだぞ」

「八くん、使って」

「…はいよ。使えるもんは使っとくか」

 

突如、八幡の目が泥水が入っているかのように濁りだした。久しぶりに見た、八幡のロットアイ。ず、ずるい!

 

そして、八幡はロットアイで軽々と120キロの速球をホームランの的に当てた。やっぱりすごい。……けど力入れすぎ。ホームランの的ヒビ入っちゃってるじゃん!

 

「ありがとう八くん」

「お前本当にぬいぐるみ好きだな」

「うん、触り心地いいからね。可愛いし」

 

風音は嬉しそうにブタのぬいぐるみを抱きしめている。この時だけ幼さを見せられて可愛いと思った。なんだろう、女子からしてもあの笑顔は思わず頭を撫でたくなるね。

 

「うわあ、抱き合ってる……。外では普通にカップルしてると思ってたのに、どこでもするんだ」

 

凛が珍しく戸惑いながら、あの光景を見ている。なんか、見てるこっちが本当に恥ずかしくなってくる。未だにあの甘い光景には慣れていない。

 

 

 

 

 

次に八幡たちが入ったのは、大型ショッピングモールにあるおしゃれな喫茶店だ。私達は八幡たちが入った数分後にばれない位置に座り、観察中。今更だけど、良い趣味とは言えないね。でもここまで来たんだから、最後まで見てやる。

 

「美味しいね♪ここのスイーツ」

「飛鳥本当に甘い物に目がないね……。まぁ美味しいけど」

「そっちの少し貰っていい?」

「じゃあ交換ね」

 

凛から貰ったケーキを食べながら、八幡たちのいる席に目を向ける。……向こうも交換し合ってるようだ。ただし、食べさせ合い…。周りの目なんて気にしていない様子だ。一部の店員さんはこの光景を見て微笑ましいのか、笑顔を絶やさないでいた。

 

「はい、あーん」

「別に対抗しなくてもいいでしょ……」

「そう言いながら食べてるじゃん」

 

 

 

 

そろそろ日も沈む夕方の頃、八幡たちはホテルが並ぶ道を進んでいる。結局ずっとストーキングしてしまって、それは今でも続行中だ。

 

けど、さすがに飽きてきたから、ここまでにしよう。これ以上の尾行なんて失礼だし、なんか罪悪感が……。

 

「凛、もう帰ろう」

「そうだね。取り敢えず、八幡と風音がどれだけバカップルなのかは嫌という程思い知ったし」

「あはは、それは確かにそうだね…」

 

他愛の無い会話を凛と楽しみながら、家路に就く。就こうとしたが、それは横から現れた集団によって遮られた。

 

「なぁんだ?こんなとこに女2人なんて不用心だなぁ?ひひ」

 

その中の1人が金属音を鳴らしながら、嫌な笑みを浮かべて近づいてきた。それに倣って周りの人たちもニヤニヤとしだす。気持ち悪い。

 

「どいてください。私達帰るので」

 

凛は私の手を強めに引っ張り、この場を抜け出そうとした。だけど、それも憚れてしまう。

 

「おいおい、ここがどこだか分かんねえで来たのかぁ?明らかに誘ってんだろ?」

 

気味の悪い男の発言に、私は周りの建物を見回した。よく見ると、ピンク色の看板が多くて、明らかにそういうホテルなのだと、今更ながら認識した。それと同時に、嫌な予感が頭をよぎる。

 

「おいこいつら連れてけ!久しぶりの上玉だぜ!」

『おう!』

「…っ!来ないで!」

 

リーダー的な男の合図とともに、私達を取り囲むように近づいてきた男たち。……怖い、嫌だ。恐怖心で体が震えて、腰が抜けてしまう。隣の凛も、私の手から伝わるほど震えている。足も言う事を聞かず、固まって動かない。

 

こんなことなら、最初から尾行なんてするんじゃなかった……。涙目のせいで視界もぼやけている。助けて……彩k

 

「ってぇ!?」

「「え?」」

 

私の腕を掴もうとしていた男は、突如叫び声をあげながらその場にひざまずいた。顔を手で押さえて、その手の指の間から、血が流れていて、あまりの痛さに唸り声をあげている。

 

何が何だか分からずに、ただその男を見ていたら、すぐそばに転がっているテニスボールに気づいた……。もしかしてと思い、私はボールがボールが飛んできたであろう方向に目を向けた。

 

向こうには、テニスラケットを構えた1人の男。容姿は女子だけど、頼りになって男気がある、私の想い人。戸塚彩加だった。

 

「ああ?なんだ?ってあっちも女かよ」

「僕は男だ。…それよりも、その子たち解放してくれないかな?僕の大切な人達なんだ」

「ハハハハハ!!そう言って解放するやついるかっての!おいお前ら、あいつも捕まえちまえ」

 

リーダーは気味の悪い高笑いをして、彩加を捕まえさせようと部下に命令した。だけど、それに応えられる人は、既に一人もいないことを私達は知っている。

 

「ったく、何やってんだよこんなとこでよ…」

 

既に私達の会長、ロットアイ状態の八幡によって殲滅させられていた。私達にはそれらが速すぎて、気が付いたら全員が虫の息になっている。……多分、力を入れすぎたのか、10Mくらい吹っ飛んでいる男もいる。

 

「大丈夫?2人とも」

「ありがとう、風音…」

「……怖かった」

 

八幡の隣にいた風音は私達の肩を掴んで、自分の方に抱き着かせた。その瞬間、さっきまで震えていた恐怖心が消え、代わりに目から大粒の涙が流れ始めた。

 

「もう大丈夫だよ。八くんと彩加がいるから。…………………泣いている所悪いけど、後でお説教ね♪」

 

聖母のように優しかった声音は、突如冷たい声音に変わり、笑顔はそのままだけど、目が全く笑っていなかった。嗚呼、今までにない程怒っている…。その怒りのオーラを発している風音に肩をビクつかせた私と凛は、すぐに涙が止まった。

 

「「はい…」」

 

 

 

 

全く、バカでかいボールが打つ音が聞こえたと思ったら、まさか飛鳥と凛が襲われてたなんて想像もつかないだろ。ていうか、テニスボール打つだけで普通あんな音鳴らねえよ。どんだけ彩加強く打ったんだ……。

 

その彩加は、飛鳥たちを襲おうとした集団のリーダーの横を通り過ぎて、俺の所に駆け寄った。

 

「ナイスショットだ彩加。ぶっちゃけアレなかったら気付かなかった」

「僕も八幡たちが近くにいたなんて思わなかったよ!それに…………僕今でも怒ってるから」

 

そう言って彩加は完全に無表情になり、男を睨みつけた。ここまで彩加が怒りを露わにしているのは初めて見た。いつも笑顔を振り撒く天使から、怒りで堕ちた堕天使と化している…。怖え、今度から彩加を怒らせるのはやめておこう。

 

「な、何だお前ら!?いきなり何を………。お前、ヒキタニ…!」

「あ?……あー、お前よく見たら、あの時の主犯格の1人じゃねえか。随分と落ちたもんだな」

「うるせえ!?俺はお前のせいで人生狂わされたんだよ!?」

「自業自得だろ」

 

こいつは、小学生の時俺をイジメていた主犯格の1人だ。そして、こいつの振りかぶったカッターで、俺の肩に傷をつけた張本人。主犯格は全員転校したんだが、こいつは千葉に残ってたんだな。にしても、てっきり改心すると思いきや、こんなになるとはな。

 

「まさかここで因縁の奴が現れるとはな!?何をしたか知らないが、借りは返させてもらうぞ!?」

 

男は懐からカッターを取り出し、刃を限界まで伸ばし、大きく振りかぶりながら走ってきた。同じ事する気かよ。

 

カッターが俺の眼前に来る直前に男の手首を掴み、徐々に力を入れながら握る。次第に男は苦痛の声をあげ、悶えた。カッターと手が離れた瞬間、男の鳩尾に拳を一発。男の身体は力が無くなって、その場にゆっくりと倒れた。

 

「ふぅ。……やばい、久しぶりに長く使ったせいで負担が凄いな。飛鳥、凛、大丈夫か?」

 

肩で息をしながらも、後ろにいた役員の安否を確認した。

 

「うん。…ありがとう、八幡、彩加」

「ごめん。迷惑かけて」

 

2人は暗い表情のまま、俯いてしまった。

 

とにかく、落ち着かせるため、近くのファミレスに入ろうと提案して、行くことになった。まず、俺も休みたい。今は立ってるだけで精一杯のせいで、彩加に肩を借りている。

 

 

「さぁて、人様のデートを尾行した挙句、襲われそうになって、俺達に助けられたわけだが?何か言い訳は?」

 

サイゼリヤのテーブル席で私と凛は八幡に怖い顔で問い詰められています。これに至っては何も返す言葉がない。

 

「「ごめんなさい………」」

 

正直に私と凛は頭を下げて謝った。

 

「ったく、心配させやがって。彩加がいなかったらやばかったぞ」

「もう2人だけであんなとこ行っちゃだめだよ!ちゃんと周りを見てね」

「「以後気を付けます」」

 

彩加に助けられたことに嬉しいと感じたけど、それ以上に心配を掛けてしまった罪悪感の方が大きい。

 

その後も八幡たちから無事でよかったと安心されて、その場の暗い雰囲気はほとんどなくなった。なんていうか、切り替えが早すぎてこっちがついていけないんだけど………。

 

「ところで、いつから尾行してたの?」

 

段々と笑顔を取り戻した私と凛に、風音が真剣な目で質問をしてきた。やっぱり覚えてたか………。その質問に隣にいた凛が、気まずそうに呟くように答えた。

 

「バ、バッティングセンターの前から」

「それ最初からじゃん!?じゃあ、私が八くんに甘えてる光景も……」

 

顔を真っ赤にした風音の言葉に、私達はうんとしか言えなかった。正直あれはこちらも恥ずかしくなるほど甘い光景だった。

 

風音は両手で真っ赤に染まった顔を押さえて、俯いてしまった。可愛い、なんかこう、庇護欲を掻きたてられる。

 

「今更恥ずかしがらなくてもいいだろ」

「逆に何で八くんそんな落ち着いてんの!」

「いつもの事じゃねえか」

「そうなの!?」

 

どうやら風音には無自覚だったらしい。今でも、たまに私達の前で八幡に甘えている姿を見せているのに……。

 

自然と私は笑みをこぼした。凛も八幡たちの面白い言い争いに笑っている。もうあんなことは忘れよう。そう思った私も、彩加たちとの会話を楽しんだ。

 

「あ、心配かけた罰として、飯はお前らのおごりだからな」

「「………はい」」

 

 

家に帰ったら、既に小町が晩御飯を作って食べていた。

 

「へえ、小町が必死に受験してるときにそんなことがねー」

 

小町にデートの途中で遭った出来事を話した。小町は感心しながら、自分で作ったカレーを頬張っている。

 

「本気で怒った戸塚さん。小町興味あるなー」

「凄かったぞ。天使が堕天したからな」

 

あの時は突然無表情になって、彩加が怒りを露わにしたから、俺も驚きを隠せなかった。

 

けど、それよりも驚いたことがあった。それもそのはずだ。ロットアイという能力は、俺の心理を映したものでもある。誰も信じられなくなり、人間嫌いになった俺のモノクロを表した世界。ロットアイは風音と小町以外、皆白黒のはずだった。

 

それなのに、彩加、飛鳥、凛。この3人は、ロットアイ状態でも色がはっきりと認識されていたのだから。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

さて、どうしようか。このシリーズは八幡と風音の子供が独り立ちするまで書くと言っちゃいましたが、大丈夫なのか……。これ完結するとき、俺とっくに社会人になってる気がする。今のペースだと間違いなくそうなる。

ここからはほとんどオリジナルで、たまに原作キャラと絡ませる方向にいきます。主に葉山とか雪ノ下かな。もしかしたら、あの由比ヶ浜も、無きにしも非ず(今の所ね、確証はない)。

次回は八幡たちは高校三年生スタートです。ストーリーは亀進行だと思いますが、付き合ってくれるとありがたいです。

また次回。

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