俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

結構間が空いてしまった……。この頃自分の時間が作れなくて、疲れ気味だ。だからといって、作品には影響させてません。

いただいた感想で、hachimanだという意見がありました。俺的にはあまりhachimanにしたくはなかったのですが、自然になってしまったのでしょう。取り敢えず様子見で書いていこうと思います。八幡とhachimanの間が理想。

それではご覧ください。


34話:俺と彼女の解決クリスマスイブ

「あぁ~、やってらんねぇ。俺ら帰るわ」

 

俺の言い放った言葉に現場が凍り付いた。

 

「帰るぞ。いつまでもこんな時間使う暇もねぇ」

 

俺がそう指示すると、風音達もカバンを肩にかけ、俺を先頭に会議室を出ようとした。

 

「待て。どういう事だ!一緒にイベントを成功させるためにアライアンスを結んだじゃないのか?」

 

最初に止めたのはやはりこの会議のリーダーである玉縄だ。俺らを、主に俺の方を睨みつけながら、説得を試みている。俺がもうちょっとノリノリな性格だったら、ディオみたいに無駄無駄叫んでたかもな。しかし、今の状況でもカタカナを使うとはやはり重症だな。

 

「玉縄の言う通りだ。俺達はイシューを明確に持って会議をしていたはずだ」

 

どこが?

 

「そうだ。こうやって二校で合同イベントをやるオポチュニティなんてあんまりないんだぞ」

 

あ?なんだってなんだって?その機会を逃したのは紛れもなくお前らだ。俺らだってこんな機会逃したくないから、案を出そうとしているのに、お前らがそれを保留にして忘れるから進まないんだ。

 

「俺らはお前らの言葉遊びには付き合ってられないんだ。やるならどうぞ4人でご勝手に」

「4人?」

 

今海浜総合側の人間は助っ人合わせて6人。俺の言葉と人数が合っていないため、それを不審に思ったのか辺りを見回した。

 

「じゃ、私達も帰るね。行こ、千佳」

「え?う、うん」

 

それと同時に折本は隣の友人と席を立ち、帰る準備をして、凛達の隣に立った。

 

「き、君たちもか?」

「だって何言ってるか全然分かんないし、ウケないし」

「そ、そんな」

「前はそんなカタカナ使ってなかったよね?どうしたの突然。覚えたての言葉使って楽しんでるんだったら、どうぞ4人で遊んでて」

 

うわお、辛辣~。今の玉縄は図星を突かれた様な顔で、呆然としてしまっている。やっぱ惚れた人に言われる程クるものはないんだな。男ってのはそれくらい単純なもんだ。

 

総武高生徒会+折本達は、そのまま会議室を出た。

 

「う~ん、結構気持ちよかった~!玉縄の顔マジウケたし」

「かおり、声のトーン低くて私も少しビックリしたよ」

 

俺らの後ろでは腕を上にグーンとあげて腰を伸ばしている折本と、気まずそうな表情の友達が歩いている。隣の友達が今言っていたビックリしたという事は、折本はあまりあの声を出さないという事だ。相当うんざりしてたんだろうな。

 

 

これでクリスマスの合同イベントは実行される前に幕が降ろされた。さて、この後なんだが…。

 

「どうすっかなぁ……」

「何か考えがあったんじゃないの?」

「ん?ねえぞ」

 

俺の計画性の無さに風音達が掌で額を抑え、ため息をついた。今回はさっきの状況を見て突発的に思い浮かんだものだから、後先はあまり考えれていない。

 

「大丈夫なの?」

 

心配そうな顔の飛鳥がそう聞いてきた。

 

「ぶっちゃけると、よくわからねぇのが今の現状だ。もう日程も場所も目的も、対象者も決まっている。ここでリタイアは無理だ」

 

俺が言った事に腑に落ちないのか「どういう事?」と聞き返した。だが、ここで補足説明は不要。合同イベントが切り離された今、海浜総合も俺達と同じ状況下にある。

 

「まぁ、少ししたらわかるだろ」

 

と、俺に注目する風音達に一言だけ言い、今日はここで解散させた。

 

「よし、帰るぞ風音」

「うん。……本当に大丈夫なの?」

「心配性だな風音は。大丈夫なんじゃねぇの?」

「私が聞いてるのに~」

「じゃ、はっきり言う。大丈夫だ」

「なんか策があるの?」

「ああ。……知ってっか?男っつーのは惚れた女には馬鹿正直で単純なんだよ」

 

 

翌日。寝相で眼鏡を壊して幸先悪いなと落ち込んだ朝でした。久しぶりにこの腐った眼が復活だな。別に死んでたわけじゃないが、やはり少し視線を感じた。そりゃ生徒会長が突然目が腐ったなら誰だって気になるだろうよ。お願いだから陰口だけは止めてよね。

 

俺達はいつものように放課後、生徒会室に集まった。

 

「どうかね?イベントは。順調か?」

 

入室してきたのは理事長だ。なんとまぁ、タイミングがいいのか悪いのか。つい昨日あんなことがあったため、風音達は言い淀んでいる様子。

 

「正直、順調とは言えません。けど、何とか間に合う範囲です」

「そうか。慣れるのに時間がかかるようなイベントだからそこは仕方がない。頑張ってくれ」

「はい」

 

それだけを言いに来たのか、理事長はあっさり帰っていった。

 

「八くん、間に合う範囲なの?正直そうは思えない」

 

風音がムッとした顔で聞いてきた。風音、ちょっと怒ってるな。

 

「ま、理事長にああ言った以上、やるしか選択しねぇよ」

「何でそんな自分から首を絞めていくんだよ……」

 

呆れてため息をついた凛。おい、あまりの呆れっぷりに男口調になってるぞ。

 

「大丈夫だよな?」

『こっちの台詞だよ!』

 

いや、もう自分がやったことに不安しかねえよ。今思えばいくらでも手段はあったはずなのに、なんであんな選択肢を選んだんだろう。答えは簡単。俺が腹を立ててただけです。イライラと俺の性格の悪さがこのアイディアを持ってきたのです。よって、僕は悪くない。

 

ま、とにかく会議室に行こう。俺の思い描いた状況になれば一気にこのイベントは進む。……多分。

 

 

『すまなかった』

『………は?』

 

マリア(マリンピア)の会議室に入った瞬間、玉縄達がこちらを見て頭を下げてきた。これには思わず皆呆然としてしまった。

 

「君の言う通り、俺達は合同イベントで浮かれてた」

「それで、つい意識して覚えたての言葉を適当に扱ってたんだ」

 

等々、海浜総合の生徒会役員が口を揃えて謝罪を申し上げた。ここにいる皆はこの光景に呆然としてしまった。俺以外。

 

大体予想できたことだ。玉縄が惚れた女、折本にあんな事言われたら、そりゃ直す以外選択肢なかろうよ。ただ、こんな正面切って謝られるのは予想外だった。てっきり会議の休憩中にこっそり言われるのかと思っていた。

 

「まぁ、使うなって言ってんじゃない。ただ高校生で使うような言葉じゃねえから、周りの奴らが理解できなかったんだ。会議も停滞したままだしな。内容すら決まってない」

 

皮肉交じりにそう言うと、玉縄達は顔を俯かせ、一気に沈んだ空気になった。

 

「はぁ、会議始めるぞ。リーダーだろ?」

「あ、ああ!」

 

 

 

それからというものの、今までがまるで茶番だったように、スムーズに進んだ。それはもう、ね。時間がないから、急ぎ足でアイディアを出し合い、初期とはボリュームダウンしたものの、海浜総合のバンドに出張コンサート、演劇に決まった。演劇は近くの保育園の園児たちにやってもらおうという意見が下りた。……なんか、一気に忙しくなったな。

 

「後は、飾りつけだな。予算も限りがあるから、ここは節約したい」

「あんなでけぇホールに飾りか。確かに高コストだ」

「……まああくまで対象は高齢者が多い。ここは手作りの低クオリティでいいだろう」

「誰に頼むんだ?」

「小学校に連絡をするよ。そっちに保育園を頼んでいいか?」

「おっけ」

 

このように今まで決まってなかったことが次々と解消され、問題は演劇内容と人手になるところまできた。これにはサザエさんも「まあなんということでしょう」と絶賛するに違いない。

 

凛と飛鳥には折本とその友達と演劇内容のアイディア出しと、衣装の作成を頼んだ。飛鳥が服作れる人で良かった。さすが家事全般こなす女子だ。

 

「風音、行くぞ」

「私もあそこに混ざりたかった」

「いや、マジで一緒に来てくれ。通報される」

「理由が悲しすぎる」

 

 

双葉保育園に着いた。外はもう夕方のため、空が紅く染まり、お迎えのお母さん方がちらほら見える。実はここの保育園、俺達が通ってた場所だ。何人か見覚えのある保育士がいる。

 

「あの、ちょっといいですか?」

「っ……はい、何でしょう?」

 

保育士さんに声をかけ、こちらを見た瞬間肩を少しビクつかせた。今ので結構傷ついた。今一度眼鏡のありがたさを思い知りました。

 

「風音、頼む」

「はいはい」

 

風音は俺の頭を2回軽く撫でるように叩いて、保育士さんの対応にあたった。

 

しっかしまぁ、10年も経つと色々と変わってるなぁ。あのジャングルジムなんて俺達があの時は茶色一色だったのに階層によって色が分けられている、遊んだことないけど。砂場も面積広くなってるし、遊んだことないけど。滑り台の数も1つ増えてる、遊んだことないけど。

 

「ケツだけ星人ー!ぶりぶりー!」

「おいやめろよ!!」

 

……うん、最近の子供は活発で元気なんだな。

 

それにしても、小さいころの記憶って案外結構残ってるもんだな。っつーか、俺と風音外でで遊ばなすぎだろ。どんだけ室内にいたんだよ……。

 

「八くーん。明日子供たちに聞いてみるだって」

「そうか。サンキュー」

「………頭撫でてくれないの?」

「はいはい」

 

言われた通り、風音の頭に手を置き、2往復程撫でた。そして保育園を出ようとすると、意外な人物と遭遇した。

 

「比企谷、新島?」

「ん?あー……川…」

「川崎さんだよ」

「そうそれだ。おう、奇遇だな」

「何してんの?こんなとこで」

「まぁちょっとしたイベントだ。生徒会の仕事」

「ふーん。頑張ってんだ」

「まぁな。そう言うお前は?」

「……妹を迎えに来たの」

「あ、さーちゃーん!」

 

川崎がそう言った途端、後方から可愛らしい声が聞こえた。その正体は1人の女の子でこちらに、いや、川崎の方に向かって走ってきている。ふむ、どうやらあの子が川崎の妹か。

 

「さーちゃん!ただいま!」

「おかえり、けーちゃん」

「この人たちは?」

「私の知り合いだよ。ほら、自己紹介」

「うん!川崎京華です!よろしくお願いします!」

「比企谷八幡だ。よろしくな」

「新島風音です。よろしくね京華ちゃん」

 

嗚呼、なんて礼儀正しいいい子なんだろう。思わず俺も風音もかしこまった自己紹介で返したよ。きっと親孝行な子になるに違いない。

 

「はちまんだから……はーちゃん!」

「ちょ!けーちゃん!」

「いいって。そっちの方が覚えやすいだろ」

「かざねだから、かーちゃん」

「か、かーちゃん……。かーちゃん…」

 

指を刺しながらかーちゃんと連呼される風音。微妙な表情で少し落ち込んでるように見える、何とも形容しがたい状態だ。にしてもかーちゃんて…。少し笑みがこぼれてしまった。

 

「八くん今笑ったでしょ!」

 

そしてそれを見逃さない風音。

 

「わりぃわりぃ。もう行こうぜ。じゃあな川崎」

「うん、ありがとう。じゃ」

「またねー」

「ばいばーい!」

 

俺達は川崎姉妹と別れの挨拶をし、保育園を出た。

 

 

イベントの準備も順調に進む中、迎えた放課後。昇降口で風音と合流した。

 

「かおりから連絡があって、結構長い時間のイベントだから、食べ物出した方がいいんじゃないかだって」

 

何で会議で言わないのかはさておき、確かにその通りだ。演劇にバンド演奏、オーケストラだとかなりの時間を食うからな。せめて腹に入れておきたいだろう。

 

園児と高齢者を考慮すると中々難しいな。

 

「私ケーキ食べたい!」

 

と、真っ先の手を挙げたのは凛だ。お前が食うわけじゃねぇよ…。

 

でも、クリスマスだからありだな。採用。

 

「飛鳥ってケーキ作れるか?」

「作れるよ」

「よし、じゃあ風音と頼む」

「えー、私は?」

「お前料理自体できないだろ。他の奴らと裏方だ」

「ちぇ~」

 

拗ねて口を尖らせる凛は置いといて、作るものはケーキと風音経由で折本に伝えた。数分後、返事がきた。

 

【誰が作るの?こっち作れる人いないよ】

 

さすがに当日2人でいくつものケーキは無理があるな。時間だってかかるし、かといって前日に作り置きするのは衛生上避けたい。でも俺の数少なすぎる知り合いでケーキ作れる奴なんて…。…………あ、あいつ作れんじゃね?

 

 

 

「つーわけで、助けてくれ」

「そ、それで私の所に来たのね……」

 

訪れたのは以前風音と所属していた奉仕部だ。ケーキ作りに悩んでいたら、この雪ノ下が前に依頼でクッキーを焼いたことを思い出して、こうして依頼をしている。

 

「どうせ暇だろ?」

「あら、それは嫌味かしら?眼鏡が無くなって不審者に戻った生徒会長さん」

「うっせぇ、ほっとけ」

「雪乃、八くんは眼鏡無いからって不審者じゃないよ!カッコいいよ」

「冗談よ。暇なのは事実だし、依頼は受けるわ」

「ありがとう雪乃。その日になったら連絡するね」

「ええ。…その、頑張ってね」

「うん♪」

 

恥ずかしがる雪ノ下に風音は元気よく笑顔で答えた。なんだかんだ言って信頼されてるなぁ。それと風音と連絡先交換してたんですね。俺には聞きもしなかったのに。別に拗ねてないから。

 

再び読書に励む雪ノ下を横目に、終始空気だった凛と飛鳥を連れて部室を出た。

 

「雪ノ下さんと知り合いだったんだ。2人共」

「前に話したろ。あれが奉仕部だ」

「へぇ、1人だけなんだ」

「うん。皆事情があってやめちゃったんだ」

「まぁ本人は1年の頃と同じ環境に戻っただけとか言ってるけどな」

 

取り敢えずケーキ作りの問題は解消された。そのことは今日の会議で言えばいい。

 

 

会議が始まった。

 

会議室の隅っこには小学生が数人おり、ハサミやテープをもって折り紙を折っている。玉縄が呼びかけた助っ人小学生だな。

 

集団で貸し借りをして飾りを作っている。その集団から離れたベンチに座って、1人で黙々と作業している子に目がいった。つーかよく見たら留美じゃん。

 

「よう」

「………」

「む、無視かよ」

「どちら様ですか?」

「いや、覚えてるだろ。忘れたとは言わせねぇぞ」

「冗談。眼鏡かけてないから一瞬わかんなかったよ、八幡」

 

そう言って眉を下げて笑うのは、夏休みに会ったぼっち小学生の留美だ。奉仕部の活動で小学生の林間学校をサポートして、留美の依頼を受け、見事汚い手で成功させたのだ。

 

「あれからどうなったんだ?」

 

少し距離を置いた隣に座り、俺も折り紙と鋏をもって作業を始めた。すると

 

「別に手伝わなくていい。1人でできる」

 

と、冷たく一蹴された。だが俺は全く動じず質問を続けた。風音のジト目の『別にいいよ…』に比べれば傷一つつかないぜ。あの時はマジで凹んだ。

 

「私は特に何もなってないよ」

「そうか。ま、何もないなら問題ないな」

「何?心配してたの?」

「ぜ~んぜん」

 

ぶっきらぼうに答えると、ムッと眉間にしわを寄せて睨んできた。全然怖くないし、なんだったら可愛いぞこいつ。もしかしたら将来雪ノ下並みになるかもな。

 

「……(ドロドロ)」

 

「八幡、小学生と親し気に話してない?」

「本当だね。しかも凄い可愛い子だし、八幡にビビってるようにも見えない」

「八幡子供好きとは聞いてけど、まさかね……」

「いやいや十分あり得るよ。けど、偏見は良くないよ。世の中色んな人いるんだから。恋人がいるロリコンがいてもおかしくないし」

「(面白いからもう少し黙ってよ~♪)」

 

お前ら丸聞こえだぞ、ごらぁ。あいつらあとでとんでもねえ仕事与えてやるからな。覚悟しとけ。

 

 

 

 

翌日、保育園の方から許可がもらい、早速当日使うホールに来てもらった。そこで服のサイズを確認しつつ、衣装づくりに入り、園児には軽くリハーサルをしてもらう。

 

「あれ?川崎さん?」

 

風音の声につられてその方向を見ると、昨日会ったばかりの川崎が妹と一緒にいた。

 

「あ」

「おう、また会ったな。つっても同じクラスだが」

「けーちゃんが率先して演劇したいって言ったらしくて……」

「あ、けーちゃん出るんだ!」

「それで、私も衣装作りを手伝うつもり。得意だし」

 

お、それは助かるな。正直風音と飛鳥だけじゃ無茶だったところだ。ありがたい。

 

ちなみに演劇の内容を決めてたと川崎に教えると、既に園児たちが今日保育園で何の劇をするか決めてたらしい。

 

 

迎えたイベント前日のクリスマスイブ。一時はどうなるかと思ったが、どうにか形になった。今日やることはイベントのテーブルと椅子の用意、ケーキの材料の買い出し、演劇のセット、海浜バンドの楽器用意、くらいだな。

 

「ありがとう、君のおかげで何とか成功しそうだ」

「なんだよ急に…。っつーか俺だけじゃねぇよ」

「そうだな。他の皆にも礼を言うつもりだ」

「…何であんなビジネス用語を乱用してたんだ?」

 

そう問うと玉縄はあはは、と恥ずかしそうな笑みを浮かべた。

 

「舞い上がっちゃっただけだ。初めての生徒会長で自分から企画して…。まぁ、調子乗っただけなんだ」

「分からなくもない」

 

俺だって会長になった当初、『ぼっちで人間不信だった男が推薦人50人以上集めて生徒会長とか、めっちゃドラマ~』って言っちゃってたし。心の中ではなく、この立派な口でね。風音にも小町にも呆れられた。

 

それにしても調子乗っただけとはね。一体どれくらい勉強すればスラスラビジネス用語が出るのか知りたい。

 

「ちょっと八幡ー!こっち手伝ってー!」

「玉縄ー、これ頼む」

 

役員がお呼びなのでここからは会長共々作業開始だ。

 

 

「あ~疲れた」

 

時計を見ると、既に時刻は22時を回っていた。準備がとにかく大変だった。走り回ったり、手を動かしたりだの

 

両親はイブという事で夫婦でどっか行ってるし、小町は友達の家に泊まっているらしい。おいおい、彼女持ちの男を家1人にさせるとか狙ってるんすかねぇ?邪な煩悩が働いちゃうでしょうが。

 

ベッドでうつ伏せになりながらそう考えていると、背中から何かがのしかかられた。柔らかくて少し重みを感じる。まるで人間が乗ってるかのようだ。

 

「八くんお疲れ」

「お前もな、お疲れさん」

 

案の定風音が乗っており、身動きを盗られた俺。ここから襲われるのか俺は……。あ、なんか怖くなってきた。色んな意味で。

 

「八くーん、今日はイブだよ~?」

「だな」

「ほら、イブの日に彼氏彼女が誰もいない家に2人きりだよ?何かない?」

 

こいつもうまんま誘ってんじゃねぇか…。そんなに俺とパッコリヤりたかったのか?いや俺もしたいと思った事なんて何度もあったけど。けどまだ高校生。我慢して2人で暮らし始めたらって心では決めてたんだが、…………もうだめだ。

 

レアメタルをも越える俺の強靭な理性は、いとも簡単に崩れ去った。

 

勢いよく起き上がり、風音の両肩を掴んで、反転。俺が押し倒した形になった。

 

「知らねえからな。風音、もう遅い」

「…うん。いいよ」

 

風音の唇に強いキスをして、俺はゆっくり両手で制服に手をかけた。

 

2人で過ごす聖なる夜は、突如計画変更して、性なる夜へと変わっていった。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

あ、ちなみに言っておきますが、このシリーズ、八幡と風音の間の子供が独り立ちするまで書きますよ(真顔)。このシリーズが終わるとき、俺は一体何歳になってるのでしょう。現在16歳。今月誕生日。

また次回。

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