俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

33話突入。

7時間バイトで満身創痍だったのに、ネタがどんどん溢れてきた。勢いに乗って書いていたら、太陽が昇っていた。学校午前中だけだったけど、マジつらたんだった。

それではご覧ください。



33話:俺と彼女の停滞ビジネスダンス

昨日の会議から翌日。本日二回目の会議が同じ場所で開かれる。

 

「では、昨日に引き続き、ブレインストーミングからやっていこう。議題はイベントのコンセプトと内容面でのアイディア出しを」

 

玉縄が議事を進行していくと、海浜生徒会の面々が次々と挙手をし始めた。そして次々とアイディアが披露されていく。

 

実はこの会議の前日、あらかじめビジネス用語を少しかじってきたのだ。これで多少は相手が何を言ってるのかが理解できる。相手に合わせることも重要なんですよね。社会の闇が垣間見えた気がした。

 

「やっぱり若いマインド的な部分でのイノベーションを起こさないと」

「そうなると俺達とコミュニティ側とのWIN―WINな関係を作ることが望ましいね」

「そうなると戦略的なコストパフォーマンスが必要に…」

 

……何コレ?昨日と全く同じ感想を抱いている。それは総武高の生徒会面々もそうだ。

 

こいつらは一体何の話をしているのかが分からない。何がしたいのか、どうさせたいのか、そもそも成功させる気があるのか。

 

「皆、もっとロジカルシンキングで論理的に考えるべきだよ」

 

玉縄が険しい顔で重々しく言うが、それ意味全く一緒だからな。お前はルー大〇か?トゥギャザーすんのか?勝手にしててほしい。

 

そもそも、これはクリスマスイベントの会議のはずだ。何故イノベーションなりWIN―WIN関係なり戦略的コストパフォーマンスの話になっている。一体なぜそこまで関係者を増やすことを提案しているのか。まだイベント内容自体が決まっていないのに、何故決まったことを前提にして会議をしているのかが俺には、もちろん風音や凛、飛鳥も理解ができない。

 

 

「さて、あの意識高い系の厄災共、玉縄と不愉快な仲間たちをどうしようか」

「八くん、何でそんな大規模になってるの?」

「いや、ある意味間違ってないよ・・・」

「何言ってるか分からないもんね」

「えっと、何で僕もいるの?・・・」

 

あの訳わからんブレインストーミング(笑)から翌日の昼休み。俺達生徒会一同+彩加は生徒会室に集まり、弁当を口に運びながら、会議を始めた。

 

彩加には気になったところを突いて質問をしてほしいと頼んだ。

 

「そのクリスマスイベントってどういうものなの?」

 

早速彩加が開口一番にそう聞いてきた。ここで一旦イベントについて整理しよう。

 

日程はクリスマスイブ。場所はコミュニティセンターの大ホール。目的は地域交流、地域貢献を主眼としたボランティア活動。対象は近くの保育園にいる園児、デイサービスに通うお年寄りだ。

 

「はぁ、もう最悪バックレる」

 

凛は背もたれに体を預けながら、怠そうな声を吐いた。

 

「本当ならそうしたいが、理事長に迷惑がかかるからなぁ」

「その玉縄君って人、どんな感じなの?」

「どんな感じか……。『皆、ブレインストーミングを始めよう。ともにリスペクトできるパートナーシップを築いて、シナジー効果を生もう!皆、ロジカルシンキングで論理的に考えるんだ』」

 

そっくりそのまま玉縄の真似をした瞬間、生徒会室で爆笑の嵐が吹きあられた。何故俺はこんなに恥ずかしい思いをしているんだ…。

 

「八くんそっくり!」

「八幡手の動き凄い!」

「声まで似せて…」

「八幡ふざけてるようにしか見えないよ…」

 

はい、玉縄の真似をしたら、笑われ恥ずかしい思いをするという結果が出ました。よってあいつは恥ずかしい人間認定です。これを平気でみんなの前でやる海浜生徒会マジである意味リスペクトだ。覚えたての言葉遊びなら尚更だな。

 

さて、そろそろ本格的に会議だ。昼休みだからそこまで時間もない。

 

「こっちで先に内容を考えちまうか。先に意見出しゃ、こっちが主導権を握れる」

「対象が保育園児とお年寄りだからね。その2つに関連づいた方がいいよね」

「クリスマスだから、サンタと子供?」

 

彩加の何気ない一言に、その場にいた彩加以外全員、重大なことを忘れていることに気づいた。意識高すぎる会議のせいですっぱりと頭の中から消えていた。最も単純で、定番な行事。

 

『サンタさん』

 

「それだよ彩加!ナイス!」

「生徒会庶務認定!」

「ちょっとぉ!乱暴にしないで!勝手に認定しないでぇ」

 

凛と飛鳥が半ば興奮気味で、彩加の肩を揺らした。『あ~、うぅ~』と可愛らしい唸り声をあげている。

 

「けど、どうやってサンタ出現させるの?」

 

そうだ、問題は風音が今言った、サンタ出現のタイミング。いきなりサンタ登場じゃ混乱を招きかねない。そもそも、イベントの内容が細かく決まったわけじゃないから、まずはそこを決めて、その内容によってサンタのタイミングを考えた方がいい。

 

と、ノリに乗ったところで、昼休みの予鈴が無情にも鳴り響き、会議はここで終了した。

 

 

 

 

そして、第3回目の会議が始まる。

 

玉縄が始まりの挨拶をすると同時に、俺らは今日の昼に思い浮かんだアイディアを提案した。すると、玉縄は『これはまた斬新なアイディアだね。立候補に入れよう』と、珍しく日本語をしゃべりながら、ホワイトボードに書いた。これで、少しは変わったと思った矢先、

 

「折角だし、派手なことしたいよね」

「そうだね。もっと規模感を大きくしたい」

「ちょっと待て。それだと人員と時間が足りない」

「ノーノー違う違うそうじゃない」

 

これである。なんか5回も否定はいられたんだけど。

 

「ブレインストーミングは相手の意見を否定しないんだ。どうやって可能にするか、それを皆で話し合うんだよ」

 

はぁ、ダメだ。こいつらは言葉遊びに夢中過ぎて、気付いていない。本来ブレインストーミングは4つの原則がある。『結論厳禁』『自由奔放』『質より量』『結合改善』。だから、海浜総合の生徒会のブレストはあながち間違っていない。この原則に則って会議をしている。

 

だが、それだけだ(・・・・・)

 

中身が全く無く、ただただブレインストーミングを楽しんでいるだけ。ただその気になって、勝手に自己満足して、停滞していることすら気付かないまま、悪戯に時間を弄している。

 

「じゃあ、一旦休憩入ろうか」

 

ここでイライラしていたってしょうがない。少し頭を落ち着かせよう。

 

 

「大丈夫八くん?疲れてない?」

 

風音はそう言って、俺の顔を覗き込みながら、頭を軽く撫でた。ああ、疲れが一瞬で吹き飛びそうだぜ。

 

「どうする?」

「私たちの提案も、普通に忘れられてる気がする…」

「ああ、おそらくな」

 

果たして俺らはここにいる意味があるのだろうか?いや、ない。俺らの否定発言はすべて一蹴されるのだから。

 

「ねえ、比企谷」

「どうした?折本」

 

そこへ現れたのは、今回のイベントで生徒会のお手伝いとして来ていた、元クラスメイトの折本がやってきた。声音だけで、うんざりだという事がすぐわかる。

 

「なんか、発言すら許されないような状況だったよ」

「まさしくその通りだね」

「かおりも大変だね…」

「同情するなら知識をくれ…」

 

折本と会議への不満を漏らす俺ら。いつの間に凛と飛鳥も折本と仲良くなってるし。本当怖いわ。そのコミュニケーション能力。同情するならそれをくれ。

 

そんな下らない事を考えながら、玉縄を横目に見ると、少し違和感があった。

 

何やらチラチラとこちらを見ている。いや、正確には……折本か?そして今度は俺の方へ視線を向け、すぐに戻した。

 

今の玉縄の目は俺の知っているものだった。昔散々見てきて、散々向けられ、慣れたもの。『嫉妬』だった。

 

…………なるほどな。そういう事か。

 

「お前ら、耳かせ。いい事思いついたぞ」

「八くん、その笑み、不気味だよ……」

「比企谷、凄い悪い顔してるよ……」

 

 

 

「へぇ、ウケる!面白いじゃん」

「い、いいのかな?それやっても」

「大丈夫だと思うよ。八くんだから」

「風音もその八幡に対する信頼度、最早狂気だよ!」

「でも、楽しそうじゃん!やるだけやろう!」

 

俺の考えた作戦に、全員が快く引き受けた。はっきり言って物凄い大胆だけど、イベント成功にはこれしかないと思った。今この作戦を実行したら、後は玉縄達次第になる。

 

まぁ、本音を言えばこれがやりたいだけだ。

 

「じゃあ、ブレインストーミングの続きを始めようか」

 

玉縄が毎度同じ挨拶で、ブレストを始めようとした瞬間、俺は立ち上がって

 

「あぁ~、やってらんねぇ。俺ら帰るわ」

 

と、けだるげな声で、目を濁らせながら、言い放った。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

前書きのバイトから帰ったら、犬が一匹増えてました。今回も知らぬ間に飼われてて草。

また次回。

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