俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

28話突入。

新章スタートという事で、少し文章の雰囲気を変えました。

それではご覧ください。


28話:俺と彼女の新生徒会スタート

第二章への幕開けという事で、引き続き生徒会室を漁る。

 

まず、テレビに冷蔵庫、これは茶を飲むときのポッド。生活用品も豊富にある。ショーケースの本棚には文豪の小説や参考書。賞状やトロフィーが飾られている。ファイルには文化祭や体育祭、遠足や修学旅行、さらに生徒会議事録の書類がまとめられている。

 

「なんか、私物みたいなものもある」

 

パラパラと色々書類を目に通していると、横にいた凛がブックカバーのついた本を見ながら呟いた。凛がそのカバーを外すと、女の子のキャラが描かれている表紙、ライトノベルだ。絶対私物だ。逆に学校側の物だったら引くわ。しかも、見事に全巻揃っている。

 

「これ、持って帰らなかったのかな?」

「何でだろうな?結構分厚いブックカバーだから、大事な物だと思うんだが・・・」

 

何か事情があってここに置かせてもらってるかもしれない。そう思った俺達は、この本は大事に保管することにしよう。・・・・読んで大丈夫かな?

 

「でも、所々に私物があるよ。生徒会って結構自由なんだね。さすが書記の席。ペンが豊富」

「副会長席はパソコン置いてあるよ。これは私物じゃないと思うけど、よっぽどやる気があったんだね」

 

どうやら、それぞれの役職ごとにそれに合った私物を持ってきていたようだ。

 

それじゃあ俺の席にも何か隠されてるかもしれない。そう思った俺は、会長席の周りを漁り始める。・・・お?何か厚い本が出てきた。

 

『部下を従わせる100の方法』

 

きっとかなり前の生徒会長の私物だろう。城廻先輩がこれ読んでたら怖すぎる。しかも従わせるって・・・。この時の会長が独裁主義者だったのか、はたまた他の生徒会役員が好き勝手してたのか・・・。凄いどうでもいいな。

 

「じゃあお前ら、一旦座ってくれ」

 

着席の合図を出すと、即座に座った。あ、何だろう、この初めて味わう感じは・・・。改めて長になったと実感できる。

 

「生徒会って、何するんだ?」

「八幡知らないの!?」

「いや、学校の行事に携わることくらいは知ってるぞ。ただ、それ以外は何してんだろうって気になってな」

 

ほら、アニメとかの生徒会って仕事ないときも集まって遊んだりしてるからさ、気になっていたんだ。現実だと何もない日は普通に帰ると思うんだけど。

 

そのことを話すと、うーんと顎に手をやって考えている。

 

「折角私達だけの部屋ができたんだし、好きなだけ喋りたいよね」

「そうだね。楽しそうだから、無い日も皆で集まろっか」

 

生徒会室私物化決定の瞬間であった。飛鳥と風音の意見により、特に仕事がない日や事情がない日も集まることになった。こんな緩くていいのか生徒会・・・。それに、そもそもそんな会話するほど話題とかネタあんのか?いや、愚問だったな。女子高生が話題を尽くすことなんてないと思う。最近の女子高生は小さなことでも騒げるのだから。頑張れ作者。

 

 

 

物漁りも終わったため、席に着いたものの、何をしようか?

 

「へえ、可愛いね!」

「でしょ?気に入っちゃったんだ」

「凛に似合ってるよ」

 

そんなことを考えているうちに女子だけで会話に花を咲かせている。やっぱ同性同士のほうが色々と盛り上がるか。特に女子高生は色々な物に手を付けてるからな。

 

今となっては邪魔者でしかない俺は椅子をくるりと半回転させ、後ろの窓に向けた。今日は曇りだな。外は寒いかもしれない。運動部は今日も頑張ってるなぁ。頑張れ彩加。葉山も走り回ってるな。・・・ん?あれ?一色か?サッカー部のマネージャーだったのか。そういや、あれからどうしたんだろうか?まぁいっか。

 

ちらっと後ろに目を向けると、凄い盛り上がっている。俺はこの時、完全に空気と化した。

 

「・・・」ドロドロ

 

別に寂しくないから。今までだってこういう空気化なんて日常茶飯事だったんだから、慣れっこ慣れっこ。1人でいる時間が減ったから、耐性低くなったなんてことないから。寧ろ久々の孤独感で結構気持ちがいい。

 

俺は机の引き出しに何故か入っていた折り紙で、ペガサスを作り、風が吹いた瞬間に遥か上空へ飛ばした。やはり羽も動かないし、体の軸もずらせないから普通に飛んでいく。紫と黒の混合ペガサスだ。拾ったものは忽ち不幸をもたらす。呪いあれ・・・。

 

しばらく運動部の活動風景を眺めていると、彩加がこちらに気づき、手を振ってくれた。俺も振り返す。じゃあ、今からそっち行くわ。

 

窓を開け、俺が窓に手と足をかけると、彩加が目を見開いて、腕を勢いよく振り、早まらないで!とでも言いたげな表情と涙目で訴えている。・・・可愛いな。その反応癖になりそうだ。

 

「八くん、この後・・・って、何してるの!?早まらないで!」

「八幡!ストップストップ!飛鳥窓閉めて!」

「よいしょ!」

 

風音に横から抱き着かれ、凛に肩を掴まれ、飛鳥は窓を閉めた。そうですよね。同じ部屋にいる奴が突然3階の窓に手足ついてたら、そりゃビビるよな。本人そんな気さらさらないのに。

 

「どうしたの八幡!いきなり自殺衝動に駆られたの?」

「いやぁ、外に彩加がいたから、ついな。ロットアイしてるから大丈夫なんだが・・・・」

「もう~、それでも心臓に悪いからやめて」

 

と、風音に顔を近づけられ、注意された。ちょっとでも前に進んだらキスできそう。

 

「わりぃな。それで、何か俺に用か?」

「うん。この後皆でご飯行こうってことになったの。皆生徒会役員になれたお祝いにって」

「いいんじゃねぇか。じゃあ彩加も誘おうぜ。ちょっと声かけてくる」

「だから窓から行かないの!」

 

そーらをじゆうに、とーびたーいなー♪。って頭の中で流しながら、飛び降りてみたかったなぁ。

 

 

校舎から出て、彩加がいるテニスコートに向かう。

 

「あ、八幡、皆。どうしたの?」

「おう、彩加。風音達が今日飯行こうって言いだしてな。彩加も行こうぜ」

「本当!うん、行くよ。そういえば八幡!何で急に窓から飛び出そうとしてどうしたの!?ビックリしたんだから」

 

持っていたラケットを鼻先に突き付けながら、ムッとした表情で問われた。それに関してはなにも返せません。彩加、怒ると怖いんだな。

 

「知ってるか?地下に住んでいる人間は空を飛ぶことを夢見てるんだ」

「分かった?」

「はい」

 

渾身のカッコつけた言葉を送ったが、彩加の怖い笑顔で一蹴されてしまった。

 

完全下校になったら校門で待ち合わせする約束とし、俺はマッカンを買うため1人自販機に向かった。

 

「あ、先輩」

「・・・・・・・・・え?俺か?」

「そうですよ。ここ先輩しかいませんから」

 

確かに周囲を見渡しても誰もいない。突然横から話しかけてきたのは、一色だ。サッカー部が練習で着ているビブスの入った籠を抱えている。

 

「まだお礼言えてませんでしたね。会長の件はありがとうございました」

「そりゃどういたしまして。俺もお前に会長になられたら困ってたからな」

「なんですか?もしかして私が会長になったら会える時間がないって遠回しに言ってるんですか?ごめんなさい会って間もないのにそれは気持ち悪いですドン引きします」

「お前、面白いな。安心しろ。俺には生涯を共にする最愛の彼女がいるんでな。お前なんて眼中にない」

「あー、新島先輩ですね。・・・それにしても、眼中にないはさすがに効きましたよ」

「逆に眼中にあったらそれこそ気持ち悪いだろ・・・。じゃあな。精々葉山に振り向いてもらえるよう頑張れよ」

 

マッカンを片手に、手を少し上げながらその場をクールに去る。

 

「ば、ばれてる・・・何者?」

 

 

生徒会室の前に着くと、何やら中が騒がしい。というか悲鳴が聞こえる。なんだなんだ?と思い、恐る恐るドアを開けると、新聞紙を丸めた棒を持つ飛鳥、ファイルで何かを叩く体勢の凛、ゴミ袋を抱える風音。なんだこれ?俺がいないこの数分間に何故こんな異空間になったのだ。

 

「あ、八くん!アレが!」

「アレって?」

「G!」

 

成程。あの名前すら声に出したくないという、あの醜い生物ですか。コードネームG。ただいま俺が捕獲いたします。

 

「あ、出てきた!」

 

飛鳥が声を出した方へ行き、ゴキブリを見つけた瞬間、即座にそいつをつまみ上げた。こいつは素早過ぎるからな。見極めが大事なんだ。それとさ、俺がこいつを掴んだ瞬間、皆俺から逃げたよ。いや、気持ちはわかるけど。なんか複雑だな。

 

こいつもこいつで大変なんだよ。餌を求めてやってきただけなのに、その醜い姿と醜い動きのせいで、見られただけで殺されてしまう。

 

「可哀想に。危うくその尊い命が失われるところだったな。ほら、マッカンもってけ。大丈夫だ。お前のしぶとさならこれだけで何年もやっていける」

 

さすがにマッカンはあげられないので、自然に返してやった。頑張って生きろよ。

 

「私、ゴキブリにここまで感情移入してる人初めて見たよ」

 

凛が小さい声で言ったが、ちゃんと聞こえた。俺はドラクエでも作戦は命大事に、だったからな。だって死んだ時点でゲームオーバーなのだから。生きている限りは抗え続けられる。どんなことにもな。

 

皆が落ち着いたところで、G出現により散らかった物などを整理し、再度席に座った。

 

「さて、まだ完全下校まで1時間あるが、何をする?」

「今のうちに生徒会の決まりとか掟みたいなもの決めた方がいいんじゃない?」

「それいただき」

 

風音の意見により、早速お互いに意見を出し合う。なんか生徒会っぽくなってきた。

 

・・・・・・・・

 

40分にわたる意見を出し合った結果、俺らの生徒会での掟が決まった。途中から雑談になっちゃったけどね。話題転換力が凄まじい。

 

1『先代も結構持ってきてるから、私物持ち込みOK』

 

2『会長と副会長のイチャイチャはほどほどに』

 

この2つを主に守り、生徒会活動をやっていこうという事になった。なんだよ2つ目・・・。ちなみにこれ提案したのは飛鳥だ。

 

『不純異性交遊は認めません!』って指さされて言われた。さすが姉御肌の飛鳥だ。別にする気ないのに・・・。俺と風音は、愛の王道を行く。

 

 

完全下校が目前のため、俺達生徒会は校門で彩加を待つ。

 

「そういや、どこ行くんだ?」

「そういえば決めてなかったね」

「うーん、折角だから焼肉とか?」

「焼肉か・・・。じゃあそこにしよっか。八くんもいい?」

「問題ない」

 

10秒もしないで、焼肉に決まった。久しぶりだな焼肉。・・・・思い出す。中学の時、遅くに家に帰ったら家族は俺だけ置いて焼肉を食べに行ったんだ。ショックだったが、風音の家で飯を食えたから、それは焼肉よりも価値があった。あの時の風音は、親の前でも普通に食べさせようとしてたんだ。食べたけど。

 

「おまたせー」

 

部活が終わった彩加と合流したため、近場の焼肉店に行くことに。叙々苑は学生じゃ無理だから赤門だ。

 

 

焼肉店って、近づいただけで匂いがして食欲が増してくるんだよな。

 

店員に案内され、お座敷型の席に座った。

 

適当に肉をたくさん凛が注文し、先にドリンクがきたので、乾杯をすることに。ここにはマッカンなんて無かった・・・。

 

「じゃあ、会長の八くん。乾杯の音頭」

「え?・・・・じゃあ、乾杯・・・」

「普通だ」

 

うるさいぞ飛鳥。普通が一番だ。俺が一番色々普通じゃないけどね。

 

「八幡。生徒会長就任おめでとう」

「おう。サンキュー、彩加」

「まさか八くんが会長になるなんて、今まで思っても無かったよ」

 

風音の言葉で昔の事を思い出す。昔の俺が高校では生徒会長をやるなんて言われても信じられないだろうな。あの頃は風音と家族以外はどうでもいいと思っていたし。

 

「ありがとな。お前らに出会えてよかったわ」

「どうしたの!?八幡らしくない!」

「八幡がイケメンな事言ってる!全然似合わない」

 

ひ、ひでぇ・・・。自分でもこれはさすがになぁ、って思ったけども。これが一番だと思ったんだよ。感謝の言葉は遠回しにしてはいけないんだ。

 

「ありがとうございます♪」

 

俺達が色々話している間に、彩加は届いたお肉を店員さんから受け取っていた。そして次々とテーブルに乗せていく。・・・・凄い量だ。

 

「じゃあ、取り敢えず食うか」

「そうだね。美味しそう♪」

 

 

 

焼肉というのは、焼く係と取る係というのは定められていない。誰かが焼いて誰かがとる。不平等に見えて実はそうでもないんのだ。互いが焼き合い、譲り合う。不思議と焼肉だと平等が成立するのだ。

 

ただ焼肉にも気を付けなくてはいけないことがある。それは食中毒だ。何年か前はユッケが原因になり、販売停止となった。そして、生肉を掴んだトングで焼いた肉をとったことで菌が付着し、食中毒を起こした事例がある。最悪死に至る。そのことは前もって風音達に注意した。役員の身体を気遣うのは会長の務めなのだよ・・・。

 

そんなことを考えながら、俺と風音、飛鳥は目の前の光景に戦慄している。何故かというと・・・

 

「あ、店員さんおかわりください」

「あ、僕も」

 

凛と彩加の食いっぷりがとんでもない。これで白米4杯目だ。横浜の時はそれなりに食うんだな、とは思ってたが、ここまでくるともはや恐怖だ。

 

「八くん、あーん」

 

この状況でもやるんですね・・・。ありがたくいただきますよ。

 

 

 

「じゃあ、明日から生徒会頑張ろうか!」

 

おー!っと俺以外手を挙げて意気込んだ。

 

「彩加も遊びに来ていいからな。」

「うん。じゃあたまにお邪魔するね♪」

 

 

彩加たちと別れ、俺と風音は肌寒い空の下、帰路に就いている。

 

「八くん、頑張ろうね」

「おう」

 

一言会話をし、お互い家に着いたため、また明日と風音に挨拶をしようとしたら、風音が勢いよく抱き着いてきた。そして、自分の唇を俺の唇に重ねた。

 

「頑張れるおまじない♪じゃあね八くん」

「また明日な」

 

もうこれだけで5年は頑張れそうだ。

 

こういう愛情表現は常にやると特別だと感じられなくなると言われているが、そんなことはあまりないんじゃないかと思う。幸せだと感じられるなら、それはもう特別なのだから。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

さて、ここからが鬼門です。サブタイトルに、話のネタ。オリジナルが多めだから頑張ろう!

また次回。

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