俺と彼女のハイスクールライフ   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

23話突入。

さあ、あの由比ヶ浜にとどめを刺します。

それではご覧ください。


23話:俺と彼女の依頼オップゼット

俺にとって、やらかしてしまった体育祭から、幾日が経った。当然俺は教師とかに呼び出され、何故折れたのか聞かれた。もちろん適当に嘘をでっち上げた。腐ってたんでしょう、ってね。あの棒が木製で良かったわ。どうやら、アレは森林を所有している主さんからいただいた木らしく、腐っててもおかしくないという事で、平和に終わった。

 

教室に戻ると、旅行雑誌を広げながら、楽しそうにワイワイしている連中がちらほら。もうすぐ修学旅行があるのだ。場所は京都。まだ当日まで2週間もあるというのに・・・。

 

呆れている俺も、実はとても楽しみにしている。京都は好きだし、寺巡りもしてみたかったから、少し浮かれている。

 

ちなみにグループはいつもの4人。なんか俺といてばっかだったから、他の女子とは組まないのかと聞いたら、八幡と彩加と一緒の方が楽しい、との事だ。修学旅行は3泊4日でその内2日間はグループと過ごし、最後の3日目は自由という何とも嬉しい企画だ。その日は風音と2人きりで京都を巡る。実はこれが一番楽しみだったりする。

 

 

放課後。奉仕部は絶賛活動中。俺はいつものように本を開いて、たまに風音と話しているが、今は違うことに意識を持っていかれている。

 

俺は、実はあることに挑戦しようかと考えているのだ。高2になって、自分でも分かるほど、俺は変わった。人間嫌いな俺だったが、友達を()、人前で活躍し、クラスの奴らからも少しは認められた。

 

そんなまだ半年も経っていないというのに、俺の心境はもう180度変化した。だから、俺は新たな挑戦をしたいと思う。それもこれも全部、風音や彩加、凛や飛鳥のおかげかな。

 

コンコン

 

と、色々考えていたら、依頼か。さて、今日はどんな面倒ごとかな。

 

雪乃「どうぞ」

 

入室許可が出され、扉を開き、姿を現したのは、皆も驚く意外な人物。戸部と大岡、大和の3人だ。そしてそのリーダーである葉山が同行していない。

 

雪乃「それで、何の用かしら?」

 

おお、全く興味を示していないような口調だ。

 

雪ノ下がそう聞くが、中々話を切り出さず、なんかヒソヒソと耳打ちしている。戸部はいつものようにやべーやべー言っているが、大岡と大和はほら言えよ、と戸部を後押ししている。どうやら今回の相談者は戸部らしい。

 

戸部「あのー、実は相談があって」

 

気恥ずかしく、頬をポリポリと掻きながら、言い淀んでいる。いつものべーべー口調じゃないから、きっと大事なことなんだろう。全く似合わない。

 

戸部「実は俺、ずっと海老名さん、いいなと思ってて。修学旅行で決めようと思ってるんだ」

 

結衣「え!?マジ!?」

 

真っ先に反応したのは、由比ヶ浜だった。

 

戸部「マジだ。それで、その告白のサポート?的なのをお願いしたいんだ」

 

八幡「いや、告白にサポートなんていらないだろ。そのまま好きですっていえばいいだろ?」

 

雪乃「私は、告白というのはよくわからないわね」

 

戸部「いんやあ、それがちょっとできそうにないから、協力してほしいんよ。オナシャス!」

 

風音「でも、告白のサポートなんて逆に何していいか分からないよ・・・」

 

風音も渋々の様子。確かに、告白というのは一種の想いの押しつけ行為だ。告白行為は一対一で成立する。他者の干渉など、必要ないし、逆にあってはならないと思う。せいぜい応援くらいしかすることがないだろう。

 

雪乃「普通に告白すればいいじゃない」

 

八幡「そうだそうだ。当たって砕けろ」

 

戸部「ちょっ。皆きついわー。俺砕けたくないわー」

 

じゃあ、そんな事頼みに来るなよ。フラれる覚悟もない奴がよ。それでフラれて俺らのせいにされちゃたまったもんじゃない。

 

雪乃「悪いのだけれど、私達では解決できそうにないわ。だから、葉山君や友達に」

 

結衣「ええー!いいじゃん!やってあげようよ!」

 

雪ノ下が、この依頼の難易度をよく知ったうえで、戸部の依頼を受けないよう拒否しようとしたとき、由比ヶ浜が口を割ってきた。

 

八幡「いや、よく考えてみろよ。同じグルーp」

 

結衣「でも、最近依頼なんてなかったし。やろうよ!」

 

こいつにとってもかなり重要なことを言おうとしたのに、由比ヶ浜の勢いで消し去られてしまった。

 

戸部「え?マジで!やってくれるん?」

 

結衣「うん!戸部っちも頑張ってね!」

 

戸部「おう。も、もう緊張してきたけど頑張るわ!」

 

と、言い残して戸部たちは帰ってしまった。・・あーあ、随分マズいことになってしまった。そして、このことに全く気付かない由比ヶ浜はもっとマズい。

 

雪乃「由比ヶ浜さん、貴方勝手に」

 

結衣「やー、サポート何してあげようかー」

 

ダメだこいつ。後先を全く考えずにこんな依頼を受けたんだ。空気の読める奴だと思ってたけど、何故色恋沙汰で重要なことを忘れるんだ。

 

由比ヶ浜の勝手もそうだが、何よりも落胆したこともある。

 

八幡&風音「(3日目のデート、楽しみにしてたのに・・・)」

 

 

 

 

戸部の依頼からしばらく経ち、勝手に依頼を受けた由比ヶ浜は雑誌を開きながら、複雑な表情をしている雪ノ下と話している。一方俺と風音は落胆しながらも、京都ではどう過ごすとかで話をしている。

 

そして、コンコンと本日2回目のドアノックが発生した。

 

雪乃「どうぞ」

 

姫菜「失礼しまーす」

 

この訪問者に奉仕部一同、驚きを隠せなかった。ついさっき戸部から告白依頼が来て、その告白対象が同じ日にこちらに来たのだ。

 

結衣「姫菜!どうしたの?珍しい」

 

姫菜「ちょっと相談があってね」

 

由比ヶ浜が席に促し、しばし時間をおいて落ち着き、本題に入った。

 

姫菜「実はね、とべっちの事なんだけど・・・」

 

結衣「ととと、とべっちがどうしたの!?」

 

おっと、これはもしや、戸部まさかのハッピーゴールか。・・・・・・・なわけないな。海老名の表情を見るに、どうやら俺らと同じ心配をしているんだな。

 

姫菜「最近隼人君とヒキタニ君が仲良すぎて、とべっちや大岡君や大和君がジェラシーの炎が燃え盛る!私はもっとドロドロの爛れた関係を目に焼き付けたいのに、これじゃあヘキサゴンハートが台無しだよ!?」

 

静かな部室に、海老名だけの心の叫びが響いた。それと同時に、冷たい空気が部室を覆う。

 

雪乃「えっと、もう少し、分かりやすく説明してくれるかしら」

 

姫菜「・・・なんかね、最近グループが変わってきてるなーって感じてね」

 

海老名は、憂いを帯びた声でそう言い、顔を少し下に向けた。

 

風音「でも、どこだってそうじゃない?変わらない関係なんて、作ろうと思って作れる物でもないし」

 

姫菜「うん、そうなんだけど。・・私はこの関係をもう少し続けたいと思ってるの。ただ仲良くやってたい。それだけ」

 

その言葉を耳にした瞬間、風音はハッと、何かに気づいた様子。雪ノ下も何か勘付いたのか怪訝な顔をしている。由比ヶ浜は、分かってないなこれは。表情を全く変えてないし。

 

姫菜「それじゃあ、よろしくね」

 

俺達の返答も何も聞かず、去ってしまった。

 

 

 

風音「八くん、今の話」

 

雪乃「もしかして」

 

八幡「チッ、面倒なことになったな」

 

結衣「え?どうしたの?」

 

いやどうしたの?じゃねぇよ。今ので何故気付かない。そしてお前が勝手に依頼を受けたせいで余計面倒くさいことになってるんだぞ。

 

八幡「簡単に言えば、海老名は戸部の好意に気づいてる。そして、戸部を告白させないでほしいって言って来たんだよ・・・」

 

結衣「そ、そんな・・・」

 

風音「しかも戸部君の告白サポートも受けちゃったし・・・」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、もう少しよく考えてちょうだい。戸部君の依頼内容はあんなに軽々しく受けていいものじゃないでしょう」

 

結衣「ご、ごめん・・・・・」

 

八幡「・・・ちょっと戸部の所に行ってくる」

 

風音「どうするの?」

 

八幡「ちょいと話すだけだよ。悪いが一対一で話がしたい」

 

そう言い残して、俺は戸部がいる校庭へと向かった。

 

 

戸部に話を聞くため、サッカー部の下へやってきた。今は練習中なので、しばらく待とうとしたら、葉山が俺に気づき、部員に断りを入れて俺の所に駆け寄ってきた。・・・いや、用があるのはお前じゃない。

 

隼人「どうしたんだ?君がここに来るなんて珍しい」

 

八幡「ちょっと戸部に用があってな」

 

隼人「珍しい組み合わせだな。分かった、呼んでくるよ」

 

あ、そうだ。ついでにこいつにも聞いておこう。大岡や大和が知っているなら、こいつも知ってておかしくない。

 

八幡「葉山は、戸部が海老名に告白することを知ってるのか?」

 

隼人「・・・そうか。君たちの所の来たんだね。ああ、知ってるよ」

 

八幡「何もしないんだな・・・」

 

隼人「最初は止めようとしたけど。戸部も本気らしいし。それに、君の言った上っ面だけの関係なんかじゃないって、証明したいってのもあるからね」

 

成程。葉山は自分のグループを信じて、戸部達に何も言わなかった。告白程度では変わらない、と。じゃあ、今のグループを信じ切れていないのは、海老名というわけか。

 

隼人「俺がこう思っているのは、君のおかげかもな」

 

八幡「俺、何もしてないんだが。・・まぁいい、それよりも戸部を呼んできてくれ」

 

隼人「分かったよ」

 

葉山は、戸部は本気だと言っていたから、いいかなとは思っていたけど、念には念をだな。

 

戸部「おーっす。ヒキタニ君!」

 

八幡「ちょっと聞きたいことがあってな」

 

戸部「お~ー何々!もしかして、あの告白の事?」

 

八幡「そんなところだ。・・・本気なのか?」

 

戸部「あー、そんなことかー。・・・・・本気だ」

 

ッ!・・・こいつ、急に態度と雰囲気を変えやがったな。さっきのようなふざけた口調とは正反対と言ってもいいくらいに、目は真剣そのものだった。

 

戸部「俺さ、こういう性格だから、結構軽く見られちゃうーとか思われるわけよ。でも、今回は大マジなんだわ。隼人君や大岡に大和も背中を押してくれてるし。・・・それに、俺は卒業までにはケリを付けたいと思ってる」

 

今の戸部は、お調子者ムードメーカーではなく、決意を固めた1人の男だ。誰にも折ることのできない、そんな強い想いが、目の前の男にはある。

 

面白い、見せてもらおうか。その覚悟を。

 

八幡「分かった。頑張れよ」

 

戸部「おう!よろしく頼むべ」

 

戸部はそう言って、サッカー部に戻っていった。

 

何が告白ヘルプミーだよ。そんなもの、今のお前には必要ないじゃねぇか。・・・けど、海老名は告白を避けるために、何か考えてる筈だ。この点については多少考える必要があると思う。

 

海老名監督、悪いがあんたの言う通りにはできない。

 

 

八幡「うーっす」

 

風音「あ、八くん。どうだったの?」

 

八幡「そうだな。2つだけ言っとこうか。まず、戸部のサポートはほとんど必要ないと思う。次に、海老名の言う気まずくなるっていうのは、完全に無視する」

 

雪乃「無視していいのかしら?それに戸部君のサポートだって・・・」

 

八幡「戸部の覚悟は相当なものだ。それを邪魔するのはあまりにひどすぎる。海老名にはこの事を明日説明する」

 

結衣「でも、もし気まずくなっちゃったら」

 

八幡「元々お前の身勝手な行動で、こんな面倒なことになったんだろう。そんくらい受け止めろ」

 

結衣「っ!・・・」

 

雪乃「それじゃあ、戸部君へのサポートは最低限と言っていいのかしら?」

 

八幡「そうだな。・・・じゃ、帰ろうぜ、風音」

 

これで、風音と京都デートができる!

 

 

翌日の昼休み。俺は海老名のいる葉山グループに向かう。

 

八幡「海老名、ちょっと話がある。あの時の依頼についてだ」

 

姫菜「っ!・・・分かった」

 

葉山達は何も知らないのか、不思議そうに首を傾げている。そして、話し合うためどこかに行こうとすると、金髪ドリル女帝に止められた。

 

優美子「あんさー、姫菜になんか用なの?ここで話してもよくない?」

 

八幡「悪いが他言無用の内容なんでね」

 

姫菜「じゃあ、行ってくるね」

 

 

 

 

 

 

八幡「よし。ここなら誰も聞き耳をたてないだろう」

 

話し合うためならここが一番いいと思い、屋上へとやってきた。

 

八幡「んじゃあ、早速本題に入らせてもらう。昨日の依頼なんだが・・・」

 

姫菜「気付いてたんだね」

 

八幡「ああ。寧ろ由比ヶ浜以外全員勘付いてたぞ。・・・・そんで、戸部には絶対に告白させる」

 

姫菜「そんな・・・」

 

八幡「グループが気まずくなる?そんなことで男の一世一代の告白を無碍にするのか?そんなことは許さない。戸部は本気なんだ。しっかり受け止めやがれ」

 

俺らしくもない。大きな怒気を含んだ声で、依頼を却下した。

 

姫菜「でも、今まで通り仲良くは・・・」

 

八幡「葉山は信じてるんだぞ。告白程度では変わらないってな。・・・あんただけだ。今のグループを信じていないのは」

 

姫菜「隼人君が・・・。そう、私だけなんだ」

 

八幡「戸部の告白を受けろ。例えそれで気まずくなっても、受けなかった時の方が、もっとひどい事になる。戸部の覚悟を無駄にはするな」

 

そう言って、俺は屋上から去り、まだ食していない風音お手製の弁当を、ベストプレイスにて昼食をとった。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

オップゼット=opposite=正反対

また次回。

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