21話突入。
アンチ・ヘイトタグをつけようか悩んでいます。
それではご覧ください。
めぐり「お前ら、文化してるかーー!」
「おおおおおおお!!」
めぐり「千葉の名物祭りと?」
「踊りいいぃぃぃ!」
めぐり「同じアホなら踊らにゃ」
「シンガッソーーーーーー!」
総武高生徒会長の城廻めぐり先輩による、なんだこれ?と俺に思わせた謎のコールによって、文化祭が開幕した。いやぁ、文実間に合ったんすね。良きかな良きかな。さて、俺も衣装に着替えて、劇に備えよう。
めぐり「それでは、文化祭実行委員長のお話です。どうぞ」
そう言われて、相模はステージ中央へ歩き出す。表情は石のように固く、歩きも緊張のせいかとてもぎこちない。
そして、相模が一声上げようとしたその瞬間。
きーーーーん
と耳につんざくハウリングが発生。あまりのタイミングの良さに観客からドッと笑いが起こる。
彼らの笑いに、嘲笑などという悪意はないのだろうが、相模の立場からしたら、緊張と孤独に耐えている状態なのだから、その笑いの意味が分からない。
その証拠にハウリングが収まっても、喋ろうとしない相模。
めぐり「・・それでは気を取り直して、文化祭実行委員長の挨拶です。相模さん、お願いします」
城廻先輩のフォローにハッとした、相模はポケットから紙を取り出し、そこに書かれていることを読もうとしたが、それを落とし、再び観客を笑わせる形となってしまった。
相模の顔を見ると、文実の仕事の時よりも酷くなっていた。
◆
午前に2回公演で、午後も2回やる予定だ。昼休みはちゃんと取らせてくれるとの事。その間に、風音のいるJ組に行こう。
八幡「うわぁ、すげぇいる」
何と意外にも客足がいい。ほとんどが女子生徒で、手には見覚えのないパンフレットが握られている。おい、なんだあれ?肖像権の侵害じゃないのか?
隼人「頑張ろうな、ヒキタニ君」
八幡「はぁ・・」
凄く今更なんだが、何でこいつなんかと・・・。
八幡「ぼくと一緒に遊ぼうよ。僕は今凄く悲しいんだ」
すると、俺にスポットライトが当たり、それを見た客席の女子は、多少のざわめきを見せている。そ、そんなにおかしいかい?捉え方によっては我泣くよ?
隼人「君とは遊べないよ。・・・俺は飼い慣らされていないから」
はい、割愛します。この作者は星の王子様を読んだことがないので。
ふぅ、取り敢えず午前は終わった。これから、休憩に入る。
凛「お疲れ!」
飛鳥「お疲れ、八幡。よかったよ!」
八幡「おう、ありがとな。んじゃ、風音の所に行ってくるわ」
動きやすくするため、衣装を脱ごうとしたところ、海老名監督に止められてしまった。
姫菜「そのままで過ごして」
八幡「いやいや、さすがにこの格好じゃ出歩けないって」
姫菜「ヒキタニ君、君ってほかにも役職あったよね?」
八幡「ああ、確か宣伝・・・ってまさか」
後は言わなくてもわかるよね?って笑顔に気圧されて、そのままの姿で俺はJ組に向かうことにした。
現在俺は廊下を歩いている。あちこちから視線が、針のようにチクチクとぶっ刺さってくる。
「あ、あの~・・」
八幡「はい?」
突然話しかけられ、振り向くと、総武高の制服ではない女子3人組がいた。おそらく、ここを受験する中学生だな。
「よろしければ、一緒に回りませんか?」
八幡「いや、俺は彼女の所に行かなくちゃいけないから、それはできない。悪いな」
「あ、彼女さんですか・・。はい、わかりました」
そう言うと、その女子たちはシュンと落ち込んだように肩を落とし、行ってしまった。ちょっとぉ、まるで俺が悪いみたいじゃん。俺は無実だぞー。
再び俺が歩き出すと、さっきまでこちらを見ていた人たちも何故か、肩を落としていた。ねぇ!だから俺は何したんだよ!教えてくれよ!安西先生、彼女らの真意が知りたいです!
「あの、ちょっとお聞きしたいんですけど」
えー、またかよ。今度は何だ?・・ん?この声・・・。
八幡「小町?」
小町「あの、2年Fの教室は・・・・って、お兄ちゃん!?」
小町は目の前の人を実の兄と知った途端、口をパクパクと上下させ、顔を赤くしていた。
小町「ほ、本当に、お兄ちゃん?」
八幡「おう、お前の実のお兄ちゃんだぞ。・・・ってか、何で顔赤いんだ?」
小町「お、お兄ちゃんカッコよすぎる・・・」
八幡「お、マジで。サンキュー」ナデナデ
シスコンの俺は妹にカッコいいと言われただけで、ご機嫌になり、つい癖で頭を撫でた。でも、何故かいつもの笑顔とは違い、俺の姿をまじまじと見ている。
そして、小町はそのまま俺に抱き着いてきた。
八幡「こ、小町?」
しかし、それは一瞬の出来事で、すぐに小町は離れ、「楽しみにしてるよ」とだけ言い残して去っていった。
小町「小町、ブラコンになりそう・・・」
何やかんやありながらも、J組に着いた。そこそこ繁盛している模様。
教室に入ると、キャーキャーと女子の悲鳴が響いた。ええ!何で!お、俺はただ愛する彼女に会いに来ただけなのに!酷い!やばい、もう泣く。泣きそうな顔を両手で抑える。
明菜「おー、比企谷君。風音に会いに来たの?・・ていうか何その恰好?いいじゃん!」
八幡「いいわけない。だって、俺が入った途端、悲鳴が・・うぅ」
明菜「いや、それ悲鳴というよりは・・。まぁいいや。風音ー、比企谷君きたよー!」
風音「え?あ、八くん!」
風音は俺の姿を捕らえた途端、こちらに駆け寄ってきた。
風音「?八くん、何で泣きそうなの?それにその恰好・・・」
八幡「か、風音。な、何で俺が入った途端・・・悲鳴が・・・」ギュウ
風音「ちょっ!//八くん、それ多分悲鳴じゃないから。今仕事中だから一旦離そう///」
アニメのように手をバタバタと上下させる風音は、よく見かけるファミレスの制服に、少しフリフリなどの手間が掛けられた、衣装を着ている。うん、何というか、見てるだけで癒される。
八幡「すげぇ似合ってるな。めちゃくちゃ可愛い」
風音「えへへ、ありがとう♪八くんも、カッコいいよ」
八幡「ちょっと派手だけどな。ありがとう」
一華「はーい、2人共そこまで。このままだと、砂糖嘔吐者と嫉妬の炎と落胆者で、この喫茶店が地獄絵図になる」
神崎が俺と風音の間に入り、手で制止をしてきた。そして、神崎の言葉に俺は周りを見ると、既にその地獄絵図は完成していた。
八幡「じゃ、じゃあ風音。また後でな」
風音「うん、またね」
あんまり長くいられなかったが、可愛い風音を見れた。余は満足じゃ。結論、風音は何を着ても似合う。
◆
彩加「あ、八幡。もう戻ってきたんだ」
八幡「ああ、風音のとこに行って来ただけだからな」
教室に戻ると、彩加が売店で買った太いフランクフルトを頬張っていた。できたてなのだろうか、口元から肉汁があふれている。・・・・・ちょっとぉ、誰?今変な想像した人。正直に名乗り出なさい。
飛鳥「あ、おかえり、八幡」
凛「どうだった?風音の様子は?」
八幡「いつも通りだったな。言い寄る悪い虫もいなかったし、取り敢えず、可愛かった」
飛鳥「言い寄る虫って・・・。いたらどうしてたの?」
八幡「そうだな・・・。腕の二本でも折ってたかもな。ははは」
冗談交じりでそう言うと、3人は何故か焦った顔でこちらに近づき
「「「絶対だめだよ!そんなこと!」」」
と、すっごいマジな声で言ってきた。
八幡「冗談!冗談だから、真に受けるな」
俺がそう言いなおすと、「八幡の場合冗談に聞こえない」と失礼なことを言われた。
彩加「そう言えば八幡。何か食べてきたの?」
八幡「あ、そういやなんも食べてなかったな」
彩加「じゃあ、はい。さっき皆で買ってきたからあげる」
そう言って、彩加はたこ焼きを渡してきた。
八幡「悪いな。もらっちまって」
彩加「いいよ♪次も頑張ってね」
凛「そうだよ。劇中にお腹なるとかとんだ恥晒しだよ!」
飛鳥「うんうん、頑張ってね」
八幡「おう。んじゃ、いただくか」
アツアツできたてのたこ焼きを口に入れた。うん、美味い。・・・でも何故かたこが入っていなかった。・・これはあれかな?俗にいうたこなし焼きってやつかな・・・。
◆
午後の劇も失敗はなく、無事に『星の王子さま』はこれにて幕を閉じた。最後は皆拍手を送ってくれて、なんだか清々しい気分だ。こういうのは、悪くない。
そして、文化祭最後の締め、エンディングセレモニーが始まる。最初は有志団体による出し物から始まり、その最後に文化祭実行委員長の話がある。
今ステージでは葉山とその取り巻きがバンド演奏をしている。不思議なことに葉山は王子服のまま演奏している。何で脱がないんだよ、歌って手動かしてその厚着、倒れるぞ普通に考えて。
このステージに熱狂している生徒は、バンド演奏が終わると、アンコールしていたが、時間も押しているため、それは叶わず、最後の実行委員長の挨拶や、賞の発表が始まる。
しかし、いつまでたっても実行委員長が現れない。もしかして俺の予想していた事態が起きてしまったんじゃないか?と思い、辺りを見回していると、由比ヶ浜が雪ノ下と何やら話し合っている。そしてそのまま、ステージ端に行ってしまった。
八幡「はぁ・・・。自分から手伝っておいて、何かあったら頼るんだったら、最初からやらなければいいものを」ドロドロ
そして数分後、葉山が猛スピードで体育館を飛び出そうとしている。ちょっと驚いたな。葉山が実行委員推薦の責任を果たそうとしてることが。
八幡「葉山!」
入り口付近で葉山を足止めした。
隼人「ヒキタニ君!悪いが急いでいる!」
八幡「屋上だ」
隼人「え?何で・・・。まあいい、ありがとう!」
葉山が体育館を出たと同時に、城廻会長からもう少しお待ちくださいとアナウンスが入った。時間は10分くらいしかないだろうし、いくら場所を知ったって説得に時間がかかっちまうかもしれないな。
◆
5分以上過ぎた時間、他の生徒はざわざわと不審がっている中、ドアからは葉山と相模がやっと戻ってきた。汗をかきながら焦燥に駆られている葉山に対して、相模は何故か何とも言えない、暗い表情をしていた。
葉山は相模をステージ上に誘導させた後、俺のもとへやってきた。
隼人「ありがとう。ヒキタニ君」
八幡「別に。間に合ってよかったじゃねぇか。それに、よく連れてきたな」
隼人「相模さんには、集計結果だけもってけって言われたんだけどな。それじゃあダメだって気付かされて」
なんか誰かに焚き付けられたような言い方だな。それに、葉山の表情には暗く、申し訳ないという気持ちが見て取れた。
隼人「ヒキタニ君は、どうして場所が分かったんだ?」
八幡「ただの勘だ。・・・そういや、やけに暗い顔しているが、何かやったのか?」
隼人「はは、分かっちゃったか・・。そうだな、説明するよ」
『ここにいたんだね。相模さん』
『葉山君・・・』
『もうすぐ、エンディングセレモニーが始まる。早く戻るんだ』
『もうすぐって・・。もう始まってるんじゃないの?』
『皆にはしばらく待ってもらっている。だから早く』
『ウチには無理だよ・・・』
『そう言うわけにもいかない。君の持っている賞の集計結果や実行委員長の話だってある』
『だったら、集計結果だけもってけばいいでしょ!その最後の話を他の人にやってもらって!』
この時、俺はもうだめだと思い、本気で集計結果だけ持ってこうとしたその時、ある出来事が脳裏によぎった。
夏休みのボランティアの時の、比企谷の解決方法だ。最初は渋々だったが、選り好みをしている場合ではないと思い、心を悪魔にして、比企谷の案を借りることにした。
『そうか。じゃあ、俺は君が仕事を放棄したという事で報告するしかないな』
『え・・・』
『皆を散々困らせて、待たせて、やりたくないから逃げました。迷惑極まりないな。自分で委員長になっておいて』
『っ・・・。でも、これをもっていけば』
『俺はそれを持って帰るつもりは毛頭ない。・・このままだと、委員長は仕事を放棄し、逃亡したと言わざるを得ないな。それを知られれば、周りから邪険に扱われること間違いなしだ。特に3年生は最後の文化祭なんだから、敵視されるだろうな』
『・・うそだよね・・。葉山君はそんなこと、しないよね・・・』
『勝手な理想を僕に押し付けないでくれるか。はっきり言って、不愉快だ』
『20秒待つ。このまま何もせず、文化祭を台無しにするか。最後まで仕事をやりきるか。選んでくれ』
八幡「はっ、何ともお前らしくないやり方だ」
隼人「でも、ああするしか方法は無かったんだ」
八幡「確かにそうだな。・・・でも、いいのか?ああいう奴は大抵こういうことを言いふらす奴だぞ」
隼人「事実なんだから、気にする必要もないだろう?」
・・・へぇ、面白いな。こいつと初めて会った時や、林間学校のボランティアの時は、こいつは解決じゃなく、ただ問題を先延ばしにし、曖昧に中途半端にさせるような奴という印象だったが。
けれど、所詮それは薄い仮面の上っ面に過ぎなかった。こいつの内に秘められている本性は、まだ俺には分からないが、きっと林間学校で感じたときのように、鋭利な悪がある。そんな気がする。
一方葉山にさんざん言われた相模は泣きながらも、賞の発表や最後の話などをやり遂げた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
葉山はいいやつにするつもりです。屑山とか葉虫とかにはしません。
また次回。