19話突入。
いよいよ、原作では波乱が起こった文化祭です。由比ヶ浜を退部に導くため、原作改変どころか、乖離させてます。
それでは、ご覧ください。
長いようで短い、1ヶ月半の夏休みも終わり、まだ暑さが収まらない残暑の中、時は休み時間明け、現在は9月の上旬。今月開催される文化祭について話をしていた。
粗方個人個人の役職が決まり、残ったのは実行委員の枠だけ。俺は適当な役職にした。俺の仕事は簡単に言えば、クラス企画の宣伝だな。決して、風邪気味で退室し、無理矢理実行委員にさせられるようなことは無いからな。
先生「それでは、まだ決まってない人で、実行委員をやってくれる人はいる?」
しかし、それでも誰も声を発しません。2年F組で静寂な世界が完成している。無限の龍神様が来そうで怖いです。
先生「うーん、じゃあまずは男子から決めます。決まってない男子でジャンケンしてください」
はい、お決まりの展開来ましたー。結局何かを決める時に、じゃんけんを超えるものなんてないんだな・・。
「うわぁぁぁ」
どうやら決着がついたらしい。1人の男子生徒が大袈裟に凹んでいた。
「それでは次、女子で誰かいない?」
再び先生が誰かの希望を聞こうとしたとき
「〇〇ちゃんやりなよ~」
と嫌味ったらしい伸びた声で、他の女子を推薦するような言い方で後ろの女子が口を割った。
「いや、私には荷が重いよ・・」
ふむ、どうやら当の〇〇とやらはやりたくない模様。しかし、後ろの女子の猛攻は止まらない。
「え~。いいじゃん。やりなよ。向いてるって」
「いや、私はやらないよ・・・」
うっわ、あのしつこい女子絶対後に嫌われるな・・。
隼人「僕はむしろ、相模さんの方が向いていると思うよ」
おおっとぉ!ここでまさかの意外な乱入者。葉山隼人だー!。さすが場を取り繕うことに長けている博愛主義者。そこにしびれる憧れはしない!
「え~ウチ?無理だよ~」
出た。大抵こういう反応する奴はまんざらでもないんだ。それにあの人気者の葉山からの推薦なら尚更だろう。
隼人「そうかな?僕は適任だと思うけど・・・」
「う~ん、じゃあ、ウチやってもいいかなー」
先生「ありがとう。では、女子の実行委員は相模さんに決まりました」
◆
さて、久々の部活だ。依頼は来ないと思うけど・・。
八幡「うーっす」
雪乃「こんにちは」
風音「八く~ん」
ふむ、いつもと変わらぬ光景だ。さて、今日も読書に勤しむとしよう。
その後も遅れて由比ヶ浜がきた。何故か複雑な表情をしていたが、何かあったのだろうか?まぁ、いいや、別に。
そして何事も無く時間が過ぎ、もうちょっとで完全下校時間。
雪乃「あの、ちょっといいかしら?」
すると、雪ノ下が突然口を開いた。
雪乃「もうすぐ文化祭だし、クラスの手伝いもあると思うから、部活は休部にしようと思うのだけれど」
八幡「確かにな。他の部活も休んでるとか小耳にはさんだし。そういや風音、J組では何やるんだ?」
風音「うちは普通に喫茶店みたいなものだよ」
八幡「喫茶店か。風音の役職は?」
風音「接客」
八幡「よし、行こう。絶対に行く。ついでに風音に言い寄る悪い虫を排除する」
雪乃「営業妨害になるから、それはやめてほしいわね。それで、休部の件だけど、いいかしら?」
八幡「いいんじゃないか?それに依頼なんてそうそう来ないだろうし」
雪乃「それもそうね。まだ完全下校じゃないけれど、もう暗くなってきたから帰りましょうか。鍵は私が返しとくわ」
結衣「あ、私も一緒に行く」
八幡「じゃあな」
風音「またね」
コンコン
「ん?あれ?いないのかな?」
八幡たちが帰って数十分後、奉仕部の部室にある人物が訪れていた。しかし、八幡や雪乃はそれに気づくことは無かった。
◆
これからは文化祭まで、5,6限は文化祭準備に費やすとのことだ。授業大丈夫なのかな?一応進学校だから、周りよりも進みは早いけど。
そして文化祭準備に入ろうとしたとき、葉山グループの1人である、あの、なんだったっけ?腐女子だってことはわかるんだけど、まぁ、いっか。そいつは生徒一人一人に企画書が配った。・・えげつない紙の束だ。あ、名前書いてあったわ。えーと、海老名姫菜ね。そこに書かれていたのは
企画:『ミュージカル 星の王子さま』
王子役:葉山隼人
ぼく役:比企谷八幡
八幡「待て待て待て待てちょっと待て。何故俺?」
隼人「あ、ははは・・俺もこれはさすがに・・・」
葉山も面喰ったのか固まり、顔を青白くして、空笑いをしている。
姫菜「え!?葉山×ヒキタニが薄い本ならマストバイだよ!?ていうかマストゲイだよ!?」
何言ってんだよこの人・・。俺にはあまり理解できない。
八幡「そもそも何で俺と葉山なんだよ・・。もっと適任者いるだろ。演劇なんてできるか」
隼人「そ、そうだよ。あまりやる気のない俺らがやったってほら、あれだろ?それに、俺もヒキタニ君も部活があるし」
ナイスフォローだ葉山。部活はどこも休部だが、帰宅部にはおそらく知られていないだろう。よし、勝った。
先生「あれ?今は文化祭の準備で、どこも部活はしてないって聞いたけど」
隼人「ちょっ!?先生!」
せんせぇぇぇぇい!?何でばらしちゃうの?せっかくいいところまで言い逃れできそうだったのに・・。
この先生の発言で、海老名だっけ?そいつが目を光らせ
姫菜「決定!」
と大声でクラス中に言い渡した。その瞬間女子の若干色めいた声と拍手喝采が、俺らに向けられた。
隼人「き、君たちはこのミュージカルって企画でいいのかい?」
八幡「そ、そうだな。まだクラスの皆が、これに納得するかどうかだ」
少しは批判する奴もいるだろう。その期待を葉山と抱き、クラス中に問いだした。
「私はいいよー」
「いいんじゃねぇの?他ではそういうのなさそうだし!」
「いいぞー!」
「頑張って!葉山君」
凛「八幡ファイトー!」
飛鳥「頑張ってー、八幡!」
しかし、一瞬にして、その期待は見事に裏切られた。そんで何ちゃっかり凛と飛鳥も参戦してんだよ!
隼人「どうやら、腹をくくるしかないみたいだね。ははは」
苦笑交じりの表情をしながら、ポンと俺の肩を叩いた。
八幡「うるせー」
風音「そういえば八くんのクラスはどんなのやるの?」
八幡「あー、これをみてくれ」
俺はあの腐女子に渡された企画書を風音に渡した。
風音「ミュージカル、星の王子さま、王子役葉山君、ぼく役、比企谷八幡、って八くん!?」
八幡「何故か俺がやることになったんだ・・・」
風音「え、でも凄いじゃん!主役みたいなものだよこれ」
八幡「だからこそなんだよ・・」
風音「頑張ってね、八くん」
八幡「・・そうだな。ま、決められちまった以上、やるしかねぇな。頑張るわ」
風音「ふふっ、私、そういう八くんも好きだよ♪決めたことに関しては全力を出すとこ」
八幡「風音・・・」
風音の笑顔を見た途端、すっげぇやる気出てきた。よし、頑張ろうかな・・。
◆
その翌日、次はあの企画書よりも詳細なことが書かれた紙を渡された。今度はコンパクトに一枚にまとめられていた。うん、エコって大事だよ。
クラスの奴らが紙に目を通していると、1人の女子が手を挙げた。
「これって、女子は出ないの?」
確かに、この書かれた事を読んでいくと、男ばっかで女子の文字がどこにも見当たらない。
姫菜「え?出ないよ」
まるで当然のような口ぶりで、女子出演はない、と断言した。ガチで男だけでやるのかよ・・。もう、完全にあいつの趣味じゃねぇか・・。
そんでなんだ?このスタッフも。
監督:海老名姫菜
演出:海老名姫菜
脚本:海老名姫菜
どこの敏腕プロデューサーだよ。将来はアイドル事務所にでも就職する気か?その場合は絶対ジャ〇ーズだろうけど。
隼人「だ、大丈夫なのか?姫菜。これ一人でやるのは?」
姫菜「全く問題ない。実はもう台本までできてんだから」
隼人「よ、用意周到だな・・・」
「あのー、衣装はどうするんですか?」
姫菜「衣装?あ、そういえばそうだね。やっぱ2人共王子っぽい服がいいなぁ。誰かこの中で衣装作れる人いる?」
と監督さんは挙手を求めたが、そんな人物はいなかった。しかし、窓際で座っている、スカラシップの件で顔を合わせた、川崎沙希。あいつがこの質問に少しだけ、肩をビクつかせていた。
そして、監督はそれを見逃さず、川崎に近寄った。
姫菜「ねえ?もしかしてそのシュシュって手作り?」
沙希「へ?そ、そうだけど・・・。これは手縫いで作ったんだ。それとこっちはミシン」
そう言ってポケットからもう一つのシュシュを取り出した。なんだ?結構やる気なんじゃないのか?
姫菜「ふんふん・・縫製も綺麗だし、色使いも可愛い・・。手縫いもミシンもできる。いいね、じゃあ衣装よろしく♪」
沙希「え?ちょっと!そんな適当でいいの?」
姫菜「適当で選んでなんかいないよ。その制服見るからに、結構改造とかしてるんでしょ?ブラウスとか」
へぇ・・。ちょっと感心したわ。案外ちゃんと見ているんだな。
姫菜「限られたリソースを最大限に活用でき、技術もある。これほどの適任者はいないよ!」
沙希「ま、まぁ、そういうことなら、やるよ」
褒められて嬉しいのか、恥ずかしいのか分からないが、顔を真っ赤にしながらも、衣装づくりを了承した。
隼人「なんだかんだで、大分まとまってきたね」
八幡「自分の趣味に全力な人ほど、こういうことに生かされるんだろうな」
隼人「さ、監督があそこまで本気なんだ。僕たちも頑張ろう」
八幡「ハァ、正直台詞とか派手な動きとか、めんどくせぇし、疲れるけど、人の努力を踏みにじるようなことは、絶対したくないからな。仕方ねぇか」
その後、監督の指示により、俺と葉山の棒&噛み噛みな台詞が教室に響いたのだった。
姫菜「じゃあ、ちょっと休憩しようか」
隼人「ふぅ、さすがに厳しいな」
八幡「だな」
喉も乾いたし、自販機でマッカンでも買ってこよう。
凛「八幡、お疲れ」
飛鳥「お疲れさま」
俺が歩き出そうとしたら、凛と飛鳥がこちらに駆け寄ってきた。そして、手元にはなんとマッカンが。
飛鳥「はい、差し入れ」
八幡「おお!ありがとな。何で俺の好きな飲み物知ってるんだ?」
凛「夏休みに風音の家に泊まったでしょ?そこでその飲み物がやけに準備されてたからね。そこで聞いたんだ」
あー、あの時か。
飛鳥「よくそんな甘い物飲めるね・・・」
八幡「はあ!この甘さがいいんだろう!千葉のソウルドリンク舐めるなよ」
飛鳥「いや、そこで熱くなられても・・・」
全く、最近の若者というやつは・・。俺も若者だけどね。
凛「それにしても、驚くぐらいに噛み噛みだったね。あはは」
八幡「いやいや、あんなキザでカッコいい台詞恥ずかしいし、長いんだもん」
飛鳥「あれ?確か海で『お前らの嬉しそうな顔を見れただけで、疲れは吹っ飛んだぜ(キリッ)』なんて言ってなかった?」
覚えてやがったなこいつ!思いっきり無視してたくせに!
八幡「おい、それマジで今すぐ忘れろ」
飛鳥「どうしよっかな~?」
こ、こいつ~・・・。
凛「我に宿りし濁の眼よ。モノクロ」
八幡「お前マジでやめろそれ!ここで言うな!いや、言わないでください」
俺は思いっきり手で凛の口を塞ぎ、呪文の詠唱を無理矢理途絶えさせた。
凛「んー、んー・・・はぁ!あー、面白かった!」
八幡「おいこら。俺でイジるんじゃない」
飛鳥「あはは、じゃあ、そろそろ私たちは行くね。頑張ってね、八幡」
凛「じゃ」
八幡「おう」
そして、監督からの練習再開命令がでて、俺達は日没を少し過ぎたあたりまで練習をした。
小町「なんか最近お兄ちゃん、疲れ気味じゃない?」
久しぶりに登場した小町が、俺にそう聞いてきた。まぁ、疲れ気味というか、疲れてんだけどね。
八幡「ちょっと文化祭の事でな。忙しいんだ」
小町「へぇ、珍しいね。お兄ちゃんが進んで動くなんて」
八幡「ま、半ば強制だけどな」
小町「ふふっ、でも半分はお兄ちゃんの意思なんだ」ニヤニヤ
お前ニヤニヤするの好きだな~。口裂け女にでもなりたいのかな?
小町「どんなのやるの?小町見に行くから教えて♪」
八幡「いや、来なくていいから」
小町「ええー、いいじゃん!・・・・・教えて?」
小町は涙目になって首をかしげてきた。
八幡「わ、分かったよ」
くそ、ウソ泣きだとわかるのに、おまけに可愛いから負けてしまった。やはり、女の涙より強い武器はこの世に存在しないのだろうか・・・。
俺はクラスの企画書を小町に渡した。
小町「ふむふむ・・・・うそぉ!?お、おおおお兄ちゃんがしゅしゅしゅ主役!?」ガッターン
目の前に書かれている衝撃事実に、椅子から転げ落ちた小町。全く、失礼しちゃうな・・。
小町「お兄ちゃん!絶対に見に行くからね!頑張ってよ!あ、今の小町的にポイント高い♪」
やはりこうなったか。
◆
さて、今日も頑張りますか。
と少し、意気込みながら、台本を手に取った。
隼人「今晩、君は来ちゃいけない」
八幡「ぼくたちは、ずっと一緒だ」
姫菜「うんうん、その調子だよー!段々、役に入り込んでるね。ぐ腐腐・・」ダラダラ
優美子「ちょっ!鼻血ふけし!」
これ、続けていいのか?最悪、出血多量で死人が出ちまうかもしれないんだが・・。
平塚「悪い、邪魔をするぞ。比企谷、由比ヶ浜、ちょっといいか?」
突然教室に入ってきたのは、奉仕部顧問の現国教師、平塚先生だった。
八幡「悪い葉山。少し抜ける」
隼人「ああ、いいよ」
うわぁ、その爽やかな笑顔、ちょっと殴りたくなった。
結衣「何かあったんですか?」
平塚「ああ、ちょっと厄介ごとがな・・・。実は・・」
先生から、その厄介ごとというのを順に説明された。
は?文実が、機能してない?・・・。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
八幡、ぼく役。・・・どうでした?
また次回。