13話突入。
読み返し、修正を何回も繰り返した話です。
それでは、ご覧ください。
7月某日、総武高の行事の一つ、遠足が今日始まろうとしています。今は、風音と一緒に学校へ向かっている。
八幡「暑くなってきたな~」
風音「本当に・・・。暑い」
ぐったりと腕をぶら下げている。風音は暑いのてんでダメだからなぁ。
俺はカバンに入れてある保冷剤を手に持ち、風音のうなじにピタッと当てる。
風音「ひゃっ!・・って、ちょっと八くん!」
八幡「ほら、こうすれば涼しいだろ」ピトッ
風音「冷たっ・・・もう!お返し!」
風音は素早く俺の手元の保冷剤を盗り、俺のYシャツの中に入れた。
八幡「うお!ちょっ、冷てぇ!」
風音「あっははははは」
◆
保冷剤の奪い合いをやりながらも、総武高に着いた。校門近くの駐車場には、バスが何台か並んでいた。結構デカい。
明菜「あ、おーい!風音ー!比企谷君ー!」
一華「おはよう~」
俺達の名前を呼び、こっちに歩いてきたのは、風音と班になった神童と神崎だ。
風音「おはよう」
明菜「比企谷君、おはよう」
八幡「ああ、おはよう」
一華「私たちの乗るバス、奥の方だよ。もう行ったほうがいいかも」
風音「分かった。じゃ、八くん、また後で」
八幡「ああ」
一華「しばらく離れるんだよ?さぁ、キスを」
また、それ言うのかよ。もう大分生徒集まってきたのにできるわけねぇだろ。
八幡「あのなぁ、こんなとこrッ!」
風音は構わずに、俺にキスをしてきた。
一華「」ニヤニヤ
明菜「おお~・・」
風音「じゃ、八くん♪」
八幡「お、おお。楽しんでこいよ」
風音「八くんもね♪」
風音、すごいご機嫌だったな。ヤバい、ニヤついちまう・・。
さて、俺も乗るバスの確認をしなきゃ。
飛鳥「//」ジ~
凛「」ジ~
彩加「///」ジ~
後ろを振り向くと、バスの陰で顔半分だし、ジ~っとこちらを見ている同じ班の人がいた。
あれ?デジャヴ?なんか前にもこんなことなかったっけ?ていうかクラスメイトに見られた!?
八幡「なにやってんだ?お前ら・・・」
俺は彩加たちの下へ行き、質問を投げた。
飛鳥「へ?いやぁ~、あはは」
凛「思ってた以上にお熱いね~」
彩加「あ、八幡//」
クソゥ・・。よりによってこいつらに・・。そして彩加、何故お前が恥ずかしがっている、明らかに一番恥ずかしい思いをしてるのは俺なんだけど・・。
凛「あ、写真撮ったよ」
八幡「今すぐ消しなさい!?」
◆
なんやかんやあって、バスに乗り始めた。・・・なんやかんやは、なんやかんやです。
結構豪華だぞ。2人ずつ正面を向き合いながら座れて、間にはテーブルが置いてある。こういうのって電車でしか見たことなかったが、バスにもあったのか・・・。
分かりやすくするとこんな感じだ。
通路側
―――――――――――――
八幡 テ 飛鳥
|
彩加 ブ 凛
ル
―――――――――――――
窓側
担任「よし、それじゃあ、横浜へ出発します。走行中は立ち上がらないでください。その他は何をしててもいいです」
そこまで自由にしていいのか?先生・・・。
ここから、横浜までは約3時間かかるらしい。どうしよう・・寝ようか?
彩加「そういえば、バスでは何か遊ぶの?」
凛「うん、色々持ってきたから、有意義に過ごそう。ほら」
九重がバッグから取り出したのは、UNO、トランプ、知恵の輪、キャット&チョコレート、人狼ゲーム、ミニチェス、折り紙等々、多種多様の遊び道具を出した。あんた、何しに来たんだよ・・・。
飛鳥「そんなに必要ないでしょ・・。人狼ゲームとかマニアック過ぎない?」
彩加「知恵の輪って、皆黙っちゃうんじゃないかな?」
凛「確かに・・。やみくもに持ってきたのが間違いだったか」
飛鳥「まずはトランプでいいんじゃない?」
凛「そうだね。よし、大富豪をやろう!ルールはわかる?」
大富豪か、あれ地域によってカードの効果とか違ってくるよね・・。結構ややこしい。
8切ってあるけど、俺なら本当の8切ができるぞ。八幡だけに・・・。なんちゃって。
※大富豪の勝負描写はカットです。
彩加「はい、上がり」
飛鳥「えぇぇ!」
八重島が最下位、大貧民となった。ちなみに俺は富豪、九重が大富豪だ。
凛「はい、それじゃあ飛鳥。罰ゲーム」
飛鳥「えええ!聞いてないよ!」
凛「嘘嘘。いやぁ~思った以上に盛り上がったね」
彩加「そうだね。すごい燃えちゃったよ!」
その後もUNO等のカードゲームで遊び、折り紙も何故かやった。ていうかなんで折り紙持って来たんだ?
折り紙に関しては、俺の作った作品である折り猪を見て3人とも目を輝かせていた。その後、3人に希望の動物を作ってほしいと言われ、八重島には犬、九重には馬、彩加には兎を折ってあげた。おかげで、超絶疲れています。
飛鳥「すご~い。どういう仕組みなんだろう」
凛「本当に・・折り紙だけでここまでの再現度とは・・・」
彩加「可愛い♪ありがとう、八幡」
八幡「よ、喜んでくれて、何よりだ・・・」
ぐったりと机に突っ伏す俺。
凛「折り紙、ありがとね、比企谷君。・・・え~と、あと1時間ぐらいだね。じゃあ、お喋りでもしてようか」
九重は、バッグからお菓子類をテーブルに並べた。いや、だから何で持って来たんだよ・・・。ちょっと楽しみにし過ぎじゃない?いや、いいんだけどね。
飛鳥「比企谷君は彼女いるけど、戸塚君は彼女欲しいとは思わないの?」
彩加「え?僕?う~ん、まだ考えたことなかったなぁ。僕が男女交際なんて想像できないや」
凛「そっか~。でも、告白されたことはあるんでしょ?」
彩加「まぁ、されたことはあるけど//でも、何故か男子にも好きって言われた事あるんだよね。何でだろう?」
八幡&飛鳥&凛「「「(((納得できる)))」」」
彩加「そういう2人は?恋人とかいないの?」
段々高校生らしい会話になってきたな。
凛「私?いないよ」
飛鳥「私も、好きな人も特にいないし」
八幡「え、そうなのか?」
彩加「へぇ、意外だね」
俺達のこの言葉に、戸惑いの顔を見せる2人。いや、実際に結構驚いた。てっきりいるものだと彩加も思ってたらしいし。
飛鳥「何で意外って思ったの?」
八幡「2人とも顔立ちは整ってるし、普通に可愛いからいると思ってた」
彩加「うん、美人さんだからね、2人とも」
俺と彩加の嘘偽りない返答に、2人は次第に顔を赤くしていった。
凛「え//・・・・あ、ありがとう///」
飛鳥「び、美人//・・ありがと//」
あれ?俯いちゃった。なんかゴニョゴニョ言っているが、触れないでおこう。
凛「そ、それよりも次、比企谷君。彼女さんとはどうなの?」
八幡「え?俺も話すのか?」
凛「うん。皆話したから、比企谷君の番」
八幡「まぁ、俺だけ言わないのは卑怯だな。言える範囲で話すよ。なにが知りたいんだ?」
飛鳥「じゃあ、まず、出会いは?」
八幡「生まれたときだな」
飛鳥「・・・・・え?」
凛「どういう意味?」
八幡「ああ、彩加はもう知ってるが、俺と彼女は同じ日に同じ病院で生まれたんだ。そこで親同士が知り合ったって感じだ」
凛「なんとも運命的な出会い方・・・」
飛鳥「凄いね!それじゃあ、幼馴染みってわけだ」
八幡「そうだな。それで、いつも2人で遊んで、小学校卒業を機に告白したんだ。そして今に至るな。後は特になし」
あれ?俺普通に話しちゃってる・・・、大丈夫かな?なんか後から怖くなってきたんだけど・・。
飛鳥「おお~、いいね。素敵だよ~」
凛「うんうん、いい話が聞けたよ。あ、これ食べよ~」
まだ食う気かよ。この後中華街行くのに、そんな食って大丈夫か?
飛鳥「はい、比企谷君」
八幡「もらっていいのか?」
飛鳥「水臭い事言わないの。はい」
八幡「あ、ああ」
半ば強引に、俺はチョコ菓子をもらった。うん、美味いな。
◆
色々遊んだり、喋っているうちに、あっという間に横浜に着いた。現在は10時。ちょっと楽しみになってきた。
担任「それじゃあ、ここからは自由行動です。15時までには再びここに集合してくださいね」
凛「取り敢えず、中華街まで行こう♪」
《中華街》
凛「どこの店が美味しいかな~?」
飛鳥「そうだね、いっぱいあるからどこにすればいいか迷うよね」
彩加「あ、僕美味しい店知ってるよ。一度来た事があるんだ」
飛鳥「本当!じゃあ、そこにしようか」
行先が決まったらしいから、彩加についていく形で、俺達は昼食を食いに向かった。
彩加「ここだよ」
店の名前は『竜海飯店』と言うらしく、オーダー式食べ放題という何とも嬉しいシステムだ。
中国人店員に誘導され、俺達は丸いテーブルを囲うように座る。
飛鳥「お~、凄い。回る回る♪」
中華料理店名物の回るテーブル。誰しもが一回は遊びで回してしまう代物だ。
しばらく待って、ようやく注文の品がきた。
俺と彩加はチャーハン、意外と量がある。八重島と九重は、エビチリだ。その美味しさに舌鼓を打つ。
食っているうちに、どんどん料理が運び込まれ、テーブル全体が料理によって埋め尽くされた。
八幡「おいおい、こんなん食いきれるのか?」
凛「あはは、つい頼みすぎちゃったね。でも美味しいから食べきれるよ!」
飛鳥「あ、これも美味し~♪」
彩加「あ、八幡。その小籠包、一個もらっちゃだめかな?」
八幡「おう、いいぞ。熱いから気を付けろ」
彩加「ありがとう♪」
◆
凛「美味しかったね~♪」
八幡「まさか本当に食い切るとは・・・」
こいつ、普通に俺より食ってたぞ。いくら美味いからってそこまで胃に入るか?あの量・・・。
彩加「お腹いっぱい♪」
彩加は、小柄にしては結構大食いだった。男子高校生の平均よりちょっと上。
飛鳥「次は、関帝廟だよね?」
凛「そうそう」
紆余曲折を経て、関帝廟に辿り着いた。
関帝廟というのは、関羽という商売の神様が祀られているところらしい。
飛鳥「おー、デカい!」
凛「写真撮ろうよ」
関帝廟のゲートを背景にスマホを取り出し、撮影を始めた。俺は無理矢理引っ張られた。
彩加「じゃあ、上に上がってお参りしよう」
階段を上がり、お賽銭を投げ、手を合わせる。・・・何を願おうか。
ちなみに風音との恋愛成就は願わない。そんなものは、自分の力で手に入れてみせる。
日本の平和でも祈っとこうか・・。商売関係ない。
◆
関帝廟を出て、歩くこと数十分。カップヌードルミュージアムにやってきました。ここに来るまでは特に問題も起こらなかったため、割愛とさせていただく。
チケットを各々購入し、入館。中は人でいっぱいだが、それをあまり感じさせないほどの広さがあった。
まずは、展示ブースに行く。
彩加「うわぁ・・・すごーい!」
彩加は、ガラスに張り付いて、凝視している。その姿はまるで子供・・・いや、正真正銘の子供に見える。
飛鳥「この緑色みたいな麺、千金蕎麦っていうんだ」
凛「凄い。和風チキンラーメンだって!食べてみたいな~」
こうして、展示ブースを堪能し、いよいよオリジナルを作りに行きます。
まずは、カップのデザインを描く。
凛「私、絵下手なんだよぉ」
飛鳥「う~ん、何を描こう・・・」
彩加「~♪」スラスラ
他の2人に対し、彩加は迷うことなく、カラーペンを走らせている。
俺は、どうしようかな・・。と悩んでいたが、何故か、ペンを握った手が勝手に動いて、デザインを作り上げていった。
彩加「じゃーん。僕はコレ」
彩加が、テニスのラケットやボール、その他のテニス用品を描いたらしい。そしてちらっと兎がいた。
飛鳥「私はこれ」
八重島のは、いろいろな種類の犬が並んで座っている絵だった。それに上手い。
凛「うーん、私はこれ」
九重が見せてきたのは、少し歪だが、白い馬と黒い馬が一匹ずつ描かれていた。
飛鳥「比企谷君のは?」
八幡「ああ、なんか、勝手に手が動いて、自分でもよくわからないんだ」
凛「へ?・・そんなことあるの?あ、でも、ちょっと言葉で表すのは難しいね」
飛鳥「なんだろう?」
俺のカップに描かれているのは、黒一色だけで、いくつかの影があり、その離れた方に、哀愁を感じさせる影が一つ。その影は、まるで、何か葛藤をしているように、ブレブレになっていて、期待と失望、対になる感情が、曖昧に、混濁されていることが、読み取れてしまった。
彩加「八幡、絵苦手だったんだね」
八幡「・・・そうかもしれねぇな」
凛「じゃあ、作りに行こうか」
デザインが終わり、残りの工程は具材選びに味選び、色々な種類が、あった。
「コロチャーコロチャーコロチャーコロチャーで」
小太りの帽子をかぶったおじさんが、味を決める前にそう言い放っていた。いやいや、まだまだ具材あるだろ、肉食かよ!
世界で一つのオリジナルカップヌードルを作り終わり、外へ出たら、俺の携帯にメールが来た。
風音からだ・・。
風音のメールには、文章はなく、一枚の写真が、添付されていた。
風音、神童、神崎が笑顔でピースをしている写真だった。そして、後ろから九重達がメールを覗き込む。
凛「あ、彼女から?・・へえ、楽しそうだね♪」
飛鳥「比企谷君、私たちも写真撮って、送ったらどう?」
八幡「え?」
彩加「あ、それいいね。撮ろう」
そう言って、彩加たちは、俺の横に立ち、ポーズを決めていた。その状況に、混乱する俺。
凛「比企谷君、早く」
八幡「え、ああ」
取り敢えず、言われるがままに写真を撮り、その写真を風音に送る。
◆
明菜「今撮った写真、比企谷君に送れば?」
風音「あ、そうだね。八くん今頃どうしてるかな~?」
一華「浮気してたり・・・」
風音「八くんはそんなことしないよ~」
明菜「随分信頼し合ってるねぇ」
よし、送信、と。
写真を送ってから、一分後、八くんから返信がきた。・・・あれ?何も書かれてない。あ、写真。
添付されていた写真を見るとそこには、困っているように眉を下げてる八くんの横に、ピースをしている班員の姿が写っていた。
風音「八くん・・・」
思わず、頬が緩む。やっぱり、ちょっとずつ、八くんの心が開かれている。本人もそろそろ自覚し始めているころなんじゃないかな?勘です。
◆
遠足の時間も終わり、バスに乗った俺達は、疲れた体を椅子に預ける。
彩加は座った瞬間に寝てしまった。
凛「あらら、寝ちゃった。まぁ、そうだよね、楽しかったし、疲れちゃったか」
飛鳥「うあぁ、寝顔が、すごくかわいい」
うん、そうだな、この寝顔は確かに反則級の可愛さだ。
飛鳥「楽しかったね♪」
凛「だね♪比企谷君も、楽しかったでしょ?」
八幡「っ・・・そうだな。楽しかった」
飛鳥「私も眠くなってきちゃったよ」
凛「私も~。ふぁぁ」
八幡「あ、俺眠くないから、寝てていいぞ。着いたら起こす」
凛「ほんと?ありがとう。じゃあ、お休み」
飛鳥「お休み~」
2人は、机に突っ伏して寝てしまった。後、彩加、肩に顔を置かないでくれ、すげぇいい匂いする。
起こさないように、そっと頭を離れさせた。
八幡「・・・・・・」
そして俺は、自分で書いたであろうオリジナルカップヌードルを見つめる。
この絵を見たとき、ふと、何かを感じたのだ。
それは、この絵がまるで、自分と重なっているように見えた事。
・・・・・・・・・・・
なぁ、風音。
俺に、人を信用する資格があるのか?
今まで、散々、人の交友関係を悪しざまに言ったりしてきた奴に
そんな奴が
期待なんてしていいのか?
今まで人と関わることなんてしなくなった。
けど、高2になって部活に入り、環境が少し変わった。
それなりに人と接することが増えてきた。
それを嫌とか不快と思わない自分がいる。
だから、分からないんだ。
俺は、どうしたらいいんだ。この、曖昧な気持ちを・・・。
ピロリン♪
その時、俺の携帯に一通のメールが届いた。
風音からだ。内容は・・・!
『八くんのしたいことをすればいいと思うよ』
・・・・・え?
『私は八くんの選択に、勧めも咎めもしない』
『けど、1人で抱え込まないで』
『八くんに何があっても、私はそばにいてあげることぐらいはできるから。だから』
『一回でいい。素直になってみたら?』
風音からの一通のメール。そう、たった一通のメールだけで、俺の黒い感情に、光が差し込んだような気がした。
俺の中で、覆いかぶさっていた黒い霧は霧散され、自分の気持ちが、何がしたいのか、わかることができた。
『ありがとう、風音』
一言、風音に返信した。
◆
気付けば、バスは目的地である、学校に到着していた。俺は寝ている班員を起こす。
八幡「着いたぞ」
凛「ん?・・おお、着いたか」
飛鳥「ふぁぁ、よく寝た」
彩加「う、うぅん。あ、八幡」
八幡「ほら、着いたから、降りようぜ」
凛「じゃあね、戸塚君、比企谷君」
飛鳥「じゃあね~」
彩加「また、月曜日で」
八幡「じゃあな」
班員に別れを告げ、俺は風音と合流し、帰路に就く。
◆
八幡「風音」
風音「・・ん?何?」
八幡「ありがとうな、メール。タイミングバッチリだったぞ」
風音「そっか、それはよかったよ」
八幡「自分の気持ちは分かったが、不安がないと言えば嘘になる。けど、一歩進むために頑張るよ」
風音「八くんが決めたなら、私は応援するよ。精一杯」ギュウ
八幡「・・・本当に、ありがとう。大好きだ、風音」ギュウ
風音「私も」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
おや?ハチマンのようすが・・・
また次回。