須賀京太郎が逆行するお話   作:通天閣スパイス

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本編は原作開始時期から。おい、キンクリのことまこって呼ぶのやめろよ!


一話

※【Kyo】さんがログインしました

 

 

 

【Kyo】:こんちゃー

 

【ほっしー☆】:お、こんちゃー

 

【†あたら†】:こんにちはー

 

【きぬごし】:おいすー

 

【クララ】:こんにちはっ!

 

【Kyo】:おー、皆さんお揃いで。出遅れちゃった感じ?

 

【きぬごし】:いやいや、私達もついさっきインしたばかりやでー

 

【きぬごし】:早速打つ?

 

【Kyo】:うい、お願いします

 

【きぬごし】:ほいほい。みんなはどうするんー?

 

【ほっしー☆】:んじゃ、私もー

 

【†あたら†】:私もやりますー

 

【きぬごし】:はーい、二名様ごあんなーい

 

【クララ】:私も入るよっ

 

【クララ】:出遅れたぁ……

 

【きぬごし】:www

 

【†あたら†】:www

 

【Kyo】:どまですwww

 

【ほっしー☆】:どまwwwww

 

【きぬごし】:んじゃ東風一回で、ラス抜け交代ってことでええか?

 

【Kyo】:はいっすー

 

【ほっしー☆】:おけおけ

 

【†あたら†】:いいですよー

 

【クララ】:ありがとっ! いよっ、この女神!

 

【ほっしー☆】:きぬごしちゃんマジ女神!

 

【Kyo】:きぬごしちゃんマジ女神!

 

【†あたら†】:きぬごしちゃんマジ女神!

 

【きぬごし】:やめぇやwwwやめぇやwwwwwww

 

 

 

 パソコンの画面に映る、チャット画面。

 俺が今現在プレイしている、とある大手のネット麻雀ゲーム。それに備え付けられているチャット機能で繰り広げられている掛け合いを見て、俺は苦笑を漏らしていた。

 

 【ほっしー☆】、【†あたら†】、【きぬごし】、【クララ】。そして俺こと、【Kyo】。

 幾億もいるネット麻雀プレイヤーの中で、偶然出会い、偶然集まって、そのままなんだかんだで纏まるようになった俺達五人は、出会って数ヵ月ながらも、既に友人と言ってもいい距離感に至っている。

 夜九時、それぞれの用事が終わるであろう時間帯に、俺達はほぼ毎日集まって。駄弁ったり、麻雀を打ったり、コントのような掛け合いをしたりしていた。

 

 以前では――麻雀にのめり込むのが遅かった逆行前においては、持てなかった繋がり。

 逆行前との“相違点”の一つであるこのコミュニティーは、俺が逆行してよかったと思えるくらいには、俺の生活に潤いをもたらしていた。

 

 

 

【きぬごし】:よーし、部屋出来たでー。部屋名とパスはいつものやー

 

【ほっしー☆】:のりこめー!

 

【†あたら†】:目指せ、Kyoを飛ばして一位!

 

【Kyo】:ちょっwww

 

【きぬごし】:前回の恨みがwww

 

【†あたら†】:私の四暗刻を潰してまくられた恨みは忘れない

 

【ほっしー☆】:私のダブリーを中のみで流された恨みは忘れない

 

【クララ】:ほっしーさんもwww

 

【きぬごし】:じゃあ私も、満貫直撃された恨みは忘れない

 

【クララ】:wwwww

 

【Kyo】:俺フルボッコ確定じゃないですかーやだー

 

 

 

 ちなみに。今の俺の実力は、そこそこ強い。

 プロではなかったとはいえ、これでも俺は半世紀を越える年月で麻雀をやって来ているのだ。あくまで趣味の範疇でやっていたものの、アマチュアの大会で上位に入った経験だって何度もある。

 少なくとも、逆行前のこの時点の俺の実力――役も全部把握してないド素人よりは、格段に力が上だと言えた。

 

 ……まあ。それでも咲達を初めとした“本物”に勝てるとは、言えないのだけれど。

 そこまで俺も、自分に自信はない。自惚れることは出来ない。

 

 絶対に負けるとも、プライドの関係上言いたくないが。

 

 

 

【Kyo】:今日は宿題が多くて疲れてるんで、勘弁してくださいよー

 

【きぬごし】:私かてあったわ! 提出一週間後やからやっとらんけど!

 

【ほっしー☆】:私だってあったよ! 全然分からなかったからやってないけど!

 

【Kyo】:おいwww

 

【きぬごし】:(アカン)

 

【†あたら†】:それでいいんですかwww

 

【ほっしー☆】:私は高校百年生だから! 大丈夫だから!

 

【Kyo】:wwwwwww

 

【†あたら†】:wwwwwww

 

【きぬごし】:あんたいくつやwwwwwww

 

【クララ】:私より先輩……だと……っ!?

 

 

 

 でも、とりあえず、そんなことは忘れて。

 上を見て絶望するよりも、今この場の楽しい一時を存分に楽しもうと、俺は再びパソコンの画面に意識を集中させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――で。寝るまでネット麻雀に夢中になってた、と?」

 

「……おう」

 

「へー、ほー、ふーん。だから私からの電話に出なかったんだー、私何回もかけ直したのにー」

 

「いや、あのですね、咲さん。それは確かに俺が悪いんだけど」

 

「何?」

 

「いや、その、さ。なんでそんなに怒ってるのかなぁ、って……」

 

「何?」

 

「……いや、あの」

 

「何?」

 

「……」

 

「何?」

 

「俺が悪かったです、はい! なんでもするから許してください!」

 

 

 

 その翌日の、学校の教室にて。

 

 俺は咲を相手に、綺麗な土下座を決めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時期は、初夏。俺が高校へと進学して初めての、夏の頃のこと。

 逆行前と同じく地元の高校、後に全国区で名前が知れ渡る『清澄高校』に入学した俺は、疲れた顔をして廊下を歩いていた。

 

 その隣で微笑みを浮かべ、両手で本を抱えながら歩いているのは、咲。

 俺と同様に清澄高校へと進学した彼女は、中学から続いて四年連続のクラスメイトとして、変わらず俺との親しい関係を続けている。

 電話やメールのやり取りは当たり前。昼飯を一緒に食べたり、宿題を一緒にやったり、放課後の遊びに一緒に付き合ったりと、正直逆行前に比べてベタベタしすぎなんじゃないかと思うくらいに親しくしていた。

 

 いや、まあ、別に文句があるわけではないけれど。

 今の咲は控えめに言っても美少女だから、俺としても満更ではないし。彼女に対して恋愛感情がある訳ではないが、彼女が楽しそうにしている姿を見るのは、俺としてもそう悪くはなかった。

 

 『なんでもするから』という言質を取られ、放課後の図書室に無理矢理連れていかれた後、彼女と一緒に本を探しまわるはめになったこの状況でも。

 疲れている表情とは裏腹に、俺の内心は、少なくない幸せを感じていた。

 

 

 

「……えへへ。ありがとねっ、京ちゃん。京ちゃんのお陰で、読みたかった本見つけられたよ」

 

 

 

 先程の怒りは何処へと。本を借りた辺りから急に笑顔になり、上機嫌で口端を弛めていた咲は、そう言って俺への感謝を示した。

 今回のことは俺への罰ということになっているのに、態々こういったことを口にするのは、こいつが俺以上にお人好しな証拠だろうか。あるいはそんなことなど忘れてしまうくらいに嬉しくなるほど、こいつの活字中毒者具合は上がっていたのだろうか。

 そんな益体もないことを考えつつ、俺が適当に返事をすると、彼女は「にへへ」と嬉しさを隠しきれない笑みを溢していた。

 

 曰く、この作者はマイナーだけど文章力が物凄いとか。恋愛ものに定評があって、胸が切なくなる微鬱展開を書かせたら日本一だとか。前作の幼馴染みものが大好きで、読んだ時には一晩中泣きはらしてたとか。

 小説に対する熱い思いを語る彼女の話を半分程度に聞き流していると、やがて満足したのだろうか、彼女は再びの俺への感謝で話を締めて。

 

 

 

「いやー、もー、ホントにこれ読むのが楽しみっ!

 

 ……あ、そうだ京ちゃん。付き合ってくれたお礼にさ、学食で何か奢ってあげる!」

 

 

 

 熱く語っていた時の高いテンションのまま、普段では見られないような行動力を発揮すると、俺の手を掴んで学食へと引っ張っていった。

 

 そのまま咲に引っ張られて、数分後。

 皆空いた小腹に何か入れたいと思っているのか、放課後ながらも人影が多少見受けられる学食に、俺達は無事辿り着く。

 

 女が男を引っ張って入ってきたものだから、学食に入った瞬間に奇異の視線が集まってきていたが、どうも咲の目には映らなかったようで。

 「日替わりのレディースランチでいいよね?」と尋ね、それに俺が頷いたのを見た少女は、俺に席取りを頼むと同時に注文口へと向かっていった。

 

 で。俺はといえば、普段とはあまりに違った咲の様子に思わず気圧され、何か言うこともなくついつい流されてしまって。

 ここまで来たならどうしようもないかと、一つ溜め息を吐いて彼女の言葉通りに席の確保へ向かえば、

 

 

 

「――――よっ。随分と尻に敷かれてんじゃねーの、京太郎くん」

 

 

 

空いてる机を見つけ、そこに腰かけた直後。

 クラスメイトの男子が、ニヤニヤと面白そうに笑みを浮かべて、俺の肩を叩いてきた。

 

 

 

「んだよ、おめぇか。……ってか、尻に敷かれてるってなんだ、尻って」

 

「べっつにー、言葉の通りだけどー? 京太郎くんは奥さんの宮永ちゃんに逆らえないみたいだなぁ、おい」

 

「誰が奥さんだ、誰が。咲とはそういうんじゃねーっつーの」

 

「照れんなよー、このこのっ!」

 

 

 

 からかうように、俺の肩を肘で軽くつついてくる、このクラスメイト。

 名前は確か『山田』だったろうか、逆行前でもこうして俺と咲の関係を揶揄してからかってきたのを覚えている。

 

 逆行前の俺はまだ子供だったから、こいつの言葉を真に受けて、照れたりしたこともあったが。

 俺と咲の将来を知っている今となっては、彼の言葉に何ら動揺することもなく、ドライに返事を返せていた。

 

 そんな風にこのクラスメイトと絡んでいると、数分後、注文通りのレディースランチを手に持った咲がこちらへとやって来て。仲良く談笑している俺達の姿を見つけると、「何してるの」と問いかけてきた。

 それに対して俺は、ただ雑談していただけだと答えようとして――――

 

 

 

「お、咲ちゃん。今さ、咲ちゃんはイイ嫁さんになるなぁ、って話してたとこなんだよ」

 

 

 

割り込むようにして口を開いたこの男に、それを潰された。

 

 

 

「……よめぇっ!?」

 

 

 

 それを聞いた咲は、見てそれと分かるほどに体をビクリと震わせると、頬をリンゴのように紅潮させる。

 溢さないようにレディースランチのトレーを机に置いた後、彼女はぐるぐると目を回して、必死に思考を巡らせて。やがて言葉を纏め終わったのか、彼女は俺達に向き直ると、その言葉に対して反論を始めた――――

 

 

 

「よ、嫁さんっ、違いますし! 中学が同じクラスだっただけで、別に、彼女とか、そんな関係じゃないんですっ!! 」

 

 

 

――――ひどく慌てて、わたわたと手を軽く振り回しながら、声の端々を裏返させつつ。

 

 

 

「べ、別に、京ちゃんの嫁さんじゃないもん! いや誰の嫁でもないけど、将来的にはなりたいけど、でも今は未だ早くてっ!」

 

「……いやあ、別にこいつの嫁だなんて言ってないんだけどなぁ」

 

「ひえぅっ!? ……あ、こ、言葉の綾だし! 別に京ちゃんは関係ないもん、なんとも思ってないもん!」

 

「なんとも?」

 

「な・ん・と・もっ! 京ちゃんのお嫁さん違いますー!」

 

「ふーん……。じゃああれか、京太郎のこと嫌なの?」

 

「……えっ?」

 

「そっかー、嫌なんじゃしょうがないなー。俺としてはお前らお似合いだと思ってるんだけど、京太郎のことが嫌ってんならしょうがない」

 

「え、いや、あの。別に嫌って訳じゃ……」

 

「ああ、でも京太郎の方は問題ないかなー。俺、この前三組の片岡と京太郎が仲良くしてたの見かけたしなー」

 

「…………えっ?」

 

「あいつとも、よくよく考えればお似合いって感じだったし。あいつが嫁さんなら京太郎も幸せだろうなー」

 

「……」

 

「いや、からかって悪かったな咲ちゃん。嫌な相手と夫婦扱いされて、正直迷惑――――」

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでにしとけ、山田」

 

 

 

 

 

 

 

 ずい、と。言葉を交わしていた二人の間に、体を割り込ませる。

 咲の方を背に、山田の視線を遮るようにして。突然視界に割って入った俺を見て、山田は驚いた表情を浮かべていた。

 

 からかってただけだろ、と悪びれなく口にした彼の言葉を聞いて。

 俺は無言で体を動かすと、後ろに隠れていた咲――無言で目に大粒の涙を浮かべていた、彼女の姿を見せる。

 

 それを見た山田は、さすがに自分がやり過ぎたのに気づいたのか、慌てて咲に謝りだした。

 

 

 

「い、いやっ、悪い! 俺が言い過ぎたって、マジごめんッ!」

 

「……べ、べつっ、に。山田くんは、悪くない、しっ」

 

「あーあー、いいから涙拭いて鼻かめ、咲。ほらちーんしろ、ちーん」

 

 

 

 咲の方に向き直り、ズボンのポケットからちり紙を取り出すと、優しく彼女の涙を拭き取る。

 その後新しく一枚取り出して、彼女の鼻に当てていれば、ちーんという音と共に彼女の鼻水がちり紙の中に飛び出してきた。

 

 それで多少は落ち着いたのか、咲はぐじぐじと鼻を鳴らしながらも、目をしっかりと開けてこちらを見つめてくる。

 その彼女の頭をポンポンと撫でながら、俺は山田の方に視線を向けて。申し訳なさそうな表情を浮かべてくる彼に向けて、口を開いた。

 

 

 

「……山田。こいつは俺が慰めとくから、お前はもう帰っていいぞ」

 

「え? いや、でも」

 

「いいから。俺は別に怒ってねーし、こいつも怒ったってよりはショック受けたってだけだろ。こっちは平気だからよ、もうほっとけ」

 

「……お、おう」

 

 

 

 チラチラとこちらを見ながら離れていく彼を尻目に、俺は再び咲へと向きなおる。

 

 涙ぐんだ瞳で、不安そうに俺の服の裾を掴み、上目使いでこちらを見上げる彼女の姿は、正直堪らないくらいに可愛らしい。

 それでも俺はその欲望を表に出すことなく、彼女の頭を優しく撫でたまま、出来る限り紳士的に接して。

 

 

 

「……落ち着いたか?」

 

「……うん」

 

 

 

 時間にして、三十秒ほど。俺に頭を撫で続けられた咲はようやく泣き止むと、その表情を笑顔に戻して、そっと俺から離れていった。

 

 

 

「ったく……。なんでいきなり泣き出してんだよ、お前」

 

「あはは、ごめんごめん。でもほら、もう問題ないから。……うん、問題ない」

 

「そうか? ならいいんだけどさ」

 

 

 

 ニコリと、なにか安心したように、微笑む咲。

 その表情の中身は俺には分からなかったが、彼女の笑みは本心からのものだということは伝わってきて。

 泣き止んだならまあいいかと、それを深く考えることもなく、さっさと思考を切り替えていた。

 

 

 

「んじゃ、さっさと飯くっちまうか。……あ、お前の分はどうする?」

 

「私? 私は……うーん、いいや」

 

「そか。それじゃ、座って本でも読んでろよ」

 

「うん。そうするね、京ちゃん」

 

 

 

 そう言うと、咲は俺の対面へと座り、鞄から先程借りたばかりの本を取り出す。

 しかしすぐには読み出さずに、何が面白いのか、彼女はニコニコと俺の顔を見つめていて。

 その視線を受けながら、俺はパンと両手を眼前で合わせ、奢ってもらったレディースランチに箸を進めだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、それから結局。

 

 俺がレディースランチを食べ終わるまで、咲が本に視線を落とすことは、一度もなかった。

 

 

 

 

 




この作品の咲は、こんな感じ。咲ちゃんぐうかわ。


Q.ハーレムあるん?

A.ヒロインはたぶん三人くらい。番外編みたいなのとかやればいくらでも増やせますが。

Q.結局元妻だれなん?

A.怜じゃねーの(棒)

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