浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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新キャラ1人追加してます。


第69話 船上の時間

リムジンに乗ってから、あっという間に目的地に着いた。30分くらいかかった筈なのに、乗っていたのが一瞬のように感じる。車の中で学真くんと全く話す事が出来なくて、リムジンの椅子の座り心地しか気にするところが無かった。

 

車の中の学真くんは、全くコッチを見てない。車が走っている道路を見ていた。そんな学真くんに話しかける事なんてとても出来ない。

 

そうして車は港の近くの大きな建物の前に着いた。船上パーティーを企画した人がここを着替える場所として貸してくれたみたい。

 

学真くんと別れて、着替え室でビッチ先生と選んだドレスを着る。そういえば、私以外に誰もいないみたいだけど…

 

「矢田さま、もうすぐで大勢の人が来ると思われますのでお早めに」

「あっはい」

 

いま扉の向こうから話しかけてきたのは、リムジンを運転した人だった。そっか…早めに着いたから誰もいないんだ…

 

さっきまで来ていた私服をカバンの中に入れて扉を開ける。私服を預ける場所が設置されているみたいだからそこに預けた。

そして学真くんと待ち合い場所にしていた一階の部屋に移動する。入れ替わりで来ていた団体の人が、運転手さんが言っていた大勢の人かな…?

 

《ガチャ》

 

「お待たせ」

「いや、俺もいま着替えが終わったところだ」

 

部屋の中には既に着替え終わった学真くんがいた。

学真くんが着ているのは、スーツだった。それも凄く高そうな真っ黒のスーツ。それを着こなしている、となんとなく感じる。やっぱり雰囲気が出てるからなのかな…?

 

学真くんは全く話そうとしないで私を見ている。そういえば私いまドレスだったね。だからそのドレスを見ているのかな…?

 

「どうしたの?ひょっとして、あまり似合ってなかった…?」

「…いや、良いドレスだな。凄く似合ってるよ」

「あ、うん…ありがとう」

 

…結構恥ずかしい。

 

実を言うと、学真くんならそう言ってくれると期待していた。学真くんは期待通りに答えてくれて、とても嬉しいけど、ちょっと罪悪感があった。

 

ときどき自分が卑怯だなと感じる事がある。特に思ったのは…窠山くんとの勝負の前に、学真くんの家の前に行った時だった。あの時間に突然家の前に来られても対応に困るし、家に上がらずに帰す人もいるとも思う。けど学真くんなら家に上げてくれると信用してた。

学真くんの優しさを良いように利用している自分を、酷いとしか言えない。最初の時は警戒して全く話しかけなかったクセに…ちょっとした機会にポイントを取っている自分を最低だと思う事もあった。

 

「…本当に大丈夫か?もし耐えられなかったらいつでも言って良いからな」

 

ああ、本当に…

 

学真くんが、こういう風に心配してくれるのが心地よくて…

 

 

 

 

 

その優しさがもっと欲しいと思ってしまうんだ。

 

 

 

 

 

 

「…うん、大丈夫。無理はしないけどね」

「ああ…それなら良いけど」

 

 

『ご来場の皆さま。本日はお集まりいただき、まことにありがとうございます。まもなく出航の準備をしますので、速やかに移動のほどをよろしくお願いします』

 

建物の中で、恐らく企画者の放送が聞こえた。

 

いよいよ、船上パーティーが始まるんだ…

 

 

 

 

「じゃあ行くぞ。遠慮だけはするなよ」

「…うん」

 

学真くんと一緒に、船上パーティーの会場である船に移動した。

 

 

 

 

 

『それでは出航致します。くれぐれも揺れにはご注意ください』

 

 

学真くんが持ってきたチケットを受付の人に渡して、船の中に入った。

そして少しの間船の中で過ごしていると、いよいよ船が港から離れて行った。いま動いているというのが体感でわかる。思ったほど揺れたりしないことにちょっと驚いた。

 

「じゃあまずは大部屋に行こう。食事が取れるし、色々な奴に会うことができるぞ」

「…うん」

 

船の中の過ごしかたは学真くんに任せている。学真くんの方が詳しいから、任せた方が安心する。本当は迷惑をかけたくないけど、余計な行動をしてしまうともっと危ない事になるかもしれないし、そっちの方が迷惑をかけてしまう。

 

 

そうして学真くんに、大部屋と言われる部屋に連れて来られる。多分この船の中のほとんどはこの部屋が占めてると思わせる広さだった。テーブルがたくさんあって、その上に食べ物が置かれている。

 

そしてテーブルだけじゃなくて人も多い。スーツとかドレスとかを着ている人が沢山いる。手にワインを持ってお話をしている人がほとんどだった。…ジュースとかあるよね。

 

それにしても…分かってはいたけど凄い綺麗な人ばかりだ。ここに来ている人のほとんどは凄い実績を出している人らしいし、服装もメイクも私なんかじゃとてもできないほど凄いものだった。

 

そんな人たちがたくさんいる中に入り込むのはかなり怖い。今までに感じたことがない恐怖が襲ってくる。

 

「とりあえず、俺からあまり離れるなよ。迷子になると探せなくなるから」

 

入る事に躊躇っている私の手を学真くんが握った。たしかにこれだけの人がいる中ではぐれてしまうと…

 

 

 

 

 

 

 

……ふえ!?

 

 

 

 

 

 

 

「あ…えと……」

「どうした?何かあったのか?」

「その……いや…うん。大丈夫」

 

 

自然に握られたから気づかなかった。それとも動揺していたから反応してなかったのかな…?

 

大きな体格をしているわけじゃないけど、手がちょっと大きい気がする。それにちょっと硬い。窠山くんと戦えるぐらいだし、武道とかやっているのかな。でも、凄く手入れしてある。今まで気づかなかったけど、手が凄く綺麗だ。こうして握られるまで、全然気にしてなかった。

 

 

 

 

手を引っ張られて真ん中に移動する。船の中では皿に自分の欲しい食材を乗せてすぐ離れるように移動することがマナーみたいだった。手を離して、学真くんがやっているように私も適当に食材を取る。…このオペラのような野菜の料理ってなんていうんだろう。

 

料理を取った後も学真くんについて行き、人が比較的少ない場所に移動した。学真くんは…キャビア?というものを取っていた。私はちょっと取る勇気が無かった。

 

「とりあえず…ここまでは大丈夫そうだな」

 

学真くんは一安心しているようだった。はぐれる事を1番警戒していたみたい。

 

私はさっき取った食材(テリーヌというらしい)を食べた。みずみずしいというか…凄く甘い。野菜でここまで甘く出来るんだ。

 

「hey!学真!」

「…MIKE(マイク)!」

 

…え?

 

いまネイティブな英語が聞こえたんだけど…

 

『久しぶりだね!3年ぶりかな?』

『そうだな。ここに来る事自体が3年ぶりだ』

『お、なんか流暢に話せるようになった?』

『学校の先生に鍛えられたからな』

 

…凄い。本当の外国の人だ。金髪の青い目をした男で、身長は学真くんと同じくらい。ひょっとすると年齢も同じだったりするかもしれない。

外国の人ならビッチ先生がいるけど、マイクさんという人は最初から英語で話していた。日本語を話さない外国の人って始めて見た。

それと学真くんの英語が凄い。そういえばビッチ先生の授業の時も発音が良かったね。アレってこの人と話していたからなのかな。

 

『それにしても君も気に置かないね。いつのまにこんな可愛いガールフレンドを作ったんだい?』

『うるせぇ。クラスメイトだ。色々と世話になったから、そのお礼に連れてきたんだよ』

 

cute(かわいい)girl friend(ガールフレンド)は聞き取れた。多分私の事を話しているんだろう。学真くんの彼女と勘違いしているのかな…

 

学真くんがこっちに顔を向けた。あ、コレってもしかして…

 

 

「矢田。コイツはマイクって言ってな。日本のアイドルグループが大好きで定期的に日本に来ているんだ。ちょっと話してみてもいいんじゃないか?」

 

…やっぱり、紹介された。別々の機会で知り合った友達がいれば紹介する流れになってしまうよね。

学真くんはマイクさんに英語で話している。多分私の紹介をしているんだろうけど…

 

「Hey 矢田。Nice to meet you.」

 

…やばい。挨拶された。えっと、なんて返せば良いんだっけ。ナイストゥートゥーミートゥーだっけ。

割と初歩的な会話なのに、なんていえば良いのかが全く分からない。考えようとすればするほど、いらない記憶が出てきたりしてゴチャゴチャする。

反応が返ってこなくてマイクさんも困っていた。早く返さないと…

 

《トン》

 

首に何かが当たった感触、さっきまで暴走気味だった私の思考が収まった。

首に当たったのは、学真くんの手だった。混乱している私を落ち着かせるための行動だったみたい。学真くんの狙い通り少し落ち着いたみたい。

 

「大丈夫だ。マイクは女癖が悪いけど、そんなに悪い奴じゃない。ちょっと間違っても怒る奴じゃねぇよ」

 

学真くんの言葉で、だんだんと落ち着きを取り戻す。そのお陰で私の頭の中が整理されて、何と返事すれば良いのかを思い出した。

もう大丈夫、と学真くんに言ってマイクさんに話す。

 

「Nice to meet you too.」

 

 

 

◇学真視点

 

…どうやら落ち着いたみたいだった。混乱していたのが分かったから、首に触れて落ち着かせた。多川のいうことって割と当たるな…

矢田はマイクと普通に話せている。アイドルグループのライブに行くために多少日本語を学んだマイクなら、少々間違っても大丈夫だろう。

 

それにしても…矢田は本当に大丈夫だろうか。

 

ああは言ったものの、無理しているのは確かだ。あのドレスは高級ブランドの店の商品だし、見た目からして多分昨日急いで買ったんだろうな。

 

我ながらバカな事をしたもんだ。朝に電話でカルマから言われるまで船上パーティーは普通参加するものじゃないという事を知らなかった。

 

もっと考えるべきだった。こういう風に遊んだことなんて無かったし、俺があまり夏休みに遊ぶ場所を認識してない事ぐらい分かってて然るべきだった。渚とか杉野とかに相談しなかったことが原因だな。

 

 

 

『じゃあまたな学真。ガールフレンドの面倒をしっかりと見てやれよ』

『だからガールフレンドじゃないと言ってるだろうが』

 

話が一通り終わったようで、マイクは離れていった。女性を連れてきたら何でもかんでも『ガールフレンド』と言うのをやめてくれないかな。

 

「大丈夫か。矢田」

「うん…学真くんが言ってくれたように話しやすい人だった」

「そうか。それは良かった」

 

余計な事を言ってなければ良いけどな。『彼とどこまで行ったの?』みたいなこと言いかねないし。聞いていた限り無かったみたいだけど。

 

さてどうしようか。ここに居続けるのも退屈だろうし。

 

「そうだ。外に出ないか。多分綺麗だぞ」

 

そういえば折角の船だし、外の景色をみても良いかもしれない。ここの海は割と綺麗だったし。は

 

「うん。行こう」

 

 

 

 

天気は晴れだ。雨とかじゃなくて本当に良かったと思う。じゃなきゃ外に出れないし。

太陽の光が当たっているようにも感じる暖かさと海風の涼しさで、丁度いいバランスだ。

外には5歳ぐらいの子どもが走り回っている。親についてきたんだろうな。そんな走り回ると危ないぞ。

 

「すごい。もう陸が遠いよ」

「そうだな。もう1時間は経っているし」

 

船の後ろを見ると、陸からだいぶ離れているのが分かる。あと5時間後に帰ることになる。

 

「そういえば、夏のリゾート島も船で移動するんだよね」

「そうだな。完全に移動用らしいけど」

 

リゾート島のホテルのパンフレットによると、移動用の船が用意されているらしい。移動が目的だから、いま乗っている船ほど豪華ではないだろうけど。

 

そういえばあの島には、海やホテル以外にもフライボードとか、洞窟とか…楽しめるものが沢山あるようだし、暗殺が終わった後も遊ぶのに退屈しなさそうだ。中には暗殺に使えそうな物がありそうだったけど。

 

「…もうすぐだね。殺せんせーの暗殺」

「そうだな」

 

考えてみれば、もうその時間が迫ってきている。期末テストの時に得ることが出来た、触手を破壊できる権利が8つ。それを活用して暗殺する絶好のチャンスがもうすぐだ。

 

クラスのみんなも、今回の暗殺に気合いを入れているだろう。1学期の暗殺よりも成功確率が高いから。

 

もちろん俺も全力で参加するつもりだ。何しろ触手を破壊する事になるから、暗殺開始の時には殺せんせーの1番近くにいる事になる。全力で殺せんせーを…

 

 

 

 

 

 

 

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『俺を1人にしないでくれよ!』

 

 

ちょっと待て。殺すって…『そういう事』だよな。殺すって事は…相手が死ぬって事だよな。

殺せんせーを殺せば、殺せんせーは死ぬ。じゃあ二学期以降あの先生に会う事はもう無くなる。

 

それって…良いのか?俺は…俺らはそれで良いのか?

 

 

 

「…どうしたの?学真くん」

「あ、いや…なんでも……」

 

 

…つい考え込んでいた。矢田を心配させてしまった。いけないな…こういう事はいま考えるべきじゃないのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か悩みがあるのかい?若人よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、男の声が聞こえた。しかも、俺に話しかけているようだ。

 

気づくと後ろに1人の男がいた。かなり年上の…30代ぐらいの、ヒゲを生やしている男性だ。俺らと同じく船上パーティーの参加者なんだろう。サングラスが凄い気になるけど…

 

「いや、特に…」

「本当か?悩みがあるんだったら、オジさんが相談に乗るよ」

「大丈夫です。ありがとうございます」

 

…かなりめんどくさいオジさんだな。なんで赤の他人に悩みを言わないといけないんだ。

 

「学真くん、あの人って…?」

「全く知らない。多分パーティーの参加者だと思うが…」

 

矢田も少し警戒している。まぁ俺から見ても怪しいしな。殺せんせーが『怪しい人にはついていかないようにしましょう』と言われたし、関わらない方がいいだろう。

 

 

「あ!見て。魚が沢山いるよ」

 

 

矢田に言われて海の方を見ると、確かに魚が沢山いた。凄いな。最近海で泳いでいる魚なんて見た事ないから新鮮な感じがする。

 

 

「あ!魚だ〜」

 

 

さっきまで走っていた子どもも、海で泳いでいる魚に気づいたみたいだ。魚を見るために柵から身体を出して…

 

「ちょっと待て!その体勢は危ない!」

 

慌てて叫んだが、遅かった。子どもは魚を見るために宙に浮いている。その状態で頭を前に出すと、そのまま身体が前に傾いて海に落ちていく。

 

矢田も焦っている。俺も慌てていた。もう何をしても間に合わないと言うのに…

 

 

 

 

 

 

「ほっ!!」

 

 

 

 

ダン、と大きな音が聴こえて、海に飛び出す男が見えた。その男は、さっき俺に話しかけてきた怪しいオジさんだった。船から飛び降りて姿が見えなくなる。柵からも顔を出してみるととんでもない物が見えた。

 

 

 

海に飛び出したオジさんは、落ちそうになっていた子どもを捕まえて柵に捕まっている。

 

「嘘だろ…!」

 

簡単にやっているが、かなり難しい事をやってのけている。子どもを捕まえるのも柵に捕まるのも空中だ。重力がかかってるから、当然体は落ちていく。タイミングとかも難しいし、何より腕の負担が半端ない筈だ。子どもを抱えたままぶら下がっているわけだから。

 

「いっせーの…せい!」

 

大きな声と一緒に身体を持ち上げる。足を段差に引っ掛けて、立ち上がり子どもを船の上に下ろした。そして柵を乗り越えて自分も船の上に戻る。

 

「気をつけて遊べよ。君はまだまだこれからがあるからさ」

 

子どもは結構楽しそうだった。危なかったと言うのに呑気な…

 

オジさんの方は子どもを撫でて、歩き始める。右手を上に上げているのはどっからどう見てもカッコつけているものだ。

 

「…なんだ、あのオッサン……」

 

いつのまにか魚の事を忘れて、離れていくオジさんの後ろ姿を見ながら、俺たちは呆然としていた。

 

 

 

 

◇三人称視点

 

男は誰もいない場所に移動する。船に乗り上げた時にポケットに入れていた携帯電話が震えている事に気づき、誰もいない場所で取るためだ。

船の進行方向と真逆に向かいながら、ポケットから電話を取り出した。そしてボタンを押して携帯を耳に近づける。

 

「ほいほい。あぁ、大丈夫だよ。盗聴は出来ないようにしてある」

 

誰かに盗聴される事はない、と言う事を聴くと怪しい会話のように聞こえるだろう。もし近くに誰かがいれば疑いの目が向けられるに違いない。

 

「…へぇ、俺もその仕事に参加すれば良いの?」

 

電話を通して話している相手は、彼の同業者である。その同業者からの仕事の電話だった。

 

「……それはまた、酷な仕事をやらせるね」

 

かなり複雑そうな顔をしている。何しろ彼にとってあまり乗り気ではない仕事なのだ。

 

 

 

中学生という若者の殺戮は。

 

 

 

 

◇学真視点

 

船の中には、さっきの大部屋以外にも色々な部屋がある。ゲームが出来る部屋とか、飲み物を売っている部屋とか。カジノがあるとも聞いてはいるが、俺たちはそれに参加できる歳ではない。

 

俺たちが参加でき、かつなるべく楽しめそうな部屋を選びながら、船の中を歩きまくる。

 

無理をさせてこのパーティーに参加させたのは俺だから、矢田に嫌な思いをさせないように動くのは当然だ。

 

『まもなく岸に到着します。本日はまことにありがとうございます。お忘れ物のないよう、くれぐれもお気をつけてください』

 

そうこうしているうちに終わりの時間が近づいてきた。大したトラブルも起きなくて助かった。ここで問題が起こってトラウマが出来てしまったら嫌だし。

 

 

 

 

 

 

船から降りて、近くの建物の中で着替えを終わらせた後、リムジンで矢田の家の前まで移動する。行くときもそこで乗ったから、帰るときも同じ場所に着くようになった。

 

そしてリムジンから降りて荷物を取り出す。一言お礼を言われて、リムジンは遠くに行ってしまった。

 

「…今日はありがとな。色々と付き合ってもらって」

 

お礼をするつもりだったのに、逆に苦労させてしまった。申し訳ないとしか言いようがない。それにも関わらず付き合ってくれて本当に助かった。

 

暫く時間が経ち、矢田が笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん、楽しかったよ。良かったらまた連れてってね」

 

矢田の顔が少し紅くなっている。夕暮れの光が結構強いからだろう。

 

その矢田の顔が、少し綺麗と思ってしまった。

 

 

 

 

矢田は荷物を持ったまま、自分の家に帰る。矢田の姿が見えなくなるまで俺は矢田の姿を見守っていた。姿が見えなくなった時、意識を取り戻す。

 

まさか見惚れていたという訳じゃないよな…

 

自分の家に向かって足を進める。恥ずかしい気持ちを落ち着かせるために暫く立ち止まっていたかったけど、いま止まっている場合じゃない。

 

 

 

 

 

殺せんせーの暗殺期限まで、あと7ヶ月。いよいよリゾート島での暗殺が、始まる一歩手前になった。

 

 




恋愛描写って難しい…

次回『暗殺計画の時間』

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