浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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テンポ早い(感動)




第44話 寺坂の時間

三人称視点

 

とある崖を見ている2人の男がいた。寺坂に今回の計画を実行するように仕向けたシロと、彼が保護している少年、イトナだ。

彼らの見ている崖に、プールから流れてきた水が流れ出てきた。彼の目論み通りに事が進んだ事を示していた。

 

「プールを壊して生徒ごと放流する。私の計算では7〜8人死ぬ。殺せんせーは水に入って生徒を助けないといけない。

マッハで助けては生徒が耐えられないから、通常のスピードで生徒を助けだすことになる。気遣って助けてる間に、奴の触手はどんどんと水を吸っていく」

「少しの水なら粘液を出せば防げるぞ」

「そうだねイトナ。周囲の水を粘液で固めて浸透圧を調整できる。

だが、寺坂君が教室に撒いた薬剤の効果で、奴の粘液は出尽くしている。

水を防ぐ手段は無く、生徒全員を助ける頃には、奴の触手は膨れ上がって自慢のスピードを失っているよ」

 

目論み通り、というように言う。寺坂には作戦の全貌を伝えなかった。彼は、全てを伝えなくても利益さえチラつかせば動いてくれると思っていたからだ。あのターゲットが担任を務めている教室から浮き、かつ思考力に欠如がある彼は、シロにとって最も扱いやすい生徒だった。

 

◇学真視点

 

プールから爆音が聞こえ、急いでプールに来れた。そこで俺とカルマは、信じられないものを見た。

 

「…何これ?爆音がしたらプールが消えてんだけど」

 

プールの壁が壊され、その中にあった水は全て消えている。木陰や崖にポツポツと生徒がいるのは、水に流されている生徒を殺せんせーが助けたんだろう。全員いるようには見えない…助かっているといいけど。

 

「…おれは、何もしてねぇ…」

 

俺らのすぐ横で、弱々しい声が聞こえた。横を見ると、消えているプールを見て呆然としている寺坂がいた。

 

「話がチゲェよ…イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに…」

 

…!

 

「なるほどね。自分の立てた計画じゃなくて、まんまとあの2人に操られてたってわけ」

 

…そう言うことか、全て繋がった。

おそらく、この作戦は、イトナとシロが立てた計画だろう。考えたのはおそらく、シロの奴だな。前に教室で仕掛けた暗殺の時に色々と計算してあの有利な舞台を作り上げたシロのことだ。寺坂が何も考えてないことも、まんまと騙されることも、クラスのみんながピンチになった時に殺せんせーが助けに出ることも、全部分かっていたんだろう。

作戦の全貌は分からねぇが、クラスのみんながプールに入っていたことから察するに、殺せんせーを水に落として殺すという作戦だと思っていたんだろう。それで、あの仕切りの壁が壊れて、みんなが流されたというわけか…

 

「…!言っとくが、俺のせいじゃねぇぞ!こんな計画させる方が悪りぃんだ。みんなが流されたのも、全部奴らが…!」

 

 

…コイツは…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《バキ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマや俺に焦って言い訳をしている寺坂に、カルマはその頰を殴った。

 

「標的がマッハ20で良かったね。でなきゃお前大量殺人の実行犯にされてるよ。

流されたのはみんなじゃなくて自分じゃん。

人のせいにするヒマあったら、自分の頭で何したいか考えたら?」

 

カルマは直ぐにみんなが流された方に向かう。

カルマの言う通りだ。殺せんせーがマッハ20で、みんなを助けることが出来たからなんとかなったが、死人がもし出れば、寺坂が実行犯にされていた。まんまとシロの思惑通りに動かされてしまった。

 

「俺は、どうすればいい…?」

 

寺坂は意気消沈して、呆然としている。いままで何も考えてなかったから、いざ危険な状態になった時にどうすれば良いのかが分からないんだろう。

シロの作戦である以上、狙いは殺せんせーの触手に水を吸わせることだ。その状態で、イトナと一騎打ちをするつもりだろう。俺も直ぐにソッチに行きたいが…この状態になっている寺坂を放っておくわけにもいかないな。

 

「…カルマが言っただろう。自分の頭で考えろって。なんも考えてなくてまんまと騙されるテメェにも、考える頭はあるし、動くための足もあるだろ。この先どうするかは…テメェで決めろ」

 

俺はそれだけを言って、カルマの後を追った。寺坂の手を引くことも、無理やり連れてくることもしない。こっから先はコイツが決めることだ。

俺はゆるさねぇぞ、こんな暗殺…!みんなを傷つけるような事は絶対ゆるさねぇ!

 

◇三人称視点

 

プールの水が流され、生徒も流されている時、殺せんせーは生徒たちの救助に向かった。水が流されている先は険しい岩場、そのままにしておくと、溺れるか崖に落下するかで死んでしまう。

マッハの速度で助けることも、粘液を出して水を防ぐことも出来ない。水の中に入れた触手は、どんどんと水を吸っていく。

 

(彼で最後…全員救助!)

 

吉田を救い出したことで、生徒を全員助け出すことが出来た。

だが息をつく暇はない。殺せんせーの身体に、白い触手がまきつく。

 

(触手…!?まさか…)

 

その触手を見て、殺せんせーはこの爆発を仕掛けた者が誰なのか、何となく分かった。

そのまま殺せんせーは崖の下に叩き落される。正確には崖の下に溜まっている水たまりに。

 

「はい計画通り、久しぶりだね、殺せんせー」

 

起き上がった殺せんせーは、シロとイトナの姿を見る。そこで彼らがこの計画を仕掛けたと言うことを理解した。

 

「ああ、因みに君が吸ったのはただの水じゃない。触手の動きを弱める成分が入っている。あの坊やにプール上流から薬剤を混入させておいた」

 

前日の夜、寺坂がプールに入れていた液体は、触手を弱める成分が含まれている薬剤だった。殺せんせーの動きをトコトンまで鈍らせる作戦だ。水を吸い、触手が弱まり、完全にイトナが有利、それは誰の目から見ても明らかだ。

 

「前にも増して積み重ねた数々の計算、他にもあるが戦えば直ぐに分かるよ」

「さぁ兄さん、どっちが強いか改めて決めよう」

 

◇寺坂視点

 

俺は、自分が強いと思っていた。ろくに喧嘩もした事はねぇが、ガタイと声がデカイだけで大概の事は有利に運んだ。クラス内の弱そうな奴にターゲットを決めて支配下に置く。小学校じゃそれだけで一定の地位を保っていられた。

たまたま勉強もできたんで私立の進学校に行く事にした。深く考えずいつもの調子で楽勝だと思ってた。

 

だけど、この学校じゃその生き方じゃ通用しなかった。俺の持っていた安物の武器は、ここじゃ一切役立たないとこの時悟った。

 

落ちこぼれのE組に落ちて、同じような目的の無い連中と楽に暮らせると思ってたら、そこでも違った。

いきなりモンスターがやってきて、クラスにデカい目的を与えちまった。

取り残された俺はここでも、目的があって計算高い奴に操られて使われてた。

 

『ビジョンとか予測とかを持つ事は、今のお前が出来るほど簡単な事じゃねぇぞ』

『流されたのはみんなじゃなくて自分じゃん』

 

学真もカルマも、こうなる事を読んでいたんだ。これが、何も考えてない俺と、常に考えている奴らとの違い、てやつなのかよ。

 

「…くそ!」

 

 

◇学真視点

 

プールが流れていった先にたどり着く。そこの下では、殺せんせーがイトナの攻撃を受けていた。あの水をかなり吸ったせいで、殺せんせーの動きがかなり遅い。明らかに殺せんせーが不利だ。

 

「マジかよ…あの爆破は、あの2人が仕込んでたのか」

「でも押されすぎな気がする。あの程度の水のハンデなら、何とかなるんじゃ…?」

 

…確かにそうだ。殺せんせーの触手が水を吸っているにしても、殺せんせーはあまり動いていない。どこか集中してないと言うか…何かに気がそれているみたいな…

 

「水のせいだけじゃねぇ。力を発揮できねぇのは、お前らを助けたからだよ。見ろ、タコの頭上を」

 

すると寺坂が来た。寺坂の言う通り殺せんせーの頭上を見ると、原と村松と吉田が崖の上にいる。まだ村松と吉田は崖に捕まっているから良いが、原は崖の上にある木の枝に捕まっている。…ポッチャリなもんだから木が今にも折れそうなんだけど…

 

「あいつらの安全に気を配るからなお一層集中できない。

あのシロの奴ならそこまで計算してるだろうさ。恐ろしい奴だよ」

「のん気に言ってんじゃねーよ寺坂!!原たちあれマジで危険だぞ!!

おまえひょっとして、今回の事全部奴等に操られてたのかよ!?」

 

前原が寺坂に言う。確かに原がマジでピンチだ。呑気にしている場合じゃねぇ。

寺坂はこの状態をどう思っているだろうか。知らなかったとはいえこの事態を巻き起こしてしまったような感じだ。少なくとも何か思うことがあるはず。現にさっきまで呆然としていたはずだし。

 

すると寺坂は、フッと笑った。

 

「あーそうだよ。目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は、頭の良い奴に操られる運命なんだよ。

 

だがよ。操られる相手ぐらいは選びてえ」

 

寺坂の目は、本気だ。さっきまでの自信なさげな様子とは全然違う。しっかりと決心している奴が持つ目だ。

その顔はいままでの顔とは全く違って見える。いままで本気になった寺坂を見たことないし。

 

「奴等はこりごりだ。賞金持って行かれんのもやっぱり気に入らねぇ。だからカルマ!学真!テメーらが俺を操ってみろや!

その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!!カンペキに実行してあそこにいるのを助けてやらァ!!」

 

どうやら寺坂は、クラスのみんなと動くことに決めたようだ。それは良かったと思う。寺坂のそのガタイは、暗殺とかこういう時に役立つ。寺坂の参加は、大きな戦力が加わったようなものだ。

 

「…良いけど、実行できんの?俺の作戦…死ぬかもよ」

「…俺も正直、安全は保証できないぜ」

「やってやんよ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ」

 

 

 

 

 

 

さてどうするか。ひとまずは原が1番危ない。いつ木の枝が折れて地面に落下してもおかしくない。原の救助を優先した方が良いだろう。

だが、ベストな方法が全く思いつかない。

作戦その1、木の枝の上で原を引き上げる。けど原を引くほどの力なんてないし何より足場が悪いから、引っ張りあげようとしても無理なのが分かってしまう。

作戦その2、地上に向かって原を飛ばす。方法がわかんねぇし、出来たとしても原が怪我をしてしまうから駄目だ。

作戦その3、崖の下で落ちてくる原を支える。うん、論外。潰れるのが目に見える。

 

「良いのが思いつかねぇ!なんだこの無理ゲー!」

「お、落ち着いて学真くん」

 

渚にそうフォローされて我に帰る。そうだ、ぎゃあぎゃあ文句を言っている場合じゃない。なんとかして今出来る事を考えて…

 

「思いついた!原さんは助けずに放っとこう!」

 

…………

 

「おい、カルマふざけてんのか?原が1番あぶねぇだろうが!ふとましいから身動き取れねーし、ヘヴィだから今にも枝が折れそうになったんだろうが」

 

俺が必死になって考えている横でおかしな事を考えている奴に大声で怒鳴る。どうやって原を助けようかて考えているのに、その横で原は助けずに放っとこうなんて言う奴がいるか。

 

「まぁまぁ、良いから。それよりも学真、気づいた?寺坂、昨日と同じシャツなんだ」

 

カルマに言われて寺坂を見る。その制服が昨日着ていた制服と同じかどうかなんて普通は分かんないけど、昨日と同じ場所にシミがついているから、昨日と同じシャツなんだということなんだろう。

 

「ズボラなんだよねー、やっぱ寺坂は悪巧みは向いてないわ」

「あ!?」

「でも、頭は悪くても体力と実行力はあるから、お前を軸に作戦立てるの面白いんだ。

俺を信じて動いてよ。悪いようにはしないから」

「…バカは余計だ。良いから速く指示よこせ」

 

寺坂のシャツのボタンをちぎり、カルマは作戦を話しはじめた。…やっぱり、悪巧みとかはカルマの方が向いている。コイツは、学力が高いだけじゃなくて、それを活かせるから凄いんだよな。

カルマが寺坂に作戦を話している時、崖の下にいる殺せんせーの様子を見る。当たり前だけど、殺せんせーが不利だ。パンパンに体が膨らんでいて、かなり動かし辛そうにしている。

 

「さぁて、足元の触手も水を吸って動かなくなってきたね。トドメにかかろうイトナ、邪魔な触手を全て切り落とし、その上で『心臓』を…」

 

シロはいよいよトドメを刺そうとしている。これは思った以上に猶予がないかもしれない。速くしないと、殺せんせーが殺れてしまう。

 

「おいシロ!イトナ!」

 

するとそこに寺坂が降りてきた。カルマの話は終わったようだが…どうするつもりだろうか。

 

「…寺坂くんか。近くにいたら危ないよ?」

「よくも俺を騙してくれたな」

「まぁそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いてた君にとっては丁度いいだろ?」

「うるせぇ!てめーらはゆるさねぇ!」

 

寺坂はシャツを脱ぎ、水溜まりに足を踏み入れた。

 

「イトナ!テメェ俺とタイマンはれや!」

 

…うえ!?イトナとタイマンかよ…常人があの触手の攻撃を受けたら無事じゃすまねぇぞ。

 

「やめなさい寺坂くん!君が勝てる相手じゃない!」

「すっこんでろ膨れタコ!」

「…布1枚でイトナの触手を防ごうとは、健気だねぇ。黙らせろイトナ、殺せんせーに気をつけながら」

 

…完全にイトナと寺坂の戦闘モードだ。シロが命令したし、イトナは間違いなく寺坂を攻撃する。

 

「大丈夫か、カルマ」

「いーんだよ、死にゃしない。シロは俺たち生徒を殺すのが目的じゃない。生きてるからこそ殺せんせーの集中を削げるんだ。

原さんも一見超危険だけど、イトナの攻撃の的になることはない」

 

…そういうものなのか?確かに一理ある。シロは俺たちを殺しはしない。シロは俺たちを殺せんせーの阻害要因として使っている。だから俺たちを殺す必要はない。

けど、殺す必要がなくても、危険なのは変わらない。あの鞭のような触手で叩かれたりしたら、生身じゃ無事では済まない。

 

《ドゴン!》

 

案の定、イトナは寺坂に触手で攻撃する。思いっきり腹に当たった。

 

だが、その後驚くことが起きた。寺坂のやつ、イトナの攻撃に死ぬ気で耐えたのだ。

 

「だから寺坂に言っておいたよ。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えばスピードも威力もその程度、死ぬ気でくらいつけってさ」

 

…マジか。仮にそれが分かっていたとしても、俺なら行きたくない。見るだけで痛いのが分かるほどだし。

だが寺坂はそれができた。あのガタイの良さと、度胸と、根性がそれを可能にしているんだろう。

 

…ようは、才能の使いようか…

 

「よく耐えたね。ではイトナ、もう1発あげなさい。背後のタコに気をつけながら」

 

シロの言葉に従い、イトナは触手を引き戻す。さっき寺坂が持っていたシャツがその触手に引っかかっている。イトナはそれに構わず第2撃を繰り出そうとしている。

 

「…ッ?くしゅんッ!」

 

…へ?イトナが突然クシャミを…?

 

「寺坂のシャツが昨日と同じって事は、昨日寺坂が撒いたあの変なスプレーの成分をたっぷり浴びたシャツって事だ。それって殺せんせーの粘液をダダ漏れにした成分でしょ?イトナだってタダで済むはずがない」

 

…ああ、そう言えば、昨日俺と村松が教室の外にいた時に、寺坂が嫌がらせとしてスプレーを撒き散らしたって言ってたな。それって、今朝殺せんせーの粘液を漏らす物だったのか。

 

するとバキッて音が聞こえる。いまイトナが怯んだ隙に、殺せんせーが原を助けたようだ。

 

「…で、イトナに一瞬でも隙を作れば、原さんはタコが勝手に助けてくれる」

 

カルマは指で何か合図をしている。俺らからあの水溜まりに向かって移動しているから…意図が何となく分かった。

 

「吉田!村松!お前らは飛び降りれんだろそこから!デケーの頼むぜ!」

「…マジかよ」

「…しょーがねぇな」

 

「殺せんせーと弱点同じなんだよね。じゃあ同じ事やり返せばいいわけだ」

 

「…マズい!」

 

 

崖から吉田と村松が、崖の上から俺たちが一斉に水溜まりに着地する。その衝撃で水が飛び散り、イトナの触手が水を吸った。

 

「だいぶ水を吸っちゃったね。あんたらのハンデが少なくなった。でどうすんの?俺らも賞金持って行かれんの嫌だし、そもそもみんなあんたの作戦で死にかけてるし、ついでに寺坂もボコられてるし。

まだ続けるんなら、コッチも全力で水遊びさせてもらうけど?」

 

水溜まりに着地した生徒が手やバケツ、袋などを使って水を掬う。相手の動きによっては思いっきりかけるつもりだ。

 

「…してやられたな。丁寧に積み上げた作戦が、たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった。ここは退こう。触手の制御細胞は、感情に大きく左右されるシロモノ、この子たちを皆殺しにしようものなら、反物質蔵がどう暴走するか分からん。帰るよイトナ」

 

どうやら撤退するようだ。まぁ、この状況になる事は流石に予想してなかっただろうし、打開策もないんだろう。引き下がると選択するのも当たり前か。

シロはイトナに帰るように言う。普通ならイトナはシロの言うことに従うだろう。

 

だがイトナは、かなり悔しそうな表情で歯を食いしばっていた。まぁ…悔しいんだろう。前に会った時もそうだったが、イトナはどこか勝ち負けに拘るところがある。まんまとしてやられたことが、納得いかないんだろう。

 

「どうです?みんなで楽しそうな学級でしょう。そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」

 

そんなイトナに、顔がかなり膨らんでいる殺せんせーが話しかける。やっぱりイトナには教室に来て欲しいようだ。あそこまでやられておいて、よく誘うよ。

 

イトナは小さく舌打ちして、ここから離れるシロについていく。どうやら今回も、この教室に通うつもりは無いようだな。

 

「ふー、なんとか追っ払えたな」

「良かったね殺せんせー、私たちのお陰で命拾いして」

「ヌルフフフフ、勿論感謝してます。まだまだ奥の手はありましたがね」

 

ひとまずシロたちを追っ払ったことに一安心だ。あいつらのせいでみんなが死にかけた上に、賞金まで持っていかれるところだった。とりあえずは安心でき…

 

「そう言えば学真くん、さっき私のこと散々ディスってたよね。ヘヴィだとかふとましいとか」

 

るようではないようだ…

 

「…い、いや…あれは状況を客観的に分析してだな…」

「言い訳無用!動けるデブの恐ろしさ、見せてあげるわよ!」

 

どうやらさっき俺が()()()分析していた時に言ったセリフが気に入らないようだ。とは言ってもあの状況を打開するには()()()分析して()()()対処しないといけないから言ったのであって、あれはしょうがないと原も()()()

 

「何回も強調して言ってんじゃないわよ!」

 

…あんまりダァ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後は暫くカオスだった。原にも追いかけ回されたけど、何やら寺坂とカルマも何かもめていたようで、水たまりの中で大乱闘みたいな事が起こった。水がバッシャバッシャ飛ぶから体が濡れまくっている。

まぁ…これで寺坂もクラスに馴染んでくれた。それは本当に良かった。あのガタイの良さと実行力のあるアイツが暗殺に取り組んでくれれば、E組の戦力がかなりアップする。この出来事は、大きな戦力の確保に繋がった。

 

とりあえずはあの校舎に戻る。みんな制服に着替えないといけないし、荷物もあっちにあるしな。

 

だが俺は校舎に行かずに暫くそこにいる。なんでかって?服を乾かしてんだよ。俺制服のまま水に突っ込んだし。自分のマヌケさに泣けてくる。

とは言っても漸く乾いてくれたから、その制服を着る。少し違和感あるけど、ワガママは言ってる場合じゃない。取り敢えずは校舎に…

 

 

「…!?」

 

パッと振り返る。そこは森があるだけだ。別に誰かいるわけじゃない。

 

だがそれが信じられなかった。

 

いま…

 

 

 

 

……誰かいなかったか…?

 

 

 

 




最後に出て来た人物とは一体誰なのか?
次回からオリ回入ります。

次回『侍の時間』

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