浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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お久しぶりです!投稿遅れてすいませんでしたァァァ!!

あ、そうそう。学真くんが来た時間帯は、ビッチさんがきた直後です。


第3話 距離感の時間

…視線が痛い。

 

ほぼ全員から警戒の目を向けられる、てこんなにキツイんだな。自己紹介を終わらせたはいいもののこれからうまくいくんだろうなと心配になる。

 

「はい、それではこれから一緒に楽しみましょう。席はカルマくんの隣です」

 

一番後ろの席を勧められた。まぁ端ぐらいしか空いてないから当然だろうなー…

 

それにしても…あの髪が赤いのが『赤羽 業(あかばね かるま)』か。校内じゃ素行の悪い生徒NO1として有名らしい。立て続けに暴行しているからE組に落とされたとのこと。

 

俺はそのカルマの隣の席に着く。

 

「やぁ、俺の名前は赤羽 業。よろしく」

 

「よろしくな」

 

「ところで1ついい?浅野くんってもしかして…」

 

はい早速来たよ。来るとは思ってたが、少々キツイなこれ。

 

「あぁ、そうだよ。理事長の息子だ」

 

隠す必要も無いので打ち明けることにした。

 

「へぇ…理事長の息子ね」

 

……こいつ、只者では無いな。そいつが纏っているように見えたのは、殺気。

 

 

「さて、それでは早速授業をしていきますよ。頑張ってくださいね浅野くん」

 

殺せんせーは授業開始の合図を出した。

 

 

……それにしても、やっぱり慣れねぇな『アレ』は。学校だから我慢しとこうかと思っていたが…

 

「なぁ、一つだけ我儘言っていいですか?」

 

「良いですよ。後敬語は要りません。この教室では無礼講で結構ですから」

 

「そうか…じゃあ俺の事なんだが…学真、て呼んでくれよ。浅野はちょっと、な……」

 

 

 

余り浅野とは呼ばれたくない。我儘かもしれないが、それで名乗りたくは無かった。

 

「分かりました。では学真君、一緒に頑張り殺しましょう」

 

こうして、俺の暗殺教室が始まった。

 

 

 

 

 

殺せんせーの授業は分かりやすかった。少なくとも本校舎の先生よりは断然分かりやすい。何故かと言うと話し方もあるだろうが何より…

 

 

「以上が一次不等式の一般的な解き方ですが…方程式に比べてルールがややこしい。そこで、実際に解いてみましょう。ルールも暗殺も、実戦で学ぶ方が良い。皆さんと一緒に解いていきます。そう身構えなくて良いですよ、学真君」

 

「……はい」

 

この人はちゃんと俺らを見ている。だからなのかもな。気休めかもしれないが、見てくれているんだと思うから気が楽になる。本校舎の先生じゃ『ついて来れて当然、出来ないなら出来損ない』スタイルだからな。

 

「あぁそうそう、昼休みになったら職員室に来てください。君の実力を図るテストをします」

 

「分かった」

 

触手で教えられる奇妙な授業は、何故か1番分かりやすい気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ドヒュン!!》

 

 

 

 

ぬお!突然触手が後ろに向かって…あ、もう戻してる。早いなーマッハ20

 

「菅谷くん!!」

 

触手の手には1冊のノート…恐らく菅谷のノートだろう。比較的左後ろにいる、顔が何となくノッポに見える男だ。さっきから何か描いていたが…ばれた様だ。当の本人はビビってやがる。

 

 

殺せんせーの顔は何故か黒い。あ、コレ怒ってんな…

 

 

 

 

 

 

「惜しい!先生はもっとシュッと塩顏ですよ」

 

「どこが⁉︎」

 

 

 

 

いやいやいや!怒んねーのかよ!しかも絵の採点してるし!挙げ句の果てに菅谷が書いたのより遠ざかってるし!

 

どっから突っ込めばいいか教えてくれ!

 

 

 

 

 

 

 

◇昼休み

 

「あぁ〜…疲れた」

 

小テストが終わり机で突っ伏す俺。5教科分のテストなんて疲れる。俺はそのままの体制で居続けていた…

 

 

 

 

 

「お疲れ、学真くん」

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

 

後ろから…というより真後ろから声をかけられた。その時何故か思わず勢いづけて後ろを振り返っていた。

 

 

 

「あぁ…ごめん、驚かせちゃった?」

 

 

 

そう言って苦笑いしていたのは……

 

「確か……渚?」

 

一見女性にしか見えない、束ねてる髪も長いし顔つきも女性っぽい男性の渚だった。

 

「あ、うん。すごいね、名前言ってないのに…」

 

渚は俺が名前を覚えていたことに驚いていたが…俺は渚に驚いてた。

 

いくら疲れていたといってもそこにいたことに気付けなかった。普通は大体気づく。なのに……

 

 

「テストはどうだった?殺せんせー、結構しつこいから集中できないでしょ」

 

……確かにな

 

テスト受けている間俺の様子を分身で囲んでみていた。度々『解けてますか〜?大丈夫かな〜?』みたいなこと囁いてくる。腹が立つからナイフを刺そうとしたら避けられた。チクショウ

 

 

「まぁテストの問題はそう難しく無かったから大丈夫だ」

 

「そっか…やっぱり才能が違うね」

 

渚はなに食わぬ顔でそう言った。まるで、自分に自信が無いように。

 

 

 

「ケッ、気にくわねぇぜ」

 

 

突如低くて乱暴な声が聞こえた。右の端に座ってるガタイのいい男。確か…寺坂 竜馬、て言ったな。

 

 

「成績も良くて育ちも良くて、何でE組に落ちてんだよ。エリート様がこんな所に来るなんて大丈夫なのかぁ?」

 

うわなに腹立つ。これ喧嘩売られてるよね。

 

この寺坂はカルマと同じく素行が良くないとは聞いている。だが何か違う。何が違うんだと言われても困るが…速い話思考の違いだ。カルマは悪戯で相手の反応を面白がる所があるが、寺坂の場合、気に食わない奴に食ってかかるだけな気がする。

 

 

 

「ちょ、ちょっと寺坂くん…」

 

渚が止めようとするが聞く耳を持たない。

 

「大体よ、ここの理事長の息子がエンドに来てるのが気にくわねぇ。A組や家でのほほんとしているてめぇが…⁉︎」

 

 

寺坂は口を閉じた。ま、突然立ち上がって目先に指を突きつけられてビビったんだろう。

 

 

 

 

少しイラっとしたしな。

 

 

 

 

 

 

 

「今…お前は暗殺されていた。ベラベラと喋っている間に目を潰され首元を斬られた」

 

 

 

辺りが静まった。俺の行動が意外すぎたのか、それとも俺の言葉に呆気にとられていたのか……どうでもいいが

 

 

 

「俺を本校の生徒のような平和バカだと思うなよ。俺の家は常に戦場だった。寧ろ平和バカはお前だ、寺坂。油断してると……足元すくわれるぜ」

 

 

寺坂は何も言わない。言う気配すら無い。

 

 

チャイムが鳴り、俺はそのまま自分の席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《プー…》

 

 

 

 

 

……

………

…………

 

 

 

何か変な音したぞ今。いやちょっと待て、イスが何か柔らかい…つーかなんかある。

 

 

 

 

うん……

 

 

「油断してると……足元すくわれるぜ」

 

カルマァァァァ!!!いつの間に俺の席にブーブークッション仕掛けていやがったぁぁぁ!!つーか待て!クラス全員で俺を冷めた目で見るなァァァァ!!!

 

 

 

 

 

その後5時間目と6時間目があったが、何をしたのか全く覚えてない。

 

 

 

 

 

 

◇放課後 三人称視点

 

授業が終わり、職員室で烏間は学真が受けたというテストを眺めていた。先ず、テストの成績は良好だ。ほとんど満点に近い点数を取っている。理科及び数学は苦手だからなのか他のに比べて若干低いが、それでも申し分ない点数だ。最高得点は国語の100点、正真正銘の満点だった。

 

(成績はかなり上位、赤羽 業と競えるレベルか……ところでこれは一体……?)

 

「どうしました烏間先生?」

 

烏間は1つの紙を見ていた。何の教科でも無く、上から順番に番号が書かれてあり、解答欄にはE組の生徒が出席番号順に記されてあった。

 

「この紙は何だ?」

 

「あぁ、1つ試してみたんですよ。学真くんの『才能』を」

 

殺せんせーは烏間が見せた紙を見てそう言った。

 

「才能?」

 

「えぇ。授業中に気づいたんですが、彼は生徒の名前を覚えていた。なので出席番号順に名前を書くテストをしてみたら、全て正解してました。姓名全て」

 

烏間は動揺を隠しきれないようだ。彼がこの校舎に来たのは昨日を含めて2日。その間に全ての生徒の名前を知る機会は……

 

「昨日、彼は出席簿を見ていました。その時に覚えたのでしょう」

 

殺せんせーに出席簿を見せてくれと頼んで読んだ時のみ。つまりそこで全ての生徒の名前を覚えた、という事だ。

 

 

「これは…記憶力のレベルでは無い。一度見ただけで全て覚えるなど…」

 

「瞬間記憶能力。巷ではそう言います」

 

 

瞬間記憶能力

右脳の極端な発達により起こりうる能力。一度見たものを映像として記憶する。速い話、完全な形で記憶し忘れることが無いという事。

 

しかし、良いこと尽くしではない。右脳が極端に発達する代わり、左脳の働きは弱い。俗に言う、論理力や想像力及び注意力に欠け、ミスを頻発する傾向がある。事実彼は曜日を間違えたり、教室でコケたりしている。

 

「飛び抜けた才能を持ちながら、一方でかなりの弱さを背負っている。彼が浅野家になじめずにいるのにはそこもあるでしょう。だからこそ彼は努力した。家で上手くやっていくために…その結果、彼は中々成績が良い。ですが…クラスに馴染みにくいようですね」

 

殺せんせーが言う通り、浅野 学真はクラスに馴染めずにいる。1番のきっかけは、彼が浅野の家だという事。快く思っている生徒の方が少ないだろう。

 

「さて…これからどうしましょうか」

 

 

◇浅野視点

 

学校が終わり、家に帰る…ことは無かった。どーせやる事ねぇし教室で席に座り眠っていた。

 

ハァッ、これが劣等感か…家で何回も経験してきたが未だに慣れない。その時いつも神を恨む。どうしてこうも、才能の違う人間を作り出したんだ、てな…

 

まだこれからとやる気を絞り出した回数は数えきれず、才能を恨んだのはもっと多い。ほんっと、人間って不平等だよな…

 

《バァァン!》

 

校庭でいい音が鳴り響いた。俺はそれが何の音かは直ぐ分かった。何しろ、あれは…

 

「…行ってみるか」

 

俺はその音に向かって走り出す。ま、E組に『アイツ』がいるのは知ってるしな。

 

 

 

「凄いね杉野!昨日よりキレがかかっていたよ!!」

「へへっサンキューな渚!手のスナップのかけ方を工夫してみたぜ」

 

おお、いたいた…やっぱり野球のグローブがボールをキャッチした音だったか。校庭でキャッチボールをしていたのは、さっき俺をビビらせた渚と…やっぱりアイツか

 

「粋な事してんな、お前ら」

 

俺が声をかけたところで漸く気づいた。

 

「あれ、学真くん。見てたんだ」

 

渚はちょっと驚いたようだ。もう1人は…ま、予想通りの反応だ。

 

「…学真」

 

「久しぶりだな、杉野」

 

 

ボーイッシュな雰囲気を出す男、杉野(すぎの)だ。小さい頃からかなりの野球バカで、常に野球チームに入っている。何で知ってるか、て?そりゃあ…

 

「あれ?2人とも知り合い?」

 

とと、渚が聞いてきたな。それもそうか。

 

「まぁな、元野球部だし」

 

1年生になってから野球部に入った。その時に互いに会っているわけだ。2ヶ月でやめたがな。

 

「俺がコイツ見たときは驚いたよ。そん時はクラスがギスギスしていて話しかけれなかったがな」

 

正確には『出席簿を見た時』だが…ま、そんなに違わねぇだろ。

 

「お前こそ…何でE組に。勉強に打ち込むんじゃなかったのか?」

 

杉野が聞いてきたな。杉野の顔は若干暗い…当然か。何しろ、早々に退部した俺を快く思ってるわけないしな。

 

「まぁな。あそこは嫌だった。だから野球部を辞めて勉強一筋で行くつもりだったが…まさか暴力沙汰で落とされるとはな」

 

野球部の雰囲気は異常だった。スポーツは基本競い合いで、対戦相手と戦いながら互いに実力を高め合うものだと思っている。だがあそこは手柄の取り合いが基本だった。勿論より活躍する方が目立つからそうなりがちなのは分かるが…俺は何となく嫌だったから野球部と一緒にいるのに耐えきれなかった。

 

「…まぁいいか、野球部辞めた同士で争ってもしょうがないか」

 

杉野はグローブにボールを投げつける。ところで一つ気になったんだが…

 

 

「お前…フォーム変えたか?ボールも変化球を主としたものでは無かったのに…」

 

コイツはメジャーリーグの有田選手を真似たフォームをしていた。あの人の豪速球に憧れていたが、余りに遅くて打たれ放題だった。だが今のフォームは全然違うものだった。

 

「あぁ、どうやら俺は、豪速球よりも変化球の方が才能あるらしい」

 

 

 

 

「対先生BB弾をつけたボールを殺せんせーに向かって投げたのが原因で触手に絡まれて筋肉の構造を調べまくられた?」

 

…何を言ってるのか全く分からん。つーか何してんだ殺せんせー。

 

「そん時にさ…俺の肩の筋肉の配列が悪くて有田選手のような豪速球は投げれないけど、肘や手首の柔らかさは俺の方があるからそれをフルに使え、て言われたんだ」

 

「それが…変化球だと」

 

「おうよ、まだスライダーとカーブしか出来てないし曲がり方もイマイチだけどな」

 

杉野は意気揚々と語る。…気のせいだろうか、前より楽しそうだ。

 

「もっと頑張るつもりさ。野球も暗殺も、俺の…俺なりのやり方で」

 

いや、気のせいじゃないか。杉野は凄く自信に満ち溢れている。

 

それにしても…『俺なりの』か…

 

 

 

『探してみようよ。僕たちだけの友達の作り方を』

 

 

 

…そういや、そうだったな。野球における才能は1つじゃない。いや、野球に限った話じゃないんだ。俺はそれを、アイツらと学んだんじゃねぇか。

 

 

 

「…その調子なら、チェンジアップも出来るんじゃねぇか?」

 

俺が発した言葉に杉野と渚は驚いたようだ。

 

「チェンジアップ?」

 

「一言で言えば減速する変化球だ。杉野程度の投球速度でも、チェンジアップと併せれば早く見せれる」

 

「程度、て何だ!!」

 

渚の質問に答えると杉野が突っ込んだ。てゆーか遅いのはお前が1番分かってたんじゃねぇか。

しかし、あんなやる気を出す奴を見ると、見ただけじゃ帰れないからな。

 

「あの建物が倉庫か?グローブはあるんだろ」

 

「え?学真くん…」

 

「ちょっと待ってろ」

 

一言言って俺は倉庫に入っていく。

 

想像はしていたが汚い…何だこの殺せんせーを模したようなボール。うわ!…体操服?『イリーナ』て書いてあるけど…てそんなことよりグローブは…あった。

 

寄り道はしたがグローブを持って校庭に出た。

 

「付き合うぜ、俺も。久しぶりに体を動かしておきたい」

 

渚の隣に立つ。すると渚が少しどいた。

 

「学真…お前」

 

「過去に啀み合ってようと、今ではクラスメイト。一緒に頑張ろうぜ。アイツを殺すために」

 

しばらく杉野は呆然としていたが、やがてスッキリした顔になり、俺にボールを投げた。それは了承の合図だった。

 

 

 

 

 

 

俺はまだ、このE組で上手くやっていけるかどうか不安だけど、少しずつでいいからE組の中に入りたい。難しいだろうけど、諦めずに頑張りたい。その為に、アイツらと頑張ったんだから。

 

 

 

 

 

「じゃあいいか。まず握り方はな…」

 




有難うございましたー。
てな訳で学真くんは野球部ということで杉野と知り合いにしています。そして彼は瞬間記憶能力持ちにしました。
因みにあえて、烏間先生とビッチ先生の授業は載せませんでした。次回に載せます。

次回 『訓練の時間』

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