浅野 学真の暗殺教室   作:黒尾の狼牙

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いま原作見て気づいたんですけど…多川 心菜っていましたね…
オリキャラの多川 秀人とは全く接点無いです。以上


第25話 イトナの時間②

イトナが殺せんせーごと床に触手を叩きつけた時、ほとんどの生徒は『殺ったか?』と思う。恥ずかしながら俺もそう思った。シロが出した謎の光で殺せんせーは一瞬動きを封じられた。触手同士の戦闘だとその一瞬はかなりの隙になる。

 

「いや…上だ」

 

だが、そうは行かなかった事を思い知らされた。寺坂が見ている上の方には殺せんせーが、蛍光灯にしがみついている。さっき殺せんせーがいた所には、何やら皮みたいなのが置いてあるだけだった。あれは一体…

 

「脱皮か。そう言えばそんな手もあったっけか」

 

シロの言葉を聞いて思い出した。殺せんせーは、月に1回脱皮する事が出来るんだった。脱皮はヤバイ時の緊急脱出用に使い、あるいはその脱皮した表皮で誰かを爆風から守る事が出来るらしい。

 

 

 

 

「でもね殺せんせー、その脱皮にも弱点があるのを知ってるよ」

 

シロが話すと同時に、イトナも触手で殺せんせーに攻撃をし始めた。脱皮に…弱点…?

 

「脱皮は見た目よりエネルギーを消費する。よって直後は自慢のスピードも低下する。常人にとってはメチャ速いことは変わらないが、触手同士の戦闘だと大きな差になる」

 

殺せんせーの弱点16 脱皮直後

 

「さらに、イトナの最初の奇襲で腕を失い、再生してたね。それも結構体力を使うんだ」

 

殺せんせーの弱点17 再生直後

 

「私の計算ではこの時点で身体的パフォーマンスはほぼ互角。また触手の扱いは精神状態に大きく左右される」

 

殺せんせーの弱点2 テンパるのが意外と速い

 

「予想外の触手によるダメージの動揺。いま現在どちらが優勢か、生徒たちから見ても一目瞭然だろうねぇ。さらに、献身的な保護者からのサポートで殺せんせーの動きを封じる」

 

殺せんせーの弱点18 特殊な光を浴びると固まる

 

な…なんだ、これ…次から次に新しい弱点が明かされている。なんでアイツ、そこまで詳しく知ってんだよ。

脱皮も再生も、そんな弱点がある事を知らなかった。いや…知りたかった。

渚を見ると、渚は少し悔しそうだ。当たり前だ。今まで、暗殺の参考にするために、普段から殺せんせーの弱点を探って来た。渚だけじゃ無い。みんなで弱点を色々と調べて、殺せんせーに色々な暗殺を仕掛けた。

本当は、その弱点も自分たちで見つけたかった。本当は自分たちで追い詰めたかった。本当は自分たちで…殺したかった。

 

《ドゴォォォン!》

 

そんな事を考えている間にも、イトナとシロの猛攻は止まらず、殺せんせーの足を斬り落とした。殺せんせーは斬り落とされた足を再生させる。

 

「足の再生も終わったようだね。さぁ、次のラッシュに耐えられるかな?」

 

余裕そうに話すシロ。この状況では、俺から見ても殺せんせーが圧倒的に不利だ。ただでさえ触手を使ってる時点でヤバイ相手なのに、その上で弱点の数々をついた。恐らくは、次の攻撃を受ければイトナが勝つだろう。

 

「安心したよ。兄さん、俺はあんたより強い」

 

イトナもそれを確信してるようだった。もう一歩、あと1回で殺せんせーを殺せる域まで達してるのだ。

 

「ここまで追い詰められたのは初めてです。一見愚直な試合形式ですが、実に周到に計算されている。あなたたちに聞きたい事はたくさんありますが、先ずはこの試合に勝たねば喋りそうにありませんね」

「まだ勝つ気かい?負け犬…いや、負けダコの遠吠えだね」

 

…殺せんせーは何かしようとしている。まだ手はあるようだな。

 

「シロさん。この暗殺を考えたのはあなたでしょうが、1つ計算に入れ忘れてる事がありますよ」

「無いね。私の計算は完璧だから。やれ、イトナ」

 

シロの呼びかけに応じ、イトナは触手で殺せんせーに攻撃を仕掛けた。床ごと叩き潰すかのような猛攻。その結果、怪我を負ったのは…何故か、イトナの方だ。

 

「!!?」

「おや、落し物を踏んづけたようですねぇ」

 

殺せんせーはイトナの攻撃が来る一歩手前、その場から移動してた。そして…イトナが殴りつけた床には、対先生ナイフが落ちている。…いつの間に渚が持ってたのを抜いたんだよ。

 

「同じ触手なら、対先生ナイフが効くのも同じ。触手を失うと動揺するのも同じですね。けどね、先生の方が少しだけ老獪です」

 

殺せんせーは先ほど脱皮した表皮でイトナを包み、皮ごと教室に飛ばす。教室に飛ばしたという事は、リングの外に出たという事。

 

「先生の抜け殻で包んだから、ダメージは入ってない筈です。ですが君の足はリングの外についてる。先生の勝ちですね。ルールに照らせば君は死刑。もう2度と先生を殺れませんねぇ」

 

ニヤニヤと笑う殺せんせー、その顔を見れば誰もが拳を入れたくなるだろう。それはともかく…確かに勝敗は決した。

 

「生き返りたいなら、一緒にクラスでで学びなさい。性能計算では測れないもの、それは経験の差です。

君より少しだけ長く生き、少しだけ知識が多い。先生が先生になったのはね。それを君たちに伝えたいからです。

この教室で先生の技術を盗まなければ、君は私には勝てませんよ」

 

…相変わらずいう事はちゃんと先生だ。イトナが死刑なんて望む筈無い。殺せんせーは恐らく、イトナにもこの教室で学ばせたいんだろう。

 

 

 

 

 

「…勝てない…?」

 

あれ?

 

「おれは…?」

 

なんか…ちょっと…

 

「弱い…?」

 

イトナくん…ヤバくない…?

 

「そんな筈ない、俺は…負けない…」

 

ヤベェ、イトナが窓から飛び込んできた。しかもそれだけじゃない。

 

「黒い…触手…」

 

そう、黒い触手になってる。つまり、あいつはキレてる。まさか…勉強嫌い、てやつか…?

 

「俺は強い…!この触手で、誰よりも強くなった…誰よりも!」

 

やばい、そのまま殺せんせーに飛びかかる。殺せんせーを殺せても、あれじゃ俺らにまで攻撃が…!

 

《プシュ!》

 

突然、イトナが止まった。脱力するように、イトナの体が倒れ、眠るように瞼を閉じた。

 

「すいませんね、殺せんせー。どうもこの子はまだ登校できる精神状態ではなかったようだ。転校初日でなんですが、しばらく休学させてもらいます」

 

どうやら、シロが止めたようだった。袖になんか銃が仕込まれており、それでイトナを撃ったのだろう。気を失い、倒れこむイトナを抱えて、シロは教室から出ようとした。

 

「待ちなさい!担任としてその生徒はほっとけません。卒業するまで面倒を見ます。

それにシロさん!あなたからも聞きたい事が山ほどある」

 

…やはり妙だ。殺せんせーはどこか、シロに対して怒りを向けている。恐らくは…いや、確実に触手絡みだろうが…あそこまでムキになる先生は初めて見た。…いや、ムキになる事は珍しくはないが…

 

「嫌だね、帰るよ。力づくで止めるかい?」

 

シロは耳を貸さずにしている。殺せんせーは止めようと肩に触手を伸ばすと、触手が溶けた。

 

「対先生繊維、キミは私に触手1本触れられない。心配せずともすぐに復学させるよ。3月まで時間がないからね。私が責任持って家庭教師を務めた上で」

 

そう言って、シロは教室から去っていく。俺たちはその背中を、何とも言えない虚しさとともに見るだけだった。

 

 

 

 

…でだ。いちおうイトナの暗殺が終わったという事だから、リングにしていた俺らの机を戻してる。だが…そんな事より…

 

「何してんだ?殺せんせー」

「さぁ…さっきからあーだけど」

 

あのタコがさっきから触手を顔に当てて『恥ずかしい恥ずかしい』と言い続けてる。なんかシュールだな。

 

「シリアスに加担したのが恥ずかしいのです。先生どちらかと言うとギャグキャラなのに」

 

自覚あるのかよ…

 

「カッコよく怒ってたね。『どこで手に入れた!その触手を!』」

「いやあぁぁぁあ!言わないで狭間さん!改めて自分で聞くと逃げ出したい!」

 

狭間 綺羅々

このE組の中では最も強い雰囲気を醸し出している女子。趣味は読書、主に怖い系。何だろうな…放っとくと呪い系とかやりそう。

 

「摑みどころない天然キャラで売ってたのに。あぁ、真面目な顔を見せるとキャラが崩れる」

 

殺せんせーの弱点19 シリアスの後我にかえると恥ずかしくなる

 

「大丈夫でしょ。そういうキャラ崩れ、作者の小説では当たり前だし」

「お前は少し大人しくしろよ。現時点で女子の中での登場回数トップ3だぞ」

 

…全て作者(あのバカ)のせいだがな。メタ発言が使いやすいからってホイホイ使うなよ…

 

 

「…でも驚いたわ。あのイトナって子、まさか触手を使うなんて」

 

ビッチ先生の声に思い返す。確かに…触手を使ってきた時には驚いた。ひょっとすると、アレを使う事が1番可能性があるかもしれない。だが…嫌な予感がする。最後に殺せんせーに襲いかかる時のあの狂気、アレはイトナの性格なのか、もしくは…

 

「先生、説明してよ。あの2人との関係を」

「先生の正体、いつも適当にはぐらかされてきたけれど」

「あんなの見たら気になるよ」

「そうだよ、私たち生徒だよ?先生のことよく知る権利あるでしょ?」

 

そう、あんなとこまで見たんだ。イトナの触手に、殺せんせーの弱点を色々と知ってる正体不明のシロ、そして…殺せんせーの激怒。これらは、かなり難しい何かが隠されている。そうとしか思えなかった。

 

「仕方ない。真実を話さないといけませんね」

 

ゴクリと音がする。いわゆる、唾を飲み込む音だ。俺の謎がいよいよ明かされる…!

 

「実は先生…人工的に作り出された生物なんです!」

 

…………

 

「だよね」

「「「「「で?」」」」」

 

「にゅや!反応薄っ!これは結構衝撃的な告白じゃないですか⁉︎」

 

いや、そうは言っても…

 

「自然界にマッハ20のタコとかいないだろ」

「宇宙人でなければそれぐらいしか考えられない」

「で、あのイトナくんが弟だと言っていたから、先生のあとに作られたと想像がつく」

 

「察しが良すぎる!恐ろしい子たち…」

 

何ガラスの仮面になってんだ。そんな難しい推理じゃねぇだろ。

 

「知りたいのはその先だよ、殺せんせー。どうしてさっき起こったの?イトナくんの触手を見て。殺せんせーはどういう理由で生まれてきて、何を思って此処に来たの?」

 

全員の気持ちを代表するように、渚が聞く。俺もそう思ったし、多分みんなもそう思ってる。

 

「残念ですが、今それを話したところで無意味です。先生が地球を爆破すれば、皆さんが知ろうが全て塵になりますからねぇ」

 

……!言うつもりは無いってことか…!

 

「逆に君たちが地球を救えば、君たちはいつでも事実を知る機会を得れる。

もう分かるでしょう。知りたいのなら行動は1つ。

殺してみなさい。アサシンとターゲット、それが先生と君たちを結びつけた絆の筈です。先生の大事な答えを探すなら、君たちは暗殺で聞くしか無いのです」

 

…そうか、結局そういうことか。自分たちのやりたい事、知りたい事があるのなら、それは殺してじゃないと手に入れられないという事か。…やはり、今まで通り、俺たちはこの先生を殺す以外の道は無いという事だ。

 

「質問が無ければ、ここまで。また明日」

 

殺せんせーは教室から出ようとしていったん止まり、恥ずかしい恥ずかしいと言いながら出て行った。…しまらねぇ。

 

 

◇烏間視点

 

今回は結構危うい暗殺者だった。最初にあのタコの弟だと名乗った時は驚いたが、あの触手を見て納得した。恐らくイトナくんは、あの研究に関わった者から触手を受け渡されたのだと考えられる。

そして今回はシロと名乗った男に逃げられた結果となった。律の時みたいに、クラスメイトに溶け込むという形にはならなかった。

これで転校生暗殺者は、残り1人となった。2連続で暗殺に失敗した事で、上のものは何らかの手立てを施す可能性がある。以降も気が抜けない。

 

「烏間先生」

 

校舎の外で仕事をしていると、生徒たちが俺のところに来た。

 

「君たちか、どうした?大人数で」

「あの…もっと教えてくれませんか?暗殺の技術を」

「…今以上にか?」

 

……今でもかなりの訓練を行っているが、それよりもっと多く学びたいという事か…?

 

「今までは、結局誰かがやるんだろうとどこか他人事だったけど…」

「ああ、今回のイトナを見て思ったんだ。誰でも無い、俺たちの手でやりたい、て」

「だから限られた時間、やれるかぎりやりたいんです。私たちの担任」

 

……………………

 

「殺して、自分たちの手で答えを見つけたい」

 

意識が1つ変わったな。いい目だ。

 

「分かった。ではこれからの練習も、より厳しくなるぞ。では早速新設した30メートルロープ昇降、始め!」

「「「「「厳しっ!!」」」」」

 

まだ生徒たちも訓練を始めたばかり、これからの成長も期待できるな。

 

 

 

◇学真視点

 

より厳しくなった放課後練習が終わり、帰宅している。因みに1人だ。そりゃもう直ぐ家だし。

帰る間、俺の頭には1つの考えがよぎる。おそらく、イトナのことだ。

 

『俺は強い…!この触手で、誰よりも強くなった…誰よりも!』

 

イトナのあれは、強さに対する執念だった。自分が誰よりも強いこと、つまり最強であることに拘っている。

その気持ちは凄く分かる。強さは武器だ。誰にも劣らず、あらゆる物を得る事が出来る。そのための有効なカードだ。

俺も一時期それを求めてた。いや…求めさせられてた。親父の教育論上、誰よりも強くならなければならない。誰でも勝たなければならない。そう諭され続けて、ガムシャラだった時期がある。

だが、それだけに執着してはいけない。強さだけでは手に入れられない物もある。逆に、強さだけでは失うものもある。それは、かけがえの無い物だ。

 

『…!……な!……くれ!…!』

『俺を1人にしないでくれよ!』

 

瞼を閉じると、あの光景がハッキリと浮かび上がる。あの残酷で、悲惨で、思い出したく無いのに記憶にハッキリと残っているあの光景。あれこそ当に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかガラにもなく思いつめちゃってる顔してるね〜、気持ち悪っ」

 

…!この声…

 

目の前にはいつの間にか、あいつがいる。なんで、お前が俺の家の前に…?

 

 

 

 

 

「久しぶり、学真くん」

「………窠山…!」

 

 

 

1学期中間テストで学年3位を取ったA組の生徒、窠山 隆盛がおれの前に立っていた。

 

 

 




学真くんはイトナくんの強さに対する執念に若干違和感を感じています。これは彼の過去とも関係があるんですよねー。

そして学真くんが窠山くんと接触しました。この後どうなるんでしょうか?

次回『球技大会の時間』

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