C3キューブ 伝える物達   作:アロンダイト

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遅れて申し訳ありません


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転げまわるピーヴィー

 

唖然とする春亮

 

完全に沈黙したこのは

 

険しい顔で銃を構えるゾリショ

 

大笑いするフィア

 

辺りにはピーヴィーの千切れた腕から飛び散った血が流れ鉄臭いにおいが漂ってる

 

「あれが・・・フィア、なのか・・・」

春亮が呆然と呟く

 

「ぐうう・・・ううぅぐううう!ビッチ!」

ピーヴィーが荒い息で立ち上がる

 

「ハハハハ!無様だな!みじめだな!先ほどまでの威勢はどうした!?」

フィアが黒いルービックキューブを持ち上げる

 

「ビッチ・・糞を・・ブチ壊・・・ビッチ・・・」

ピーヴィーが幽鬼のように立ち上がりフラフラとフィアに歩み寄る

片腕の無い彼女にとってもはや立っていることすら困難であろう

 

そこまでして禍具破壊に暗い執念を燃やすピーヴィーは遥かに人間離れしていた

 

「ほぉ、まだ立ち上がるとは。その執念と根性は称賛に値するなぁ・・・」

そういいつつフィアのルービックキューブは立方体が鎖状になった立法鎖を巻き取り五番機構・刺式佇立態【ヴラド・ツェペシュの杭】を実体化させる

 

「貴様は頑張った方だ。あの世で誇るといい!」

幾多の人体を抉った処刑杭が放たれ空気を荒々しく削る

 

「だめぇぇぇ!」

ゾリショが叫び杭に銃弾を当てるが甲高い音と共に虚しく火花を散らす

 

「フィアぁぁぁぁぁぁ!」

春亮の叫びも虚しくピーヴィーに杭飛んでゆく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、ピーヴィーピーヴィーの胴体に白い『線』が巻きついた

 

その白い何かは目にも止まらぬ速さでピーヴィーを巻き取るとそのまま屋上から連れ去った

 

抉る目標を失った杭が屋上を再び破壊する

 

「・・・・なんだ、あれ?」

 

「さあ?待機していた仲間とか?」

ゾリショが拳銃を消し春亮に駆け寄る

 

 

 

 

「八番機構・砕式円環態【フランク王国の車輪刑】!」

フィアが唐突に拷問車輪を投擲した

 

「バットゥーダバロォーダニェン!【犠牲者の盾】(FSB)|!」

ゾリショの手に現れたのはライオットシールドだ

 

拷問車輪と7.62mm弾すら弾く防弾盾が擦れあいゾリショが車輪を横にそらす

 

「フィア!なにしてるんだ!?」

春亮が驚いてる

そりゃそうだ。味方のフィアに攻撃されたのから

 

「・・・・足りない・・・血が足りない!悲鳴が聞きたい!流血が見たい!」

フィアが拷問車輪を再び投擲。今度もゾリショがそらすも勢いに負けて尻餅をつく

 

「鳴けぇ!悲鳴をあげろ!」

身を護る術を失ったゾリショに車輪が肉薄する

 

『なにをやってるんですか!』

そこへ意識を取り戻したこのはが春亮の体を操りフィアの攻撃をそらし鞘でフィアの体を打つ

 

「がぁ!」

屋上をゴロゴロと転がるフィア

 

「ゾリショ、無事か!?」

 

「大丈夫」

首を回しながらゾリショが立ち上がる

 

「フィア・・・どうしちまったんだお前・・・」

ポツポツと雨が降り始める。台風が近い証拠である

 

「・・・・・は、はは・・雨、これも初めてだ・・・こんなにも、冷たいものなんだな・・・なにもかも、ずぶ濡れではないか・・・」

フィアは寝転がったまま自嘲じみた口調でしゃべった

 

「春亮、わかっただろう。これが私の本性、これが私の正体だ。私は結局、どうしようもなく狂っているだけの存在なのだ・・・人の概念を持って・・・初めて、罪に気付いた」

 

「・・・・・よくあることだよ」

例えるなら相手の足を踏んでからそのことに気付くようなもの

 

しかし、まだ人生経験の薄いフィアにそのことは理解できない

 

「よくある?本当にか?春亮、私の呪いを知っているか?私の呪いもありふれたよくあるものだ《所有者を狂わせる》どんな聡い人間だろうと心を狂わせ快楽のために他人を拷問せざるを得ないようにする・・・こんな私が罪深くなくてなんなんだ?」

 

「フィア、俺にはそんな呪い効かないから!体質だからこれからも大丈夫だ!」

 

「私には、人を殺した、罪がある・・・人を殺し過ぎた罪がある・・・」

 

「なんの話だ、フィア?」

 

 

 

「な、春亮・・・・・私は、私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 赦されて、いいのか?」

 

 

今まで知らなかった罪の重さに苦しみ罪の重さに潰されそうなフィアの震えた声での問いだった

 

 

 

 

「帰ろう、ここは寒すぎる」

答える意味のない質問と断じてあえて答えなかった

なにも答えず、フィアに居場所を提供したのだ

 

「フッ、優しい・・・優しい答えだ。優しくて、最低だ」

その一言を残し身軽に屋上から飛び降りた

 

「フィア!待て!フィア!!」

春亮の伸ばした手は、届かなかった

 

 





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