ピーヴィーが狂喜と恍惚に染まった顔でボロボロの自身の腕を眺める
「う・・・うぇ・・・」
「このは!?しっかりしろこのは!」
呪いが解けかけてるこのははその性質が反転し今では血を見ると卒倒するのだ
ピーヴィーの腕はところどころから血が垂れ下がりそれがこのはの忌避感の原因だろう
「しかし若干バランスが悪いですね・・・まあ、構いませんが」
「させるかぁ!」
ゾリショがガバメントを撃ちまくるがどれも決定打にかける
今のピーヴィーに傷をつけるのはすなわちギリギリのところにあるこのはの容体を悪化させる要因になりかねないからだ
そしてピーヴィーが接近し振るわれた鉄拳をどうにかかわした春亮だが
「まさか使うことになるとは・・・つまらない手ですけど」
ピーヴィーの手甲に仕込まれた刃が春亮の腕を貫いた
「春亮くん!」
ゾリショが駆け寄り応急処置を施そうとするがピーヴィーがそれを許さない
春亮の悲鳴が響き渡る中フィアが感じたのは恐怖と
懐かしさだった
自分がいた廃城の領主たる男。狂気がみちる地下牢。それらがすべて鮮明に蘇り脳裏を駆け巡った
「あ、あああ・・・あああああああ、あははははは・・・」
その時の自分はまだ道具だった
だが人の感情をもって初めて理解した
「は、あはは・・違う・・はははは・・・笑うな・・ははっあははは黙れ!・・・あははははそんなことはおもってくははははははははは!!」
二重人格のように現れる笑いを押さえつけ気を紛らわすためコンクリートを拳で殴る
ゾリショの銃声の合間に春亮の悲鳴が聞こえまさに戦場さながらだった
(春亮が殺される、けどあの姿になりたくない、やらなきゃみんな死ぬ、けどあれになるわけには、ゾリショももう限界だ・・・どうすれば・・・いい?)
その時ふと頭を何かがよぎった
「人化できるほどの禍具は人の姿でもある程度その性質を操れる・・・」
そう、このはの手刀が刃物になったように、ゾリショの指鉄砲が拳銃になったようにフィアも自分と同じ四角形を媒介にやれるはずだ
ポケットから転がり出たルービックキューブ、これな出来る。やり方もわかる
「・・・やらなくては、ならない・・・」
少しだけ、ほんの少しだけ。春亮達を助ける間だけやろう
そこでフィアの理性にひびが入った
「そうだ、そうしよう・・・」
まるで亡霊かなにかのように立ち上がるフィア
「泣くのはお止めになったのですか?今更いったいなにを?」
「なにをするかだって?決まってる
これから、貴様の悲鳴を聞く。楽しみだ、あははは」
歪に、狂気に染まった笑みをフィアが浮かべた
「偽装立方体(エミュレーション)、展開(スタート)」
その瞬間突き出されたルービックキューブが変質し掌に収まる鋼鉄の箱に変わる
その箱から対角同士がくっついた無数の立方体が鎖のようにのびる
「二十六番機構・貫式閉鎖態【鋼鉄の処女】ーーー
呪文のように呟かれたその言葉は鋼鉄の箱を変形させ幾多の人々の命を踏みにじってきた拷問処刑具に変貌を遂げる
変形し終わったのは巨大な鉄の棺、
「さあ、鳴け。みじめに、豚のように!」
フィアが立方体を操作すると同時にアイアンメイデンが不自然な動きと共に動きピーヴィーを数百の鋼鉄の棘が生えた内部へいざなう
「でぇぇりゃあああ!!」
ピーヴィーは逃げずにその場で残った右手の手甲を押し込む
ぎちぎち、と火花を散らす手甲と棘
甲高い音と共に鋼鉄の処女が弾かれピーヴィーはそのまま勢いよく駆けだす
「八番機構!砕式円環態!【フランク王国の車輪刑】---
今度は鋼鉄の処女がガシャガシャと組み合わさり出来上がったのは巨大な車輪だ
フィアが右腕を振ると車輪が躍動し車輪に取り付けられたピラミッド型のスパイクがピーヴィーの手甲とぶつかり合い再び火花を散らす
「ガッハ!・・・やっと、やる気になりましたか、ビッチ!」
ピーヴィーの挑発に答えずにフィアどこか虚ろな顔で車輪を引き寄せその形を変化させる
「十九番機構・抉式螺旋態【人体穿孔機】!---
新たに変形した形は凶悪なドリルだ
ドリルが恐ろしい音と共に回転を始めピーヴィーの胴体に突き出される
「ふふ、そうです。その顔です!人を傷つけるために作られた道具はどんな声で絶頂を迎えるのでしょう!ビッチ!」
巨大な甲冑と凶悪なドリルがピーヴィーの頬をかすめフィアを粉砕するべくピーヴィーの剛腕が振るわれた
「悲鳴を上げさせる方法は私とお前とでは数百年もの差がある。鳴け」
フィアが立方体を操作する
「三番機構・断式落下態ーーーギロチン!」
長年の直観がピーヴィーを自然と体を引かせる、が無理な体制だったのでピーヴィーの剥き出しの左手が切り落とされる
「ぐわあああああああああ!!!」
ピーヴィーの口から悲鳴がほとばしった
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