C3キューブ 伝える物達   作:アロンダイト

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翌日 昼休み

 

春亮は両親がいないため昼ご飯は自炊している

 

そして毎日クラスメイトとおかずの食べ比べをするのが日課で今日も例外ではない

 

「夜知、今日こそ勝たせてもらうぞ!」

成績優秀で律儀に校則を守るザ・委員長を体現したような真面目な女の子上野霧霞《うえの きりか》がお弁当箱を広げた

 

「おおッ!霧霞ちゃん今日は自信ありげだね!」

お弁当勝負の審判を務める実那麻渦奈《みやま かな》がすでに箸を握りしめながら話す

 

「今日はよりによりをかけたからな。絶対に負けん!」

 

「なぜ毎日毎日そんな気合を・・・」

 

「なるほど・・・霧霞ちゃんそんなに夜知を振り向かせたいか・・・乙女だぜ!というわけでいただきます」

もう一人の友人兼中学からの腐れ縁の伯途泰造《はくと たいぞう》が霧霞の卵焼きに箸を伸ばす

 

「な、なにを言ってるんんだ!まったく、ばかげてる!」

霧霞は顔を赤くしながら渦奈と泰造が卵焼きを食べるのを眺める

 

そのうち二人がひそひそと審議し始め

 

「うーん・・・今日の勝負は、卵焼きにアボカドを挟む斬新さを見せた春亮の勝利!」

春晃に軍配が上がった

 

「くっ!そうか斬新さ!私は新たな味の探求をせずについつい保守的になりがちだったとは・・・・」

そこで一回頭を垂れ

 

「男に料理で負けては女が廃る!次こそは勝つ!」

こうして昼休みは過ぎて行った

 

 

 

 

 

 

放課後 下駄箱でこのはと一緒になった

 

「委員会はどうしたんだ?」

 

「休んじゃいました、なんとなく」

とそこに

 

「ヒャッハー!テメェら!帰る準備はいいか!?春亮くん一緒に帰ろう!」

 

「その世紀末な話し方はなんとかならんのか?」

 

「いやー、なんだか胸騒ぎがしてね!フィアちゃんが心配だから早く帰ろう!」

ゾリショが和気藹々と話しながら春亮に飛びついた

 

そう、春亮もこのはもなんだかんだ言って家に置いてきたフィアが心配なのだ

 

速足で家の門をくぐり扉を開ける

 

「なんじゃこりゃーー!!?」

家はめちゃくちゃだった

 

ひっくりかえったテーブルに倒れた戸棚そして極め付けは縁側に突っ伏すフィアだった

 

「おいフィア!なにがあったんだ!?」

 

「春亮くん!洗面所も大変なことに!」

 

「泡まみれだったねもしや、これは・・・」

 

「まじでなにがあったんだ!?フィア起きろ!」

春亮がフィアを起こす

 

「は、春亮・・・大変だ・・・」

 

「なにがあったんだよ!フィア!」

 

「じ、実は・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黄緑色で三本足の宇宙人が乗り込んできて!」

 

「てい!」

フィアの言葉を遮り春亮のチョップがフィアに直撃した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「掃除、ね・・・」

ゾリショが洗濯機から溢れた泡を掃除しながら呟く

 

居間の惨状とここの状態を見てひらめいた

 

「なんだか懐かしいな・・・」

自分もここに来たときは一般常識が欠如していて春亮くんにはたくさん迷惑をかけた

 

(彼女は私と同じで焦ってる。強大な呪いを一刻も早く解きたいあまりいいことをしようとしてからぶりしてるのだ)

 

「・・・このはちゃんなら気づくだろうし、大丈夫か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、起きてるか?」

 

「うるさい、寝とるわ」

 

「起きてんじゃねーか」

 

「うるさい呪うぞ」

 

「そうか・・・まぁその・・・悪かったな、お前は人みたいだけど人じゃないんだよな。忘れてたよ。このはやゾリショも最初は変なことばっかしてたからな」

 

「あのウシチチと一緒にするな」

 

「へいへい、まあ用はだ。呪いを解くのは時間がかかるから焦らずじっくりでいいから。わかんないことがあったら俺にわかる範囲で教えてやるから」

 

「・・・・・・・フン」

 

「飯は台所に置いとくから勝手に食べな、あと俺たちからのプレゼントだ、とっとけ」

春亮は去り際にこのはとゾリショの二人からの衣服のおさがりを置いて行った

 

 

 

 

 

数分後フィアは部屋から手をだし袋をひったくる

 

中には衣服が何着とメモが入っていた

 

『お子様には下だけで充分ですよ』

 

「死ねっ!」

ストレートに自分の気持ちを手紙にぶつける

 

『ブラが欲しければ自分でアルバイトでもして買いなさい。もっとも、私たちは成長しないから無駄だと思いま』

そこまで読んだフィアは手紙を床に叩き付ける

 

次に出てきたのはなんだかモコモコした服、もといパジャマ

 

『寝間着はゆったりしたものがいいからこれを着て寝るといいよ』

おそらくゾリショとかいうあのロシア人だろう

 

「・・・まあ、感謝しよう」

そして次に出てきたのは立方体のおもちゃ、ルービックキューブとおせんべい

 

「ぬ。ゴマ入りか・・・実に香ばしい・・・」

日本の茶菓子が痛く気に入ったようだ

 

 

 

 

 

 

さらに翌日

 

ゾリショがあげたパジャマをかなり気に入ったようで上機嫌のフィアは台風が近づいて荒れている海が移ってるテレビにくぎ付けだ

 

「これが海か・・・」

 

「テレビの使い方はわかったか?」

 

「バカにするな、このボタンでチャンネルとやらが変わるのだろ!」

フィアはおっかなびっくりでチャンネルを変える

 

「じゃあ、俺たちは学校行くから、暇はテレビでつぶせよ」

 

「わかっておるわ、さっさと行ってしまえ」

今度のフィアは『ワンニャンパラダイス地獄』というよくわからないテレビ番組をみてる

 

「おはよう、春亮くん!」

ゾリショがこのはと玄関で待っていた

 

「じゃあフィア、家事とかはおいおい教えてくから今日はなにもするな」

 

「ぬぬ・・・そうか・・・」

昨日の失敗を思い出したのか苦い顔をするフィア

 

「じゃあフィアさん、私と春亮くんは楽しい楽しい学校に行ってきますから」

 

「このはさーん、あっしは?」

ゾリショが手を振るが黙殺される

 

「な、なんだその嫌味な言い方は!」

やはり出会いが悪かったのか二人の仲は悪い

 

「どうせウシチチのことだ!その巨大なチチをチチらしく使って二人仲よく乳繰り合うのだろう!なんとハレンチな!さっさと行ってしまえ!」

 

「なんか不安だけど・・・時間も時間だし、行ってくるからな」

 

 

 

 

「あほ・・・ほんとに置いてかんでもよかろう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見られてる気がしますね」

国際空港前か出た一台のタクシーの中、長いタクシードライバーの経験からしてこのお客はとびっきり変だ

 

「あ・・・その、すいません」

 

「おや?貴方もでしたか」

禁煙のタクシーの中で堂々と煙草をくゆらせる金髪の女性は流暢な日本語とともに金属音《・・・》と共に肩をすくめた

 

「日本語お上手ですね。日本へは観光ですか?」

 

「いえ、仕事です」

 

「それはご苦労様です。どのような仕事か、聞いてもよろしいですか?」

そうきくとそ女性はニヤリと凶暴そうな笑みを浮かべた

咥えた煙草がみるみる灰になり濃密な紫煙が言葉と一緒に吐き出される

 

 

 

「ゴミ掃除です」




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