C3キューブ 伝える物達   作:アロンダイト

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「また親父か・・・」

少年、夜知春亮《やち はるあき》は自宅の玄関で溜息をついた

 

春亮少年の前には縦横1mはありそうな一つの黒い立方体が置かれてる

 

世界中を旅する父親が時折ゲリラ的に送りつけてくる様々な物品、これも宅配業者がヒイコラ言いながら運んできたものだ

 

「こう、正しい順序を踏まないと開かないのかな・・・?」

うんうん唸りながら表面をなぞったりしてみる

時たま女の子の声が聞こえたりするが幻聴と断定

 

「よし、放置しよう!」

さわらぬ神に祟りなし、さっそくもちあげる

 

「超重てぇ!なにが入ってるんだ!?」

ふらふらといつもの物置に箱を放り込む

 

「はぁ・・・腰が痛いや・・・」

慣れない重労働で痛くなった腰をさすりながら春亮はちょっと休もうとソファーに横になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって夜知家の離れ

 

「あ、このはちゃん、晩飯ですか?お腹すきました・・・」

 

「あら、ゾリショさん。こんばんわ、肉じゃがを作りすぎたので春亮くんにおすそ分けに・・・」

夜知家の離れに住む村雨このはが同じく離れに住む少女ゾリショ・ユアンと話す

本人がチャームポイントといってる頭頂部から飛び出た一本のアホ毛が元気なさそうに垂れてる

 

「肉じゃが、ですか・・・楽しみです」

二人はおしゃべりをしながら春亮の住む母屋に向かう

 

母屋に近づくと

 

「おい、春亮!もう少しなにか無いのか?」

 

「食うの早えよ!」

家主の春亮と言い合う知らない女子の声にこのはの歩みが止まる

 

「・・・・なんだろね、あの声?」

 

「強行突入です!」

若干怒ってるような感じのこのはを先頭にゾリショが続く

 

「こんばんは、春亮くん」

先ほどの怒りを微塵も感じさせない話し方だった

 

「このはか。それにゾリショも、丁度いい二人に話というかなんというか・・・」

 

「春亮!お腹すいたぞ!」

出てきてのは春亮よりも背が低い銀髪の少女

 

「・・・・えーっと、春亮くん?とりあえず、警察行こうか?」

ゾリショが笑顔で呟く

 

「いや、誤解だ!そんなんじゃないから!」

 

「春亮くん、この子は?」

大人の対応をするこのはに

 

「初対面で子供扱いとはな、幸の薄い顔しておるくせに」

 

「幸薄ッ・・・・!」

いきなりの幸薄発言にこのはの怒りに火がつく

 

 

「え、ええと・・・このは、その鍋はなんだ?」

危険を察知した春亮が話題を変える

 

「肉じゃがだって」

春亮の問いにゾリショが横から答える

 

「そ、そうか!じゃあ、夕飯まだなら久しぶりに食べてけよ!ゾリショも一緒にどうだ!?」

 

「そ、それなら・・お言葉に甘えて・・・」

 

「ゴチになりまーす」

なんとか場の空気を転換した春亮だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか。崩夏《ほなつ》さんから・・・ですか」

フィアと名乗った銀髪の少女を含めた四人でちゃぶ台を囲み肉8じゃが2の肉じゃがを食べながら春亮は今までの経緯を話した

 

「崩夏の旦那が送ってきたならまず呪われてるね《・・・・・・》。私たちと同じくらい」

 

「お主らも呪われてるようだな」

僅かな沈黙の後

 

「・・・ええ、あなたの先輩のようなものです」

代表としてこのはが答える

 

「人化できるほどの呪いを受けたのか・・・貴様らはなんだ?なにかの武器か?」

 

「あなたは?と聞いたら答えますか?」

そこでフィアとこのはがにらみ合いしばらくしてフィアとがふと言った

 

「崩夏はここに来れば呪いが解けると言ったが・・・本当か?」

 

「そこは安心していいよ。前例もいるし、このはちゃんもアルバイトとかいっぱいしてだいぶ解けてるもんね」

ゾリショが肉じゃがを食べながら話す

禍具《ワース》は人々の負の思念が集まって呪われたため反対に正の思念を浴びれば呪いは中和するのだ

 

「それに、ここは代々清浄な地脈が集まる場所だからここにいるだけで呪いは中和されるんだよ」

春亮の言葉にフィアは安心したような顔をした

 

「まあ、気長に頑張ってねー」

ゾリショがお茶を啜りながら呟く

 

「ときに春亮くん。フィアさんは今夜どこに泊まるんですか?」

 

「離れは空いてないから、母屋のどこかに泊まらせようかと・・・」

 

「え”?」

このはが氷ついてる

そこへフィアが

 

「そうだ!さっき私の体をあんなに弄り倒したのだ!最上級の寝所を用意しろ!さもないと呪うぞ!」

 

「いや待て!おまえさっきはただのはk・・・」

だが春亮の反論を湯呑みが倒れる音がさえぎる

 

発生源は・・・このはだ

 

「ふ、不潔ですぅぅっぅ!!」

とこのははそのまま駆けていった

 

「・・・警察、いこか?」

 

「だから違うって!」

 




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