C3キューブ 伝える物達   作:アロンダイト

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「春亮くん、怪我はない?」

ゾリショが軽機関銃を脇に置き、春亮にすり寄る

 

「ない、ないから!その手は何だ!?」

 

「念の為調べないとね!大丈夫!痛くしないから!諦めて服を脱げッ!」

手をわきわきと蠢かしながら春亮に詰め寄るゾリショ

 

「脱ぐかッ!」

そんなゾリショと春亮のやりとりもこのはの介入により終わる

 

「敵は取りあえずは撃退?出来ましたね」

このはが肩を回しながら呟く

 

「しかし、まさか日付が変わった瞬間に襲ってくるとはな……」

 

「ごめん、春亮くん。ちょっとボーッとしてたらこのざまでした……」

 

「ゾリショさんが見落としたのも仕方ありません。殺気という殺気がありませんでしたから、私の責任です」

このはが申しわけなさそうに謝る

 

「敵はどっからきたのかな?」

ゾリショが呟くようにこのはに聞く

 

「……わかりまそん。でも次は猫が来てもわかるぐらいにしときますね」

 

「あぁ、わかった……」

春亮があくびをかみ殺す。寝てたところを叩き起こされたのだ、眠いだろう

 

「……では、配置を変えましょう。ゾリショさんは表、私は再び裏を見張りますね」

 

「異論なし!」

機関銃を抱え、立ち上がるゾリショ

 

 

夜はふけていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむぅ……どうしたものか」

ゾリショは先程から左胸を撫でていた

 

原因は先程の激痛。今はすっかり治まっているが未だ原因はわからなかった

 

(……そういえば左胸には切り傷があったな……)

ゾリショは第三次世界大戦の武器が詰まった箱の禍具。であり、大戦中にうけた傷は計り知れない

 

その中でも左胸、丁度心臓の位置にある切り傷はどこで受けたのか記憶が無いのだ

 

「なんだろうかな?心不全!?ヤダー!」

両肩を抱いて軽くふざけていると

 

「んなわけねーだろ」

 

「っ!?」

《理想社会の犠牲》を消し、取り回しの効く《唯一無二の相棒》を抜き放つ

 

「《幽霊の目(エンドレスフォーリング)》」

何かが光り、ゾリショは反射的に目を覆った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、ここ?」

ゾリショが目を開けるとそこは海の上の石油リグだった

 

そして戸惑うゾリショの前には男が一人いた

くたびれたロシア空軍の制服に肩には傷だらけのAK-47、目には血がついたサングラスをかけている

 

「俺の名は……まぁ、ニコライ・ウォーカーとでも呼んでくれ、【蒐集戦線騎士領】所属、まぁ、なんだ。【箱型の恐禍】を潰しにきた…ダルゥ…」

男は首をコキコキ鳴らしながらAKを持ち上げる

 

「ここどこ?」

 

「ここは……まぁ、どこでもいいだろ。強いていうならこのサングラスの持ち主が生前見ていた風景のどっかだ」

サングラスを中指でズラし、こちらを見てくるニコライ

 

「新手か……目的は?」

 

「さっきも言ったろ?お前らフィアと呼ぶ物を、破壊する」

 

「だとしたら、なぜ私をこんなところに?」

 

「……各個撃破ってやつだ、よ!」

ニコライが脈絡もなくAKを乱射した

 

7.92mm弾がゾリショに襲い掛かる

 

「バットゥォーダンバローダニェン!【犠牲者の盾】!」

強化プラスチックのライオットシールドが銃弾を弾き、ゾリショがその距離を詰める

 

「これでも、食らえ!」

AKの銃身に取り付けられたグレネードランチャーが発射される

 

「ヤバッ!」

【犠牲者の盾】は後ろから攻撃を食らうと重症なのですぐさま解除して【唯一無二の相棒】を撃ちながら逃げる

 

「へぇー、いい動きするじゃないか」

ニコライが手榴弾を腰から取り出し投げる

 

放物線を描いていた手榴弾は突如、動きをとめゾリショの真ん前に落ちてきた

 

「なんでだぁ!?」

物理法則を無視した手榴弾の動きに驚き、素早く手近なコンテナに隠れ爆風から身を守る

 

「ハァッハァッハァッ!スペシャルナイツをなめるなよ!」

ニコライの笑い声が響いた

 

 




オリジナル禍具解説

《幽霊の目》
生前このサングラスをかけていた特殊部隊隊員が参加した作戦の風景を再現する禍具
視線を合わせた相手も同じ様に見せることができ、一種の別空間に転移させる禍具
サングラスを外したり、使用者がその空間で死ぬか禍具自体が破壊されると元の空間に戻る
ちなみにその戦いをリプレイするので、実際に敵や味方も出てくる

《その手は血で汚れてる》
アフリカの民兵が使用したAKの内の一丁
集団暴行で殺された人々の怨嗟が込められた銃で代償として悪夢にうなされる



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