C3キューブ 伝える物達   作:アロンダイト

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「あんた、名前は?」

ゾリショがぶら下がった少女に聞く

 

「私は、《ミイラ屋(マミーメーカー)》蒐集戦線騎士領の後方支援員(オーグジラリ)

《ミイラ屋》は表情を変えずにそう呟いた

 

「そうか、で。なにしにここへ?」

 

「提案にきた」

 

「はぁ?」

 

「我々の目的は《箱型の恐禍(フィア・イン・キューブ)》の破壊。それのみが至上命令。よって《箱型の恐禍》を、そちらが破壊するか、無力化し引き渡す、もしくは《箱型の恐禍》の破壊を邪魔しない、のどれかを選べば、他の日本刀や銃火器や夜知家の人員には危害を加えないことを、約束する」

淡々と、逆さづりでそうのべる少女

 

「ふぅーん、何でそんなこと言い出すの?」

この提案はいささか突発的で胡散臭い

 

「……先の戦いで騎士の一人が負傷、した。これ以上の損失は、避けたい」

 

「へぇー……」

向こうはそんなに大勢居るわけではないと

 

「ねえ、なんで今更そんな交渉に来たの?」

確かに、戦ってから「休戦しましょ」は順番がおかしい

 

「……これは、私の個人的な申し出。でも、約束は、守る」

そういうと《ミイラ屋》は袖から飛び出た白い布か何かをスパイダーマンのように木に巻きつけあっという間にどこかへと消えた

 

「……フム、なんだったんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうことがあったんだよ」

 

「なるほど……確かに妙な提案だな」

ずぶ濡れになり、オマケに霧霞さんも付いてきたのでちょっとした騒動もあったが今は全員が身体を拭い、仲良くカレーを食べていた

 

「敵の罠の可能性もありますから、行動は慎重にしたほうがよろしいですよ」

 

「このはの言うとおりですよ。話に乗ってフィアちゃんを渡してもあのバロヲイとかいうイノシシ女が止まるとも思えないし」

ゾリショは深夜アニメを観ながら呟く

 

「そうだな。とりあえずその交渉は放置して向こう側を急襲できたらいいな」

春亮が残念そうに呟く

バロヲイとかいう戦闘員が重傷を負っており、向こうは今戦力が無いときた。ここでさらに追撃を食らわしたら撤退は確実だろう

 

「場所がわかればなぁ……」

 

「ですよね……」

この街も小さくはない。そこから二人の人間を探すのはかなり難しい

 

「《ザミエルの鷹》を街中で使うのは危険だしなぁ……」

うっかりロングヘルファイヤが街中に落ちたりしたら大変だ

 

「そうなると地道に探すより待ってた方がいいな」

霧霞が呟く

 

「ちなみに夜知、その者達が攻めて来たらどうするのだ?法に接するようなことをするというなら……」

霧霞がじっとりとした目で見てくる

 

「いや、そんなことしないよ、装備を破壊するか来る気が無くなるまでシバキ倒すぐらいかな」

事実、それぐらいしか出来ないのだ

 

「わざわざ戦力分散させてさがすより戦力集めて一カ所で護る方が楽だしね、夜はあたしとこのはちゃんで護っとくよ」

深夜アニメを見終わったゾリショが立ち上がる

 

金色のアホ毛を弄りながら狙撃銃を担ぎ上げる

 

夜はますます深まってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃工場

 

プルルルプルルルプルルル………

 

「う、うぅー……」

ピーヴィーが鬱陶しそうに目を開け枕元の携帯を持ち上げ耳に当てる

 

「……hello?」

 

《一等殲滅騎士、ピーヴィー・バロヲイか?》

 

「………領主様!?」

一瞬で眠気を吹き飛ばし声を正す

 

「申し訳ありません!」

 

《よい、いきなりかけたのは私だ。それより、お前に伝えることがある》

そのとき、ピーヴィーは眉をひそめた

 

領主様が直々に伝えることとは何だろうか?それほど重要なのか?

 

《後方支援員から話を聞いて事前情報に無い禍具があったそうだな》

 

「え、えぇ、まぁ……」

 

《最近騎士の殉職が相次いでおる。そのため、お主の元に増援を送ることにした》

 

「ぞ、増援……?」

 

《ああ、『旅に疲れた者(ウォーカー)』を送った。二人で確実にしとめるのだ。期待してるぞ》

 

「は、はい!わかりました!領主様!」

そして電話が切れニヤリとピーヴィーが笑う

 

領主直々の激励だ。失敗するわけにはいかない

 

余所からやってくる人員は正直アレだが領主様の優しさとでも思っておこう

 

「しかし、『旅に疲れた者』か……」

奴は厄介な体質持ちだ。上手く戦えればいいが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾

 

一隻の貨物船が港に着岸する

 

「……ついた」

くたびれたように呟く一人の青年

 

首につくかつかないくらいの長さの黒髪に青い眼、そしてくたびれたロシア空軍の軍服

 

彼こそ蒐集戦線騎士領の切り札のうちの一つである【選抜特殊騎士】(スペシャルナイツ)である

 

【選抜特殊騎士】とは禍具を使わずともその身に宿した特異能力や限界まで高められた身体能力や武技などを扱う一般の騎士とはまた毛色が違う騎士である

 

「住所は……遠いなぁ……」

だるそうに呟き歩き始めた

 

近くに空港もあるのにわざわざタクシーを使いピーヴィーの潜伏する廃工場に向かった

 

 


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