待ってる人がいたらですけど
雨が冷たく降り注ぐ街中、上野錐霞が路地でずぶ濡れのフィアを偶然見つけた
「フィアくん?どうした、こんなとこでずぶ濡れになって。夜知はどうした一緒じゃないのか?」
錐霞が傘を射しながらフィアに近づく
「・・・・・寄るな」
暗く、掠れた声で呟いた
「・・・そうは言っても。雨の降る中夜道にびしょ濡れの知り合いを放置するのは目覚めが悪い。よければ相談にのるぞ?」
「来るなッ!」
その瞬間錐霞の傘を無機質な鋼鉄のドリルが貫いた
「フィ、フィアくん・・・それは・・・一体?」
愛らしい少女には似つかない巨大なドリル。その巨大さはまさに重機のようだ
「ははっ・・・また私は、傷つけるのか。こんな、簡単に・・・」
フィアは絶望しきった乾いた笑いをあげる
するとドリルが一瞬でルービックキューブに変化し錐霞をまた驚かせる
「頼む。ほっといてくれ・・・」
憔悴しきった顔でフィアはふらふらと夜闇に消えて行った
「いたか?」
「ぜんぜん見当たりません・・・」
このはと春亮がそろって溜息をつく
バスや電車には乗れない(おそらく乗り方を知らない)からそう遠くには行けないはずだしゾリショの空からの捜索もあまり身を結んで無い様だ
「どこにいったんだよ・・・」
と、そのときポケットの携帯が鳴った。相手はクラスメイトの上野錐霞だ
「委員長さん!?悪い今ちょっといそがし」
《フィアくんを見た》
おもわず行動が全て止まった
「ホント?」
《ああ、その・・・なんとも、ばかげたことなんだ・・・見間違いではないと思ったが、実に非科学的で・・・」
ずいぶん動揺しているようだ
「どうしたんだいーんちょうさん!まさかフィアがなにかしたのか!?」
春亮の脳裏には先ほどの戦闘がよぎった
まさかフィアがどこかで暴れてるのか?
《いや、その・・・ルービックキューブがドリルに変形したんだ》
「ドリル・・・」
春亮の脳裏には屋上でみた【人体穿孔機】が思い浮かぶ
「春晃くん、フィアさんの情報かなにかは?」
このはが聞いてくる
「いーんちょうさん、今はちょっと事情で話せないんだ。フィアがなにか言ってなかったか?」
《ほっといてくれとしか・・・》
「そうか・・・ありがとう」
《うむ、こちらこそすまない、大したことを言えなくて・・・》
「いいんだ」
携帯を閉じる
「結局、わからずじまいか・・・」
「こうなったら、もう一度探すしかありませんね」
このはが疲れたように溜息をつく
その時春晃の携帯が震える。着信相手は、ゾリショ
《フィアちゃんが見つかったよ》